ムカつく上司や友達と会話する時の対処法‐精神保健福祉士が解説①
こんにちは!公認心理師の川島です。
今回のテーマは
「ムカつく」
です。
もし今まさにあなたがムカつく感情にあるとしたら・・・まずは深呼吸しましょう。解説は後回し!まずは落ち着くことを優先させます。*ムカついていない人は先に進んでください。
**************
①吸う
まずは5秒程度鼻から息を吸います
この時、リラックスした空気が体を
循環するイメージをしましょう
②止める
2秒程度息を止めます
③吐く
10秒程度かけて息を吐きましょう
この時「ムカつく気持ち」が
体の外に出ていく
イメージを持ちましょう
**************
いかがでしょうか?3分ほど続けるとかなり落ち着くと思います。少し落ち着いたら以下のコラムに進んでください。
はじめに
皆さんは以下のような悩みを抱えていませんか。
・怒りが抑えらえない
・ムカつくことが多い
・ついキツく当たってしまう
気に障ることをされた時、ムカつく気持ちがどうしても湧いてしまいますよね。時には怒りを抑えきれず、相手に当たってしまうこともあるでしょう。
当コラムではムカつく気持ちを抑えたい…という方向けに怒りの危険性や対処法をお伝えしていきます。全体の目次は以下の通りです。
・人はなぜムカつくのか
・ムカつく状態の悪影響
・診断とチェック
・相手への対処法
ムカつく気持ちとの付き合い方に悩む全ての方にお役だけて頂ける内容となっています。ぜひ、最後までご一読ください♪
人はなぜムカつくのか?
私たちはなぜ「ムカつく」という感情を覚えるのでしょうか。生理的な意味を見ていきましょう。
ムカつく感情の意味
ムカつく感情自体は人間のごく自然な反応の一つで、
自分自身の権利や領域、尊厳を守ろうとしている感情
なのです。ムカつくという感情は防衛反応なので、自分の権利を守るよう、相手に伝え、問題解決せよ!という脳の指令と言い換えてもいいかもしれません。
例えば、待ち合わせに無断で遅刻してきて悪びれない人がいるとしましょう。多くの人は多少なりともムカッと感じると思います。これは自然なことで、「自分の時間を大事にしよう!」という裏返しでもあるのです。
怒りをマイナスな方向に表現することで、誤解を生んだり、余計な言葉を投げかけてしまったりと人間関係を悪化させる引き金になるのです。
ムカつく状態の悪影響
生理学、心理学の分野では怒りについて研究が進んでいます。いくつかの科学的な調査によって、ムカつく感情が制御できない人は健康や人間関係が悪化してしまうことが分かっています。
井澤等(2004)は、男子大学生20名に対して「敵意性と怒り喚起時の心臓血管反応性の関連」において、怒りと体の反応について研究を行いました。
その結果が以下の図です。
収縮期血圧・拡張期血圧の上昇と突発的なムカつきを表す「短気」が関連を示す結果が得られました。
敵意的、短気な人は普段の日常生活でも怒りを感じた時に高い心臓血管反応性を示し、その結果、冠動脈疾患を患う可能性があることが判明しました。
筑波大学の渡辺俊太郎(2004)が、「怒り感情が心身の健康に及ぼす影響に関する研究」において、怒りが心理的・生理的にどのような影響を与えるかを調べました。
その結果、怒り持続傾向の高い男性は、副交感神経の低下により、
「抑うつを発症する」
リスクが上がることがわかりました。
ムカつく気持ちになり、怒った後は一時的にスッキリするかもしれませんが、どちらかと言えば、人間関係の悪化による後悔であったり、自責の念が大きいと言えます。
強すぎる感情表出は、心理学や精神医学の世界で心理的にマイナス要因になりやすいことが分かっています。英語のExpressed Emotionの頭文字をとって「EE」とも呼ばれます。
怒りや暴言のような激しい感情表出がある方を高EEと呼びます。特にムカつく気持ちを制御できない時に良く見られる傾向です。この高EEが心理的弱者に向けられると、病状が悪化すると言われています。
高EEの方の感情表出は以下の2点としてあげられます。
1.批判的表出
「君は本当に物覚えが悪いな!」「やる気がないなら帰れ!「この怠けものめ!」このような敵意的に批判を伴う感情を伝えることを指します。
2.情緒的表出
「私なんていてもいなくても変わらないんだから!」「私のことなんて誰も必要としていないでしょ!」など自暴自棄な発言です。
高EEによって仲間が減って、孤立してしまうこともあるでしょう。特に統合失調症の患者の方は高EEについて細心の注意が払われますが、一般的なビジネスの現場や家庭内でも対策する必要は十分にあります。
対処力診断とチェック
ここからはムカつく感情へのトレーニングをお伝えします。成果を把握するために定期的な診断をおすすめします。
ムカつく上司,友人への対処法
ムカつく感情は自分を守る感情ですが、同時に身を亡ぼすこともあります。怒りの感情を抑えきれず、相手に当たってしまう方は注意が必要です。
①マインドフルネスで冷静に
②アイメッセージで主張する
③限界設定をする
④相手への期待値を下げる
⑤他責思考を少し下げる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
マインドフルネスで冷静に
実は怒りは急に表れるのものではなく、その前にステップを踏んで燃え上るケースが多いのです。具体的には、以下の5段階で感情はステップアップしていきます。
