返報性の原理とは

意味

返報性の原理はグールドナーという社会学者が1960年に提唱したことで有名になった概念です。グールドナーは返報性の原理を以下のように説明しています。

人は支援されると、支援をしてくれた人を助けたくなる
以前受け取った援助が大きいほど、返報行為は促進される

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私たちの心には、何かをしてもらったら、何かを返したくなるという基本的な本能があります。返報性の原理が働く場面は複数あります。今回は代表的な5つを紹介します。

 

①好意の返報性

自分に好意を示す相手には、同じように好意を返したくなります。たとえば、男性から好意を寄せられた女性が、その男性を好きになってしまうことがあります。

これは好意の返報性と呼ばれています。バーシェイドとウォルスターという学者が1969年に提唱しました。

 

②贈答物と返報性

何かをプレゼントしてもらったり、金銭的な援助をもらうと、相手にお返しをしないと…と考えます。例えば、年賀状をもらったら返信する、お中元を返す、プレゼントをもらった人にお返しする、これらが贈答物の返報性にあたります。

③敵意の返報性

敵意を示されると、敵意で返したくなります。たとえば、FacebookやTwitterなどのSNS上で、自分の投稿を批判した相手に敵意を覚えるなどが挙げられます。

④譲歩の返報性

譲歩されると、譲歩したくなります。たとえば、電車で座席が1つしか空いていない時に、席を譲り合う行為です。相手が譲ってくれると、自分もゆずらなきゃと感じます。

⑤自己開示の返報性

自己開示をされると、こちらも自己開示したくなります。たとえば、初対面で、自分の出身や好きなことを話せば、相手も同じよう自分のことを話したくなります。

 

返報性の効果-論文・研究

返報性の原理については、これまで様々な研究がされてきました。以下、折りたたんで解説をしました。理解を深めたい方は展開してみてください。

早瀬ら(2018)は男子学生20名を対象に、好意の返報性の実証調査を行いました。実験の参加者はモニターを通して、女性のキャラクターと会話をします。その際好意の返報性がある群ない群で比較を行いました。結果は以下の通りです。

好意の返報性と親密度

グラフを見ると、返報性がある群の方がない群よりも全般的に大きいことがわかります。自分自身が相手に好意を示すと、相手も好意を持ちやすいと言えます。

デニス・リーガン(1971)の研究では、スタンフォード大学の新入生81人を対象に、好感度と返報性の関係について、下記の流れで調査を行いました。

①被験者を2人1組に分ける

②しかし、実は片方は実験協力者(仕掛け人)

仕掛け人

③仕掛け人が飲み物を買いに出かける

返報性を理解しよう

④仕掛け人が帰ってくる
この時、以下の2つパターンを行いました。

1.自分の分だけ買ってきた場合

返報性 理論

2.被験者の飲み物も買ってあげた場合

買ってあげた場合

 

⑤それぞれのパターンで被験者に福引券の購入を持ち掛ける


その結果が以下の図です。

返報性の効果

飲み物を買ってきた群が、買ってこなかった群よりも購入枚数が多いことがわかります。このように私たちは物質的なものをもらうと相手にも返そうという心理が働くのです。

自己開示と関係の深まりを表した図として「アルトマンとテイラーの6分円」があります。これは関係の段階によってコミュニケーションの内容がどのように変化するか表したものです。ざっと以下の図を確認してみてください。

相手の気持ちを知る自己開示の深さと広さの図

*図の見方は
外側「表面的な話題」
中間「やや踏み込んだ話題
内側「人に言えないような深い話」
矢印「自己開示の深さ」

図を見ると、人物A・人物B、それぞれの矢印が最初は外側の表面的なコミュニケーションから始まり、徐々に内面的な話題へと移行していることが分かります。

重要な点は、お互いが自己開示をすることで、少しずつ関係を深めているという点です。あなたが自己開示を積極的に行うと、返報性が働いて相手も自己開示をしやすくなっていくのです。

 

日常生活での応用例

雑談場面

アルトマンとテイラーの6分円にもあったように、お互いの自己開示がより親密な関係性へのきっかけになります。まずは、表面的な自己開示からはじめていき、徐々に深い自己開示をしていくのがポイントです。

仲直り

親しい人と喧嘩をしてしまった場合、あなた自身が堅くなであると相手も返報性で心を閉ざしてしまいます。逆にあなた自身が心を開いていけば、相手もきっと譲歩してくれるでしょう。

恋愛

気になる相手がいるのであれば、こちらから積極的にアプローチしましょう。気持ちを素直に表現すれば、相手に「好意」が伝わります。すると返報性の影響も得られやすいため、恋愛の成功率もグッと高まります。

ビジネス

無料の体験セットを販売する、プレゼントキャンペーン開催する、などお客様に先に何かを提供すると、好感をもたれ、商品も売れやすくなります。特に最近のビジネスでは、商品を売る前に先に商品を売ることも大事になっています。返報性の原理はビジネスでも応用できるのです。

お知らせ

当コラムは公認心理師、精神保健福祉士により作成されています。もっと心理学や人間関係を学習したい方は下記のコミュニケーション講座でぜひお待ちしています。

コミュニケーション講座

監修

・川島達史
・公認心理師,精神保健福祉士
・目白大学大学院心理学研究科卒
Youtubeチャンネル

*出典・参考文献
・早瀬 光浩・中村 太郎・加納 政芳 2018 好意の返報性を表出するエージェントがユーザの親密度に与える効果 人工知能学会全国大会 32,2K2-05.
・Berscheid, E. & Walster, E. (1969). Interpersonal attraction.Addison-Wesley.
・Dennis T. Regan (1971)Effects of a Favor and Liking on Compliance JOURNAL OF EXPERIMENTAL SOCIAL PSYCHOLOGY 7, 627-639