メンタルが弱い, 克服方法
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。今回は「メンタルが弱い,克服方法」についてご相談を頂きました。
相談者
31歳 女性
お悩みの内容
私は最近、保険会社に転職をしました。職種は営業で覚えることだらけです。成約をとれるかプレッシャーで押しつぶされそうです。
昔から引っ込み思案で、友人もいないので、仕事や恋愛で悩みを抱え込みやすいです。このようなメンタルが弱い状況を改善するにはどうすればいいですか?
仕事や恋愛でメンタルが弱い感覚があるのですね。当コラムでは、心を強くする方法を提案させて頂きます。是非最後までご一読ください。
メンタルが弱い-改善策
心理学の世界ではメンタルが弱い状態を改善する理論が複数あります。その中で、特におすすめしたいのが「レジリエンス理論」です。
レジリエンス理論とは
アメリカ心理学会[1]は、レジリエンスを以下のように定義しています。
逆境,挫折,脅威,人間関係,から起こるストレスにうまく適応する力
例えば、下記のようなバネがあったとします。
////////////////
バネの両端を指で押すと
圧力⇒⇒//////⇐⇐⇐圧力
こんな感じでバネは縮まりますよね。
次に指を離すとどうなるでしょうか?
下記のように元の形に戻ります。
⇐⇐////////////////⇒⇒
この「跳ね返して元に戻る力」がレジリエンスのイメージです。心には「元に戻る力」「立ち直る力」「へこたれない心」があると心理学では考えられているのです。
落ち込むこと減る
レジリエンス力をつけると、落ち込むことが減ります。藤澤(2015)[2]は学生158名を対象として、レジリエンスと抑うつの関係を調査しました。その結果が下の図です。
レジリエンスが高さは抑うつと負の相関になっています。これは、メンタルがタフになるほど、抑うつが少なくなることを示しています。つまり、レジリエンス力がある人は、落ち込むことが少ないと言えます。
逆境に強くなる
レジリエンス力を高めると、逆境に強くなる効果がもあります。藤澤は、レジリエンスの強さと逆境での成長力の関係を調査しました。その結果が以下の図です。レジリエンスが高い人は、逆境で成長する力があることがわかります。
逆境での成長力はPTG(Posttraumatic Growth)と言われます。PTGは地震・津波などの災害や事故、病気、大切な人や家族との死別をバネにして成長できる力を意味します。レジリエンス力がある方は、辛い時を乗り越え、成長していくのです。
メンタル弱い‐10の克服方法
アメリカ心理学会では、レジリエンスを誰もが学習し発達させられるものとして、以下の10点を強調しています。
①人間関係を充実させる
②悲観せず楽観的であれ
③変化を柔軟に捉える
④目標に向けて努力する
⑤行動力をつける
⑥挫折を糧に自己発見
⑦自己肯定感を育てる
⑧物事を大局的に見る
⑨希望に充ちた見方を増やす
⑩体の健康も大事にする
これらはまさにメンタルが弱い状況を改善するために活用できるでしょう。ここからは、私なりに少しアレンジをして詳しく解説していきます。
それぞれのコーナーには、チェック項目と関連リンクがあります。日々の生活に活かせそうなものを組み合わせて活用してください。
①人間関係を充実させる
人間関係が充実している人は、様々なサポートを受けやすくなるため、メンタルが強くなります。厚生労働省の「我が国と諸外国の若者に関する調査」[3]では
友達が30人以上いる人は80%前後
将来への希望がある
友達がいない人は25%前後
将来への希望がある
という結果になっています。
その他の心理学の研究では、人間間関係が充実している人ほど、自己肯定感が高い、孤独感が少ない、幸福感が高いことも分かっています。メンタルを強くするためには、人間関係を充実させることが必要不可欠なのです。
チェック項目 |
孤独感を抱えている 悩みを相談する人がいない 人間関係が殺伐としている |
おススメコラム |
孤独感を改善する方法 ソーシャルサポートを受ける 暖かいコミュニニティを探す |
②悲観せず楽観的であれ
メンタルが強い方は、楽観的な部分を必ず持っています。私はカウンセラーとして活動していますが、相談者の多くは、悲観的な未来を予測しすぎて、まだ起こってもない心配事で深く悩んでいます。
人生は一度しかありません。同じ時間を生きるのであれば、やはり楽観的にいきたいものです。楽観性は訓練で、ある程度身につけられます。是非、前向きな引き出しを増やしメンタルを強くしていきましょう。
チェック項目 |
楽観的に考えるのが苦手 ネガティブになりやすい 問題を深刻に受け止めてしまう |
おススメコラム |
③変化を柔軟に捉える
メンタルが弱い方は、考え方が固く柔軟性が不足している傾向にあります。メンタルを強くするには、変化を柔軟に受け入れ、前向きに捉えなおす力が必要になります。
私カウンセリグングを行う際に、1つの出来事に対して少なくとも、3つの視点から考える練習をしていきます。例えば、コロナウイルスで在宅が多くなっていたとしたら
自分の内面と向き合う良いチャンス
部屋の模様替えをしよう♪
収束後はお出かけを2倍楽しもう!
