心配性の意味
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「心配性」について解説していきます。
目次は以下の通りです。
①心配性とは何か
②心配性の効果と悪影響
③心配性と精神疾患
④関連コラム
是非最後までご一読ください。
①心配性とは何か
意味
心理学的には、心配は以下のように定義されています。
①潜在的な脅威を発見した際に
②その脅威を回避または解決できないと考え
③否定的な思考,イメージ,感情が浮かび
④なんらかの行動を取ること
(ボルコベツ,2002より一部簡略化)
心配性とは①~④について過剰になっている状態を表します。それぞれの段階について具体例を解説しました。理解を深めたい方は折り畳みを展開ください。
心配性の入り口は、危険や脅威の発見です。例えば、「家のカギを閉め忘れた」と気づくと心配がはじまります。一方で、カギをかけ忘れたことに気がつかない方はそもそも心配しないのです。
ステップ①で問題を発見しても、すぐさま心配に結びつくわけではありません。例えば、カギを閉め忘れたとしても、「セコムに入っているから何とかなるだろ」「治安が良い地域だから大丈夫」と考えれば心配はおきません。しかし、防犯の仕組みがなく、泥棒を防ぐ手段がない場合は、心配が増強されてしまいます。
問題を発見し、それを制御できないと感じたとき、私たちは、いよいよ心配することになります。否定的な未来を予想したり、身の危険を感じたりします。
私たちは心配な気持ちになると、どうにか対処しようと行動することになります。カギをかけ忘れた例では、家に帰る、用事が済んだら一目散に帰宅する、などの行動をとることになります。
②心配性の効果と悪影響
心配には効果と悪影響があります。
心配性の効果
心配しない人は、勉強を怠ったり、仕事をさぼったり、散財してしまうかもしれません。一方で、心配性な方は、リスクを回避できるというメリットがあります。例えば、貯金が少なくなると誰でも心配になると思いますが、だからこそ勉強を頑張る、仕事を頑張る、将来に備えて貯金をしたりできるのです。心配するという事は自分の身を守る大事な感情なのです。
その他、心理学における研究をいくつか紹介します。タイトルに興味がある場合はクリックしてみてください。
心配できるというのは脳の発達が進んでいるとも言えます。
例えば、猫や犬は30秒後ぐらいの未来を考えることはあるかもしれませんが、1年後、2年後のことなど考えていないでしょう。私には4歳の子供がいますが、4歳の子供でもせいぜい1分後の事しか考えていません。
それに対して大人は、年十年も先のことを考えることができます。人間は思考が発達するほど、未来のことを考え、対処できると言えるのです。
本ら(1984)は小学生~大学生の心配性の実態について調査を行いました。下のグラフをご覧ください。
上記を見ると、小学生の半分近くが心配性であると感じているようです。高校生と大学生で65%を超えています。これは、成長するにつれて脳が発達しているためだと考えられます。
心配性に近い概念である、ネガティブ思考について興味深い研究を紹介します。
ガブリエル・エッティンゲン(1991)は、ネガティブ思考がダイエットにどれだけ影響を与えるか調査しました。実験では参加者の女性を、「ポジティブ、ネガティブ」の2つのグループに分けて1年後の体重を比べたのです。その結果の一部が下図となります。
上図にように、ネガティブ思考のグループがポジティブ思考のグループよりも約11kgも痩せたのです。こうした、ネガティブ思考の影響は体重を落とすだけではなく、恋人関係や学業などの分野でも同様な現象が確認させれたと述べられています。
この研究では、ポジティブ思考のやり過ぎは逆効果であること、適度に心配をすることは問題解決に役立つと推測できます。
心配性と悪影響
次に心配性の悪影響を考えていきましょう。心配性な方は、自尊心が低下しやすい、不眠になりやすい、という特徴があります。気になる方は下記を参考にしてみてください。
細越ら(2009)は、大学生 379 名を対象に考え方が心身の健康にどのような影響を及ぼすか調査しました。研究では、以下の2つの考え方と自尊心との関係を調べました。
対処的悲観…不安や心配をベースに行動していくこと
方略的楽観…楽観をベースに行動していくこと
その結果が以下の図です。
このように、「方略的楽観者」の方がグラフが伸びています。つまり、楽観的に考えて行動する方のほうが、自尊心は高いと言えます。将来を心配しすぎて、ネガティブな行動をしている方は自尊心が低下しがちになるので注意が必要です。
細越ら(2009)は、悲観的に考える人と「不安や不眠」についても調査しました。その結果の一部が下図となります。
上図を見ると、悲観的な人の方が、不安と不眠が大きいことがわかります。心配をし過ぎると不安が大きくなり、寝つきが悪くなるので注意が必要です。
③心配性と精神疾患
心配性は過剰になると以下のような心の病気につながることがあります。あてはまると感じる場合はリンク先を参考にしてみてください。
全般性不安障害
全般性不安障害とは、大きな不安が日常生活において長期的に続く心の病気を意味します。主な症状としては、強い緊張、疲労感、めまい、不安、不眠、集中困難などが挙げられます。
強迫性障害
強迫性障害は、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れず、わかっていながら何度も同じ確認を繰り返すことを意味します(厚生労働省)。例えば、潔癖症の方は、何度手を洗っても心配になり、1日何百回と洗ってしまいます。
パニック障害
パニック障害は、厚生労働省によると、突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作(パニック発作)を起こします。そして、また発作が起きたらどうしようかと不安になり、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになってしまいます(厚生労働省)。
④関連コラム
心配性を治す方法
当コラムでは心配性の意味や研究を紹介してきました。実践的に心配性を改善したい方は以下のコラムを参考にしてみてください。悲観的な未来を現実的に考える練習などを紹介しています。
心配性診断
筆者は心配性の強さを簡易的に診断できるシステムを作りました。客観的に心配性の強さを把握したい方は一度チェックしてみてください。
心理学講座のお知らせ
公認心理師の元で、心理学や人間関係の学習を直接したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では
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ダイコミュ用語集監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
*出典・引用文献
Graham C. L. Davey, James Hampton, Jola Farrell, and Sue Davidson(1992)Some characteristics of worrying: Evidence for worrying and anxiety as separate constructs. Personality and Individual Differences, 13(2), 133-147.
黒田彩加・友惠眞理子・富田望・岸野有里・荒木美乃里・桶沼友子・熊野宏昭(2015)メタ認知的観点から見た抑うつ症状と心配の関連性の検討. 早稲田大学臨床心理学研究, 15(1), 65-72.
根本橘夫・毛利新治・寺島泰誉・中沢智・山本真理(1984)「心配性」の実証的一考察. 千葉大学教育学部研究紀要, 33, 25-43.