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アダルトチルドレン,機能不全家族の意味とは?AC,イネイブラー,共依存

アダルトチルドレン,機能不全家族の意味とは?AC,イネイブラー,共依存

はじめまして!臨床心理士の森、精神保健福祉士の川島です。私たちは現在、こちらの初学者向け心理学講座の講師をしています。

今回のテーマは
「アダルトチルドレン,機能不全家族」
です。


対象となるお悩み
・意味を知りたい
・家庭環境が悪かった
・親がアル中だった

  • 全体の目次
  • 入門①アダルトチルドレンとは
  • 入門②イネイブラー,共依存
  • 入門③回復プロセス,嘆きの仕事
  • 発展 ACチェックリスト
  • 発展 抑うつ研究
  • 発展 燃え尽きやすい
  • 発展 愛着障害との関連 
  • 助け合い掲示板

入門①~③を読み進めていくと、基本的な知識と対策を抑えることができると思います。是非入門編は最後までご一読ください。

動画がお好みな方は、下記を参考にしてみてください。

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入門①アダルトチルドレンとは?

歴史的背景-ACOA

アダルトチルドレンには、ACOA,ACODの2つの意味があります。まずは前者から解説していきます。

・ACOAとは

ACOAとは
「Adult Children of Alcoholics」
の略称です。アルコール依存症家庭で育った人という意味があります。これが古典的な意味になります。

アルコール依存症とイネーブラー

・アルコール依存治療と子供の問題

アルコール依存症は1955年に初めてアメリカ医療協会により、病気として認められ、治療がはじまりました。

そこである問題が判明します。それはアルコール依存症の方は、家庭環境に問題があり、世代間で連鎖することが多いことがわかったのです。

1969にはカナダでマーガレット・コークが「忘れ去られた子供」という本を出版し、アルコール依存症の親だけなく、子供にも問題が多いと主張されるようになりました。

アダルトチルドレン,忘れられた子ども

・アルコール依存治療のはじまり

1970年代になると、援助者や患者の間でアダルトチルドレンという用語が使われるようになりました。

1983年になると、Woititzの「アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス」がベストセラーになり定着していきました。

Adult Children of Alcoholics

 

歴史的背景-ACOA

元々はアルコール依存症の家庭で育った方を指していた意味が広がっていきましたが、徐々にその概念の幅が広がっていきました。最近では、ACODという用語も使われています。

・ACODとは?

ACODとは
「Adult Children of Dysfunctional family」
の略称です。

日本語訳としては機能不全家族によって育てられた人を意味します。

・強い緊張にさらされている

アルコール依存症をはじめ、機能不全家族のもとで育つ子どもは、常に強い緊張感の中で暮らすことになります。そこで、子供は厳しい家庭環境に適応するために

・家族の仲介役をする
・わざと面白く振舞おうとする
・なだめ役に徹する

など、家庭内でうまく振舞おうとします。しかし、その精神的な負担感や葛藤は相当なものです。そして、そのまま成人となったときに、子供のころの葛藤などが表面化してくるといわれています。

アルコール依存症の親とアダルトチルドレン

西尾(1995)は機能不全家族について、以下のような家庭で育った人とまとめています。

機能不全家族とは

入門②共依存,イネイブラー

アダルトチルドレン,機能不全家族の問題で重要なワードとして、「共依存」「イネイブラー」という用語を抑えておきましょう。

共依存関係

アルコール依存症の家庭によくみられるのが、共依存です。共依存には次のような特徴があります。

・援助しているつもりが
 逆に問題を悪化させている
・閉じられた人間関係
・非理性的な思考

・一方的な感情表出

例えば、アルコール依存症の父親がいたとします。

母親は夫が飲んで暴れることが分かっていながら、夫が飲むためのお酒を買ってくる、など夫の飲酒をある面ではサポートする役割をとっていることがあります。

イネイブラー

こうした役割をとる母親のことをイネイブラー(enabler)と呼びます。身近な人の破壊的な行動を可能にしてしまう人、という意味があります。

アルコール依存症の家庭によく見られますが、恋愛関係や、虐待関係でもイネイブラーがいることがよくあります。

下記の図では、恋愛関係における、共依存、イネイブラーを図示したものになります。

機能不全家族の心理

機能不全家族では、被共依存者、イネイブラー共に心理的な問題を抱えていることがわかっています。

自尊心が低く、嫌われたぐないがゆえに相手の要求に答えてしまう方は注意が必要です。

下記動画の2分30秒~7分あたりで、共依存,イネイブラーについて詳しく解説しています。

入門③-回復プロセス,嘆きの仕事

ここからは、回復へのアプローチ方法を3つ紹介したいと思います。斎藤(1996)は、アダルトチルドレンの回復には次の3段階があるとしています。

アダルトチルドレン回復の3段階

それぞれの段階について解説していきます。

①ACの自覚と安全確保

・まずは自覚から
「自分はアダルトチルドレンだ」と気が付くことが大事になります。まずは知識の上でも良いので知ることから始めていくといいでしょう。書籍などを読むことも大事です。

