焦燥感が辛い時の対処法,抑える方法,簡易診断
皆さんこんにちは。
公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。
今回の相談は
「焦燥感が辛い」
相談者
37歳女性 2児の母
お悩みの内容
私は現在、正社員として働きながら、3歳と7歳の子育てをしています。どちらかというと真面目な性格で、仕事も家事もそれなりにきちんとやってきました。ここ7年、一心不乱に頑張ってきました。
最近ですが、不況の影響もあり、部署移動がありました。ただ…新しい仕事を覚えられず、すごく焦っています。
実は不眠が続いていて、倦怠感がかなりある状態です。家事もおろそかになってしまい、余計にイライラして、夫や子供にも口調は厳しくなってしまっています。
どうすれば良いでしょうか。
お仕事と子育てどちらも頑張ってきたけど、最近は焦りが強くなっているのですね。不眠や倦怠感があるとのことで、要注意と言えると思います。
当コラムでは、焦燥感への対策を立てていきます。一緒に改善していきましょう。
焦燥感とは?
焦燥感とは何か?
みなさんは焦燥感と聞いてどのような印象を持つでしょうか。大辞林 第三版によれば、
思うように事が運ばなくていらいらすること
とされています。現代社会は時間との戦いや、ノルマとの戦いがあります。
試験まであと2週間…
明日の納期に間に合わあない…
子どもを迎えに行かないと…
部下がいうことを聞いてくれない!
様々な場面で焦燥感を覚えやすい環境です。
心理的影響
私たち心理師の世界でも焦燥感はかなり重要なワードです。なぜなら焦燥感はメンタルヘルスに様々な悪影響を及ぼすからです。以下、焦燥感に関連する、怒りや短気に関する研究をいくつか紹介させて頂きます。
気になるタイトルがあったら展開してみてください。
髙橋・山本(2016)が教員200名、学生360名を対象に調査した研究によると、怒りは集中力の欠如につながることが示唆されています。
焦燥感がある状態は、イライラしやすくなり、怒りっぽくなります。その結果、落ち着いて作業をすることができず、集中力が低下していくと考えられます。
橋本・織田(2008)は都内大学生・大学院生286名を対象に「短気や敵意」と「心理的QOL」について調査を行いました。心理的QOLとは、穏やかに過ごす、楽しく人生を過ごしているなどがあたります。
その結果が下記の図となります。
焦燥感から短気になったり、他人に対して敵意を持つと、人生でトラブルか多くなり、幸福感が下がると言えます。当たり前ですが、焦っている時やイライラしている時は幸せではないですよね。
できればイライラする時間を減らして、一度しかない人生を幸福に過ごせるようにしたいものです。
橋本・織田(2008)は都内大学生・大学院生286名を対象に「短気」と「身体的QOL」がどのような関係にあるのか調査しました。その結果以下のようなことがわかりました。
身体的QOL(クオリティオブライフ)とは、体の面での健康度を意味します。以下の図はこれらの結果を表したものです。まずは、短気から見ていきましょう。
図のように短気が高いほど、身体的QOLが下がることが分かります。すぐに怒ってしまう人は、心も体も健康的になりにくいと言えそうです。
井澤ら(2004)は、怒りと生理的な影響の研究を行いました。その結果、「怒り・短気」が、収縮期血圧・拡張期血圧の上昇と関連を示す結果が得られました。
怒りコントロールができない人は、日常場面でも怒り喚起時に高い心臓血管反応性を示す傾向があるため、冠動脈疾患に罹患しやすい可能性があることがわかったのです。
焦燥感と深刻な問題
焦燥感は深刻なものになると、体の病気や精神疾患を疑うこともあります。以下、現場でよくみられる病気について念のため基本的な知識を抑えておきましょう。
①統合失調症
統合失調症とは、妄想や幻聴などの症状を特徴とする、精神疾患です。「他の人が話しかけてくる」幻聴や、「周りが不気味な感じがする」といった妄想などがあります。
統合失調症が発症した際、イライラすることがあり、ひどい時には暴力行動がみられることがあります(Rossら, 2013)。
