古典的条件づけの意味
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「古典的条件づけ」について解説していきます。
目次は以下の通りです。
①古典的条件づけの意味とは
②古典的条件づけの過程
③中性刺激と無関連反応
④消去と自立的回復
⑤心理学的効果
是非最後までご一読ください。
①古典的条件付けの意味とは
意味
条件刺激と無条件刺激を繰り返し提示することで、条件反応を形成すること
古典的条件付けは「レスポンデント条件付け」「パブロフ型条件付け」とも呼ばれています。古典的条件付けは、学習理論の一つとされ、パブロフやワトソンが中心に研究が進められました。
提唱者
パブロフはロシアの生理学者です。初期には消化腺の研究によって、1904年にノーベル賞を受賞しています。これはロシアでは初めてのノーベル賞受賞者になります。
この消化腺の研究中、動物が食べ物を期待することで唾液が分泌されることに気づき、条件反射の仕組みについて解明していきます。その実験の際に犬を使ったことが有名で、パブロフの犬として知られています。
パブロフは、犬に餌を与えるときに同時にベルを鳴らすことを繰り返し、ベルを鳴らしただけで唾液がでるような反応を形成しました。
↑パブロフ博物館にあるパブロフの犬(wikipediaイワン・パブロフより)
また、課題が困難で不快な刺激を受ける確率が高まると、学習の成績が悪くなるだけでなく情緒の不安定さも表れる「実験神経症」という概念も提唱しています。
分類
古典的条件付けは、受動的であるという特徴があります。これに対して、スキナーという心理学者は、自発的な行動に対して、何らかの刺激を与えることで、行動を変容させるオペラント条件付けを提唱しました。両者の違いは以下のようになります。
②古典的条件付けの過程
古典的条件付けは以下のような流れで形成されていきます。
それぞれの働きを具体的に解説します。
条件付けとは
条件付けとは刺激と反応を結び付けることをいいます。学習の基礎になっています。
無条件刺激と無条件反射
無条件刺激とは、生き物が本来持っている反応のことです。例えば、犬に餌を見せるなどが挙げられます。またそれによって、無条件反射が引き起こされます。例えば、餌を見た犬が唾液を分泌させるなどが挙げられます。
対呈示強化
対呈示強化とは、条件刺激を与えたあとに無条件刺激を対にして呈示することで、本来行動しないはずの行動に結びつくことです。
条件刺激と条件反射
条件刺激とは、条件付けされた刺激のことです。例えば、条件付け後の犬にベルの音を聞かせるなどが挙げられます。またそれによって、条件反射が引き起こされます。例えば、ベルの音を聞いただけで犬が唾液を分泌させるなどが挙げられます。
③中性刺激と無関連反応
古典的条件づけ前では、ベルの音を鳴らすと以下のような流れで反応が起こります。
中性刺激
- 中性刺激とは、無条件反射を起こさない刺激のことを指します。例えば、条件付け前の犬にベルの音を聞かせるなどが挙げられます。
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無関連反応
- 無関連反応とは、中性刺激によって起こる反応のことです。例えば、条件付け前のベルの音を聞いて、耳をそばだてるなどが挙げられます。中性刺激と無条件刺激を与えることを繰り返すことで、中性刺激のみで、無条件反射が起こるようになります。これが古典的条件づけになります。
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④消去と自発的回復
一度、条件づけされた行動でも永続的に続くわけではありません。経過時間によって、条件づけが薄れたり、再び条件づけが戻ることがあります。古典的条件づけには、以下の2つの用語があります。
消去
消去とは、無条件刺激を与えないでいると、条件付けされた行動が次第に消えていくことを指します。例えば、しばらく犬にベルの音を鳴らさずに、餌を与えていると、ベルの音を鳴らしても唾液を分泌しなくなることが挙げられます。
自発的回復
自発的回復とは、条件付けが消去された後、再度条件刺激を与えた時に、条件反射が起こることを意味します。例えば、消去の犬の例で、再び餌と同時にベルを鳴らすことで、ベルを鳴らすだけで唾液を分泌するようになることが挙げられます。
⑤心理学的効果
学習理論の応用
人の行動のほとんどは学習によって形成されたものであると考えます。その行動は、新たな学習によって変容が可能であるとしています。不適応な行動は消去し、適応的な行動は再学習していくという方法を取っていきます。こうした学習理論は、勉強や仕事、人のあらゆる活動の元になっています。
心理療法の応用
古典的条件付けは、行動療法の一つとして応用されています。例えば、系統的脱感作は、体の緊張と弛緩を繰り返すことで恐怖を低減していくことに応用されています。
また、暴露反応妨害法は強迫神経症の治療として有名で、不適応となる刺激-反応に対して、反応をやめさせることで症状を軽減させていきます。
関連コラム
オペラント条件付け
古典的条件付けはオペラント条件付けと一緒に学ぶと理解が深まります。以下のコラムも参照ください。
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行動療法
古典的条件付けやオペラント条件付けは、心理療法にも活用されています。具体的には以下の行動療法を参照ください。
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ダイコミュ用語集監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
【出典】
外林大作,辻正三,島津一夫,能見義博(編) 誠信心理学辞典 誠信書房
パブロフ画像wikipedia