コンプレックスの意味とは,種類について公認心理師が解説,ダイコミュ用語

コンプレックスの意味

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「コンプレックス」について解説していきます。

コンプレックスの意味,とらぺさん作成

目次は以下の通りです。

①コンプレックスとは何か
②コンプレックスの種類
③善玉と悪玉
④コンプレックスと研究
⑤関連コラム

是非最後までご一読ください。

①コンプレックスとは何か

意味

心理学辞典（1999）[1]によると以下のように定義されています。

無意識下で自我を脅かすような心的内容が一定の情動を中心に絡み合って構成されるまとまりのこと

つまり、自分の行動に影響を与えている、心の深い部分にあるわだかまりと捉えて良いでしょう。

歴史

コンプレックスは、着想したのはフロイト、名付をしたのはユング、と言われています。

フロイト（1856～1939）は、幼少期の男子は、無意識に母親を独占しようと考え、父親に対して敵対的な心を持つと考えました。このように、無意識にある心の動きが意識に影響を与える、とフロイトは考えたのです。ただフロイトは「コンプレックス」という用語を使ってはいませんでした。

フロイト,コンプレックス

ユング（1905）[2]は、そのフロイトの着想を土台として「コンプレックス」という用語を使って広げていきました。

ユングはコンプレックスを発見するために、言語連想検査を用いました。具体的には、患者に提示された単語に対して、その単語に対する自由連想を求め、その反応時間の違いから、コンプレックスのありなしを推測しようと試みました[3]。

例えば、「母親」という単語に対して、患者が「優しい」「暖かい」といった連想をする場合、それは患者が母親に対してポジティブな感情を持っていることを示唆しています。

ユングは特に、成長の過程での辛い体験が、コンプレックスとして無意識に抑圧されていると考え、発展させていきました。そして、フロイトものちに、コンプレックスという用語を使うようになり、エディプスコンプレッスという言葉を生み出しました。

ユング,コンプレックス

②コンプレックスの種類

コンプレックスには複数の種類がありますが、代表的なのは以下の5つです。

エディプスコンプレックス

フロイトによって提唱された古典的なコンプレックスです。男児が母親に愛情を向け、その愛情を邪魔する存在として、父親に憎悪を向けるコンプレックスを意味します。

マザーコンプレックス

マザーコンプレックスは和製英語です。子供が母親に対して、強い執着を持つ状態です。ほとんどの人間は本来幼児期にマザーコンプレックスになるとされます。

幼児期にマザーコンプレックスがうまく解消されず、成人になっても続くことがあります。ただ心理学的には使うことは稀で、母親離れをできない成人男性を揶揄する意味でつかわれることが多いです。

ロリータコンプレックス

ロリータコンプレックスは和製英語です。15～12歳の少女に対して性的嗜好や恋愛感情を抱く心理傾向のこと。一般的に幼い少女全般として用いられてますが、年齢によって言い方が変わることもあります。

12～7歳　　アリス・コンプレックス
7～5歳　　ハイジ・コンプレックス
幼稚園児　　ペドフィリア

劣等コンプレックス

劣等コンプレックスはアドラー（1907）という心理学者が提唱しました[4]。簡単にアドラーを紹介をします。アドラーは7人兄弟の次男として1870年に誕生しました。アドラーは幼少期から病気になりがちで、声の異常や骨格異常で苦悩してきました。身長は150センチと他の兄弟よりくも低く、悩んできたと言われています。

ただし、アドラーはその劣等感を、単純に悪いものとは考えなかったようです。アドラーは、人が何かをする上で、劣等感は大きな動機となっており、それをエネルギーの源泉とすることで成長していく、と考えたのです。

シンデレラコンプレックス

シンデレラコンプレックスは男性に対して強い理想を追求する依存的願望を指したものです。自分の人生を変えてくれる異性がいつか現れるのでは？という強い願望を指します。

③善玉と悪玉

このようにコンプレックスには様々な種類がありますが、現在では主に劣等コンプレックスの意味で使われることが多くなっています。この点、劣等コンプレックスは必ずしも悪いものではなく、むしろプラスに働くこともあります。

善玉コンプレックス

コンプレックスは健康的な範囲内であれば、行動の活力として人生をエネルギッシュにしてくれます。例えは以下のような例が挙げられます。

試合で負けた⇒練習に打ち込む
昔貧乏だった⇒起業して頑張る
失恋した。。⇒自分磨きをする

悪玉コンプレックス

一方で、コンプレックスによって、自尊心が低下したり、幸福感が低下している場合は、注意が必要です。例えば以下のような例が挙げられます。

容姿にコンプレックスがある⇒対人恐怖になる
学歴に自信がない⇒高学歴の人が嫌いになる
運動神経に劣等感がある⇒体を動かさない生活

④コンプレックスと研究

コンプレックスについて様々な研究がなされています。

①ネガティブ反芻と劣等感

森津（2007）[5]は学生381名を対象に劣等感に関する調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

劣等感とネガティブな反すう

上図は、ネガティブ反芻は、劣等感を強くして、自尊心を下げることを意味しています。ネガティブ反芻とは、嫌な出来事を何度も思いだすことです。例えば、誰かに劣等感を刺激する悪口を言われたとします。この悪口を言われた記憶を何度も思いだすことを「ネガティブ反芻」と言います。嫌な記憶を頭の中で繰り返すと劣等感を下げてしまうので注意が必要です。

孤独感は劣等感を刺激

落合(1985)[6]が、若者を対象に生活感情について調査を行ったところ、「劣等感」「孤独感」「疎外感」「自己嫌悪感」はそれぞれ深い関わりがあることがわかりました。ここからは推測となりますが、孤独になるほど、周囲からのサポートが減り、自尊心が持てなくなってしまいます。その結果、劣等感を抱きやすくなると考えられます。自分のことを前向きに受け入れてくれる人と温かい人間関係を築くことがコンプレックス解消に役立つと推測できます。