人が怖い心理を克服する方法
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。今回は「人が怖い心理の克服法」についてご相談を頂きました。
相談者
24歳 男性 会社員
お悩みの内容
私は中学生の後半ぐらいから、人が怖いという気持ちが出てきました。初対面の人と話すとき、人前に立つとき、異性と話すとき、ものすごく緊張します。
そのため、お昼ご飯は1人で食べ、休日は1人で過ごすことが多いです。
このままではあまりにも寂しい人生になると感じています。人が怖い心理を克服したいと思っています。どうすれば克服できますか?
人が怖いと、人間関係ですごく疲れてしまいますよね。筆者の川島も同じ症状に悩まされ、社交不安障害という病気になったことがあります。ひきこもり、視線恐怖、自殺企図も起こり、生きる気力を失っていたこともありました。
当コラムでは、人が怖くなる心理と改善策、そして私の体験談を少しだけお話できればと思います。是非最後までご一読ください。
人が怖い,深刻な問題
人が怖い気持ちが過剰になると以下のような問題が起こります。
回避行動
人が怖い気持ちが大きくなると、人と関わることに強烈な不安を伴うので、会話場面を避けるようになります。深刻になると引きこもりになるかたもいます。
経験を積めない
人と接する時間が減ると、会話力を成長させる機会を失うことになります。会話は、傾聴力、発話力、豊かな表情、人の気持ちを考える…様々なスキルが必要になります。
思春期はこれらのスキルを成長させる重要な時期なのですが、人が怖い感覚がある方は、経験値が不足し、未熟な状態のままで社会に出てしまいます。
大人になってから、仕事や恋愛で苦労する方もたくさんいます。
社交不安障害のリスク
人が怖いという気持ちが深刻になると
などのリスクが強くなります。こうした症状をそのままにしておくと、周りの目ばかりを気にしてしまい、根拠もなく自分を責めることが多くなります。
社交不安障害はうつ病と関連することも多く自殺企図が現れることもあります。筆者の川島自身も、社交不安障害が重度な時期に自殺の危険がありました。
人が怖い原因とは
人が怖いという心理原因は様々なものがあり複雑です。当コラムでは代表的な4つの原因を解説していきます。
小さな頃は人懐っこかったのに、12~15歳の頃から人が怖いという感覚が強くなる方もいます。下記の図は社交不安障害の発症年齢となります。[3]少し眺めてみてください。
青色の10~15歳が突出しているのがわかります。病気というと、普通は子どもか高齢者がかかりやすいものですが、人が怖い心理は健康的であるはずの12~15歳に起こるのです。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
私的から公的自己意識へ
私たちは小学高学年までは、私的自己意識の世界で生きています。
サッカーがしたい!
お菓子をたべたい!
一日中遊んでいたい
など自分の気持ちを優先し、活発に生きているのです。
公的自己意識とは何か?
一方で、12~15歳になると「公的自己意識」がどんどん高まっていきます。公的自己意識とは「人の目を気にする心理」です。
異性から嫌われたくない
かっこよくみられたい
内申の点数をかせぎたい
友人から孤立してはいけない
などが挙げられます。12~15歳はこの公的自己意識が爆発的に増えていくのです。
同時に、思春期の青年は、心も未発達です。コントロールの方法がまだわからないので、公的自己意識の爆発をコントロールできず、人が怖い気持ちが抑えられなくなるのです。これは自意識型のシャイネスと表現することもあります。
人間関係におけるネガティブな恐怖体験により、人が怖い感覚が強くなる方もいます。
いじめられた 大きな声で怒られた 暴力を受けた SNSで悪口を言われた
これらの体験が引き金となり、人が怖くなることもあります。
会話の技術が不足していると、人間関係が失敗しやすくなります。
会話が続かない
話していてもお互いつまらない
自己開示しないため警戒される
集団の会話で孤立する
このような体験が積み重なると、人と接することにネガティブな気持ちが強くなり、人が怖くなることもあります。
人が怖い克服する8つの方法
ここからは人が怖い悩みの解決策を紹介していきます。これまで心理学の世界では様々な改善法が開発されてきています。今回は私の経験も抑えて、以下の8つのやり方を提案させて頂きます。
①私的自己意識を強くする
②失敗過敏を和らげる
③現実的に考える
④会話の自主練をする
⑤行動範囲を広げる
⑥森田療法を活用する
⑦医療機関の助けを借りる
すべて行うのは大変なので、上記の中でご自身の状況に合いそうなものを、組み合わせて活用してみてください。
対策① 私的自己意識を増やす
前半でもお伝えした通り、公的自己意識が強い人は人が怖くなりがちです。改善するためには、公的自己意識を減らす、私的自己意識を増やす、この2点が大事になります。例えば会話をするときに
相手が不快にならない会話をしなくては
つまらない人と思われてならない
と考えると公的自己意識が強くなり緊張しやすくなります。逆に
この前食べたおいしいお店の話がしたいな
自分らしく会話できればOK
と考えるとリラックスすることができます。詳しいトレーニング法は以下のコラムでも解説しました。是非取り組んでみてください。
対策② 失敗過敏を和らげる
人が怖い気持ちがある方は、会話をするときに失敗過敏があることがわかっています。
恥をかいてはいけない
緊張してはいけない
欠点を見られてはならない
上記のような感覚がある方は、発言をするたびに緊張してしまい、疲れてしまいます。失敗過敏を改善するには、考え方を積極的に修正していく必要があります。例えば、
はじをかくのも愛嬌♪
たまには好きな話題を話そう
そうだ!すごく面白かった
YUTUBEの話をしよう
と考えるのです。このように前向きな表現をすると、会話も楽しくなってきます。
対人関係で失敗のイメージをしてしまう方は、下記のコラムを参考にしてみてください。より詳しく練習することができます。
