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アダルトチルドレン(AC)とは?専門家が解説

アダルトチルドレンとは?回復方法や機能不全家庭について

はじめまして!臨床心理士の森、精神保健福祉士の川島です。私たちは現在、こちらの初学者向け心理学講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

本コラムでは「アダルトチルドレン」について詳しく解説をしていきます。しっかりと対策をお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。ぜひお付き合いください。

  • アダルトチルドレンとは?
  • 生きづらさの中身
  • 研究① 抑うつ傾向が強くなる
  • 研究② 燃え尽きやすい
  • 心の回復は3STEPで!
  • トラウマ体験からの回復

それでは早速、アダルトチルドレンの基礎から解説させて頂きます。

アダルトチルドレンとは?

アダルトチルドレン(Adult Children of Alcoholics:ACOA)とは、子ども時代に親との関係で何らかの心理的な傷を負った成人を指します。アダルト・チルドレンの典型的な例として、アルコール依存症の親に育てられた人が挙げられます。

アルコール依存症の親は酔って暴れるなどするため、子どもは常に強い緊張感の中で暮らすことになります。その精神的な負担感は相当なものです。

・親に甘えることができない
・素直な気持ちを表現できない
・顔色を窺い行動する癖がつく

など、子どもらしい子ども時代を送ることが難しくなります。

アルコール依存症の親とアダルトチルドレンこのような家庭環境の中で育てば、子どもの心の成長に大きな影響が出ることは容易に想像できるでしょう。子ども時代の辛かった体験を癒す機会がなければ、アダルトチルドレンとしての深刻な問題を抱え続けることもあります。

機能不全家族に育った人

アルコール依存症の親を持つ以外に、子どもが心理的な傷を負う状況は様々あります。西尾(1995)は、子どもに心理的な傷を負わせる家族として以下を挙げています。

機能不全家族とは

このような子供に心理的な傷を負わせる家族を「機能不全家族(Adult Children of Dysfunctional family(ACOD)」といいます。広い意味でのアダルトチルドレンは、機能不全家族で育った成人をさします。本コラムでは、広い意味でのアダルトチルドレン(ACOA,ACOD)について取り上げていきます。

アダルトチルドレンの歴史

アダルトチルドレンの考え方は、1970年代アメリカで注目され、アルコール依存症の治療にかかわっている福祉や心理の専門職者が、アルコール依存症の患者とその家族との関係に、着目したのが始まりです。

たとえば、アルコール依存症の父親がいたとします。
母親は夫が飲んで暴れることが分かっていながら、夫が飲むためのお酒を買ってくる、など夫の飲酒をある面ではサポートする役割をとっていることがあります。

アルコール依存症とイネーブラーこうした役割をとる母親のことをイネーブラー(enabler:父親のアルコール依存症を可能にする人、という意味です)と呼び、父親と母親は共依存の関係であるととらえることができます。共依存とは、とても偏った依存関係のことで次のような特徴があります。

・問題が起きてもまともに話し合わない
・素直な感情をさらけ出さない

こうしたある種ゆがんだ関係の両親の元で育った子どもに関心が寄せられ、アダルトチルドレンという概念が誕生しました。

アダルトチルドレンの広がり

アダルトチルドレンという用語は、J.G.ウォイティッツ(1997)の本によって広まりました。ちょうど同じころ、アメリカのクリントン元大統領が「自分はアダルト・チルドレンだ」と告白し日本でも有名になりました。クリントン元大統領の義理の父親は、アルコールの問題があったそうです。

日本で注目されるようになったのは、1995年ころからです。現在は関連する書籍が何冊も発刊されており、芸能人や有名人の中には、自分はアダルトチルドレンだと公言している方もいます。

診断名ではありません

広く知られるようになったアダルトチルドレンですが、精神医学の分野では、正式な病名・診断名ではありません。そのため、アダルトチルドレンにはさまざまな定義があります。たとえば、信田(1997)は、ACを次のように定義しています。

現在の自分の生きづらさが、親との関係に起因すると認めた人

これによれば、子どもの頃の親との関係が本人にとって苦しいもので、そのことで今現在の生きづらさがあると自らが認めたなら、その人はアダルトチルドレンであるとしています。

