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ピグマリオン効果とは?心理学の論文を元に解説

ピグマリオン効果とは?ゴーレム効果との違いと活用例

はじめまして!学校心理士の栗本、監修の精神保健福祉士の川島です。こちらの初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

今回は「ピグマリオン効果」についてお話していきます。目次は以下の通りです。

  • ピグマリオン効果とは何か?
  • 由来はギリシャ神話
  • 研究で明らかになった効果
  • 2つの論文と活用のポイント
  • ゴーレム効果との違い
  • 恋愛にも有効!3つの活用例

それでは早速、ピグマリオン効果の基礎から解説させて頂きます。

ピグマリオン効果とは何か?

さっそくですが、みなさんは「ピグマリオン効果」と聞いて何をイメージしますか。「何かの専門用語かな?」「何かの効果であることはわかるけど・・・」とイメージする人が多いかもしれませんね。

定義:期待すると成績UP

ピグマリオン効果は心理学辞典(1999)によると、以下のように定義されています。

「人は他人に対していろいろな期待を持っている。意識すると否とにかかわらずこの期待が成就されるように機能すること」

簡単に表現すると、教師などの管理者の期待によって、その学習者の成績が向上する効果をいいます。別名「教師期待効果」とも言われる教育心理学の用語になります。

たとえば、
・先生が生徒に期待することで勉強の成績が上がる
・コーチが選手に期待することで、試合で良い結果がでる
などです。

このように、他人から期待されることポジティブな効果が得られる現象を、ピグマリオン効果といいます。

研究で分かったピグマリオン効果

ピグマリオン効果と歴史

由来はギリシャ神話

そもそもの「ピグマリオン」という名称は、ギリシャ神話を収録した古代ローマのオウィディウス『変身物語』が元になっています。この第10巻に登場するピュグマリオン王の恋焦がれた女性の彫像が、その願いに応えたアプロディーテ神の力で人間化したという伝説に由来します。

また、「ピグマリオン効果」を提唱した人物は、アメリカ合衆国の教育心理学者ロバート・ローゼンタール(Rosenthal,R.)です。彼は、「動物への研究」と「人への研究」の2つの代表的な研究(Rosenthal,R.ら,1968)から、この「ピグマリオン効果」を提唱しました。

動物への研究で明らかになった効果

実験協力者の学生たちに、ネズミを使った迷路実験をさせました。学生たちにネズミを渡す際に

「これは優れた学習成績を示す血統のネズミだ」
「これはまったくのろまなネズミだ」

と2種類のネズミを渡しました。

その結果、前者のネズミを渡された学生たちは、ネズミを丁寧に扱い、後者のネズミを渡された学生たちはネズミを非常にぞんざいに扱ったのです。この両者のネズミへの期待度の違いが、実験結果に反映されたものとローゼンタールは考えました。

ピグマリオン効果とは

人への研究で明らかになった効果

このような事実にヒントを得て、ローゼンタールは「教師の生徒に対する期待の効果」を検証しようとしました。具体的には教育現場での実験として、サンフランシスコにある小学校で、ハーバード式突発性学習能力予測テストと名づけた普通の知能テストを行いました。

テストをする際に学級担任には、「今後数ヶ月の間に成績が伸びてくる学習者を割り出すための検査」であると説明をしました。しかし、実際のところ、検査の結果と関係なく無作為に選ばれた児童の名簿を学級担任に見せて、

「この名簿に記載されている児童が、今後数ヶ月の間に成績が伸びる子どもたちです」

と伝えました。

その後、学級担任は、子どもたちの成績が向上するという期待を込めて、その子どもたちを見ていると、確かに成績が向上していったのです。

報告論文では、以下の点が成績の向上につながった要因としています。
・学級担任が、期待のこもった眼差しを向けたこと
・子どもたちが、期待されていることを意識したこと

ピグマリオン効果と様々な研究

ここでピグマリオン効果と関連する論文や書籍を紹介いたします。

スポーツの評価が良くなる!?

ピグマリオン効果はスポーツの分野でも、パフォーマンスを上げる効果として有効なことが分かっています

伊藤(1977)は、教授者1名学習者10名にピグマリオン効果の検証を行いました。実験では、学習者をA群とB群の2つに分け、A群には「将来柔道のパフォーマンスが伸びるはず」と期待をかけ、B群には何も声掛けをしませんでした。

▼1回目の試合と2回目の試合の結果はこちらです。A群の矢印とB群の矢印を比較してみください。どのような傾向があるでしょうか?

