偏見の意味とは

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「偏見」について解説していきます。

偏見の意味とは,AZUMI様作成

目次は以下の通りです。

①偏見とは何か
②偏見の正当化-抑制モデル
③統合脅威理論(ITT)
④偏見についての研究

是非最後までご一読ください。

①偏見とは何か

意味

偏見とは心理学的には以下のように定義されています。

実際の経験に基づくか、またはそれに基づかない、人または物に対する好意的または不利な感情
(オルポート,1979)

具体例
・あの国はうるさい人ばかりだ
・研究者は頭が固そう
・A型は生真面目だ

偏見研究の歴史

以下、偏見研究の歴史を折りたたんで記載しました。気になる項目をクリックしてみてください。

偏見の研究は1920年代から始まりました。しかしこれらの研究は白人至上主義を裏付ける目的で行われたものでした。研究としては、白人と黒人の能力的な比較がなされ、白人の方が優秀であると結論付けられ、余計に偏見が助長されてしまいました。

1930年~1940年代には、ナチスの反ユダヤ主義への関心が高まり、偏見は問題であるという機運が高まっていきました。そして偏見を持つ人のパーソナリティの研究が進んできました。

その中の1人であるテオドール・アドルノは、偏見を持つ人は「権威主義的パーソナリティ」があると考えました。権威主義的パーソナリティとは、強者や権威を批判なしに受け入れ、立場の弱い人に批判的になる社会的性格のことです。アドルノは権威主義的パーソナリティを持つ人々は、低い地位のグループに対して偏見を持つ可能性が高いと考えました。

1954年、ゴードン・オルポートは、自身の著書「偏見の性質」、偏見をカテゴリー的思考に結び付けました。カテゴリー思考とは、複雑な世界を理解できるように単純化・構造化する思考のことです。オルポートはカテゴリー思考について以下のように説明しています。

人間はカテゴリーの力を借りて考えなければなりません。そして、カテゴリーは先入観の土台です。私たちは、ほとんどの場合、カテゴリー思考のプロセスを避けることはできません。

オルポートは、偏見は人間にとって自然で正常なプロセスであると主張しました。つまり、カテゴリー的思考で物事を単純化する中で、偏見が構築されると考えたのです。

1970年代になると、偏見は自分の集団に対する好意が大きいほど起こりやすいということがわかってきました。社会心理学者のマリリン・ブリューワーは、

偏見はグループの外から嫌われているからではなく、賞賛、共感、信頼などの前向きな感情がグループ内に留まっているために発生する可能性がある

と説明しています。自分のグループを肯定的に見るほど、他のグループに対する偏見が強まると考えたのです。

 

②偏見の正当化-抑制モデル

偏見の正当化-抑制モデルは、Crandall & Eshleman(2003)によって提唱されたモデルです。偏見の正当化-抑制モデルは、以下の3つのステップに分けられます。

平等主義で偏見を抑制

偏見が現れると、人道主義や平等主義などの信念でそれを抑制します。

別の信念で偏見を正当化

しかし、別のネガティブな信念で結局、正当化されてしまいます。

罪悪感から逃れる

正当化することで、相手に対してネガティブな行動を取る時に起こる、倫理的な罪悪感を避けようとします。

上記の3つ流れで、偏見は抑制しても最終的に正当化されてしまうのです。このモデルでは、差別撤廃や博愛精神が強調される社会ほど,皮肉にも差別的な考え方を持つ人が増加すると示唆されています。

③統合脅威理論(ITT)

統合脅威理論は、偏見につながる脅威の構成要素を説明するもので、Walterら(2000)によって最初に提案されました。統合脅威理論では、偏見につながる脅威は以下の4つの構成要素から成るとされています。

現実的な脅威

資源をめぐる競争や収入が減るなど、目に見える脅威

象徴的な脅威

文化的な価値観のすれ違いなど、考え方としての脅威

グループ間の不安

他のグループとの相互作用が引きおこすネガティブな感情

否定的なステレオタイプ

人は自分のステレオタイプ(思い込み)に沿って、他のグループの人から否定的な行動を予測します。たとえば、あのグループは暴力的だなどです。こうしたステレオタイプは、恐怖や怒りなどの感情と関連があります。

 

④偏見についての研究

李ら(2018)は、20代の男女42名を対象に、認知的不協和理論を用いた偏見を抑制する研究を行いました。手順は以下の通りです。

①偽善テーマを書かせる,書かせない

まず初めに以下の2群に分けます

・統制群
何もしない群

・疑似統制群
タトゥーへの偏見をなくすべきというエッセイを書いてもらうグループ

②現実に直面させる

実際それが出来たかを書いてもらいます。そして参加者の多くは偏見的な態度をとったことがあります。即ち強制的に認知的不協和を作り出したのです。先ほど書いた偏見をなくすべきというテーマとギャップが生じ、認知的不協和となります。

③偏見の大きさを調査する

この2つのプロセスで偏見の大きさがどうなったのかを調査しました。グラフでは
「偽善モデル導入群(偽善テーマを書いた群)」
「統制群(偽善モデルを書いていない群)」
を比較しています。

認知的不協和理論と偏見の低減

表から「統制群」に比べて「偽善モデル導入群」がタトゥーに対する偏見が小さくなっていることが分かります。

この実験から言えることは、とりあえず偽善でも良いので、偏見はだめだ!と書くことで、現実の自分との認知的不協和が生じ、不協和を解消するために、実際に偏見をなくそうと心が変化していくことが示唆されています。

この原理を応用すると、例えば、犯罪を犯してしまった少年に、本来ならどう生きるべきだったか理想を掲げてもらうことで、実際に自分の考えを変えるきっかけにできるかもしれません。

 

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監修

・川島達史
・公認心理師,精神保健福祉士
・目白大学大学院心理学研究科卒
Youtubeチャンネル

・Allport, Gordon (1979). The Nature of Prejudice. Perseus Books Publishing. p. 6
・李瑋琳  宮下達哉  岡隆 (2018)偏見の低減への認知的不協和理論に基づく偽善モデルの適用 日心第82回大会
・Young-Bruehl, Elizabeth (1996). An Anatomy of Prejudices. Cambridge, MA: Harvard University Press. p. 38. ISBN 9780674031913.