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仕事が辛い時を乗り越える方法などを

仕事が辛い時を乗り越える方法-臨床心理士が解説①

はじめまして!精神保健福祉士の川島達史です。私は現在、こちらの初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

今回は「仕事が辛い」について解説していきます。目次は以下の通りです。コラム①の目次は以下の通りです。

  • 仕事が辛い労働者は6割
  • 10~15人に一人が「うつ病」
  • 年間2,000人近くが自殺
  • NIOSH職業性ストレスモデル
  • 情緒的コーピングで対処
  • 問題解決型コーピング

各コーナーにはもっと深く知りたい!という方のためのリンクがあります。まずは全体を読んでみて、気になる場合はリンク先をクリックしてみてください(^^)

仕事が辛い・うつ病の危険も

仕事が辛い状況を放置しておくと、どのような問題が起こるのでしょうか?まずは2つの統計から、問題の深刻性を理解していきましょう。

統計① 6割が強い心理的問題

皆さんはお仕事で疲れていませんか?一人あたりの仕事量が膨大。休憩もあまり取れずに1日中ヘトヘトという方もいらっしゃると思います…。これでは、体の疲れがとれないし、心にストレスが溜まるいっぽうですね。。。

厚生労働省の資料を見ると、仕事について6割が強い不安や心理的問題を抱えています。皆さんはいかがでしょうか。

ストレスがある労働者の推移

さらに下図のグラフを見てみましょう。一番長いグラフは「仕事の質・量」です。6割以上の人が、仕事の質や量にストレスを感じていることが分かります。

労働者のストレスの内容

会社や社会への貢献が実感できない仕事は、ストレス要因になりやすいといえそうです。一方で質の高い仕事は、心理面でプラスに働きそうです。しかし過剰な場合ストレスになりやすいため、仕事量を調節することが重要といえます。

統計② 仕事が辛い-自殺の問題

もし仕事が辛いという状況が長期間続いている方はかなり注意が必要です。下記は厚生労働省が発表した資料です(警察庁自殺統計を加工)。

自殺者数と仕事が辛い人との関係

自殺者のうち、労働者・自営業者全体では8,513人が自殺をしています。

殺人事件が1件でも起きるとニュースで放映されますが、自殺については、もはや数が多すぎて社会問題として扱いが小さくなってしまっています。

自殺のニュースって意外と少ないですよね。ニュースで聞くのは他殺ばかりです。実際に厚生労働省の人口動態統計によれば、2017年の「他殺」による死亡者数は、288人という結果が出ています。

仕事関係が原因で8,500人も自殺をしているのに、300人前後の他殺のニュースの方が遥かに報道されているのは違和感があるところです。仕事が辛いのはあたりまえ!というマッチョな考え方をする方もいると思いますが、自殺者がこれだけ多いという点をもっと重く考えなくてはなりません。

診断とチェック

定期的にこちらの仕事が辛い簡易診断で自己チェックしておくことをお勧めしています。客観的な状況を知りたい方はご活用ください。
仕事が辛い簡易診断でチェック②

仕事が辛い-職業ストレスモデル

仕事が辛い状況を放置すると、うつ病や自殺リスクにつながることを解説してきました。ここからは、仕事が辛くなってしまう原因を理解し、仕事が辛い気持ちへの対処策を解説していきます。

仕事によるストレス反応の要素を細かく分析したものとして、「NIOSHの職業性ストレスモデル」があります。以下の図を眺めてみてください。

NIOSHの職業性ストレスモデル

(※NIOSHの職業性ストレスモデルを一部改訂しています)

仕事のストレッサーとは職業上でのストレスとなる原因のことを意味します。仕事で嫌なことがあったとき、もちろんストレス反応につながるのですが、それ以外にも「個人要因」「仕事外の要因」「緩衝要因」の影響があります。それそれについて具体的に解説してきましょう。

仕事のストレッサ-
主に、パワハラやセクハラ、長時間労働などで起こるストレス要因です。仕事が辛い顕在的な原因だと言えます。

個人的要因
失恋や夫婦喧嘩などの会社とは関係ないストレス要因になります。体の不調、性格なども個人要因に含まれます。

仕事外の要因
会社が遠い、満員電車のストレス、友人との喧嘩など、直接仕事とは関係ない状況で発生する要因です。

緩衝要因
ストレスを和らげてくれる要因です。充実した趣味、仕事の息抜きなどを意味します。

ストレス反応
体が緊張・興奮状態になります。夜眠れなくなったり、意欲が減退など様々な症状が表れます。

コーピング
ストレス反応を和らげる対処法を活用していきます。「情緒的コーピング」と、「問題解決型コーピング」の2つがあります。

疾病
「職場うつ」や「燃え尽き症候群」などの心理的な病気を発症します。

うつ病と仕事の辛さこのように仕事が辛い状態は、仕事だけではなく家族や友人との関係や充実した趣味があるかどうかで決まってくるのです。そのため、今の仕事が辛い気持ちは「どんな原因から起きているか」を分析することが大切です。

