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感情移入とは?しすぎる人・しやすい職種の対処法

感情移入の意味・しすぎる時の対処法

 はじめまして!臨床心理士の加賀です。私は、これまで臨床心理士として精神科・心療内科クリニックでカウンセリングを行ってきました。

その経験や心理学の知識の中から皆さまのお役に立てられるような情報をお伝えしていきたいと思います。今回のテーマは「感情移入」です。


改善するお悩み
・感情移入しすぎてツライ
・共感、同情との違い
・職場の感情移入を対処したい

  • 全体の目次
  • 感情移入とは何?意味
  • 共感関連反応とは
  • 研究①エンパス的要素が強い
  • 研究②バーンアウトしやすい
  • 研究③シャーデンフロイデ低下
  • 研究④ストレス解消の効果も
  • 助け合い掲示板

コラムを読み進めていくと、基本的な知識と対策を抑えることができると思います。ぜひ最後までご一読ください。

もしお役に立てたなら、初学者向け心理学講座でもぜひお待ちしています。

感情移入とは何?

 定義・意味

石原(1999)は、感情移入を次のように定義しています。

他人の言葉や表情をもとに、その感情や態度を追体験すること

簡単にまとめると、自分の意図に関係なく、自分が相手と同じ気持ちになってしまうことと捉えるといいでしょう。

たとえば、
映画を見たときに、主人公が悲しそうにしていると自分まで悲しくなる

映画を観て感情移入する

 

楽しそうな子どもの写真を見たときに、明るい気持ちになる

写真をみて感情移入する

ずっと大切にしていた物が壊れたときに、自分までつらい気持ちになる

感情移入でツライ気持ちになる

などがあげられます。

共感関連反応とは?

感情移入の意味をより理解するために、感情移入に似た概念「共感」や「同情」について紹介します。

長谷川(2009)は、共感と同情を次のように定義しています。

・共感とは

相手が考え、思い、感じていることを同じように感じ取り、理解することであって「同じような感情」を認知すること。

・同情とは

相手の立場に立って理解するというよりも、「自分の立場から」自己の体験や価値観と言った枠組みを持って相手の気持ちなり考えについて自分が感じる物といえる。したがって、自分が他人の気持ちを憶測しているということ。

これらの概念は共通点も多いです。そのため心理学では、感情移入、共感、同情などを総称して「共感関連反応」との呼ぶことがあります(Eisenberg et al., 1988)。

人と人とのコミュニケーションには、感情移入≒共感関連反応が欠かせません。

研究①感情移入しやすい人はエンパスが強い

心理学では、どのようなメカニズムで感情移入がおこるのかの研究が多くされてきました。

エンパス的要素が強い

感情移入しやすい人は、エンパス的要素が強い可能性があります。

エンパスは、比較的新しい概念のため明確な定義がありませんが、周囲のエネルギーをとても深く体験する人(Orloff, 2017)という理解がされています。

具体的には、周囲の人や物の感情や気持ち、状態を自分に取り込んでしまうことで、人と自分の感覚や状態を区別できなくなることです。

エンパス傾向が高い人の特徴

エンパス傾向の高い人は、情動吸収、情動直観、気疲れという3つの特徴が高いと考えられています。

・情動吸収
相手の抱えているストレスや気持ちがわかり影響を受ける

・情動直観
相手が表現していない思考や感情を素早く読み取る

・気疲れ
人込みや雑踏に出かけると疲れを感じやすい

などが特徴です(串崎,2019)。

感情移入しやすい人は、自分が意図していなくても、他者の気持ちや影響を相手と同じように感じ取る傾向があります。そのため、エンパス的要素が強いと考えられます。

芸術的センスも高い

加えて、エンパス的要素が強い人は芸術的センスも高いことが知られています。

たとえば、
・登場人物の感情豊かな物語を書く
・気持ちや感情を絵で表現する
・より深く物事を理解して感じ取る
ことなどが、得意とされています。

このような特徴は、人と人とのコミュニケーションにおいても必要な能力です。

研究②感情移入しすぎるバーアウトしやすい

しかし、感情移入が過剰になると、さまざまな問題が起こってきます。

バーンアウトしやすい

Maslach & Jackson,(1981)は、バーンアウトについて以下のように定義しています。

過度で持続的なストレスに対処できずに張り詰めていた緊張がゆるみ、意欲や野心が急速に衰えたり、乏しくなったときに表出される心身の症状のことです。

バーンアウトは、看護師、介護士などの対人援助職に多いといわれてきました。その理由のひとつに「共感疲労」と呼ばれる、特有のストレスが関わっていることがわかっています。