対策③ 現実的に考える
人が怖いという気持ちがある方は、極端な考え方に囚われていることがあります。例えば、
緊張していると弱い人間と思われる
話し下手は嫌われる
赤面すると評価が下がる
こうした強い思い込みが見られます。これらの思い込みを改善するには、本当に自分の考えが正しいのか?現実的に考える練習が必要です。
非現実な考え方になっているかも…と感じる方は下記のコラムを参照ください。考え方を見直し、心をほぐす練習をすることができます。
対策④ 会話の練習をする
人が怖い方は、傾聴スキル、発話スキルが低い傾向があります。こうしたスキル不足から、さらに人と接することを避ける悪循環に陥ります。
会話の力を取り戻す手法としては、体系的に学び、反復練習を繰り返すことが大事になります。具体的には筆者が主催する人間関係講座がおススメです。
筆者の川島は心理学の大学院で会話研究を行ってきました。講座では、傾聴力、発話力を鍛えるトレーニングをたくさん行っていきます。人と接してもうまく話せない…と感じる方は以下の講座を参照ください。
対策⑤ 徐々に行動範囲を広げる
人を避けることが習慣になっている方は注意が必要です。心理学の研究では、人を避けると、余計に人が怖くなることが分かっています。人と接する苦手意識を克服するには、
最終的には人と直接会話することで克服する
と決意をしなくてはなりません。しかし、いきなり社交的な場面に行くと、失敗して余計に自信を失ってしまうリスクもあります。大事なことは、スモールステップを作って行動範囲を徐々に広げていくことです。例えば、
まずは挨拶だけできればOK
天気の話を10秒をする
最近食べたごはんの話をする
こんな形でスモールステップを作って、少しずつ成長できればOKです。具体的には下記の行動療法で詳しく解説しました。現実の場面でチャレンジをする段階で是非活用してみてください。
対策➅ 森田療法を学ぶ
克服する方法としては森田療法がとてもおすすめです。森田療法は、以下の習慣を目指す心理療法です。
人が怖い気持ちを無くそうとするのではなく、自然なものとして受け入れながら、目的に沿って行動する
特徴的なのは、人と話すときに生じる、怖さ、不安、苦手意識を受け入れる…と言う考え方です。この考え方は、「あるがまま」と表現することもあります。
人と話すときの不安や恐怖はゼロにすることはできません。そんな自分を最後は受け入れながら、力強く生きて行くことを森田療法は教えてくれます。
私自身も救われ、思い入れが強い心理療法です。是非一度学習してみてください。
対策⑦医療機関の力を借りる
人が怖いという気持ちが、かなり強い、会話が全くできない、徹底的に人を避ける、このような状態の方は、医療の助けを借りることも視野に入れましょう。
対人不安は決して恥ずかしいものではなく、世界中の研究者が、あなたのために研究を重ね、不安を和らげるための、医療的な援助法を開発しています。具体的には精神科や心療内科に行ってお医者さんに相談してみると良いでしょう。
まとめ
私自身、思春期の頃に人が怖いという気持ちを、放置してしまい、最終的に引きこもりになるまで悪化してしまいました。当コラムの知識を、ご自身のため、そして親しい方のために、役立てて頂けるとすごくうれしいです。皆さんが、健康的な人間関係を築かれることを切に願っています。
講座のお知らせ
人が怖い心理を公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり改善したい方は、私たちが開催している心理学講座をおすすめします。講座では
・過剰な公的自己意識の改善
・不安を軽くする,心理療法の学習
・緊張をほぐすトレーニング
・暖かい人間関係を築くコツ
など練習していきます。興味がある方は下記の看板をクリックして頂けると幸いです。是非お待ちしています。↓詳細は下記の看板をクリック↓
4件のコメント
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私は不特定多数のいろいろな人が怖いです。目が合っただけで顔がこわばってしまいます。外に出るのが億劫ですね
僕は塾長が怖いです。
怖いより「恐怖」でしょうか
「あれが終わってないこれもしてない」
塾に行っているのに会社の残業をするように「お前10時まで居残りな」とよく言われます。
両親には心配ばかり。
もう嫌です。私は、中学1年生の女子です。私のクラスに、好きな人がいて、告白も、4月にしました。返事ももらいました。でも、その1か月後、冷たい言動でツッコんできたり、近くに私に対してじゃないかもしれないですが、悪口を言ってきたりします。 でも、私は、(彼も頑張っているのかもしれない)と、責める(?)ことはしません。言い返したりもしません。
なぜなら、・兄弟が上に兄(高1)下に弟(小2)がいる(らしい)
・働き者(率先して働く)
・言動は冷たいけど 本当は優しいと思うから
・周りの人に頼っていない(何でも自分でやろうとしている)
・頑張っていると思うから(学校に来る事・家での態度)もしかしたら、学校では、家での本当の姿とか本当の自分をみせていないかもしれないからです。 本人がそうかどうかはわかりません。でも、もしそうだったら助けてあげたいです。自分もそういうことがあったので、助けてあげたいです。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1]安藤 寿康(2000). 心はどのように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観,講談社[2]岸本 陽一(2004).恐怖シャイと自己意識シャイサブタイプの差異 近畿大学文芸学部論集 15[3]American Psychiatric Association [編], 日本精神神経学会 日本語版用語監修, 髙橋三郎, 大野裕 監訳, 染矢俊幸, 神庭重信, 尾崎紀夫, 三村將, 村井俊哉 訳 (2014). DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル
めっちゃ分かる‼