感情のコントロール,7つのトレーニング方法
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「感情のコントロール方法」についてご相談を頂きました。
相談者
45歳 女性
お悩みの内容
私は現在、フルタイムで働きながら子育てをしています。結婚前は温厚な性格で、怒ることはめったになかったのですが、最近なぜか感情のコントロールが効かず、大きな声で怒ってしまうこともあります。
家庭でも仕事でも、人間関係が悪くなっています。感情的になってしまいイライラする自分を止めたいです。どうすればいいですか?
感情が不安定で困っているのですね。
私はカウンセラーとして日々活動をしています。様々な方のお悩みをお伺いすると、人間関係のトラブルのほとんどに感情コントロール力の不足が絡んでいると感じています。
「批判され暴言を書き込んでしまった」
「人前は怖いのでいつも逃げてしまう」
「一度不安になるとどんどん悲観的になる」
これらのお悩みに共通することは、まさに感情コントロール力の不足です。
心理学の世界では、感情コントロールに関する様々な手法が生み出されています。当コラムでは様々な手法を解説していきますので、是非最後までご一読ください。
感情が不安定だと起こる問題
心理学や生理学の研究では、感情のコントロールができないと様々な問題が起こることがわかっています。いくつかの研究を折りたたんで掲載しました。興味があるタイトルがありましたら展開してみてください。
コントロールできない2つの原因
ルドーの感情の2経路説(1987)[4]を参考にすると、感情コントロールができない場合、大きく分けると2の原因があると推測できます。
原始的ルート
原始的ルートは直感的に反応する感情です。短時間で爆発的に大きくなる感情を意味します。
カッとなりやすい
見た瞬間、関わりたくないと思う
地震があるとパニックになる
肩がぶつかった瞬間怒りを覚える
これらは原始的ルートになります。あてはまる方は
距離置き法
深呼吸法
マインドフルネス療法
森田療法
が有効となります。後程詳しく解説します。
思考系ルート
思考系ルートはあれやこれや考えていくうちに、だんだん不安や怒りが大きくなっていくルートになります。
老後を考えると不安が止まらない
恋人の連絡がないと情緒不安定になる
悲観的な未来を考える
一度嫌いになると嫌な面ばかり見える
これらは思考系ルートになります。もし当てはまる方は
認知の歪みの発見
認知行動療法
日記法
が有効となります。後程詳しく解説します。
原始的ルートと4つの対策
まずはじめに原始的ルートの改善策を4つ提案させて頂きます。
①距離置き法
瞬間的に怒りや不安が出てくる方は、ひとまずその対象から物理的に距離を置くことが有効です。
例えば、歩いているときに、相手がスマフォをいじっていて肩がぶつかったとしましょう。イラっとした感情のまま衝動的に行動してしまったら、相手に暴言を吐いてしまったり、喧嘩を吹っかけてしまうかもしれません。そんな時は、速やかにその場を離れるようにしましょう。
子育てがうまく行かず感情が高ぶったら、傷つくような言葉を言ってしまうかもしれません。その場合は、夫婦であらかじめ話しあっておき、3分間でもOKなので子育てを交代しましょう。
その他
いったんトイレに行く 外に出て3分散歩する 休憩室に行く シャワーを浴びる
などが有効です。感情が混乱したら、距離置き法を是非活用してみてください。
②深呼吸法
少し距離を置いたら、次に、即効性のある深呼吸をすることがおススメです。深呼吸は副交感神経の働きを高め、感情を落ち着かせる効果があります。
おなかで息をしっかり吸って、鼻から息を吐くようにしましょう。これを1分間続けるだけで、かなり落ちつかせることができます。
感情的になったらまずは深呼吸!と覚えておきましょう。詳しくは以下のコラムで練習してみてください。
③マインドフルネス療法
マインドフルネスとは、自分の感情や考えを客観的に眺め、観察する力を意味します。感情コントロールがうまくできない方は、自分自身の状態に気が付くことがとても苦手です。
マインドフルネス力を高めると「怒っている自分」に気が付き、そしてその背景を探る力がついてきます。例えば、深呼吸と組み合わせ、落ちついてきたら、自分がなぜ感情的になっているのか?を考えるようにしましょう。
そしてその背景を理解していくと、意外と冷静になることができます。感情的になると我を失う…という方は下記のコラムを参照ください。
④森田療法
仕上げは森田療法の哲学を理解するとより効果的です。森田療法は日本人の森田正馬が作成した手法です。森田療法では、
感情に流されるのではなく、目的を大事に生きていく姿勢
が重視されています。例えば、筆者の川島は講師業をしていますが、元々はひどいあがり症でした。しかし、あがり症だからと言って、人前に出ることを避けていては、悩みを抱える生徒さんに何を伝えることができません。
そのため、あがり症はありつつも、悩みを抱える人の役に立ちたいという目的を大事にして、行動するのです。これを目的本位と言います。
私たちは人間である以上、感情の浮き沈みがあるのは仕方がありません。大事なことはその浮き沈みに人生を支配されるのではなく、自分の人生を生きるということなのです。
詳しくは下記のコラムを参照ください。
思考系ルートと3つの対策
次に思考系ルートの改善策を3つ提案させて頂きます。
①認知の歪みを発見する
感情コントロールが苦手な人は、偏った考え方をしている傾向があります。例えば、将来起こる確率が限りなく低い事柄について心配し、不安が大きくなっている方がいたりします。このような偏った考えは、心理学の世界で、認知の歪みと表現したりします。
物事を白黒で考えてしまう、相手の心を読みすぎてしまう、完全主義傾向がある…これらにあてはまる方は以下の動画一覧から気になるタイトルをご視聴ください。感情コントロールの改善に役立つと思います。
②認知行動療法
認知の歪みが見つかったら、考え方をほぐしていくことが大事です。この考え方をほぐす手法としては、認知行動療法が効果的です。
例えば、SNSでたまたま自分の悪口を言っている人を見つけたとします。この時、
人として絶対に許さない!!