共感疲労とは、苦しんでいるクライエントに直面している時に関連した短時間の疲弊と外傷性ストレス反応の経験(Boscarino, Figley & Adams 2004)だといわれています。

つまり、相手が苦しんでいるときなどケアが必要な人との関りを持つことで、その痛みや苦しみを自分のことのように感じてしまい、心身共に疲労が蓄積されてしまうことを言います。

共感的態度が低下

飯岡 & 長谷川 (2017)の研究では、介護士がケアするときに必要な共感性とこころが疲弊するバーンアウトについての研究を行っています。

調査対象者は、介護関連の職業につく53名に質問紙調査を行っています。

その結果、
バーンアウト傾向が低い人は共感性が高く
バーンアウト傾向が高い人は共感性が低い
ということが分かりました。

共感性とバーンアウト

つまり、精神的に強い疲労状態になると他者への共感的態度が弱まるということです。

想像性が低下

また、バーンアウト傾向の高い人は、認知的共感性の「視点取得」や「想像性」が低いことも報告しています(飯岡 & 長谷川,2017)。

視点取得とは、自発的に他者の視点(立場・観点)に立って物事を考えようとする傾向のことです。

想像性とは、架空の人物の感情や行動に当てはめて想像する傾向を言います。

感情移入とは、自分が相手と同じような経験をしてしまっている状態です。

このような状態では、状況を客観的に捉え、相手の立場で相手の気持ちを想像することは難しいでしょう。

感情移入しすぎると想像性が弱まるこのように、相手と同一化してしまうような行き過ぎた感情移入は、自分の心や体を知らぬ間に疲弊させてしまうため注意が必要です。

研究③他者の不幸を喜ぶ感情が低下

感情移入しすぎる事でのマイナス要素を見てきました。ここからは、感情移入のプラス面の研究をご紹介します!

シャーデンフロイデとは?

シャーデンフロイデとは、他者の不幸を喜ぶ感情です。

たとえば、
・会社員の太郎くん
・仕事で失敗をして上司に叱られた
・同僚が花子さんが表彰された
・花子さんをみて悔しかった

後日、花子さんが仕事でミスを、慌てているところを見てうれしさを感じる

シャーデンフロイデの例

このようなシャーデンフロイデは、”人の不幸は蜜の味”という言葉があるように、あっておかしくない感情です。

しかし、シャーデンフロイデが強いと他者の気持ちを無視してしまい、自己中心的な行動が増えてしまいます。

過剰になりすぎると
・嫌がらせ
・いじめ
・犯罪
などにつながる恐れがあります。

そこでそれらを抑止するために、感情移入をはじめとした共感関連反応への研究が盛んにおこなわれています。

不幸を喜ぶ気持ちを減らす

葉山(2016)の研究では、平均年齢20.6歳の大学生132名を対象にして実験を行いました。

実験では、対象者が課題ビデオの登場人物に、感情移入したとき、シャーデンフロイデに影響があるのかを検討しています。

課題ビデオは、
ビデオの内容は少年と病気の母親が登場する話です。少年は、母親に反抗的な態度をとることもありますが、長期入院直前には母親と別れるさみしさに耐えきれず泣いてしまうといった内容です。

その結果、感情移入が強いと、シャーデンフロイデが減ることが分かりました。

感情移入とシャーデンフロイデの関係

加えて、感情移入しすぎると、自分の痛みのように感じる苦痛が増えることもわかりました。

感情移入しすぎる影響つまり、感情移入は、他者の不幸を喜ぶ気持ちを減らすことができます。ただし感情移入しすぎると、自分の苦痛も増えてしまうため、注意が必要と解釈できます。

研究④感情移入はストレス解消につながる

感情移入と泣き体験

感情移入して泣いてしまった!という経験がある人も多いのではないでしょうか?