被害妄想や迫害妄想など、自分に被害的な妄想が多いと、焦燥感やイライラが出て、時には強い攻撃性につながることがあります。
②うつ病
うつ病とは気分の落ち込みや、意欲の低下などの症状を特徴とした精神疾患です。人口の3~5%がうつ病とされており、非常に多い精神疾患です。
横山(2014)はうつ病と絡めて、“怒り発作”の概念を取り上げています。
・過去6か月間、イライラ感が認められる
・些細な煩わしい出来事に対し過剰に反応する
・過去1ヶ月間に1回以上の怒り発作がある
・怒り発作が自分のもともとの性格とはそぐわないものと感じている
こうした唐突に焦燥感(イライラ)の表出を見せる人は、うつ病を伴う比率が高いと考えられています。
③適応障害
適応障害は現場感覚で最も頻繁に目にする精神疾患です。
仕事で残業が多い、子育てが忙しすぎる、介護で自分の時間が取れない
など原因が明確な場合に発症しやすくなります。適応障害の方は焦燥感を持っている方がかなり多くなります。冒頭に相談して下さった方も適応障害の可能性があるかもしれません。
④認知症
今まで穏やかだったのに、急にイライラするようになった…そんな方は認知症などが原因の場合があります。60代以上で焦燥感が増えてきた方は認知症を視野に入れる必要があります。
また、認知症というと、高齢者の疾患だと思う人も多いかと思います。しかし、認知症には40代や50代で発症する、若年性認知症というのがあります。
若年性認知症は、脳の血管が切れたり、詰まってしまうことで脳の組織が損傷することで発症します。症状の現れ方の特徴として、突然焦燥感が出たり、急に軽くなったりと、変動しやすいことがあります。
⑤女性特有の焦燥感
女性特有の焦燥感もよく見られます。女性は生理周期の変動や、閉経後に体が変化しやすく、そのタイミングで情緒不安定になることがあります。一定の周期で情緒不安定になる方、理由なく昔よりも焦燥感が強くなったと感じる方は後程下記のコラムも参照ください。
焦燥感を解決する6つの方法
実際に焦燥感がある場合にはどのような対策をとればいいのでしょうか?心理学の分野では、焦燥感や焦りについて、これまで数多くの研究が行われてきました。
当コラムでは以下の6つを提案させていただきます。
・医療機関のレベルか検討する
・時間に余裕を作る
・悩みを整理して優先順位をつける
・完璧主義をゆるめる
・感情コントロール力をつける
・体の健康を大事にする
参考になりそうなものがありましたら日々の生活に取り入れてみてください。
①医療機関のレベルか検討する
まず初めに今の焦燥感の大きさを客観的に把握しすることをオススメします。簡易診断を作成したので参考にしてみてください。深刻な場合は医療機関の利用も視野に入れましょう。
*問題がない場合は②以降の改善策に進んでください。
②時間に余裕を持つ
心理学の研究では、焦燥感の原因の1位は時間のなさという研究があります。焦燥感が強い方は、時間に余裕を持つようにするのが最も大事になります。
・納期は緩めに設定する
・ストレスが掛かる仕事は断る
・家事はたまには総菜を買って済ます
・掃除を30%減らす
このようなアイデアを実践して、日々の生活に、ゆったりできる時間を作るようにしましょう。頑張りすぎは、心にも体にも負担が大きいです。
いつも時間がいっぱいいっぱいという方は、以下のコラムも参考にしてみてください。
③悩みを整理して優先順位をつける
私はカウンセリングを行う中で、相談者の方とお悩みを整理して、優先順位を一緒に考えていくことがあります。焦燥感があるときは、たくさんのタスクをこなそうとして、結果的に失敗しやすくなってしまいます。
大事なことは、優先順位を冷静に見極めて、思い切ってぬかずけにするタスクを作っていくことです。色々と手を付けすぎて、逆に効率が悪くなってしまう…という方は下記のコラムでお悩みを整理してみてください。
④完璧主義を緩める
強い焦燥感を抱いている人は、
・仕事は絶対に遅刻すべきでない
・弱音吐くべきではない
・今日はこのノルマを達成すべき