スポーツの試合結果とピグマリオン効果いかがでしょうか?
期待をかけたA群成績が良くなり
期待をかけなったB群成績が下がっている
ことが分かります。このことは、教授者から期待をかけられた学習者A群にピグマリオン効果が現れたと考える事ができます。

つまり、「選手への指導がうまくいかない…」というときは、ピグマリオン効果を使った指導をすると、うまく選手が伸びていく可能性があるのです。

ピグマリオン効果を得るポイント

運より能力を評価することが大切

・期待と運,能力
つづいて「教師の生徒に対する期待」に関してのピグマリオン効果の研究を見ていきましょう。古城(1980)は小学校の教師24名を対象に調査を行いました。

調査では、児童に算数のテストを実施し、教師が、

ポジティブな期待をする児童」
ネガティブな期待をする児童」

を抽出します。

その後、成績の高低によって以下の4つのグループに分けました。

調査では、この4つのグループにおける児童の成績が「能力」によるものなのか「運」によるものなのかを教師が判定しています。結果は以下の通りです。

ピグマリオン効果とは

つまり、

・教師がポジティブな期待をした児童の高成績は、
「児童の能力が高い」
・ネガティブな期待をした児童の高成績は
「たまたま運がよかったから」

と考えてしまうことがあるということです。

・運のおかげ…に注意
もし好成績を上げる生徒がいたときに、運のおかげと考えるとすると注意が必要です。長期的に見ると、児童の成績が「運」によるものと考えるよりも、「能力」によるものだと考える方が、結果的に成績が良くなるからです。

ピグマリオン効果として成立させるためには、期待する根拠を「運」など偶然起こったものであると考えるのではなく、「能力」として実力があるからと考える必要があるということです。もし、自分が期待している部下や後輩が成果を上げたときは、部下や後輩に「能力があるから」と認めることが大事です!

職場でのピグマリオン効果

ピグマリオン効果は、職場でも大きな効果を発揮します。上司が部下に「いい成績を出せる力がある」と期待をすれば、期待以上の効果を出してくれることがあります。

たとえば、理想的な企業のあり方について論じられている、トム・ピーターズとロバート・ウォーターマンのビジネス書、『エクセレント・カンパニー』で紹介された、正しい経営の思考要件には、ピグマリオン効果も含まれています。 

また、西門(1991)は、正しい経営思考要件でのピグマリオン効果について、次のように報告しました。「従業員の能力を管理者が信じ、それが相手に伝わって効果が生まれる」「信用出来る期待は好結果を生むというピグマリオン効果を活用することが必要」つまり従業員の能力を上司が信じることで、ピグマリオン効果が生まれ、組織が円滑に機能していくということです。

ピグマリオン効果について解説

ホーソンとゴーレム

ピグマリオン効果は心理学の世界では、「ホーソン効果」「ゴーレム効果」と併用して論じられることがよくあります。

ホーソン効果とは何か?

ここまで紹介してきたピグマリオン効果は、他人から期待されることでポジティブな効果が得られる現象でしたね。このピグマリオン効果のように、人の行動にポジティブな影響を及ぼすものに「ホーソン効果」があります。

ホーソン効果とは、
「注目されることで成果を上げようと力を発揮する現象」のことです。

わたしたち人間は、人から見られるとついつい頑張ってしまう生物です。その注目されることを好む心理をポジティブな現象につなげているのがホーソン効果です。

たとえば、
・優勝した部活を集会で表彰する
・営業成績が優秀な人を朝礼で紹介する
このような場面で、ホーソン効果は現れます。

ゴーレム効果とは何か?