と考える人と
悪口をいう人はどこにでもいるものだ。まず自分の考えを伝えてみよう。その上で改善してくれない場合は、残念だけどブロックしよう。
と考える人では、感情が変わってくるのは理解できると思います。感情コントロールが得意な方は、感情を安定させる思考の引き出しが多いのです。
認知行動療法は筆者が運営する心理学講座でしっかり学習していきます。興味がある方は以下の講座を参照ください。一緒にトレーニングをしていきましょう。
③日記法
考え方を整理するには日記を書くことがとてもオススメです。心理療法の研究では古くから日記を書くことが有効とされています。
日記を書くことで、自分の気持ちが整理され安定させることができます。記録にも残るので自分の状態の変化や成長も実感できます。
日常的に自分の感情を記述する機会をつくるようにしましょう。
まとめ
今回は感情コントロールができない問題について対策をお伝えしました。繰り返しになりますが、世の中のトラブルのほどんどが、感情コントロールを失った状態に起こります。
感情は私たちの人生を彩る一方で、攻撃性、怒り、不安を放置しておくと、自分も相手も傷つけることになります。当コラムで紹介した手法をぜひ活かしてみてください♪
もっと学びたい方へ
当コラムの内容をしっかり身につけたい方は、公認心理師による講座をおすすめします。内容は以下のとおりです。
・感情コントロール,実践練習
・心を落ち着ける,リラックス練習
・マインドフルネス,基礎トレ
・感情を自然に受け止める,森田療法
体験受講に興味がある方は下記のリンクからお待ちしています。筆者も講師をしています(^^)
3件のコメント
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私は、ダメ人間です。
更年期の時期に過敏症という病気になり、それまで何ともなかった物質や食べ物に過敏反応が出るようになり、感情のコントロールがうまくできなくなり、かかりつけの何件もの内科系の医師にもそういう処を指摘され、精神病扱いと、病気も理解されない、否定、拒否経験をし、自分に自信がなくなり、あげくには過敏症の医師にも、医師の指示に従えないや、メンタル面まで、対応できない。と、受診拒否を受けました。
過敏症の医師には、一人で受診できない(ヘルパーさん同伴)、投薬拒否する、人との距離感が取れない。全体的に大人の対応ができない人を診れません。と言われました。今は、絶望感しかありません。
感情のコントロールができず、薬も気持ちが受け付けずで、どこの医師からも
呆れられてます。このダメ人間、生きていける方法知りたい。
私は、仕事の人間関係で悩んでいます。
女性3人いますが、私が仲間はずれにされ、いつも1人で、仕事も2人は協力していますが、私は1人で協力してもらえず
仕事の負担も多く辞めたくて苦しいです。夜も眠れず鬱になっているかもしれないです。
年齢もあるし、違う仕事する勇気もなくて、このままいつまで続くのかと不安で
心が強くなりたいです。コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1] 城月健太郎・児玉芳夫・野村忍・足立總一郎(2013).不安のコントロール感に関する基礎的検討―社交不安障害の観点から― 心身医学 53:408-415[2] Brown, G.W., Monck, E.M., Carstairs, G.M., & Wing, J.K. (1962). Influence of family life on the course of schizophrenic illness. British Journal of Prevention and Social Medicine,16, 55-68.[3] 井澤 修平・長野 祐一郎・依田 麻子・児玉 昌久・野村 忍 (2004). 敵意性と怒り喚起時の心臓血管反応性の関連 生理心理学と精神生理学,22, 215-224.[4] LeDoux. J. E.. D. A. Ruaaiero. R. Forrest. R. Stometta. and D. J. Reis(1987).Topographic organization of convergent projections to the thalamus from the inferior collic 1;264(1):123-46. doi: 10.1002/cne.902640110. PMID: 2445791.
そうじゃないんだよ
距離を置くことなくどうしたら感情的にならずにできるかを知りたいんだよ