ストレス反応が長期化すると、心理的に追い込まれた状態になってさらに仕事が辛い状態になってしまうため、早めに対処してきたいところです。

情緒的コーピング

それでは、ここから具体的な対処法を見ていきましょう。先ほどの「NIOSHの職業性ストレスモデル」で、少し解説しましたが、ストレス反応への対処法は、「情緒的コーピング」「問題解決型コーピング」の2種類がありました。下図の矢印の部分ですね。

NIOSHの職業性ストレスモデル

情緒的コーピングはさらに3つの方法に分けることができます。

①助けを求めるストローク

心理学でいうストローク(stroke)とは、「人の存在や価値を認めるための言動や働き」を意味します。言葉はもちろん、言葉以外(目を合わせる、うなづく、手を振る、頭を撫でる、さするetc.)のコミュニケーションも含まれます。

ストロークは、心理療法の中で重要概念とされており、円滑な人間関係に欠かせない要素となっています。仕事が辛い理由に最も多い職場の人間関係を改善するために有効な手法です。ぜひ、取り入れていきましょう。

心理学におけるストロークは大きくわけて2つあります。

プラスのストローク
「プラスのストローク」は受け取ると嬉しく感じるストロークを意味します。褒める・励ます・許す・労う・ほほえむ・関心をもつ等が挙げられます。

マイナスのストローク
「マイナスのストローク」は受け取ると嫌な気持ちになるストロークです。邪魔をする・けなす・軽蔑する・見下す・にらむ等が挙げられます。

仕事が辛い時のストローク

ストロークが不足した仕事が辛い状況では「マイナスのストローク」を使ったコミュニケーションが増えがちです。そして、マイナスのストロークを相手にあげた場合は99%の確率でマイナスが返ってきます。人間関係がギスギスした職場環境では、仕事が辛い気持ちを更に強めてしまうのが想像できますよね。

ストロークをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・プラスのストロークが多い時
・マイナスのストロークが多い時 
・5つのストローク上手
仕事が辛い時の対処法!職場での人間関係のストロークで解決③

②ソーシャルサポート

まずは、ソーシャルサポートの意味について見ていきましょう。ここでは心理学的な定義をいくつかご紹介していきます。

・定義①Caplan (1974)
”家族、友人や隣人などの個人をとりまく
様々な人々からの有形、無形の援助を指す”

・定義②心理学辞典(1999)
”ソーシャルサポートとは何かについて、まだ明確に定義はなされていない。(中略)
対人関係と人の心身の健康との関連についてさまざまな研究をソーシャルサポート研究として総称しようという立場に立つ”

とされています。

仕事が辛い時はソーシャルサポートを利用つまり、簡単にいうと言えば、周囲の人たちから得られる援助のことをソーシャルサポートと捉えて良さそうです。また、そのサポートは、物質的なものとは限らないということですね。

周囲からのサポートが得られる環境にあると心理的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

ソーシャルサポートをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・自己肯定感とサポート
・上司・同僚からもらおう
仕事が辛い時は「ソーシャルサポート」を得よう④

③認知療法

認知療法とは、“自分の受け止め方のクセ”や信念に焦点を当て、それらを変えることで問題解決をする療法です。認知療法を用いることで、仕事が辛い時に陥りやすい、極端な思考を改善し、現実的な思考に変えることができます。認知療法にはいろいろな手法がありますが、本コラムでは論理療法「ABC理論」をご紹介します。

ABC理論は、出来事をどのように捉えるかで、感情が変わってくる、ということを解いています。ABCの具体的な意味は次の通りです。

A=Activating event
出来事

B=Belief system
信念(捉え方)

C=Consequence
結果(沸き起こる感情)

認知療法のABC理論とはABC理論では、人の感情は「A:出来事」→「B:信念」→「C:結果」の段階を踏んでいくと考えます。このABCの中で、出来事(A)は変えることができません。しかし信念(B)は、変える事ができます。

つまり、出来事の捉え方(B:信念)次第で、沸き起こる感情は全く別のものになるのです。「仕事が辛い時には、極端な考え方をしがち…」という方は、ABC理論を学ぶことで心のバランスがとりやすくなります。

ABC理論について詳しく知りたい方は下記をご参照ください。
・ラッショナルビリーフとは
・辛い気持ちを加速させる思考
・心が安定するトレーニング
仕事が辛い!認知療法で心のバランスを保つ⑤

問題解決型コーピング

続いて、問題解決型コーピングを見ていきましょう。情緒的コーピング同様に、こちらも大きく2つの方法に分けることができます。下図の矢印の部分になります。

NIOSHの職業性ストレスモデル

①仕事量を見直そう!抱え込みすぎに注意

仕事が辛い!という方の中には、現実的ではない仕事量を課せられているというケースが良くあります。心理学の調査では、自分の許容範囲を超えた目標設定は、「無気力」につながることが分かっています。

ミハイ・チクセントミハイ(2000)は自分のスキルや作業の難易度によって、無気力になってしまうことを示唆しています。縦軸が「難易度」、横軸が「スキルの高さ」になります。以下の図の水色のエリアをご覧ください。

