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ピグマリオン効果とは?心理学の論文を元に解説

ピグマリオン効果とは?ゴーレム効果との違いと活用例

はじめまして!学校心理士・応用心理士の栗本、精神保健福祉士の川島です。こちらの初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

今回は「ピグマリオン効果」についてお話していきます。目次は以下の通りです。

  • ピグマリオン効果とは何か?
  • 由来はギリシャ神話
  • 研究で明らかになった効果
  • 2つの論文と活用のポイント
  • ゴーレム効果との違い
  • 恋愛にも有効!3つの活用例
  • まとめ

それでは早速、ピグマリオン効果の基礎から解説させて頂きます。

ピグマリオン効果とは何か?

さっそくですが、みなさんは「ピグマリオン効果」と聞いて何をイメージしますか。「何かの専門用語かな?」「何かの効果であることはわかるけど・・・」とイメージする人が多いかもしれませんね。

ピグマリオン効果とは、「教師期待効果」とも言われる教育心理学の用語です。簡単に表現すると、教師などの管理者の期待によって、その学習者の成績が向上する効果をいいます。

たとえば、
・先生が生徒に期待することで勉強の成績が上がる
・コーチが選手に期待することで、試合で良い結果がでる
などです。

このように、他人から期待されることポジティブな効果が得られる現象を、ピグマリオン効果といいます。

研究で分かったピグマリオン効果

由来はギリシャ神話

そもそもの「ピグマリオン」という名称は、ギリシャ神話を収録した古代ローマのオウィディウス『変身物語』が元になっています。この第10巻に登場するピュグマリオン王の恋焦がれた女性の彫像が、その願いに応えたアプロディーテ神の力で人間化したという伝説に由来します。

また、「ピグマリオン効果」を提唱した人物は、アメリカ合衆国の教育心理学者ロバート・ローゼンタール(Rosenthal,R.)です。彼は、「動物への研究」と「人への研究」の2つの代表的な研究(Rosenthal,R.ら,1968)から、この「ピグマリオン効果」を提唱しました。

動物への研究で明らかになった効果

実験協力者の学生たちに、ネズミを使った迷路実験をさせました。学生たちにネズミを渡す際に「これは優れた学習成績を示す血統のネズミだ」・「これはまったくのろまなネズミだ」と2種類のネズミを渡しました。

その結果、前者のネズミを渡された学生たちは、ネズミを丁寧に扱い、後者のネズミを渡された学生たちはネズミを非常にぞんざいに扱ったのです。この両者のネズミへの期待度の違いが、実験結果に反映されたものとローゼンタールは考えました。

そして、このような事実にヒントを得て、ローゼンタールは「教師の生徒に対する期待の効果」を検証しようとしました。

人への研究で明らかになった効果

教育現場での実験として、サンフランシスコにある小学校で、ハーバード式突発性学習能力予測テストと名づけた普通の知能テストを行いました。

テストをする際に学級担任には、「今後数ヶ月の間に成績が伸びてくる学習者を割り出すための検査」であると説明をしました。しかし、実際のところ、検査の結果と関係なく無作為に選ばれた児童の名簿を学級担任に見せて、「この名簿に記載されている児童が、今後数ヶ月の間に成績が伸びる子こどもたちです」と伝えました。

その後、学級担任は、子どもたちの成績が向上するという期待を込めて、その子どもたちを見ていると、確かに成績が向上していったのです。

報告論文では、以下の点が成績の向上につながった要因としています。
・学級担任が子どもたちに対して、期待のこもった眼差しを向けたこと
子どもたちが、期待されていることを意識したこと

ピグマリオン効果について解説

職場でのピグマリオン効果

ピグマリオン効果は、職場でも大きな効果を発揮します。上司が部下に「いい成績を出せる力がある」と期待をすれば、期待以上の効果を出してくれることがあります。

たとえば、理想的な企業のあり方について論じられている、トム・ピーターズとロバート・ウォーターマンのビジネス書、『エクセレント・カンパニー』で紹介された、正しい経営の思考要件には、ピグマリオン効果も含まれています。また、西門(1991)は、正しい経営思考要件でのピグマリオン効果について、次のように報告しました。

「従業員の能力を管理者が信じ、それが相手に伝わって効果が生まれる」

「信用出来る期待は好結果を生むというピグマリオン効果を活用することが必要」

つまり従業員の能力を上司が信じることで、ピグマリオン効果が生まれ、組織が円滑に機能していくということです。

ピグマリオン効果を検証した2つの論文

ここで2つの論文から、ピグマリオン効果をより有効的に利用するポイントを見ていきましょう。

スポーツの評価が良くなる!?

