>
>
>

「悲しい」気持ちを診断・チェック!対処法を臨床心理士が解説

悲しい


悲しい気持ちの診断・チェックと対処法-臨床心理士が専門解説①

「悲しい」を専門家が解説します

こんにちは。臨床心理士の森です。お仕事では、精神疾患を抱える方に心理テストとカウンセリングを行っています。

このコラムでは「悲しい」をテーマに専門家が解説をしています。全部で5コラムあります。しっかりとお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。是非お付き合いください。

 

「悲しい」気持ちとは?

皆さんは「悲しい」という言葉を聞いてどのような印象を持つでしょうか?

今はへっちゃらという方もいれば、まさに悲しみのさなかにあるという方もいるかもしれません。悲しみはつらい心持ちです。と同時に、自分をよりよく理解し、精神的に成長するチャンスでもあります。

心理学的には、悲しみは、あるはずの大切なものを失った時の感情です。心にぽっかりと穴が開いたような感覚、誰しも経験したことがあるでしょう。悲しみは、喜び、驚き、嫌悪、怒り、恐れなどと共に基本的な感情で、生後数か月で体験し始めます。大切なものを失ったときに悲しい気持ちになるのは正常な反応だと言うことができます。

久保(2007)が幼児に行ったインタビューによると、悲しい思いをした経験を言葉で説明できたのは5歳児では25%ほどでした。ところが、6歳児になると、ほとんど100%の子どもが悲しい思いをした経験を語ることができました。

この研究から、悲しみを言葉にして捉えられるようになるのは5~6歳頃だと考えられます。こうして、いろいろな悲しい経験をしていくうちに自分にとって大切なものが何か、はっきりしていくのです。

悲しい気持ちにもプロセスがある

悲しいとはどのような気持ちかでは、悲しみはどのようなプロセスをたどるのでしょうか。

とても大切なものを失うなど強いショックを受けた時、はじめ人は感情に蓋をしてしまうことがあります。だんだんと心が回復していく中で、何が起きたのかを人に話すことができるようになり、蓋をしていた悲しみが外に出るようになります。

そして、少しずつ穏やかさを取り戻していくのです。さらに、好きなことや新しいことを始めるなど、自分にとってプラスになることを取り入れるようになっていきます。全ての悲しみが同じというわけではありませんが、だいたいこのようなプロセスをたどっていくのが一般的です。

悲しみが強まった状態を悲嘆(グリーフ)と言います。家族やごく親しい人を亡くした人や重篤な病気に罹患した人の心の手当てをする、グリーフケアの重要性に注目が集まっています。

悲しいが長期化・深刻化することも

悲しみはいろいろな表れ方をします。

・悲しい気持ちになる
・涙が出る
・ショック、混乱、イライラ
・罪悪感を抱く
・集中できない、気が散る
・食欲がなくなる、胃痛、腹痛 など

悲しみは多くの場合、自然に回復します。しかし、失った大切なものの存在が大きくショックが強い場合、悲しみが長期化したり、極端に辛くなったりすることがあります。

Sidneyらの悲嘆と死別に関するレビュー論文には、大切な人を失った悲しみの表れ方は千差万別で、どこまでが正常で、どこからが病的なのか分かりにくいと書かれています。また、悲しみの持続期間も、一概にどのくらいが正常とは言えません。一瞬だけ悲しいこともあれば、何か月も悲しみ続けることもあるのです。

このように、今体験している悲しみが“普通”か“病的”か分けることは難しく、個人差やきっかけとなったことの大小によってさまざまです。

悲しい気持ちがいつまでも消えないと、学校や仕事、健康面に影響が出ることがあります。さらには、人間関係がうまくいかなくなったり、ミスが増えたりして、余計に落ち込みを招いてしまうこともあります。

このような状態が長く続くと、うつ病などの精神疾患を発症する危険性があるため注意が必要です。悲しみのために日常生活や社会生活に支障をきたすようであれば、精神科などの専門機関に相談するのも一手です。