アダルトチルドレンの定義と生きづらさこのように考えると、かなり多くの人々が該当するかもしれません。しかし正式な診断名がないこともあり、出現率はよくわかっていません。

心理的な特徴と生きづらさ

ここからはアダルトチルドレンの特徴を見ていきます。主な心理的特徴は、

・自分に自信が持てない
・他人を信用できない
・気持ちを人に伝えるのが苦手
・相手に合わせすぎる

などです。一言でまとめるとアダルトチルドレンの特徴は、“生きづらさ”にあります。生きづらさとは、どのようなことでしょうか。緒方(1996)は、アダルトチルドレンの生きづらさの中身を次のように説明しています。

・素直に自分の感情を表現することができない
・自分の気持ちを言いたいときに言い出しかねる
・抑えすぎて急に感情が爆発したりする
・「白か黒か」の決定的な判断をしてしまいやすい
・他人を信頼していない
・得体の知れない寂しさにさいなまれる
・抑うつ的になったりする
・不安になったりする
・自責感が強い
・自己評価が低くなりやすい

アダルトチルドレンの特徴である「生きづらさ」は、感情のコントロールや考え方、対人関係、自己評価などに広く影響を及ぼしてしまいます。

アダルトチルドレンの特徴と生きづらさここからはアダルトチルドレンの研究・論文を元に、詳しく見ていきましょう!

研究①抑うつ的?

阿部(2018)は大学生47名を対象に、アダルトチルドレンのチェックリストと抑うつ傾向を調べるCES-Dという検査を行いました。その結果、ACは抑うつ的なことがわかりました。

下の図は、ACと判定された学生とACではない学生のCES-Dの平均点を示しています。

アダルトチルドレンと抑うつ

この図では、アダルトチルドレンと判定された学生は、統計学的にも抑うつの得点が高かったことが示されています。

つまり、機能不全家族の中に育ったアダルトチルドレンの人は、抑うつ傾向が強いということです。子ども時代に受けた心の傷が癒えないままでいると、大人になってからの抑うつの感じやすさと結びつくのかもしれません。

研究②燃え尽きやすい

新山ら(2005)は、107名の看護学生を対象に、AC尺度とバーンアウト尺度というふたつのアンケートを実施しました。バーンアウトとは、いわゆる燃え尽き症候群のことで、なにもかも一生懸命に頑張った結果、心身が極度に疲れて感情が湧いてこなくなる状態を指します。アンケート結果から、AC傾向の強い人はバーンアウトしやすいことがわかりました。

▼以下がAC尺度とバーンアウト尺度の相関関係の結果です。

AC尺度とバーンアウト尺度の相関関係

相関係数が0.66になっています。これはAC傾向が強いことと、バーンアウトしやすさとは関連が強いことを示しています。

つまり、アダルトチルドレンの人バーンアウトしやすい危険性をはらんでいるということです。

アダルトチルドレンは燃え尽きやすい子ども時代に子どもらしくありのままに過ごせなかった人は、自分を抑えて、周囲に気を遣ってしまうことが癖になりがちです。その結果、つい仕事や人間関係で気を張り詰めて頑張りすぎて、バーンアウトしやすいと考えられます。

アダルトチルドレンの回復法

ここからは、回復へのアプローチ方法を見ていきましょう。

斎藤(1996)は、アダルトチルドレンの回復には次の3段階があるとしています。

アダルトチルドレン回復の3段階

それぞれの段階について解説していきます。

①ACの自覚の獲得とそれに引きつづく安全な場所の確保
「自分はアダルトチルドレンだ」と認める作業です。
ACの人は、子ども時代に自分らしくありのままに振る舞えなかったという「喪失」を認めたがらない傾向があります。そういう心のストッパーが強力に働いているからです。

まずは、今体験している「生きづらさ」が、自分の育った機能不全家族に端を発していることを認識することが必要です。

②嘆きの仕事
気持ちや身体の反応を受け入れる作業です。
①の「自分はアダルトチルドレンだ」と認めることができると、ショック、悲しみ、怒り、落ち込みなどのさまざまな気持ちになります。また人によっては、不眠や泣く、胸がドキドキする、など身体の変化が出てくることがあります。