と3つの視点から考えて行きます。前向きな人ならどう考えるか?メンタルが強い人はどう考えるか?を意識して、柔軟な考え方を増やしていきましょう。
チェック項目 |
考え方が固い方だ 柔軟に考えるのが苦手 日常が変化すると混乱する |
おススメコラム |
リフレーミング力をつける |
④目標に向けて努力する
メンタルが弱い人は、目標を見つけ、没頭することで克服することができます。目標に向け没頭している状態はフロー状態といいます。フロー状態は、
自分の高い技術を使う
高い難易度にチャレンジする
この2つの条件を満たしたときに入りやすくなります。メンタルが弱いと感じる方は、フロー状態への入り方を学習すると、メンタルが強い状態を保ちやすくなります。
チェック項目 |
なかなかやる気がでない 熱中できる目標がない 1日が長く感じる |
おススメコラム |
フロー状態で集中力をつける |
⑤気分に左右されず行動する
メンタルが弱い状態を克服するには、行動が気分に左右されないようにする必要があります。
心理学の中には「目的本位」という考え方があります。目的本位とは、揺れ動く気分で行動を決めるのではなく、あくまで目的を大事にして行動していこうとする考え方です。
少々ストイックな考え方になります。しかし、自分の気分に左右されずやるべきことをコツコツ積み重ねていくことで、メンタルが弱い状態の克服が目指せます。
チェック項目 |
怖がりで逃げ癖がある 不安を抱くと逃げたくなる 引っ込み思案である |
おススメコラム |
目的本位に生きる,森田療法 |
⑥挫折を糧に自己発見
メンタルが弱い人は、挫折をしたときに、ただ漫然と落ち込むだけで終えてしまいます。これに対してメンタルが強い人は、ひとしきり落ち込んだ後に、なぜそうした失敗をしたのか?分析をして、乗り越えていきます。
失敗することは人間だれしもあるものです。むしろそうした失敗を成長のチャンスと捉え、学んだこと、これからやるべきことを考えて行くことを大事にしましょう。
チェック項目 |
挫折すると長期的に落ち込む 失敗することを恐れる 現実逃避をしがちである |
おススメコラム |
挫折を乗り越える方法 アイデンティティを確立する方法 |
⑦自己肯定感を育てる
メンタルが弱い人は、自分を肯定する習慣がない傾向にあります。何かにチャレンジするとき「自分はダメだ」「どうせうまくいかない」と感じる方は要注意です。
自己肯定感を育てるのにおススメなのは、自分を褒める時間「肯定タイム」を作ることです。例えば、寝る前は肯定タイム!と決め、布団に入ったら、今日一日頑張れたこと、成長したことを確認するのです。
チェック項目 |
自分が嫌いである 自分に自信がない 短所が多いと感じる |
おススメコラム |
自己肯定感を育てる方法 |
⑧物事を大局的に見る
物事を大局的に見ることは、メンタルの弱さを改善します。例えば2020年のコロナ騒動では、短期的に見れば、収入が下がったり、人間関係が希薄になるという問題がありました。
しかし、大局的に見ると、リモートワークで長期的に仕事の効率があがる、衛生意識が高まって他の病気を今後も予防できる、というメリットもあります。
1つ1つの嫌な出来事も、人生全体でみれば、きっとあなたの役に立つ部分もあります。そのような大きな視点を持つようにしましょう。
チェック項目 |
嫌な出来事があるとパニックになる どっしりと構えるのが苦手 人生トータルで考えられない |
おススメコラム |
リフレーミング力をつける |
⑨希望に満ちた見方を増やす
心理学には、人間のプラス面に焦点を当てた「短期集中療法」という分野があります。短期集中療法は、過去視点ではなく、未来視点で考え、希望を育てる心理療法です。
例えば、短期集中療法では「ミラクルクエッション」という手法を使うことがあります。これはもし夢がかなったら…と架空の未来を想像するのです。これにより、自分の希望に満ちた思考を引き出すことができます。
チェック項目 |
マイナスの未来を予想しがち 悲観的になりやすい 将来の希望がない |
おススメコラム |
短期集中療法,ミラクルクエッション |
⑩体の健康も大事にする
心理学の研究では、心と体がお互い影響し合うことがわかっています。睡眠不足、過労、偏った食生活、運動不足な状況では、どんな人でもメンタルが弱くなってしまいます。心の健康だけでなく、日々の体の健康も大事にしていきましょう。
チェック項目 |
睡眠が乱れている 身体が緊張しやすい 運動不足である |
おススメコラム |
身体のストレスを発散する方法 |
まとめ
当コラムではメンタルが弱い状況を改善する方法を紹介してきました。メンタルが弱い原因は非常に広く、様々な考え方や環境と関連しています。紹介した項目で心に響くものがありましたら、日常生活で取り組んでみてください。
皆さんが、自信をもって行動されることを心から応援しています。
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典.[1]American Psychological Association APA Dictionary of Psychology[2]藤澤隆史(2015).逆境経験からの精神的成長を規定する要因の発達学的検討 発達科学研究教育センター紀要 / 発達科学研究教育センター [編] 29 95-108, 発達科学研究教育センター[3]内閣府(2014).平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 生活環境と個性が友人数に与える影響
レジリエンス力を高めることが大切なんですね。
「ABC理論」でイラショナルビリーフをラショナルビリーフに変換できるようにポジティブな認知的複雑性を練習してみます。
無条件の肯定的ストロークで自分自信を励ましてみます。
ソーシャルサポートを得られるようにIメッセージで素直に感情と理由を人に伝えてみたいと思います。