悲しみを感じない人は要注意

受け止めきれないほど悲しい時、人は悲しみを全く感じなくなることがあります。これは心の防衛機制が働くためです。

悲しみを感じない反面、不安やイライラなどの他の感情が増したり、身体の不調が現れたりすることがあり、厄介です。悲しい状態はつらいですが、悲しむことは大事な心の機能です。全く悲しくないと言うのも困りものなのです。

 

「悲しい気持ち」のセルフチェック

まずは、ご自分の悲しみの程度をセルフチェックしてみましょう。

次の「悲しい」気持ちを言い表す言葉について、今現在のあなたの状態にどの程度あてはまるか1つ選んでください。
0…まったく当てはまらない
1…あまり当てはまらない
2…少し当てはまる
3…かなり当てはまる

悲しい気持ち診断回答が終わったら、該当した数字を足して合計点を出してください。

セルフチェックの傾向と対策

0点~5点「悲しい」気持ちは低め
現在の「悲しい」気持ちは低めだと考えられます。現在は悲しい気持ちが弱く、全般的に心が落ち着いているでしょう。

物事を冷静に受け止め、落ち着いて対処する力を発揮しやすい状態にあります。一方で、悲しみを感じてもおかしくないのに全く悲しくないという場合は、実は抱えきれないほどの悲しみを蓄えている危険性もあります。

6点~15点「悲しい」気持ちは中程度
時折、悲しい気持ちに陥ることがあるでしょう。何か気がかりなことがあり、うまく集中できないでいます。

この状態が慢性的に続いている場合は、悲しい気持ちの対処法を身につけると良いでしょう。

16点~27点「悲しい」気持ちは高め
現在、非常に強く悲しみを体験していることでしょう。憂うつな気分で過ごす時間が長く、多少のことでは気が晴れません。そのために、本来持っている能力などを発揮しにくくなっているかもしれません。つらくみじめな感覚があり、積極的に悲しい気持ちに対処することをお勧めします。

定期的にチェックしてみよう

結果は、今現在のあなたの「悲しい」気持ちの程度です。時間や状況によって変化するため、できれば月に一度ほど自分の状態をチェックするのに使ってみてくださいね。

自分の状態を知ることで、適度な悲しみに対処できるようになります。下記で対処法をご紹介します。

「悲しい」気持ちの原因と解決策

セルフチェックはいかがでしたか。「悲しい」気持ちの程度が低かった場合は、とりあえずはひと安心ですが…悲しみをきちんと感じ取れていないだけかもしれないので要注意です。また、「悲しい」気持ちの程度が高かった場合は、抑うつなどの深刻な状態に移行する危険性があります。

そこで、本コラムでは、「悲しい」気持ちの原因を解説し、可能な限り解決策を提案させて頂きます。一気に全部読むのは大変…という方は当てはまる項目についてリンク先をチェックしてみてください。

 

①感情の仕組みを知って役立てよう

泣くから悲しい?ジェームズ=ランゲ説
悲しい時に涙を流すのは自然なことですし、すっきりするためにも必要なことです。

悲しみは脳や内臓などの器官と密接に関わり合っています。脳で言えば、特に大脳辺縁系と呼ばれる一画が感情に関わっています。悲しい体験をするとこれらの身体の各部位が反応し、涙が出たり食欲がなくなったりするのです。つまり、脳や内臓などの生理的なメカニズムが「悲しい」気持ちの原因となっているのです。

他にも、感情が生じるメカニズムとして、“泣くから悲しいのだ”という説があります。これはジェームズ=ランゲ説と言います。悲しみを体験する前に、先に泣いたり、汗をかいたり、動悸がしたりする身体の反応が起こる、という説です。