ピグマリオン効果はスポーツの分野でも、パフォーマンスを上げる効果として有効なことが分かっています

伊藤(1977)は、教授者1名学習者10名にピグマリオン効果の検証を行いました。実験では、学習者をA群とB群の2つに分け、A群のみに「将来柔道のパフォーマンスが伸びるはず」と期待をかけました。その結果、A群にピグマリオン効果が示さました。

▼1回目の試合と2回目の試合の結果はこちらです。

スポーツの試合結果とピグマリオン効果順位は、
期待をかけたA群成績が良くなり
期待をかけなったB群成績が下がっている
ことが分かります。このことは、教授者から期待をかけられた学習者A群にピグマリオン効果が現れたと考える事ができます。

つまり、「選手への指導がうまくいかない…」というときは、ピグマリオン効果を使った指導をすると、うまく選手が伸びていく可能性があります!

適切な能力評価が大切

つづいて「教師の生徒に対する期待」に関してのピグマリオン効果の研究を見ていきましょう。

古城(1980)は小学校の教師24名を対象に調査を行いました。調査では、児童に算数のテストを実施し、教師が「ポジティブな期待をする児童」「ネガティブな期待をする児童」を抽出します。その後、成績の高低によって以下の4つのグループに分けました。

① ポジティブな期待をする児童 ー 高成績
② ポジティブな期待をする児童 ー 低成績
③ ネガティブな期待をする児童 ー 高成績
④ ネガティブな期待をする児童 ー 低成績

調査では、この4つのグループにおける児童の成績が「能力」によるものなのか「運」によるものなのかを教師が判定しています。結果は以下の通りです。

【結果1】
教師は、①のポジティブな期待をする児童の高成績は「能力」によるものだと考える。
【結果2】
教師は、③のネガティブな期待をする児童の高成績は「」によるものだと考える。
【結果3】
③のネガティブな期待をする児童よりも①のポジティブな期待をする児童成績が良くなる

つまり、教師がポジティブな期待をした児童の高成績は、児童の能力が高いと考え、ネガティブな期待をした児童の高成績は、「たまたま運がよかったから」と考えてしまうことがあるということです。

さらに、児童の成績が「運」によるものと考えるよりも、「能力」によるものだと考える方が、結果的に成績が良くなるということです。

このように、ピグマリオン効果として成立させるためには、期待する根拠を「運」など偶然起こったものであると考えるのではなく、「能力」として実力があるからと考える必要があるということです。

もし、自分が期待している部下や後輩が成果を上げたときは、部下や後輩に「能力があるから」と認めることが大事です!

ピグマリオン効果を得るポイント

「ホーソン効果」と「ゴーレム効果」

ピグマリオン効果のように、人にさまざまな効果を与える心理効果はいろいろあります。その中から今回は「ホーソン効果」「ゴーレム効果」についてご紹介します。

ピグマリオン効果と似た「ホーソン効果」

ここまで紹介してきたピグマリオン効果は、他人から期待されることでポジティブな効果が得られる現象でしたね。このピグマリオン効果のように、人の行動にポジティブな影響を及ぼすものに「ホーソン効果」があります。

ホーソン効果とは、
「注目されることで成果を上げようと力を発揮する現象」のことです。

わたしたち人間は、人から見られるとついつい頑張ってしまう生物です。その注目されることを好む心理をポジティブな現象につなげているのがホーソン効果です。

たとえば、
・優勝した部活を集会で表彰する
・営業成績が優秀な人を朝礼で紹介する
このような場面で、ホーソン効果は現れます。

ピグマリオン効果とは逆「ゴーレム効果」

ゴーレム効果は、
「人に対して悪い印象を持ち接すると、実際に悪い人になってしまう効果」のことです。

周囲が悪い印象をもつと、良い印象が打ち消されてしまい、周囲の期待通り悪い影響が出てしまうのです。

たとえば、学校で教師と生徒が接する場合
「この生徒は成績が良くない」
「この生徒の成績は、上がる見込みはない」
など、生徒に対して教師の期待が低いと、その生徒は期待通り成績が下がる現象がゴーレム効果です。

取り入れることができない理由

ポジティブな影響があるピグマリオン効果は、学校や職場、日常生活にぜひ取り入れたいものですが、難しい点もあります。

たとえば
・ 期待しても必ずその通りになるということではない
・ 期待が強すぎてしまうとプレッシャーになる
・ 期待をしたら贔屓(ひいき)をしていると思われる

このようなことが原因で、周囲からの評価や期待が下がり、自分自身のパフォーマンスが低下してはもったいないことです。また職場や学校で人を指導する立場であれば、同僚や部下、生徒が成果を上げることがあれば、さまざまなチャレンジが難しくなってしまいます。

