SNS疲れの症状と7つの対策
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「SNS疲れの対策」です。
相談者
29歳 女性
お悩みの内容
私は最近自分がSNS依存なのではないかと感じています。30分に一度はスマフォを確認し、コメントに対するイイネの数や足跡を確認してしまいます。
最近自分でもひどいと思ったのが、目の前の人と会話をしているのにスマフォを触り続け、怒られてしまいました。とにかくSNSに振り回されている感覚があるのですが、対策があったら教えてください。
SNSは便利な一方で、使いすぎると現実の生活がふわふわとしてしまいますよね。当コラムではSNSを健康的に使用する方法をしっかりお伝えしていきます。是非最後まで御一読ください。
SNSの使用状況
まずはじめにSNSの利用状況を確認していきましょう。
利用人数
日本国内のSNS利用者数は2020年末には7,900万人を超えるといわれています。これは、インターネットユーザの約8割を示す数字です。
特に若い人でLINE、Twitter、インスタグラム、TIKTOKを使っていない人を探す方が難しい時代になってきています。
SNSの利用は90分を超える
総務省(2019)[1]のメディアの利用時間に関する調査によると、10代のSNS利用時間は90分以上になっています。平成29年度の調査と比べて大幅な増加傾向にあります。
1日90分とすると1日の活動時間の10%近くをSNSで過ごしていることになります。現場感覚としては、過剰になっていると感じています。
SNSの光と影
SNSは、私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか?デメリットとメリットの両面から考えていきましょう。以下それぞれを折りたたんで記載しました。気になる項目を展開してみてください。
デメリット
河井ら(2011)[2]は、56,272人を対象に、SNSの使用状況とメンタルヘルスを中心とした調査を行いました。その結果の一部が下図となります。
上図のように、SNS依存傾向がある方は、ない方に比べて「視力の低下」や「睡眠不足」など身体的な問題を悪化させるリスクが高いと分かります。
加えてネット上でのコミュニケーションが盛り上がると、やり取りが深夜まで続いてしまいます。そのため、結果として睡眠時間は大幅に削られてしまいます。
Cananら(2014)[3]はトルコの中高生1938名を対象に調査を行いました。その結果、BMI(体格指数)25以上(正常値22)の人は、ネット依存傾向があることがわかりました。
SNSを利用している時は、身体を動かすことなく姿勢が一定となりがちです。そのため血液の循環が悪くなり、体つくりにも悪影響を与えます。
2002年韓国光州で起きたショッキングな事例があります。インターネットカフェで、86時間不眠不休でオンラインゲームを続けた24歳男性が「急性肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)」で死亡したのです。
この事態を受けて、韓国では「青少年夜間ゲームシャットダウン制」が導入されました。学校での入学時スクリーニングを行い、インターネット依存の早期発見・防止策を講じているとのことです。
長時間SNSを利用することは、「将来のために使う時間」や「趣味の時間」などの大切な時間を失うことも念頭に置かなくてはなりません。
以下のグラフはSNSによって「どんな時間を犠牲にしたか?」を調べたものです。[2]
ネット上でのコミュニケーションは「楽しい」ものです。しかし一方で「勉強」「趣味」「仕事」など、やるべきことをする時間が少なくなってしまうのです。
大嶋ら(2017)[4]は、大学生315名を対象に、インターネット依存に関する調査を行いました。その結果の一部が下図となります。
図のように
問題ユーザー
とみなされた学生は55%
重篤問題ユーザー
とみなされた人は5.8%
という結果になりました。およそ半数以上がネットを過剰に利用している状況です。
総務省の調査(2015)[5]では、6か国、それぞれ1,000人を対象に情報通信技術について調査が行われました。
上記のようにスマートフォン保有者のインターネット利用目的の中で、高い依存傾向がある率を示しています。SNSの利用は、他の利用目的と比較して依存傾向の高い人が多いことが分かります。
総務省・安心ネットづくり協議会(2011)[6]は、携帯電話向けサービスの利用者を対象に、インターネット依存傾向についての調査を行いました。
厳し目の基準で依存
3.8%
緩やかな基準で依存
11.0%
性別でみると男性よりも女性のネット依存傾向が強い結果となりました。
メリット
河井ら(2011)[2]は、56,272人を対象に、SNSの使用状況とメンタルヘルスを中心とした調査を行いました。その結果の一部が下図となります。
上図のように、依存傾向がある方は、現実の友人数も多いことが分かりました。SNSで頻繁にやり取りをすることで、現実のコミュニケーションも促進されるといえそうです。
河井ら(2011)[2]の研究から、SNSを活発に行う方は、現実でのコミュニケーション力が高い傾向にあることがわかりました。下図の一番下の項目をご覧ください。
現実のコミュ力は依存者の方が高いことがわかります。なぜこのような現象が起こるのでしょうか。
