職場の人間関係に疲れた,良くする,改善する7つの方法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「職場の人間関係」です。
相談者
38歳 男性 会社員
お悩みの内容
会社の上司がパワハラするため、社内のムードがピリピリしています。冗談が通じない雰囲気なので精神的に参っています。
このような職場環境だと、仕事をするが嫌になっちゃいますよね。そこで今日は、職場の人間関係を良くする手法をしっかりお伝えしたいと思います。
職場の人間関係と現状
まず初めに、統計的な資料を土台として、職場の人間関係で悩んでいる人がどれぐらいいるのか考えていきましょう。最初に、厚生労働省主催の『労働衛生調査(令和3年)』[1]を見ていきたいと思います。こちらの資料には、仕事とストレスの問題についての結果が書かれています。
以下様々な統計を折り畳みました。気になる題名を中心に参考にしてみてください。
若者より中年が悩む
年代別にみると、若者より40代、50代の中年層が職場の人間関係で悩みやすいことがわかりました。
若年層は意外と少ないことがわかります。30代、40代と年齢が高くなるにつれ、職場の人間関係に疲れを感じていることが読み取れます。
一般的に年齢が高い人は、部長や課長など中間管理職を担う方が増えます。上司と部下を繋ぐ役割として双方の話を聞き調整をすることが増えるので、業務量も多くなりがちです。心身共に消耗し大きなストレスを抱えている人も多いのではないでしょうか。
株式会社BizHitsが、中間管理職の経験者238人を対象に行った調査[2]によると「中間管理職がつらいと感じる瞬間」の1位は「板挟みになるとき」でした。上司からはプレッシャーをかけられ、部下からはセクハラをちらつかされる…。そんな中年の方が、若者より悩む状況が理解できます。
男性よりも女性が悩みやすい
男女別にみると、男性より女性が職場の人間関係で悩みやすいことがわかりました。
男女別にみると、男性は22.6%、女性は29.1%です。ざっくり考えると男性は5人に1人、女性は3人に1人が職場の人間関係で悩んでいることがわかります。どちらかというと女性の方が職場の人間関係で悩みやすいといえそうです。
人間関係の悩みの対象には男女で違いがあります。職場の人間関係の悩みの対象は、男性は「同性の上司」、女性は「同性の同僚」に対する悩みが多い傾向にあることがわかっています(第一生命,2007)[3]。
女性の多くは、同性の人間関係が悩みの原因となる事が多いようです。
立場が下の人ほど悩む
職場の人間関係は、立場が弱い人ほど悩む傾向にあることがわかりました。
職場の雇用形態では、正社員が約25%、契約社員が約18%、パートタイム労働者が36%、派遣労働者が20%です。特徴的なのは、パートタイム労働者が群を抜いて職場の人間関係で悩んでいる点です。弱い立場になりがちな方は、上からの圧力で人間関係で悩みやすいといえそうです。
人間関係が悪いと働きにくい
厚生労働省の『労働経済の分析(令和元年版)』[4]という資料から見ていきます。以下の図は、1年間の仕事上での人間関係と働きやすさの変化をまとめたグラフです。青色は1年間で「働きやすくなった人」、ピンク色は1年間で「働きにくくなった人」を示しています。
左のグラフでは、人間関係が良好になったことで働きやすくなったと感じた人が約30%増えていることがわかります。一方で、右のグラフは、人間関係が悪化したことで、働きにくくなった人が約35%増えていることがわかります。
人間関係が悪いと、職場環境が働きにくくなることがよみとれます。
異性よりも同性で悩む
株式会社BizHitsが、10代から60代の男女498人を対象に行った調査[5]からみていきます。この調査の一部で、職場の人間関係が難しくなりがちな相手の性別について調査がされています。その結果が以下の図です。調査の結果は、男女を限定しないが大半を占めますが、異性7.6%に対し同性は35.5%あるのが特徴としてあります。職場での人間関係は、同性の方が悪くなりやすいと読み取ることができます。
職場の人間関係を良くする7つの対策
ここからは職場の人間関係を改善する具体的な方法として、人間関係に疲れた時の対策を7選紹介します。
①闘鶏場の鶏にならない
職場が、闘鶏場のような環境となり人間関係が悪くなることもあります。
闘鶏とは、おんどり同士を戦わせる環境をつくって勝負をさせる競技です。職場において典型的には、過度の競争主義が挙げられます。社員を過度に競わせる会社にいると、本来なら協力しあうべき同僚が敵に見えてくることがあります。しかしよく考えてみると、その同僚は仲間であって戦うべき相手ではないということがよくあるのです。
たとえば、皆さんの職場でムカつく人がいたら「もしかしたら戦うべき相手は目の前の相手ではないのかも?」と疑ってみることも大事になります。具体的には、会社の仕組みや職場環境に問題があるのでは?と疑ってみることです。経営者や管理職、人事などが作る職場環境によって競わされ、目の前にいる相手のことを嫌いになっているのかもしれません。
