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感情移入の意味とは?しすぎる人,しやすい人

感情移入の意味とは?しすぎる人,しやすい人

 はじめまして!臨床心理士の加賀,監修の公認心理師川島です。私たちは、これまで臨床心理士として精神科・心療内科クリニックでカウンセリングを行ってきました。

今回のテーマは「感情移入」です。


当コラムの目標
・感情移入の意味を理解
・しやすい人の特徴を理解する
・研究を学び理解を深める

  • 全体の目次
  • 感情移入の意味とは
  • メリット
  • デメリット
  • 助け合い掲示板

コラムを読み進めていくと、基本的な知識と対策を抑えることができると思います。ぜひ最後までご一読ください。もしお役に立てたなら、初学者向け心理学講座でもぜひお待ちしています。

感情移入とは何?

 意味とは

石原(1999)は、感情移入を次のように定義しています。

他人の言葉や表情をもとに、その感情や態度を追体験すること

簡単にまとめると、自分の意図に関係なく、自分が相手と同じ気持ちになってしまうことと捉えるといいでしょう。

たとえば映画を見たときに、主人公が悲しそうにしていると自分まで悲しくなる。楽しそうな子どもの写真を見たときに、明るい気持ちになるなどがあげられます。

感情移入

 

共感関連反応とは?

感情移入に近い用語として、「共感」や「同情」についても理解をしておきましょう。長谷川(2009)は、共感と同情を次のように定義しています。

・共感とは

相手が考え、思い、感じていることを同じように感じ取り、理解することであって「同じような感情」を認知すること。

・同情とは

相手の立場に立って理解するというよりも「自分の立場から」自己の体験や価値観と言った枠組みを持って相手の気持ちなり考えについて自分が感じる物といえる。したがって、自分が他人の気持ちを憶測しているということ。

これらの概念は共通点も多いです。そのため心理学では、感情移入、共感、同情などを総称して「共感関連反応」と呼ぶことがあります(Eisenberg et al., 1988)。

感情移入と男女差

感情移入は女性の方がしやすい傾向にあります。澤田, 橋本, & 松尾(2006)は、大学生206名を対象に、感情移入して泣くことがどのような影響をもたらすのかを検討しています。

調査では、これまでに泣いた経験のうち、代理的経験によって泣いた経験(映画や小説などを読んでいて感情移入した経験)を自由に回答してもらいました。その後、質問紙に回答をしてもらい、男女で比較をしています。

映画を観て感情移入する

その結果、感情移入によって泣く「泣き体験」は、有意に女性のほうが多いことがわかりました。泣きの体験が女性に多いというのは想像しやすい結果かもしれませんね。

感情移入と泣き体験

感情移入と長所

感情移入については、様々なメリットとデメリットに関する研究があります。以下折りたたんで記載をしたので、参考になりそうな項目をクリックしてみてください。

メリット研究

エンパス的要素が強い

感情移入しやすい人は、エンパス的要素が強い可能性があります。エンパスは、比較的新しい概念のため明確な定義がありませんが、周囲のエネルギーをとても深く体験する人(Orloff, 2017)という理解がされています。

芸術的センスも高い

エンパス的要素が強い人は芸術的センスも高いことが知られています。

たとえば、
・登場人物の感情豊かな物語を書く
・気持ちや感情を絵で表現する
・より深く物事を理解して感じ取る
ことなどが、得意とされています。

バーンアウトとは何か?

感情移入をしやすい方は、仕事でバーンアウトを起こしにくいことが分かっています。

バーンアウトの意味
過度で持続的なストレスに対処できずに張り詰めていた緊張がゆるみ、意欲や野心が急速に衰えたり、乏しくなったときに表出される心身の症状

共感力が低いとバーンアウトしやすい

飯岡 & 長谷川 (2017)の研究では、介護士がケアするときに必要な共感性とこころが疲弊するバーンアウトについての研究を行っています。

調査対象者は、介護関連の職業につく53名に質問紙調査を行っています。

その結果、
バーンアウト傾向が低い人は共感性が高く
バーンアウト傾向が高い人は共感性が低い
ということが分かりました。

共感性とバーンアウト

共感性が低いと、仕事上のトラブルが多くなり、結果的に仕事にやりがいが持てないと言えそうです。

感情移入はシャーデンフロイデを減らします。

シャーデンフロイデとは?