ゴーレム効果は、
「人に対して悪い印象を持ち接すると、実際に悪い人になってしまう効果」のことです。

周囲が悪い印象をもつと、良い印象が打ち消されてしまい、周囲の期待通り悪い影響が出てしまうのです。

たとえば、学校で教師と生徒が接する場合
「この生徒は成績が良くない」
「この生徒の成績は、上がる見込みはない」
など、生徒に対して教師の期待が低いと、その生徒は期待通り成績が下がる現象がゴーレム効果です。

ピグマリオン効果を取り入れる例

ピグマリオン効果を活かす

ポジティブな影響があるピグマリオン効果は、学校や職場、日常生活にぜひ取り入れたいものです。ここからは具体的な方法を見ていきましょう。

職場での活用例①

仕事では部下や同僚はもちろん、自分自身にもピグマリオン効果が利用できます。

<部下や同僚に指導する場合>
職場で指導する場合には、以下の点に気を付けてみましょう。

・期待している!と声掛けをこまめにする
・失敗をしても取り返せる!と期待する

適切なタイミングで「将来きっとうまくいく」「失敗は将来の糧につながる!」など、前向きな期待を持っていることを伝えることがモチベーションの維持につながります。

<自分自身の場合>
職場環境によっては、ピグマリオン効果に恵まれない場合もあります。またゴーレム効果から「自分自身のパフォーマンスが伸びない…」と悩んでしまう事があるかもしれません。

そんなときには、結果が出せる小さな目標を設けてクリアしていくといいでしょう。目標を達成できると、自分への期待が高まり、「なんとかなる!」「きっと未来はうまくいく」と自分自身のモチベーションアップが図れます。

恋愛での活用例②

恋愛では、パートナーにポジティブな期待することで、ピグマリオン効果が現れ期待した行動に促せます。

たとえば
「きっと僕たちはうまくいく」
「喧嘩をしても乗り越えていける」
など、パートナーへの期待を言葉にしてやる気を引き出すのが効果的です。

子育ての活用例③

子供を褒めることで、前向きな子供に育てることができます。「あなたはいい子だね」「〇〇ができて素晴らしい!」などの声かけは、ピグマリオン効果に有効です。ただし、過度に期待をかけると子供のプレッシャーにもなりかねません。子供の性格や様子をみながら、適切な期待をかけることで効果が得られるでしょう。

ピグマリオン効果が得られる3つの例

ピグマリオン効果の理解⇧

ここまでピグマリオン効果の理解を深めるための論文や実験を紹介してきました。また心理的な影響を及ぼす、ホーソン効果やゴーレム効果についても解説しましたがいかがでしたか。日ごろの思うようにいかないことや上達しないことは、自分自身の努力不足や実力不足が原因なだけではないかもしれません。

そのことを評価したり、期待する人がいるのなら、よく話し合って、時には場所を変えたり相手を変えてみるのも悪くありません。

逆に、自分では何も変えていないようでも、実は、「ピグマリオン効果」が生まれていて、周りの人のおかげで上達していることもあるかもしれません。

「ピグマリオン効果」の力を借りて、これから何か新しいこと、以前挫折してしまったことにチャレンジして、世界を広げていってください。また、これから自分が教える立場や管理する立場になるときには、「ピグマリオン効果」をしっかり意識して活動していくと、きっと周りへの好影響があるでしょう。

心理学講座

コメント

1件のコメント

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    • めがね
    • 2019年6月10日 5:43 PM

    人は期待されると向上することが図を見てよく分かりました。
    期待されるとやる気になったり前向きな考え方に切り替えることができますね。
    確かに注目されると頑張れますね。ゴーレム効果で自分自身のパフォーマンスが伸びないのは深刻な悩みですね。
    ピグマリオン効果を使ってコミュニケーション能力を向上させていきたいと思いました。

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
井上 健治・大沢 啓子・亀谷 秀樹・佐々木 正宏・渡辺孝憲 1978 教師の期待効果に関する研究 東京大学教育学部紀要 17, 59-76, 2-28.
中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣
伊藤 三洋 1977 柔道の教授 武道学研究 10, 2, 77-79.
古城 和敬・天根 哲治・相川 充 1980 教師期待と児童の成績に対する教師の原因帰属―教師の個人差の観点からの検討― 日本教育心理学会総会発表論文集 22, 37.
西門 正巳 1991 経営革新へのパラダイムと戦略 岡山大学経済学会雑誌 22(3・4), 755-773, 02.
R.H. Waterman, Jr., The Renewal Factor,Raphael Sagalyn Inc.,1987.(奥村昭博 監訳『超優良企業は革新する』講談社)
Rosenthal,R. & Jacobson,L. 1968 pygmalion in the classroom.Holt.
T.J.Peters and R.H.Waterman, 1982 In Search of Excellence,Harper & Row Publishers Inc.