「自我」とは?意味や強い人の特徴・鍛える方法
はじめまして!公認心理師の川島です。今回のテーマは「自我」です。

当コラムの目標
・自我の意味を理解する
・「私」とは何かを考える
・自我を鍛える
- 全体の目次
- 自我とは?意味・定義
- 診断・チェック
- 自我が強い時の長所・短所
- 鍛える方法
- 助け合い掲示板
コラムを読み進めていただくと、自我という用語を理解でき、主体的に生きていくヒントを得られると思います。ぜひ最後までご一読ください。
もしお役に立てたなら、初学者向け心理学講座でもぜひお待ちしています。
自我とは?意味
周囲から「自我が弱い」「自我が強い」と言われて戸惑った経験はありませんか?
自我は、耳慣れた言葉ですが、意味を説明できる人は少ないのではないでしょうか。そこで今回は、自我の意味や特徴、自我の鍛え方を紹介します。
自我とは、広義の意味では、「わたし」です。自分自身や行為を行う私そのものと捉えるといいでしょう。
自我は、抽象的な「わたし」を指すため、生物学や心理学などさまざまな学問の世界で捉え方が異なります。本コラムでは、
・生物学的
・精神分析
・発達心理学
での自我について解説していきます。
生物学的な意味
自我とは?
真木(2008)は生物学的な自我には以下の説があると紹介しています。
大脳は、人間らしさの源と言われることもあります。考えたり、記憶したり、思考したり、司令塔としての働きをしています。
脳には、いろいろな分野があり、働きが異なります。
・大脳
人間の脳で最も発達した部分で、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉に区別されます。
大脳は、情報を識別してそれに応じた運動の判断、記憶や情動、考えをまとめる司令塔の働きをしています。
・海馬
海馬は、短期記憶を行う部分です。
・小脳
大脳からの情報を受けて、運動の強さや力の入れ具合、バランスをとる働きをしています。
・脳幹
脳幹部は、間脳、中脳、橋および延髄から構成されています。
呼吸、循環など生命活動の基本的な営みを支配すると供に、知覚情報を大脳皮質に中継しています。
自我がない・あるは脳の量で決まる?
自我の芽生えはいつなのでしょうか。
まずは、私たちに近い動物の「サル」で見ていきましょう。
以下の動物の中で、自我がある動物はどれだと思いますか?
ゴリラ・チンパンジー・二ホンザルに、鏡像自己認知テストを行いました。
鏡像自己認知テスト(mirror self-recognition test)とは、1970年心理学者のゴードン・ギャラップJr.が開発した動物の行動実験です。
動物に鏡を見せ、自分が分かるかどうか(自己認知の能力)を確かめます。
実験の結果、自分が分かったのは、ゴリラ・チンパンジーです。ニホンザルは、自分が分かりませんでした。
自分が分かるかどうかの判断は、一般的には、脳の量から推測できるとされています。
脳の量は、ゴリラが500ml、チンパンジーが400mlに対し、二ホンホンザルは100mlです。
この点から、自分が分かるかどうかの脳量は、400ml程度といえるかもしれません。
自我の芽生えはいつ?
では、私たち人間は、いつ自我の芽生えがあったのでしょうか。
今から300万年前、私たちの祖先アウストラロピテクスは、脳の量が400ml前後あったとされています。
脳量から推測すると、私たち人類の自我の芽生えは、300万年前と考えることができます。
逆をいえば、それまでの私たちには「わたし」という認識はなかったかもしれません。
そして現代の私たちの脳の量は1,400ml前後です。自我が芽生えるのは何歳くらいなのでしょうか。
守(2015)は、幼児の自我の芽生えを年齢別でまとめています。私たちが自分と分かるのは、2歳くらいといえそうですね。
精神分析での意味
自我とは?
精神分析では、自我とは次のような概念とされています。
欲望やルールと折り合いをつけ、現実的にのりこえていくわたし
精神分析では、心の全体図を以下のように表しています。超自我はルール、イドは欲望と捉えてください。
出典:Wikipedia
たとえば、思春期の私(川島)の例で見ていきましょう。
・大好きなアイドルがいる
・アイドル写真をいつも見たい
・学校でも見ていた
・先生に叱られた
・自我が強い人の場合
「学校では見ないようにして自宅でこっそり見よう」
欲望やルールと折り合いをつけて適応的な行動をします。
・自我が弱い人の場合
イドや超自我が肥大化し、社会的に問題となる行動をしてしまいます。
イドが肥大化すると
「ルールなんて無視だ!ナンパでもしまくるか」
といった行動をします。
超自我が肥大化すると
「女性には一切興味をもってはいけない!」
といった極端なルールを作ってしまいます。
精神分析では、自我とは
「現実的で健康的に生きていく為の機能」
とされています。
発達心理学での意味
自我とは?