シャーデンフロイデとは、他者の不幸を喜ぶ感情です。ややわかりにくいので、事例をもとに見ていきましょう。

登場人物
・会社員の太郎くん
・同僚の花子さん
・会社の上司

状況
①太郎くんはミスをして上司に叱られる
大事なプレゼンで企画書を1枚忘れてしまい、上司に叱られてしまいました。

②同僚の花子さんのプレゼンが採用される
一方で花子さんはミス1つない完璧なプレゼンで、企画が採用されました。

花子 プレゼン


③太郎くんは花子さんの採用を悔しく思う
太郎くんは花子さんを見て、嫉妬や悔しさが湧いてきました。

感情移入とは

④花子さんのミスを見て喜びを感じる
後日、花子さんが仕事で大きな失敗をしてしまいました。慌てているところを見てうれしく思いました。(シャーデンフロイデ)

このようなシャーデンフロイデは、”人の不幸は蜜の味”という言葉があるように、あっておかしくない感情です。

しかし、シャーデンフロイデが強いと他者の気持ちを無視してしまい、自己中心的な行動が増えてしまいます。

過剰になりすぎると
・嫌がらせ
・いじめ
・犯罪
などにつながる恐れがあります。

不幸を喜ぶ気持ちを減らす

葉山(2016)の研究では、平均年齢20.6歳の大学生132名を対象にして実験を行いました。実験では、対象者が課題ビデオの登場人物に、感情移入したとき、シャーデンフロイデに影響があるのかを検討しています。

課題ビデオは、
ビデオの内容は少年と病気の母親が登場する話です。少年は、母親に反抗的な態度をとることもありますが、長期入院直前には母親と別れるさみしさに耐えきれず泣いてしまうといった内容です。

その結果、感情移入が強いと、シャーデンフロイデが減ることが分かりました。

感情移入とシャーデンフロイデの関係

つまり、感情移入は、他者の不幸を喜ぶ気持ちを減らすことができると言えるのです。

感情移入でストレス解消

また、想像的感情移入が現実的なストレス解消につながるかについても検討しています(澤田, 橋本, & 松尾,2006)。

想像的感情移入とは、小説や映画などの架空の他者に感情移入することです。調査の結果、男性は、想像的感情移入がストレス解消を高めることが分かりました。

想像的感情移入とストレス解消具体的には、

・ヒーロー映画を観て
 自分までヒーローになった気分になる

・恋愛の小説を読んで
主人公と同じ気持ちを味わう

・仲間との一体感が
テーマのドラマを見て一緒にアツくなる

などです。男性は、このような物語の世界に想像的感情移入することで、ストレス解消ができると言えます。

感情移入の男女の違い

これまでの結果から、メディアを見て感情移入する「感情移入体験」には、男女による差がないことが分かってきています。

女性は「泣きの体験」によるストレス発散効果が期待でき、男性は「想像的感情移入」でストレス解消することが分かりました。

感情移入のストレス効果男女の差

この結果を澤田, 橋本, & 松尾(2006)は、男性よりも女性の方が、物語の世界を自己から距離を置いた世界として捉えていると解釈しています。

つまり、女性は物語に感情移入するよりも現実世界で友達とおしゃべりをしたり、おいしいものを食べたほうがストレス解消効果が高いかもしれません。

一方、男性は落ち込んだ時には元気の出る映画、泣きたいときに悲しい小説を読むことで、ストレス解消効果が得られると言えそうです。

 

デメリット研究

共感疲労とは何か?

共感疲労とは、苦しんでいるクライエントに直面している時に関連した短時間の疲弊と外傷性ストレス反応の経験(Boscarino 2004)だといわれています。

つまり、相手が苦しんでいるときなどケアが必要な人との関りを持つことで、その痛みや苦しみを自分のことのように感じてしまい、心身共に疲労が蓄積されてしまうことを言います。

私自身もカウンセラーとして活動していますが、カウンセリングが終わったとは、共感疲労でぐったりなることがあります。

共感と苦痛研究

先程、シャーデンフロイデの解説の際にお伝えした葉山(2016)の論文の続きを見てみましょう。葉山の論文では、感情移入しすぎると、自分の痛みのように感じる苦痛が増えることもわかりました。