・現実の友人との交流機会
SNSをよく使う方は現実の友人数も増える傾向にあるため、社交性が高まると推測されます。
・SNS上でもマナーは求められる
SNS上とは言え、所詮は人間同士のやり取りです。悪口を書き込む人は嫌われますし、人と楽しませる文章を書く人は好かれます。
この意味では、SNSでの経験もコミュニケーション能力を向上させる1つの要因になっていると推測できます。
SNSのメリットの1つに表面的な人間関係が生み出す価値があります。表面的な人間関係が多い方は、情報網が広く、偏った考え方になりにくく、バランスがよくなります。
こちらは動画を作成したので興味がある方はご覧ください。
SNS疲れを緩和する方法
ここからは、SNSとの上手な付き合い方を5つ提案いたします。
①失うものを自覚する
②時間にルールを作る
③場所にルールを作る
④電源を思い切って切る
⑤現実に近い手段を選択
⑥メタ認知力をつける
⑦打ち込むものに集中する
SNSの利用が過剰になっていると感じる方は、組み合わせてご活用ください。
①失うものを自覚する
SNS疲れを改善するには、まずはSNSを長時間利用することで失うものを、紙に書きだして自覚することをおすすめします。失うものは人それぞれですが、例えば以下のように紙に書きだします。
失うもの
家族との会話 友人と遊ぶ時間 勉強をする時間 身体の健康を害する 睡眠時間
紙に書きだしたら、何回か復唱することをおすすめします。口に出してすことで、失うものを自覚し、SNSに依存しない意識を高めることができます。
②時間にルールを作る
長時間利用のリスクを自覚できたら、次に時間のルールを作ります。ルールについては、使いすぎない、何度も見ない、など抽象的な表現はNGです。以下のように数字を使うことをおすすめします。
時間のルール
SNSはお昼休憩1時間 夕食後1時間だけにする
最近のスマートフォンでは時間制限機能もついています。これでの機能もチェックしてみましょう。
③場所にルールを作る
時間ではなく、場所でルールをつくるやり方もあります。具体的には以下のやり方が挙げられます。
場所のルール
人と会話をするときは使わない SNSは電車に乗っている時 帰宅後ソファーでくつろいでいる時だけ
④電源を思い切って切る
長時間利用が癖になっている方は、四六時中、コメントがないか?気になってしまいます。このような状態では、勉強、仕事、会話に集中することができません。
そこで、重要な作業をしている時や、実際に人と会話をする場面では、思い切って電源を消すというルールを作っても良いでしょう。
場合によっては、スマフォを持ち歩かないで、お出かけするのもたまにはありです。そもそも20年ぐらい前までは電話など誰も持っていなかったのです。なんとかなるものです。
⑤現実の関係を優先する
SNSが過剰になっている方は、なるべく現実のコミュニケーションに近い方を選択しましょう。
例えば、明日会う友人にお礼をしたいとしましょう。この時、SNSで先にお礼をするのではなく、実際に会ってお礼をしましょう。
最近では、好きと言う気持ちを、SNSで伝える方もいるようです。もちろん好きと言う気持ちを直接伝えるのは恥ずかしいですが、やはり顔を合わせて直接言う方が気持ちは伝わるものです。
ネットとリアル、どちらの選択肢もある場合は、なるべくリアルに近い方を選ぶようにしましょう。
⑥メタ認知力をつける
SNS疲れになりやすい方は、自分をコントロールすることができず、気が付いたら長時間没頭していたという方が多いです。この「気が付いたら…」という状態を改善するにオススメなのが「メタ認知力」です。
メタ認知力とは、自分を冷静に観察する力です。この力がつくと自分自身の行動を制御できるようになります。自分を止められない感覚がある方は以下のコラムを参照ください。
⑦打ち込むものに集中する
最後は私のカウンセリング上の経験談から解決策を提案します。
SNS疲れを起こしやすい方は、SNSでのイイネの数や友達の数など、人の目をすごく気にしています。一方で、SNSを健康的に利用している方は、人生でなすべき課題を自分なりにもって努力されている方が多いです。
人生でなすべき課題があると、SNSを利用している時間が減り、人の目がそこまで気にならなくなります。
SNSでの輝く自分にとらわれるのではなく、是非、打ち込めるものを見つけ、若いエネルギーをぶつけるようにしてみてください。
そうすれば自然と丁度よい距離感で、SNSと付き合えると思います。人生の目的については以下のコラムを参照ください。
まとめ
繰返しになりますが、SNSにはメリットとデメリットがあります。当コラムの知識を活かしながら、ぜひ丁度良い距離感でSNSを利用してみてください。
SNSの利用はあくまで補完的に考えることをオススメします。目の前の大事な人とたくさん顔を合わせて、泣いたり笑ったりすることを大事にしてくださいね(^^)
しっかり身につけたい方へ
当コラムの内容をしっかり身につけたい方は、公認心理師による講座をおすすめします。内容は以下のとおりです。
・SNSを健康的に使いこなす心理学
・顔と顔を合わせた会話の練習
・聞き上手,話し上手になる練習
・感情コントロール力をつける,メタ認知
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
*[6]の出典は原著がWEB上で未確認のため関連リンクを記載しました