自分が嫌いでしょうがない,苦しい時の対処法
皆さんこんにちは。
公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。私達は現在、こちらの初学者向け心理学講座の講師をしています。
今回のお悩み相談は
「自分が嫌いでしょうがない」
です。
相談者
33歳男性
お悩みの内容
私は昔から、自分が大嫌いです。運動神経が悪く、部活ではずっと補欠でした。大学には入れたものの、偏差値がすごく低い学校で、胸を張って自分の大学名を言えません。
自分が嫌いすぎて、本当に苦しいです。どうすれば良いでしょうか。
身体的な面と学歴の2つについて特に自己否定が強いのですね。嫌いすぎるという言葉からお悩みの深さを感じました。
当コラムでは、自分が嫌いという心理の原理を解説し、改善策を提案させて頂きます。自分に合いそうなものを日々の生活の中に取り入れてみてください。
なぜ自分が嫌いになるのか
わたしたちはなぜ自分が嫌いになるのでしょうか。この疑問については心理学者カールロジャーズが提唱した、
自己一致
自己不一致
という用語が参考になると思います。
自己一致状態は自分が好き
自己一致とは
・理想と現実が近い
・目標に現実味がある 達成できそう
・今の自分に満足している
・自分が好き,自己肯定感が高い
このような心理状態にあります。図にすると以下のようなイメージです。
たとえば、3㎏減量したい!と考えた人がいたとしましょう。3㎏くらいの減量であれば、健康的で達成可能な範囲といえます。現実の自分と理想と自分のギャップは小さく、現実も肯定しながら、成長できそうです。
自己不一致は自分が嫌い
一方で自己不一致は
・理想と現実のギャップが大きい
・こうあるべきと考える自分が遠い
・理想が高すぎてチャレンジできない
・自信がない 自己否定的
これらの心理状態になります。図にすると以下のようなイメージです。
たとえば、背の高さに強いコンプレックスを持つ人がいたとします。同性の平均身長よりも低く、すごく気にしているとします。
背の高さは、姿勢を良くしたり、底の熱い靴をはけば、少しは高くなります。しかし、現実に変えることができるのは、数センチ程度です。
このような悩みは根が深く、自分が嫌いな状態が長期化しやすくなります。どこかで自分の心と折り合いをつけて、自分を認めていく作業が必要になってきます。
自分が嫌いと研究
自分が嫌いな状態は心理的に様々な影響があります。ここでは自己嫌悪に関する研究を紹介いたします。気になる項目がありましたらクリックしてみてください。
自分が嫌いになりやすいのは10代がピークで、年を取るごとに緩和されることが分かっています。
以下は弊社の調査の一部で、自己嫌悪感と年代別のグラフです。自己嫌悪が最も多い年代は10代で、年齢とともに減っていることがわかります。
若い時は理想に燃えて、様々な理想を掲げるものです。その理想は叶うものあれば、うまくいかないものもあります。
うまくいかないものについては、私たちはだんだんと受け入れていくのです。
自分が嫌いな方は、残念なことに、自分以外の人も嫌いになりやすいことがわかっています。
細田ら(2009)は中学生305名を対象に、自己肯定感と他者肯定感の関連を調査しました。その結果、自己肯定感と他者肯定感は、正の相関になることが分かりました。
すなわち
自分を好きになると、他人を好きになりやすい
自分を嫌いになると、他人も嫌いになりやすい
ということが言えます。
自分が嫌いな状態は、ちょっとした批判などでも傷つきやすくなります。
斎藤ら(2003)は自己評価と失敗過敏について調査を行いました。その結果は下記となります。
この図は
自己評価が高くなると失敗を気にしなくなる
自己評価が低いと失敗を気にする
ということを意味しています。
自分が嫌いな人は心に余裕がなく、失敗を恐れ、心が折れやすくなってしまいます。
斎藤ら(2003)は、大学生474名を対象に、自己評価と行動疑念についても調べています。その結果は下図となります。
この図は
自己評価が高くなると行動に自信を持つ
自己評価が低いと行動が正しいのか自信がなくなる
ということを意味しています。
自分が嫌いな人は、自分の意思決定に自信を持つことができず、疑心暗鬼になりやすいと言えそうです。
自分が嫌いな状態は、成長を促す側面もあります。
心理学者のガブリエル(1991)はネガティブ思考がダイエットにどのような効果があるかを調べました。その結果、自分に対するネガティブ思考の方がダイエット効果が高いことが分かりました。
以下のグラフをご覧ください。ポジティブ思考の人と比べると、ネガティブ思考の人は、体重を大幅に減少させていることが分かります。
この研究によると、ネガティブ思考は、恋愛、仕事、勉強などでも同じような結果が確認されたと述べられています。
つまり、自分が嫌いな感情はうまく活かせば、前向きな行動に結びつけることもできるのです。
苦しい時の対処法
ここまで解説してきたように、理想と現実が比較的近い状態であれば、行動するエネルギーに繋がりますが、かけ離れていると、苦しいだけになってしまいます。
過剰な自己嫌悪をやめるには、どうすれば良いのでしょうか?