感情移入しすぎる影響つまり、感情移入は、他者の不幸を喜ぶ気持ちを減らすことができます。ただし感情移入しすぎると、自分の苦痛も増えてしまうため、注意が必要と解釈できます。

エンパス傾向が高い人の特徴

エンパス傾向の高い人は、情動吸収、情動直観、気疲れという3つの特徴が高いと考えられています。

・情動吸収
相手の抱えているストレスや気持ちがわかり影響を受ける

・情動直観
相手が表現していない思考や感情を素早く読み取る

・気疲れ
人込みや雑踏に出かけると疲れを感じやすい

などが特徴です(串崎,2019)。

感情移入しやすい人は、自分が意図していなくても、他者の気持ちや影響を相手と同じように感じ取る傾向があります。

そのため必要以上に相手の心を読みすぎてしまい、気疲れをしてしまうケースもあります。

情緒不安定は共感力と関わりがあることが分かっています。谷・天谷(2009)が大学生221名を対象にした研究では、情緒不安定な傾向がある方は同時に共感性が高いと統計的に明らかにしています。

心が安定しない

情緒不安定である分、様々な感情を知っているので、相手の感情に敏感に気が付き、他の方の心情を理解しやすいともいえるのです。

感情移入しすぎると想像性が弱まる

感情移入-まとめと発展

まとめ

感情移入は、コミュニケーションにおいて、相手の気持ちを理解する上で必要な能力です。

上手に感情移入ができる人は、自分の豊な内面を表現することができ、ストレス発散につなげる事もできます。しかし、感情移入しすぎると心も体も疲弊させてしまうので注意が必要です。

是非バランスの良い感情移入を心がけてくださいね♪

以下は発展コラムです。気になるコラムがありましたらクリックしてみてください。

共感力コラム

感情移入がなかなかできない…という方は以下のコラムで具体的なやり方をお伝えしています。特に福祉職、援助職、管理職の方はとても重要なスキルです。是非練習してみてください。

共感力をつけるコラム

過剰適応に注意

感情移入をし過ぎて疲れる…という方は過剰適応状態になっているかもしれません。何事もさじ加減が大事で、相手の感情と一体化しすぎると問題が大きくなります。

相手の気持ちに寄り添いすぎる…という方は下記を参照ください。

過剰適応コラム

講座のお知らせ

もし公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では

・心理学の基礎
・共感力練習
・暖かい人間関係を築くコツ
・傾聴ワーク

など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。ぜひお待ちしています♪

人間関係講座

助け合い掲示板

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・引用文献
・Boscarino, J. A., Figley, C. R., & Adams, R. E. (2004). Compassion fatigue following the September 11 terrorist attacks: A study of secondary trauma among New York City social workers. International journal of emergency mental health, 6(2), 57.
・Eisenberg, N. (1988). Empathy and sympathy: A brief review of the concepts and empirical literature. Anthrozoös, 2(1), 15-17.
・飯岡由美子, & 長谷川美貴子. (2017). ケア専門職における共感性とバーンアウトの関係性. 淑徳大学短期大学部研究紀要56, 123-141.
・串崎真志. (2019). エンパス尺度 (Empath Scale) の作成: 高い敏感性をもつ人 (Highly Sensitive Person) の理解. 関西大学人権問題研究室紀要= Bulletin of the Institute of Human Rights Studies, Kansai University, (77), 37-54.
・久保真人, & 田尾雅夫. (1991). バーンアウト. 心理学評論, 34(3), 412-431.
・長谷川美貴子. (2009). 「ケア」 における共感と感情操作の問題 (人文・社会科学系). 淑徳短期大学研究紀要48, 77-91.
・Maslach, C., & Jackson, S. E. (1981). The measurement of experienced burnout. Journal of organizational behavior, 2(2), 99-113.
・Orloff, J. (2017). The empath’s survival guide: Life strategies for sensitive people. Boulder, CO:Sounds True
・澤田忠幸, 橋本巌, & 松尾浩一郎. (2006). 青年期における直接的・代理的場面での 「泣き」 の経験: 男女差および共感性, ストレス・コーピングとの関連に焦点を当てて.