澤田, 橋本, & 松尾(2006)は、大学生206名を対象に、感情移入して泣くことがどのような影響をもたらすのかを検討しています。

調査では、これまでに泣いた経験のうち、代理的経験によって泣いた経験(映画や小説などを読んでいて感情移入した経験)を自由に回答してもらいました。その後、質問紙に回答をしてもらい、男女で比較をしています。

まずは、感情体験の結果です。感情体験とは、メディア・物語への感情移入の体験です。感情体験は、男女差はなく男女ともに感情移入の体験はありました。

感情体験の結果

つづいて、感情移入によって泣く「泣き体験」は、有意に女性のほうが多いことがわかりました。

感情移入と泣き体験

泣きの体験が女性に多いというのは想像しやすい結果かもしれませんね。

泣くことには、発散効果があります。つまり、感情移入による泣き体験は、ストレス解消につながると言えそうです。

加えて、泣き体験によるストレス発散は、女性の方が経験することが多いと捉えることができます。

想像的感情移入でストレス解消

また、想像的感情移入が現実的なストレス解消につながるかについても検討しています(澤田, 橋本, & 松尾,2006)。

想像的感情移入とは、小説や映画などの架空の他者に感情移入することです。

調査の結果、男性は、想像的感情移入がストレス解消を高めることが分かりました。

想像的感情移入とストレス解消具体的には、

・ヒーロー映画を観て自分までヒーローになった気分になる

・恋愛の小説を読んで、主人公と同じ気持ちを味わう

・仲間との一体感がテーマのドラマを見て、一緒にアツくなる

などです。男性は、このような物語の世界に想像的感情移入することで、ストレス解消ができると言えます。

感情移入の男女の違い

これまでの結果から、メディアを見て感情移入する「感情移入体験」には、男女による差がないことが分かりました。

女性は「泣きの体験」によるストレス発散効果が期待でき、男性は「想像的感情移入」でストレス解消することが分かりました。

感情移入のストレス効果男女の差

この結果を澤田, 橋本, & 松尾(2006)は、男性よりも女性の方が、物語の世界を自己から距離を置いた世界として捉えていると解釈しています。

つまり、女性は物語に感情移入するよりも現実世界で友達とおしゃべりをしたり、おいしいものを食べたほうがストレス解消効果が高いかもしれません。

一方、男性は落ち込んだ時には元気の出る映画、泣きたいときに悲しい小説を読むことで、ストレス解消効果が得られると言えそうです。

感情移入-まとめ

まとめ

感情移入とは自分の意図に関係なく、自分が相手と同じ気持ちになってしまうことでしたね。

感情移入は、コミュニケーションにおいて、相手の気持ちを理解する上で必要な能力です。

上手に感情移入ができる人は、自分の豊な内面を表現することができ、ストレス発散につなげる事もできます。

しかし、感情移入しすぎると心も体も疲弊させてしまうので注意が必要です。

助け合い掲示板の活用

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・引用文献
・Boscarino, J. A., Figley, C. R., & Adams, R. E. (2004). Compassion fatigue following the September 11 terrorist attacks: A study of secondary trauma among New York City social workers. International journal of emergency mental health, 6(2), 57.
・Eisenberg, N. (1988). Empathy and sympathy: A brief review of the concepts and empirical literature. Anthrozoös, 2(1), 15-17.
・飯岡由美子, & 長谷川美貴子. (2017). ケア専門職における共感性とバーンアウトの関係性. 淑徳大学短期大学部研究紀要56, 123-141.
・串崎真志. (2019). エンパス尺度 (Empath Scale) の作成: 高い敏感性をもつ人 (Highly Sensitive Person) の理解. 関西大学人権問題研究室紀要= Bulletin of the Institute of Human Rights Studies, Kansai University, (77), 37-54.
・久保真人, & 田尾雅夫. (1991). バーンアウト. 心理学評論, 34(3), 412-431.
・長谷川美貴子. (2009). 「ケア」 における共感と感情操作の問題 (人文・社会科学系). 淑徳短期大学研究紀要48, 77-91.
・Maslach, C., & Jackson, S. E. (1981). The measurement of experienced burnout. Journal of organizational behavior, 2(2), 99-113.
・Orloff, J. (2017). The empath’s survival guide: Life strategies for sensitive people. Boulder, CO:Sounds True
・澤田忠幸, 橋本巌, & 松尾浩一郎. (2006). 青年期における直接的・代理的場面での 「泣き」 の経験: 男女差および共感性, ストレス・コーピングとの関連に焦点を当てて.