これらの気持ちや身体の反応はつらいと思いますが、やがて受け入れることができます。受け入れることで、感じた気持ちが全て消えるわけではありませんが、気持ちを自分でコントロールすることができるようになります。

③人間関係の再構築
自分らしく振舞える人間関係を構築する作業です。
自分をアダルトチルドレンだと認め、嘆きの仕事も終えたら、新しい人間関係を作る下準備ができたといえます。共依存のような、偏った依存関係を持つのは終わりにしましょう。そして、相手に合わせるばかりではなく、自分らしく振る舞える人間関係をスタートさせていきましょう。

アダルトチルドレンからの回復このようにアダルトチルドレンが回復していく過程を見てきました。この3段階の間に、心が張り裂けそんな気持ちになる時が何度も来るかもしれません。そうした時は、いったん作業をお休みして、心と身体が十分回復してからまた再開すればいいのです。

トラウマの回復は振り返りが有効

先ほどご紹介した、斎藤(1996)の回復の3段階は、自分がアダルトチルドレンであることを自覚し認めることから始まり、そのことを十分に悲しんだり、怒ったりすることが大切なプロセスとなっていました。

つまり、アダルトチルドレンの回復のためには、自分の辛かった子ども時代を振り返る作業が必要だということです。

アダルトチルドレンの人の子ども時代は、広い意味ではある種トラウマ(心の傷)体験といえます。トラウマ体験から回復するために振り返りが重要な事が心理学の研究で分かっています。ここでは、トラウマの回復に関する日本の研究を見てみましょう。

トラウマからの回復方法塚原ら(2010)は、トラウマ経験の重症度が高い看護学生12名を対象に、経験したトラウマについて事実を筆記させ、直後にその時の感情について筆記させました。そして、筆記した文章を読み返してもらい実験を行った前後(1か月後)でトラウマ経験の重症度が変化したかを調べました。

その結果、トラウマ経験と感情の筆記前と後では、トラウマ経験の重症度が統計学的に有意に低くなっていました。

トラウマ体験の回復に関する研究

つまり、強いトラウマ経験を抱えている人でも、何を体験しどう感じたのかを筆記し読み返すことで、トラウマ経験を和らげることができるのです。

このようにアダルトチルドレンの要因となる、子ども時代の辛い体験から心を回復させるには、自分の過去を振り返ることが有効です。

サポートしてくれる人を探そう

アダルトチルドレンからの回復を目指すときには、サポートしてくれる人を探しましょう。

1:専門家のカウンセリングを受ける
自分の辛かった子ども時代やトラウマ経験を振り返るのは、とても大変な作業です。できれば専門の知識を持った人に相談するとよいでしょう。

たとえば
・心理カウンセラー
・カウンセリングルーム
・心理相談所
・精神科のクリニック
などで見つけることができます。またアダルトチルドレンやトラウマを専門とするカウンセラーを利用するのもいいです。

2:セルフ・ヘルプ・グループに参加する
全国には、アダルトチルドレンどうしが集まる自助グループや支援団体があります。同じような辛さや悩みを経験したもの同士が、互いに体験を振り返ることで、解決や克服を目指すことができるでしょう。

3:本を読む
アダルトチルドレンについて書かれた本を読むことで、自分の体験を自覚し、認める作業がしやすくなることがあります。

アダルトチルドレンに関する本は多数発刊されており、アダルトチルドレンの人や同じような経験を持つ人が書いた本も多数あるので参考になるでしょう。

アダルトチルドレンやトラウマから回復する具体的な方法

4:身近な人の関係を大事にしよう

アダルトチルドレンの方は両親との関係がうまくいかず、自己肯定感を持てないことがあります。できれば両親から肯定的な言葉をもらいたかったかもしれないですが、現実的に難しい方もいらっしゃると思います。

ただ自己肯定感は両親以外の方との関係をきちんと構築していくことで回復できる面もあります。細田ら(2009)の研究によると、中学生305名を対象に以下の3つのソーシャルサポートと自己肯定感の関係について調査を行っています。