日ごろから、ピグマリオン効果を取り入れる工夫をすることが大切です。ここからは具体的な方法を見ていきましょう。

ピグマリオン効果を取り入れる例

恋愛や子育てにも有効!ピグマリオン効果の例

それではここからは、ピグマリオン効果を日常生活に取り入れる具体的な方法を見ていきましょう。

職場での活用例①部下や同僚、自分自身にも有効

仕事では部下や同僚はもちろん、自分自身にもピグマリオン効果が利用できます。

<部下や同僚に指導する場合>
職場で指導する場合には、以下の点に気を付けてみましょう。

・相手にネガティブな評価をしない
・失敗を挽回するチャンスを与える

そして適切なタイミングで「○○がとてもよかった」「期待以上の成果で驚いているよ!すばらしい」など、良い評価をしっかり伝えることがモチベーションの維持につながります。そして信頼関係を築くことができれば、効果が現れやすくなります。

<自分自身の場合>
職場環境によっては、ピグマリオン効果に恵まれない場合もあります。またゴーレム効果から「自分自身のパフォーマンスが伸びない…」と悩んでしまう事があるかもしれません。

そんなときには、結果が出せる小さな目標を設けてクリアしていくといいでしょう。目標を達成できると、自分自身のモチベーションアップが図れます。そして周囲からの前向きな評価もついてくるのではないでしょうか。

恋愛での活用例②パートナーのやる気を引き出す

恋愛では、パートナーにポジティブな期待することで、ピグマリオン効果が現れ期待した行動に促せます。

たとえば
「いつも約束をまもってくれるから安心」
「洋服選びのアドバイスが上手で助かる」
など、パートナーへの期待を言葉にしてやる気を引き出すのが効果的です。ただし、無理強いは禁物です。相手の本来の能力を引き出す程度の期待がいいでしょう。

子育ての活用例③前向きな子供に育てる

子供を褒めることで、前向きな子供に育てることができます。「あなたはいい子だね」「〇〇ができて素晴らしい!」などの声かけは、ピグマリオン効果に有効です。

ただし、過度に期待をかけると子供のプレッシャーにもなりかねません。子供の性格や様子をみながら、適切な期待をかけることで効果が得られるでしょう。

ピグマリオン効果が得られる3つの例

まとめ

ここまでピグマリオン効果の理解を深めるための論文や実験を紹介してきました。また心理的な影響を及ぼす、ホーソン効果やゴーレム効果についても解説しましたがいかがでしたか。

「ピグマリオン効果」とは、とても簡単に表現すると
「教師などの管理者の期待によって、その学習者や成員の成績が向上する効果」のことです。

日ごろの思うようにいかないことや上達しないことは、自分自身の努力不足や実力不足が原因なだけではないかもしれません。そのことを評価したり、期待する人がいるのなら、よく話し合って、時には場所を変えたり相手を変えてみるのも悪くありません。

逆に、自分では何も変えていないようでも、実は、「ピグマリオン効果」が生まれていて、周りの人のおかげで上達していることもあるかもしれません。

「ピグマリオン効果」の力を借りて、これから何か新しいこと、以前挫折してしまったことにチャレンジして、世界を広げていってください。また、これから自分が教える立場や管理する立場になるときには、「ピグマリオン効果」をしっかり意識して活動していくと、より良い成果を上げていくことができるかもしれません。

心理学講座

コメント

1件のコメント

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    • めがね
    • 2019年6月10日 5:43 PM

    人は期待されると向上することが図を見てよく分かりました。
    期待されるとやる気になったり前向きな考え方に切り替えることができますね。
    確かに注目されると頑張れますね。ゴーレム効果で自分自身のパフォーマンスが伸びないのは深刻な悩みですね。
    ピグマリオン効果を使ってコミュニケーション能力を向上させていきたいと思いました。

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
井上 健治・大沢 啓子・亀谷 秀樹・佐々木 正宏・渡辺孝憲 1978 教師の期待効果に関する研究 東京大学教育学部紀要 17, 59-76, 2-28.
伊藤 三洋 1977 柔道の教授 武道学研究 10, 2, 77-79.
古城 和敬・天根 哲治・相川 充 1980 教師期待と児童の成績に対する教師の原因帰属―教師の個人差の観点からの検討― 日本教育心理学会総会発表論文集 22, 37.
西門 正巳 1991 経営革新へのパラダイムと戦略 岡山大学経済学会雑誌 22(3・4), 755-773, 02.
R.H. Waterman, Jr., The Renewal Factor,Raphael Sagalyn Inc.,1987.(奥村昭博 監訳『超優良企業は革新する』講談社)
Rosenthal,R. & Jacobson,L. 1968 pygmalion in the classroom.Holt.
T.J.Peters and R.H.Waterman, 1982 In Search of Excellence,Harper & Row Publishers Inc.