・○才までに結婚すべき
と べき べき べき と考えやすい傾向があります。
このようなべき思考をゆるめるには、なるべく〇〇法が有効です。考え方の幅を広げ、焦燥感から解放されるはずです。~すべき!と考えることが多い…という方は、以下のなるべく法を練習してみてください。
⑤感情のコントロール力をつける
焦燥感が強くなったとき、私たちは普段とは異なる自暴自棄な行をしてしまったり、相手を傷つける言動を投げかけてしまうをあります。時にその一瞬の過ちが人生を狂わせてしまうことすらあります。
そこで、余裕がある方は、感情のコントロール力をつけておくことをオススメします。具体的には、自分を客観視する練習、怒りを鎮める方法などを練習していきます。
⑥体の健康を大事にする
焦燥感は体のイライラと連動します。例えば、
・睡眠不足
・食生活の偏り
・運動不足
・長時間のPC作業
これらは全て焦燥感と関連しています。心の問題だけでなく、体の健康も確保するように充分注意してください。体の調子が悪い…と感じる方は下記を参照ください。
まとめとお知らせ
まとめ
焦燥感が強い時は、イライラしてしまったり、自暴自棄な行動をとりやすくなります。今回紹介した対処法で使えそうなものがありましたら、日常生活でも実践してみてください。
皆さんの焦燥感が少しでも和らぎ、穏やかな日常を取り戻されることを切に願っています。
講座のお知らせ
もし公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では
・心理療法の基礎
・焦燥感のコントロール
・アンガーマネジメント練習
・暖かい人間関係を築く技術
など練習していきます。筆者の川島も講師をしています。詳しくは下記の看板をクリックして頂けると幸いです。是非お待ちしています(^^)。
1件のコメント
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お金がたりない、収入たりない、体力限界
楽して儲けたかったなあ…コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
Twitter→*出典・引用文献・参考文献
大学生における攻撃性とQuality of Lifeの関連性 2008 橋本 空,織田 正美 健康心理学研究 日本健康心理学会編集委員会 編
Garriga, M et al,. (2016) Assessment and management of agitation in psychiatry: Expert consensus. The World Journal of Biological Psychiatry, 17 (2), 86-128.
西村詩織 (2009) 日常生活で体験される焦りのプロセス-成人期前期の焦りに注目して-. 心理学研究, 80 (5), 381-388.
生和秀敏(1993)時間不安の実験臨床心理学的研究(1)-課題解決場面における検討-. 健康心理学研究, 6 (2), 21-28.
高橋三郎ら監訳(2014) DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル. 医学書院..・井澤修平・長野祐一郎・依田麻子・児玉昌久・野村忍 2004 敵意性と怒り喚起時の心臓血管反応性の関連 生理心理学と精神生理学,22(3)215-224 早稲田大学
コメントさせて頂きます。
お金の不安や悩みは尽きないですよね。
楽しく儲けたいと思うのなら、お金に対して白黒(善悪)を付けないことが大切です。
お金に対するメンタルブロック(固定概念)を外すことです。
苦労しないとお金が入って来ないと決めつけてしまうとそのような物事が現実として投影されます。
お金の入口を一つの収入だけだと決めつけない方が良いです。
簡単に言うとお金の入口は、宝くじ,ギャンブル,投資,頼れる人に頼る等。
こうして考えてみると色々な方法があります。
個人的に私のおすすめは宝くじです、特にビンゴ5がおすすめです。
ご参考になりましたら幸いです。