学習性無力感の解説

学習性無力感とは、「自分は無力なんだ」と学習して、無気力になっている状態を指します。つまり、自分には課題をこなす能力がないんだ…と仕事が辛くなってしまう状態ですね。

自分の「スキル」に見合った「仕事量」でないと、難易度が高すぎてしまいモチベーションが上がらなくなってしまいます。そこで、自分の領域を超える膨大なタスクを抱えている場合は、仕事量を見直していく必要があるでしょう。

仕事の見直そう!抱え込みに注意
・アサーションで上司に主張
・仕事が辛いを克服した事例
仕事が辛いから抜け出す「仕事量の見直し、主張」⑥

② 公的機関や法律を活用しよう

労働政策研究機構の調査では、新入社員が会社を辞める理由として、

「相談できる上司・同僚がいない」 85.0%
「職場の人間関係が良好でない 」92.0%
「ストレスが大きい」 78.8%

と挙げられています。新入社員の多くがストレスや辛い気持ちを抱えて会社を辞めることが分かります。休職までしなくとも働きづらいと考える休職の予備軍の人数はもっと多いと考えられています。

仕事が辛い理由現在では2015年や2016年の電通自殺事件を契機として、社会全体として働く人のメンタルヘルスに取り組む姿勢ができてきています。みなさんの会社でも仕事が辛い・・・と感じる際に利用できる制度があります。

・ストレスチェック制度
ストレスチェック制度は、労働者のストレスの状況について定期的に検査を行い、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止することを主な目的としたものです(厚生労働省)。ストレスチェックの結果は本人に通知がされます。また個人のデータが上司や社長に漏れることはありません。

ただし全体のデータとしては通知されることが多いので、経営者に職場環境の改善を促すことができます。人事の査定などには影響がないので、経営陣に改善を促すため、率直に質問項目に答えると良いでしょう。

・50人以上の会社は義務
法律上は50人以上の会社は義務づけられています。しかし、目立った罰則がないためにストレスチェックをしない会社もあります。もしあなたの会社が50人以上でストレスチェックをしていない場合は、社員のメンタルヘルスに相当鈍感である可能性があるため、人事の方などに提案するのもいいでしょう。

ストレスチェックの結果が悪かった場合は、産業医に是非相談してみてください。産業医とは常時雇用する従業員数が50名を超える場合、月に1回以上訪問をするお医者様です。ビジネスの現場のメンタルヘルスに詳しい方が多いので重要な支援の1つです。

制度の利用についてより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・EAPとは何か
・労働基準監督署に相談
・労働組合で条件の改善
仕事が辛い時は法律や公的機関を利用する⑦

私たち臨床心理士・精神保健福祉士は、暖かい人間関係のある社会を創ることを目的として、コミュニケーション講座を開催しています。

コミュニケーション講座の様子写真

心理療法やソーシャルスキルの練習を勉強したい方はぜひお待ちしています。もしコラムを読んでみて、もっと心理学を学習したいと感じたら、こちらの心理学教室のページを参照ください。それでは先に進みましょう!

皆さんは会社に信頼できる人はいますか。何かあったときに頼れる人が周りにいないと、適切なサポートが得られず仕事が辛い状態になってしまいます。そこで、うまく周囲から「ソーシャルサポート」を獲得していく必要があります。

仕事が辛い対処法を解説

仕事が辛い気持ちを引き起こす原因や背景はさまざまあります。本コラムでは対処法として「①ストローク上手に」「②ソーシャルサポート」「③認知療法」「④仕事量を見直し、主張」「⑤会社の制度を使おう」の5つの方法を解説していきます。仕事が辛い気持ちを予防しながらし仕事や生活をするために活用してみてください。

次回は、仕事が辛い診断についてお話します。お楽しみに!(もう少し下に次のコラムボタンがあります)

★仕事が辛い・・・自分の状況にあった方法で対処しよう!

目次

①仕事が辛い-概観
②診断でチェック
③人間関係のストローク
④ソーシャルサポート
⑤認知療法で心のバランスを保つ
⑥仕事量の見直し、主張
⑦法律・公的機関の利用

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典
・厚生労働白書 厚生労働省(2013)「平成24年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」まとめ」 職業性ストレス簡易調査票を用いたストレスの現状把握のためのマニュアル―より効果的な職場環境等の改善対策のためにー
・ミハイ・チクセントミハイ著,今村浩明訳:フロー体験 喜びの現象学,新思索社,2000
・厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課 産業保健支援室長 井上 仁
・平成29年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況 厚生労働省
・平成29年中における自殺の状況 資料 警察庁
・平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況 厚生労働省
・小松優紀・甲斐裕子・永松俊哉・志和忠志・須山靖男・杉本正子 2010 職業性ストレスと抑うつの関係における職場のソーシャルサポートの緩衝効果の検討 産業衛生学雑誌
・原谷(1998)第8回NIOSH職業性ストレス調査票 産衛誌 40巻,1998