悲しくなってしまう判断をやめる
感情が生じるメカニズムにはいろいろな説があります。その中に、ある出来事を取り返しがつかない喪失だと判断すると、悲しみを感じるという説があります。普段からどのような考え方をすると悲しみを感じにくくなるでしょうか。当コラムでは、先ほどご紹介したジェームズ=ランゲ説を応用して、楽しい表情を作り、楽しい気分になる方法を一緒に試していきます。試してみたい方、気になる方は、ぜひコラム②を参考にしてみてください。

 

②大切なものを失った悲しみの対処法

悲しみが癒えない時は対処法を
大切なものを失った時、人は悲しみを感じます。大切なものを失うことを喪失体験と言い、「悲しい」気持ちになる原因のひとつです。

泣いたり、ショックを受けたり、イライラしたり…。こうした悲しみは自然に回復していくことが多いのですが、回復に時間がかかる場合は対処法を試すと良いでしょう。

ポジティブな記憶を思い出す
喪失体験をした悲しい気持ちが高まっている時、何とも言えずつらいですよね。悲しい時は思い切り悲しむことも大切ですし、はやく立ち直りたいと思えば対処法を試しましょう。

例えば、失ったことや悲しいことばかり思い出すのではなく、楽しいことや良いことも思い出すと良い気分になれます。少しでも悲しみから解放されたい!という方は、コラム③を参考にしてみてくださいね。

 

③原因帰属のバランスを取ろう

何のせいにするかで悲しみを減らせる?
原因帰属とは、ある行動の結果の原因をどこに求めるか、ということです。簡単に言えば、何かが起きた時、それを何のせいにするか、ということです。何もかもを自分のせいにばかりしすぎると、悲しみを感じやすくなる場合があります。

例えば、良いことは自分のおかげ、悪いことは他人や運、神様のせい、と原因帰属すれば気は楽です。これが、悪いことは全部自分のせい、といったように内に向けて原因帰属すると、慢性的に悲しい気持ちに陥ってしまう要因になります。

いろいろな方向に原因帰属しよう
原因帰属が内にばかり向かないよう、いろいろな原因帰属ができるようになると悲しみを減らすことができるでしょう。

原因帰属には何が正しいという答えはありませんから、自由な発想で、たまには運や神様のせいにしてみてはいかがでしょうか。原因帰属を変えて悲しみを減らしたい!という方は、ぜひコラム④を参考にしてみてください。

 

「悲しい」気持ちを乗り越えよう

専門解説で悲しい気持ちを乗り越えるこのように、悲しみが生じるのは、「感情が生じるメカニズム」「喪失体験」「原因帰属が内に向きすぎる」が原因となることがあります。次回以降は「悲しい」気持ちを乗り越える方法ついて考えていきます。

1日では難しいと思うのでブックマークしてゆっくり取り組んでみてくださいね(^^)

コラム② ポジティブシンキングになる方法「リフレーミング」とは
コラム③ ポジティブシンキングを身に付けるために大切な事とは?
コラム④ ポジティブシンキングを身に付ける具体的な2つの方法

悲しみという感情はつらいものです。しかし、生きていれば悲しい経験を避けては通れません。これから紹介する、悲しみを残り越える方法を日々の生活の中に役立てていくことで、悲しみを乗り越えやすくなることでしょう!

次回は、「悲しい」気持ちが生じる原因の1つ目「感情が生じるメカニズム」の対処法をご紹介します。お楽しみに!(もう少し下に次のコラムボタンがあります)

★悲しい気持ちの特徴を 理解して 3つの原因に対処しよう
コミュニケーション講座

*出典・引用文献
久保ゆかり 2007 幼児期における感情表出についての認識の発達;5歳から6歳への変化. 東洋大学社会学部紀要, 44(2), 89-105.
Sidney, Z. et al 2009 Grief and bereavement: what psychiatrists need to know. World Psychiatry, 8, 67-74

*出典・参考文献
レジリエンス 2005 傷ついたあなたへ-わたしがわたしを大切にするということ DVトラウマからの回復ワークブック. 梨の木社.



深刻化する前に対処しましょう