ステップ1 疑惑 疑問
ステップ2 困惑 戸惑い
ステップ3 不満 納得できない
ステップ4 ムカつく
ステップ5 攻撃性
ムカつく感情のコントロールを誤ると怒りや攻撃性に発展していってしまいます。心理療法の1つであるマインドフルネス認知療法では、このようなムカつく気持ちに気が付かない状態を「自動操縦状態」と解釈します。
自動操縦状態ではムカつく気持ちや怒りのような自動的に表れる感情に支配され、我を失ってしまう状態を意味します。その結果、感情がステップアップしてしまい、怒り→攻撃性へと発展させてしまうのです。
マインドフルネス認知療法を詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
アイメッセージで主張する
ムカつく相手との付き合い方がわからない…という方は、自分の気持ちを抑えて振り回されている感覚があるかもしれません。そこで、しっかりと自分の気持ち主張するために活用できるのが、アイメッセージです。
アイメッセージは、「アサーション」と言う分野で頻繁に活用される技術で、自己主張する時に「私は…」を主語にしたメッセージを使っていく方法です。
例えば、以下のような言葉がよく使われます。
・(私は)返信がなくてさみしい
・(私は)そう言われると悲しい
・(私は)○○されて辛かった
アイメッセージのコツはあくまで、自分の気持ちを相手に伝えるだけで、判断はいったん相手に任せることが特徴と言えます。
基本はしっかり主張を詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
限界設定をする
アイメッセージで伝えても、ムカつく行為を相手がやめてくれない場合「限界設定」して、自己主張することが大切です。限界設定とは”ここまでは適応するが、それ以上は適応しないという区切りの部分”になります。
ムカつく状況にずっと耐えていては、いつかあなたの堪忍袋の緒が切れてしまいます。そこで、あらかじめ「ここまでは我慢する」という基準を設けておくことで、怒りの爆発を予防することができます。
限界設定についてより深く知りたい方は下記をご覧ください。
相手への期待値を下げる
ムカつく気持ちは「相手に自分の期待が裏切られた」時に出てくることが多いです。例えば、
・友人と12時に東京駅で待ち合わせ
・一緒に映画館に行く予定がある
・しかし、友人が13時に到着
・映画はもう始まっている
・友人は謝罪もしない
このような状況の場合、ムカつく気持ちが込み上げてくる人がほとんどでしょう。人は大幅に期待を裏切られた時にムカつく感情が湧いてくるケースが多いのです。
期待値と感情の関係を図で表すと以下のようになります。
期待値である「50」を下回れば下回るほど、ムカつく気持ちが抑えられなくなります。
円滑な人間関係をつくるためには、まず相手がどこまで期待しているか正確に見抜くスキルが重要ですね。また、ビジネスや恋愛など相手の心を掴みたい場合は期待以上の行動する必要があります。
相手への期待を下げるを詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
他責思考を少し下げる
怒りをコントロールするには「ムカつく!」と思った時、それに気が付くことが大事です。ほとんどの場合、感情を変えようとせずに観察してしていれば、徐々に怒りは和らいでいきます。
しかし、中には怒りがしぶとく残ってしまうケースがあります。そのような場合は「認知療法」を用いることでムカつく感情をコントロールすることができます。認知療法とは、以下のような心理療法になります。
“自分の受け止め方のクセ”や信念に焦点を当て、それらを変えることで問題や感情への対処能力を高める
他人を責めやすい人は、その他人へ怒りのは背後に、他責的な思考があり、何か問題があった場合に、何かと相手の責任に結びつけて考えてしまうのです。
つい相手の落ち度に目が行ってしまう…という方は、認知療法を学ぶことで他責的な思考を和らげることができます。
相手への期待を下げるを詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
まとめとお知らせ
まとめ
ムカつく時はついカッとなってしまい、怒りを相手にぶつけてしまいがちです。一時的にはスッキリするかもしれませんが、人間関係が崩壊し、どんどん孤立した状態になってしまいます。
一方で、ムカつく気持ちと上手く付き合うことができれば、周囲の人とスムーズな関係を保つことができます。また、何か不満があっても建設的な話し合いを進めることができ、トラブルも起こりにくいです。
充実した人間関係を築くためにも、ぜひ怒りとの付き合い方を考えてみてくださいね。
お知らせ
もし公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では
・アサーティブコミュニケーション
・傾聴力をつける練習
・共感力トレーニング
・暖かい人間関係を築くコツ
など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。ぜひお待ちしています。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
Twitter→