講師の川島としては以下の2つを提案します。
・自分を認める習慣を作る
・理想を修正し、現実を受け入れる
生活に活かせそうなものがありましたら参考にしてみてください。
自分を認める習慣を作ろう
現実の自分の肯定
自分が嫌いな状態を改善する上では、なにはさておき現実の自分をしっかり肯定する、認めていくことが大事です。
・今まさに、生きている自分を肯定する
・1日1日頑張れた点をみつける
・1日1日健康的に過ごせることを感謝する
・自分ができることをしっかり確認する
これらの習慣が必要になります。
例えば、カウンセリングの相談者の方の中に身長にコンプレックスがある人がいました。その方は以下のように考えることを習慣にしていきました。
確かにもっと背が高く生まれたかった。だけどそれは現実的に難しい。よく考えれば、背は低いけど
考えるあたま
行動できる足
人生を楽しむための収入
がある。実現不可能ことを考え続けるより、自分に与えられたことに感謝して豊かに過ごそう。
こんな思考を日々習慣にしていきました。そうすると、今までの過剰になっていた理想が薄まり、現実が近くなっていきました。3か月ほどつつけると穏やかな表情になっていました。
自分認めタイムを作ろう
実際に習慣化おススメなのが、自分認め時間を作ることです。
・トイレに入った時
・お風呂に入っている時
・寝る前
・おやつを食べている時
など、一人になる時間がおススメです。私川島の場合は、寝る時は自分認め時間にしています。
目をつぶってリラックスしながら、今日無事過ごせたこと、成長できた点、頑張れた点、ラッキーだった点を確認して寝るようにしています。
そうすると1日1日少しずつ自己肯定感を向上させていくことができます。自然と安眠もできるのもメリットです。皆さんもぜひ自分認めタイムを作ってみてください。
リフレーミングで多角的に見る
自分認め時間に有効なのがリフレーミングという手法です。リフレーミングとは物事を様々な角度から前向きに考え直していく手法を意味します。
自分を認めようと思ってもうまく認められない…という方は下記のコラムでぜひ練習してみてください。
理想を修正し,現実を受け入れる
自分を幸せにする理想か
次に大事なことは、理想が自分に合っているかを考えることです。私たちは、ある意味で、人生を幸福にするために目標を持ちます。しかし、その目標自体が自分を苦しめるものだとしたら、一度検討しなおす必要があるでしょう。
理想を考える上で大事なことは、それが実際に実現できることなのか?ということです。
例えば、
運動能力検査で、実年齢より高く出た。まずはジョギングを1週間する
これは頑張れば実現できそうです。1週間ぐらいであれば、努力できそうですね。目標を立てるときは、頑張ればできそう!と感じるぐらいがちょうどいいと言えます。
一方で、
私生まれつき色黒だ…透き通るような色白になりたい…
このようなお悩みはどうでしょうか?自分の人生を幸福にする目標になりそうでしょうか。肌の色は生まれつきです。こういった理想を持ち続けていても、はっきり言ってしまえば、あなたの人生を不幸にするだけです。
受け入れる姿勢も大事
もし目標が高すぎたり、実現が限りなく不可能と感じたら、その現実を受け入れ、理想をあきらめる、そして、現実を受け入れることが大事です。むしろ自分の長所として考えてしまうのもOKです。
例えば色黒な方は、健康的で、陽気な感じがあります。ちなみに私の奥さんは、色黒な方ですが、私は大好きですし、奥さんも自信満々です笑。
あきらめるとは、あきらかにするということです。現実があきらかになり、あたらしい生き方を模索すべき時期として考えましょう。
目標や理想はあなたを幸せにするための物であって、あなたを不幸にするものであれば、それは意味を持たないのです。
暖かいコミュニティに所属しよう
自分を受け入れる上でもう1つ大事なことがあります。もしあなたが日々過ごしている環境が
・お互いを貶し合う
・あなたを批判ばかりする
・過剰な競争意識で安心できない
このような人が周囲にたくさんいたら、現実のあなたはズタズタになってしまいます。
大事なことは、自分だけでなく、人からも受け入れてもらう体験です。
・お互いを認め合う
・お互いを受け入れる
・過剰な競争がない
このような受容的なコミュニティに1つは所属するようにしましょう。私たち人間には、安心できるコミュニティが必要です。環境から見直したいという方は下記のコラムも参考にしてみてください。
ソーシャルサポートコラム
発展コラムとお知らせ
ここまでのまとめ
今回は自分が嫌いという気持ちについて、2つの方針を解説してきました。自分が嫌いと言う感情は、自分の中で作り出した、理想が生みだしています。
理想と現実のバランスを取りながら、現実の自分をしっかりと肯定し、自分を受け入れ、肯定されることを願っています。
講座のお知らせ
公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では
・自己肯定感を育てる練習
・自分の短所を長として捉えなおす練習
・褒め上手練習
・暖かい人間関係を築くコツ
など練習していきます。興味がある方は下記のお知らせをクリックして頂けると幸いです。是非お待ちしています。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
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*出典・参考文献
水間玲子(1996)自己嫌悪感尺度の作成 教育心理学研究 44 296-302
佐藤有耕(1999)青年期における自己嫌悪感の感情状態の発達的変化 青年心理学研究 11 1-18
水間玲子(2003)自己嫌悪感 と自己形成の関係 について -自己嫌悪感場面で喚起 される自己変容の志向に注目して- 教育心理学研究 51 43-53
小平英志(2002)女子大学生における自己不一致と優越感・有能感,自 己嫌悪感との関連 ―理想自己 と義務 自己の相対的重要性の観点から― 実験社会心理学研究 41(2) 165-174
荻野恒一(1978) 自己嫌悪のすすめ 青年心理 9 418-426
宮下一博・小林利宣(1981)青年期における「疎 外感」の発達と適応との関係 教育心理学研究 4 297-305
Deevey, S..& Wall, L.J.(1992) How do lesbianwomen develop serenity? Health Care for Women International, 13, 199-208.