アダルトチルドレンに関する本は多数発刊されており、同じような経験を持つ人が書いた本も多数あるので参考になるでしょう。

・安全な場所の確保
次に大事なのが安全な場所の確保です。自分と向き合うには、ゆったり考えられる場所が必要になります。一度家族と離れて、自分と向き合える場所、日記を書く、カウンセラーなどを活用するなどが必要になります。

安全な場所の確保には以下を参考にしてみてください。

専門家のカウンセリング
心理カウンセラー、心理相談所、精神科のクリニックなどで見つけることができます。またアダルトチルドレンやトラウマを専門とするカウンセラーを利用するのもいいですね。

セルフ・ヘルプ・グループ
全国には、アダルトチルドレンが集まる自助グループや支援団体があります。同じような辛さや悩みを経験したもの同士が、互いに体験を振り返ることで、解決や克服を目指すことができるでしょう。

有名なのはこちらの団体です。
Adult Children Anonymous

*講師の経験談として、自助グループはメンバーの相性、主催者の力量がとても大事になってきます。自助グループに参加する際は、いくつか回ってみることをオススメします。

身近な人の関係を大事に
アダルトチルドレンの方は両親との関係がうまくいかず、自己肯定感を持てないことがあります。自己肯定感は両親以外の方との関係をきちんと構築していくことで回復できる面もあります。

抱え込みすぎず、身近な人にも相談するようにしましょう。

ACの自覚の獲得と安全な場所の確保

細田ら(2009)の研究によると、中学生305名を対象にソーシャルサポートと自己肯定感の関係について調査を行っています。その結果が以下の図です。数字は相関係数といい、数値が大きいほど関係が強いことを意味します。

父親、母親、友人、教師のいずれも情緒的なサポートが自己肯定感を強めている傾向がわかります。情緒的サポートとは、励ましたり慰めたりなど気持ちの面を支援するソーシャルサポートです。

教師や友人の情緒的サポートが.40**で、父親や母親よりも高い数値が出てていますね。統計的に確実に言えることではないのですが、父親や母親よりも高い数値となっているのがとても印象的です。

仮にご家庭からのサポートが得られなくても、教師や友人など周りの方のサポートを仰ぐと精神が安定しそうです。その意味で、過去の振り返りも大事ですが、今目の前のある人間関係を大事にしながらお互いを励ましあうこともとても大事なのです。

②嘆きの仕事

アダルトチルドレンの自覚と安全地帯を確保したら、次に②嘆きの仕事の段階に進みます。

アダルトチルドレン回復の3段階嘆きの仕事とは、悲しい過去を認めていく、受け入れていく作業になります。①の自覚の段階では、あくまで自覚であり、受け入れているわけではありません。

・ありのままを認める作業

②の嘆きの段階では、自分の過去をありのまま認め、そして自分自身の存在を認めていく過酷な作業があるのです。

アダルトチルドレンの人の子ども時代は、広い意味ではある種トラウマ(心の傷)体験といえます。トラウマ体験から回復するために振り返りが重要な事が心理学の研究で分かっています。

・時間がかかる作業…

人によっては、不眠や泣く、胸がドキドキする、など身体の変化が出てくることがあります。これらの気持ちや身体の反応はつらいと思います。時間がかかる作業ですが、やがて受け入れることができます。

受け入れることで、感じた気持ちが全て消えるわけではありませんが、気持ちを自分でコントロールすることができるようになります。

*注意
心理学の世界でサイコロジカルファーストエイドという考え方があります。要約すると、緊急事態における心理的援助という意味があります。

サイコロジカルファーストエイドにおいては、緊急事態に無理に自分と向き合うことは、逆に症状が悪化するという考え方があります。

自分と向き合う作業は負担がかかるので、心に余裕がない時は、保留するなど柔軟に考えてみてください。また不安な方は専門家のサポートを受けながら、受容するようにしていきましょう。

トラウマからの回復方法

 