3つのサポートとは以下を指します。

  1. 道具的サポート ・・・・住まいや携帯など必要な物を支援する
  2. 情緒的サポート ・・・・励ます、応援するなど気持ちの面を支援
  3. 共行動サポート ・・・・ノウハウを教えるなどの知識面で支援する

その結果が以下の図です。数字は相関係数といい、数値が大きいほど関係が強いことを意味します。せっかくなので下図の中から数字が大きいものを探してみましょう。

ソーシャルサポート 効果

父親、母親、友人、教師のいずれも情緒的なサポートが自己肯定感を強めている傾向がわかります。特に教師や友人の情緒的サポートが.40**で、父親や母親よりも高い数値が出てていますね。統計的に確実に言えることではないのですが、父親や母親よりも高い数値となっているのがとても印象的です。

仮にご家庭からのサポートが得られなくても、教師や友人など周りの方のサポートを仰ぐと精神が安定しそうです。その意味で、過去の振り返りも大事ですが、今目の前のある人間関係を大事にしながらお互いを励ましあうこともとても大事なのです。

アダルトチルドレンまとめ

アダルトチルドレンについて解説してきましたが、理解は深まりましたでしょうか。

アダルトチルドレンは、子ども時代に親との関係で何らかの心理的な傷を負った成人(機能不全家族に育った人)のことでしたね。コラムでは典型的な例として、アルコール依存症の親がいる家庭で育った場合についてご紹介しました。

アダルトチルドレンの人は、子ども時代のトラウマ体験から、大人になってから生きづらを感じやすくなります。子ども時代の辛かった体験を振り返ることが、心の回復に効果があることをご紹介しましたね。

ご紹介した3段階の回復プロセスはとても大変な作業ですか。心理カウンセラーや同じような体験をしている人の力を借りながら進めていくださいね。

アダルトチルドレンのトラウマ体験を克服アダルトチルドレンの人は、「抑うつや生きづらさなどを感じやすい」「自分の限界を超えてまで周囲に気配りし、バーンアウトしやすい」という特徴がありましたが裏を返せば、アダルトチルドレン傾向の人は「人に気配りができる」「よく気が付く人だ」ということもできます。

自分の特性と上手に付合いながら、自分らしくありのままでいられる人間関係を構築して、アダルトチルドレンによる生きづらさの軽減を目指していきましょう!

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コメント

1件のコメント

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    • ひかり
    • 2019年8月19日 10:40 AM

    私は自分に自信が持てない、他人を信用できない、気持ちを人に伝えるのが苦手、
    相手に合わせすぎる、バーンアウトしやすい、などの悩みがありアダルトチルドレンに関する本を数冊も読みました。私の場合は子どものときから母親の面倒をみなければならない環境でしたので、人と接するときは母親の機嫌を損ねないように振る舞うように気を付けていました。
    そんな環境もあり今では、尽くしたいと思えるのか?そうではないのか?という白黒思考で物事を判断してしまう傾向にあります。
    今回のコラムのアダルトチルドレンからの回復アプローチ方法はとても分かりやすかったのでチャレンジしてみたいと思います。

    0

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・引用文献
阿部由紀子(2018)大学生におけるアダルト・チルドレンおよび共依存と抑うつとの関連性. 保健科学研究, 9(1), 39―43.
J.G.ウォイティッツ(1997) 齋藤学監訳,アダルトチルドレン―アルコール問題家族で育った子供たち,金剛出版.
新山悦子・塚原貴子・笹野友寿(2005)看護学生のアダルトチルドレン特性とバーンアウト症候群との関連. 川崎医療福祉学会誌, 15 (1), 117-122.
西尾和美(1995)共依存症の精神療法. こころの科学, 59, 39-44.
緒方明(1996)アダルトチルドレンと共依存. 誠信書房. 24-25.
斎藤学(1996)アダルト・チルドレンと家族. 学陽書房. 237.
信田さよ子(1997)アダルト・チルドレン-私の物語を作り直す-. 日本家政学会誌, 48 (9), 823-828.
塚原貴子・矢野香代・新山悦子・太田茂(2010)大学生における外傷体験の筆記による開示効果 ―心理的・身体的指標による分析―. 川崎医療福祉学会誌, 20 (1), 235-242.