発達心理学では、自我とは次のような概念とされています。
なぜ生きているの?目的や人生の意味をみつけるわたし
発達心理学では自我を、自分はどう生きるかを確立することと考え「自我同一性」「アイデンティティ確立」という用語を使っています。
以下の図は、年齢別の心の発達を表しています。
13歳以前くらいまでは、眠りたい・愛されているかなど、本能的な部分が課題になっているのが読み取れます。
そして思春期を迎えると、自分はどう生きていくかという考えが芽生えます。これが、発達心理学における自我の概念です。
発達心理学では、自我とは
「目的や人生の意味をみつけるわたし」
とされています。
自我の強さを診断・チェック
中尾ら(2005)は問題場面での自我の強さを図る尺度の研究を行っています。あなたの自我の強さを測って、診断・チェックしていきましょう。
対他的ER-9問
人と関わる時の、自我の強さです。周りとの関係の中で自分を調節しながら私を持っている。
以下の質問が当てはまるほど、人と関わる時の自我が強い(対他的ERを持っている)ことになります。
*コラム用に改変されています。正確には論文を参照ください。
対自的ER-7問
対人場面で自分の感情をしっかりコントロールできるかの自我の強さです。
以下の質問が当てはまるほど、自我が強い(対自的ERを持っている)ことになります。
*コラム用に改変されています。正確には論文を参照ください。
自我が強い時のメリット
自我の強さを確認したところで、自我が強い場合の長所を見ていきましょう。
長所①乗り越える力になる
自我が強い時には、問題を乗り越えていく強さがあるといえます。
長所②主体的に生きる
「わたし」がしっかり持っているので、自分の意見に基づいて生きてます。
長所③メンタルヘルスにいい
自我が強いことは、メンタルヘルスにおいてはとても良いです。自我が強いほど心の安定が図れます。
中尾ら(2005)の研究では、自我の強さについて以下の結果が出ています。
自我の強さは、自尊感情との相関関係が高いことが分かりました。
一方で、見捨てられ不安との関係は負の関係でした。
つまり自我の強さは、メンタルヘルスにおいてプラスの効果が高いため、自我は持った方がいいといえます。
自我が強い時のデメリット
つづいて自我が強い場合の短所を見ていきましょう。
短所①社会性レス
「わたし」が強すぎるため、自己主張が肥大化し社会性が低くなります。
短所②素直な感情表現ができない
自我が強い時には、自分の本能を抑えてしまうことがあります。そのため、素直な行動ができないことがあります。
短所③心身症のリスク大
本能を抑えてつけてしまうと体に問題が出ることもあります。
短所④戦争などのリスク大
自我の強さから、喧嘩や戦争など、争いごとのリスクが高くなるといえるでしょう。
自我がない…鍛える方法を解説
自我を鍛えるには、「内省する時間を作る」ことが大切です。
自分はどんな考えをもっているのか?、問題に対して自分がどう考えるかの時間をしっかり作りましょう。
具体的には、次のような方法がおすすめです。
日記を書く
自分の考えを、文字情報にしましょう。目に見えるカタチにすることで、思考のプロセスが分かり、自分の考えを整理できます。
ブロブを利用するのもおすすめです。
受信の時間を減らす
情報をインプットだけでは「自分とは?」の考えが進みません。
インプット70%、アウトプット30%くらいのイメージで、自分から発信することをしてみましょう。
情報を入れるだけでなく、実際に行動する中で自分の内側を吟味することができます。
チャレンジをする
自我を鍛える場面は、ピンチの事が多いです。問題と向き合うなかで、自我が強くなります。
少しだけ難しい環境に身を置いてみることで、自我を鍛える場面がやってくるでしょう。いろいろなことにチャレンジしてみてください。
コミュ力をつける
人と関わると、いろいろな問題が起きます。
コミュニケーションを通して、わたしについて考えたり問題を解決していく中で、自我の強さを磨けます。特に、対他的ERを鍛えることができます。
自我とは?-まとめ
自我については、動画解説もあります!
*チャンネル登録をして下さると励みになります(^^)
まとめ
自我とは、広義の意味で「自我≒わたし」でしたね。
抽象的な「わたし」を指すため、いろいろな角度から議論がされています。
生物学的では、「自我=大脳」とされており、精神分析では、欲望やルールと折り合いをつけ、現実的にのりこえていくわたしという概念でした。
メンタルヘルス的にはプラスの要素が多いので、基本的には自我を鍛えるようにしましょう。
ただし、自我が強い状態は争いに発展したり、相手を尊重できないこともあります。しっかりと理解して自我を強めていきましょう。
助け合い掲示板の活用
ページ下部には助け合い掲示板があります。当コラムは心理面で悩みを持つ方が多く集います。お互いの悩みや経験談など相談してみましょう。*お互いを思いやったご投稿をよろしくお願いします。
講座のお知らせ
もし公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では
・心理療法の基礎
・対人不安の改善
・暖かい人間関係を築くコツ
・無条件の肯定のコツ
など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。お知らせ失礼いたしました。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
Twitter→
*出典・参考文献
・真木悠介,自我の起原―愛とエゴイズムの動物社会学 ,岩波現代文庫,2008
・守秀子,幼児期の自称詞使用に関する実態調査 ,文化学園長野専門学校 研究紀要 第 7 号 ,2015,p.15-38
・中尾達馬 加藤 和生, CAQ 版 ER 尺度 (CAQ-Ego-Resiliency Scale) 作成の試み, パーソナリティ研究, 2005, 13 , 2 , p.272–274