③人間関係の再構築

自分らしく振舞える人間関係を構築する作業です。自分をアダルトチルドレンだと認め、嘆きの仕事も終えたら、新しい人間関係を作る下準備ができたといえます。

アダルトチルドレン回復の3段階

共依存のような、偏った依存関係を持つのは終わりにしましょう。そして、相手に合わせるばかりではなく、自分らしく振る舞える人間関係をスタートさせていきましょう。

・限界設定をする

身近な人へ限界設定をすることが大事になります。限界設定とは、ここまではOKだけど、ここから先はNGだよ!という線引きを明確にすることです。

そして一度線引きをしたら心を鬼にして、その線引きを守ります。

例えば、お金を貸して!と言われたら絶対貸さないことです。もちろん代わりに、誕生日プレゼントはあげるなどはOkです。OKなこととNGなことのメリハリをつけるようにしましょう。

・時に離れることも大事

また場合によっては生活環境を思い切って変えることも大事です。長年より沿ってきた相手ならなおさらで、どうしても限界設定がうまくいかない場合などは一度距離を置いて、落ち着いてからまたよりを戻すなどの手も有効です。

長期的に見れば、一時的に離れることは、ちょうどいい距離感を学ぶいい機会になると思います。その後、再び仲良くなることも、現場でもよく見られる光景です。

アダルトチルドレンのトラウマ体験を克服

入門編まとめ

ここまで入門編として、アダルトチルドレン,機能不全家族について解説してきました。回復していく3つの過程は簡単ではありません。

時に心が張り裂けそんな気持ちになる時が何度も来るかもしれません。そうした時は、周りの力を借りながら、少しづつ前に進んでいきましょう。

アダルトチルドレンからの回復

ここから先は、入門編に1区切りをつけて、発展編となります。やや難易度があがりますが、より深く機能不全家族を理解したい方は参考にしてみてください。

発展‐AC,チェックリスト

アダルトチルドレンかどうかを判断する基準として、緒方(1996)の研究を紹介させて頂きます。緒方はアダルトチルドレンの生きづらさの中身を次のように説明しています(一部改変しています)。

・素直に感情を表現することができない
・抑えすぎて急に感情が爆発したりする
・「白か黒か」の決定的な判断をする
・他人を信頼していない
・得体の知れない寂しさがある
・抑うつ的になったりする
・自責感が強い
・自己評価が低くなりやすい

上記に当てはまる項目が多いと感じる方は注意が必要です。

精神保健福祉士川島の視点

現場での主観としては上記に追加して、
・過剰な気遣い
・理想化と絶望
・被害妄想
これらの症状がみられると感じています。共通すること人間関係に対する不安定さがあり、絶えず焦燥感を抱えている方が多いと思います。

発展-抑うつ傾向とAC研究

ここで2つのアドルトチルドレンに関する研究を紹介します。阿部(2018)は大学生47名を対象に、アダルトチルドレンのチェックリストと抑うつ傾向を調べるCES-Dという検査を行いました。

その結果、ACは抑うつ的なことがわかりました。下の図は、ACと判定された学生とACではない学生のCES-Dの平均点を示しています。

アダルトチルドレンと抑うつ

この図では、アダルトチルドレンと判定された学生は、統計学的にも抑うつの得点が高かったことが示されています。機能不全家族の中に育ったアダルトチルドレンの人は、抑うつ傾向が強いということです。子ども時代に受けた心の傷が癒えないままでいると、大人になってからの抑うつの感じやすさと結びつくのかもしれません。

アダルトチルドレンの定義と生きづらさ

発展‐バーンアウト研究

新山ら(2005)は、107名の看護学生を対象に、AC尺度とバーンアウト尺度というふたつのアンケートを実施しました。

バーンアウトとは、いわゆる燃え尽き症候群のことで、なにもかも一生懸命に頑張った結果、心身が極度に疲れて感情が湧いてこなくなる状態を指します。

アンケート結果から、AC傾向の強い人はバーンアウトしやすいことがわかりました。

▼以下がAC尺度とバーンアウト尺度の相関関係の結果です。

AC尺度とバーンアウト尺度の相関関係

相関係数が0.66になっています。これはAC傾向が強いことと、バーンアウトしやすさとは関連が強いことを示しています。つまり、アダルトチルドレンの人バーンアウトしやすい危険性をはらんでいるということです。

アダルトチルドレンは燃え尽きやすい

子ども時代に子どもらしくありのままに過ごせなかった人は、自分を抑え、周囲に気を遣ってしまうことが癖になりがちです。

その結果、つい仕事や人間関係で気を張り詰めて頑張りすぎて、バーンアウトしやすいと考えられます。

診断名ではない‐愛着障害との関係

精神医学の分野では、正式な病名・診断名ではありません。そのため、アダルトチルドレンにはさまざまな定義があります。たとえば、信田(1997)は、ACを次のように定義しています。

現在の自分の生きづらさが、親との関係に起因すると認めた人

これによれば、子どもの頃の親との関係が本人にとって苦しいもので、そのことで今現在の生きづらさがあると自らが認めたなら、その人はアダルトチルドレンであるとしています。

このように考えると、かなり多くの人々が該当するかもしれません。

しかし正式な診断名がないこともあり、出現率はよくわかっていません。

平成30年度,児童虐待相談対応件数によると、相談件数は16万件前後であり、相当な数の子供、大人がアダルトチルドレンの可能性があると考えられます。

アダルトチルドレン・人数

 

精神保健福祉士川島の視点

ここからは講師の主観となります。アダルトチルドレンの概念は愛着障害(反応性アタッチメント障害)と非常によく似ています。

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル(2014)によると「反応性アタッチメント障害をもつ子どもは,養育者との日常的な交流の中で陽性の情動の表出の減少または欠如を示す」とされています

愛着障害もまた養育者と不安定な関係が持続してきたことで、対人関係の不安定さを抱えており、ほぼ同一概念と考えても良いかもしれません。

そのため精神科などでは、反応性アタッチメント障害、脱抑制性型対人交流障害と診断されることもありそうです。

初学者向け心理学講座のお知らせ

私たち臨床心理士・精神保健福祉士は、メンタルヘルスの向上を目指し、心理学講座を開催しています。性格分析、認知行動療法、アイデンティティの確立など幅広く学習しています。

アダルトチルドレンに特化したワークではないですが、心理学を体系的に勉強されたい方におススメの講座となっています。じっくり心理学を学んでみたい方は是非お待ちしています。

執筆者も講師をしています(^^)
 ・認知行動療法
 ・マインドフルネス療法
 ・緊張緩和法の学習

心理学講座

助け合い掲示板

3件のコメント

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    • りか
    • 2019年11月16日 2:26 AM

    私はアダルトチルドレンです。
    父親からの身体的暴力と、性的暴力に加えて、母が姑と仲が悪いので毎日ピリピリとした空気の中で過ごしてきました。
    そのせいもあって、他人に必要以上に気を遣ったり、顔色を伺うようになり、人間関係ではストレスが絶えません。
    そうした中で、このコラムはとても為になりました。
    自覚はできているので、次に安全の確保に行動を移そうと思います。

    1+
    返信する
    • mi
    • 2019年10月5日 5:33 PM

    解説がとてもわかりやすかったです。
    私の家は間違いなく機能不全家族であり、私自身もアダルトチルドレンだと思うのですが、オススメの精神科はないでしょうか?抗不安薬が欲しいです。

    2+
    返信する
    • ひかり
    • 2019年8月19日 10:40 AM

    私は自分に自信が持てない、他人を信用できない、気持ちを人に伝えるのが苦手、
    相手に合わせすぎる、バーンアウトしやすい、などの悩みがありアダルトチルドレンに関する本を数冊も読みました。私の場合は子どものときから母親の面倒をみなければならない環境でしたので、人と接するときは母親の機嫌を損ねないように振る舞うように気を付けていました。
    そんな環境もあり今では、尽くしたいと思えるのか?そうではないのか?という白黒思考で物事を判断してしまう傾向にあります。
    今回のコラムのアダルトチルドレンからの回復アプローチ方法はとても分かりやすかったのでチャレンジしてみたいと思います。

    2+
    返信する

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


ブログ→
YouTube→
Twitter→

*出典・引用文献
阿部由紀子(2018)大学生におけるアダルト・チルドレンおよび共依存と抑うつとの関連性. 保健科学研究, 9(1), 39―43.
J.G.ウォイティッツ(1997) 齋藤学監訳,アダルトチルドレン―アルコール問題家族で育った子供たち,金剛出版.
新山悦子・塚原貴子・笹野友寿(2005)看護学生のアダルトチルドレン特性とバーンアウト症候群との関連. 川崎医療福祉学会誌, 15 (1), 117-122.
西尾和美(1995)共依存症の精神療法. こころの科学, 59, 39-44.
緒方明(1996)アダルトチルドレンと共依存. 誠信書房. 24-25.
斎藤学(1996)アダルト・チルドレンと家族. 学陽書房. 237.
信田さよ子(1997)アダルト・チルドレン-私の物語を作り直す-. 日本家政学会誌, 48 (9), 823-828.
塚原貴子・矢野香代・新山悦子・太田茂(2010)大学生における外傷体験の筆記による開示効果 ―心理的・身体的指標による分析―. 川崎医療福祉学会誌, 20 (1), 235-242.
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 大型本 – 2014/6/30
日本精神神経学会 (監修)