闘鶏場の鶏にならないコツは、目の前にい嫌いな同僚やムカつく上司がいた時には「別の環境でも同じように敵対するか?」を問いかけることです。
たとえば、
「歌のサークルであったらどうなんだろう?」
「麻雀仲間として出会ったらどうだろう?」
「地元の飲み仲間として出会ったらどうだろう?」
と考えてみてください。
その結果、もし別の環境なら「こんなに仲が悪くならなかったかも・・・」と感じたら、それは会社の仕組みの問題、職場環境が大きいといえます。「闘鶏場の鶏になっていないか?」はぜひ注意するようにしましょう。
②無条件の肯定を大切に
私たちが行っているコミュニケーションには「条件付き」「条件」の2種類があります。
「条件付き」は、
うまくいった から ほめる
うまくいかなかった から しかる
というという条件が入ったコミュニケーションです。
職場における具体例は、
営業成績が良い だから 誉める
作業量がはやい だから 褒める
などが挙げられます。
営業成績が良い人を褒めることは非常に大事です。しかし、条件付きコミュニケーションばかりを使うと人間関係は不安定になります。条件がなくなってしまうと「いつかこの集団から排除されるのでは?」と不安や焦りを絶えず抱えることになり、目の前にいる人を信用できなくなってしまうからです。ここで大事になるのが、無条件の肯定になります。
「無条件の肯定」は、
上手くいったとかいかないとかに関係なく前向きに付き合っていくコミュニケーションです。無条件の肯定が安心や信頼につながり人間関係の土台が築けます。
具体的には、
おはようと元気に挨拶をする
ありがとうと日々感謝を伝える
屈託のない雑談をしてみる
困っている事がないかこまめに声をかける
などのコミュニケーションです。
無条件の肯定があることで、安心して働ける職場の空気につながっていくのです。ここで、働きやすい職場と働きにくい職場の比較図(厚生労働省)[3]を見てみましょう。
働きやすい職場(青色)は上司からのフィードバックの頻度が多いことがわかります。一方で、働きにくい職場(ピンク色)はフィードバックがない傾向が読み取れます。
職場の人間関係を良くするうえで、互いに困っていることがないか、今日の仕事はどうだったかなど、話し合う機会をこまめに設けていくことが大切です。
③交互作用を意識する
職場の人間関係で交互作用を意識してみると、良い効果が生まれる可能性もあります。
交互作用とは混ざり合うことでうまれる利益です。卵かけごはんを例に見てみましょう。
卵かけごはんは、ご飯と卵、醤油をかけ、ごちゃまぜにして食べると非常に美味しいです。もしこれがバラバラだったらどんな味になるでしょうか。
ごはんだけを食べる、生卵だけを食べる、醤油だけを食べる、バラバラに食べると美味しくないのが想像できると思います。それぞれの食材は混ぜ合うことで、ちょうど良いさじ加減になり抜群の美味しさになる状態が交互作用です。
交互作用は人間関係でも同じことがいえます。
たとえば、しょっぱくて、塩分濃度が高い、しょうゆみたいな人が職場にいませんか。「なんでこの人、いつも冷たいんだろう?「しょっぱいことしか言えないんだろう」と感じるような人です。そんな人でも、他の人と混ざり合うと意外といい味を出すことがあります。
悪口やしょっぱい発言をする人だからといって「あいつは○○だから、よくわからない。やめておこう」みたいな関わり方をすると、相手の良さを殺してしまう事もあったりします。もしかしたら、論理的で誰も言えないような指摘をバシっと言ってくれるようなひとかもしれません。
抽象度が高い解決策ですが、交互作用を意識して人間関係は混ざり合うことで、価値がうまれるという視点もぜひ大事にしてみてください。
④感謝を増やす
笑顔で感謝を伝えると職場の人間関係がよくなります。
奥山ら(2008)[6]は、看護師26名を対象に研究を行いました。研究では、対象者に職場で感謝と笑顔を増やしてもらうことを実践してもらいました。その結果を以下の図にまとめました。
研究の実施前(感謝・笑顔前)と比べ、感謝と笑顔を増やした実施後(感謝・笑顔後)は、同僚への信頼感・職場指向性・コミュニティ感覚、いずれも増えたことがわかりました。職場指向性は、職場のことを前向きに捉える気持ちのことで、コミュニティ感覚は、職場にいる安心感や居心地がいい感覚です。
研究の結果から、感謝や笑顔を増やすだけで職場や人間関係に対して、前向きな効果が生み出されることがわかりました。笑顔や感謝を伝えることは、お金をかけずにだれでもすぐにできます。笑顔でありがとう!ぜひ習慣化してみてください。
⑤時間と財産意識
職場の人間関係は、時間への意識を変えるだけで良好になる可能性が高いです。
人間関係のトラブルは、時間に関するものが非常に多いです。人間関係のトラブルには時間がほとんど絡んでいるのです。
たとえば、
・遅刻
・納期遅れ
・連絡が遅い
いずれも、人間関係を悪くする典型例です。時間に関する意識を高めるだけで人間関係は劇的によくなります。
時間に関する意識を高めるには、
『相手の時間を奪う=相手のお金を盗む』
ぐらいの感覚で考えた方が良いです。時間は相手の貴重な財産だという意識を持ちましょう。
たとえば、
時給2,000円の人に対して連絡をしなかったとします。相手の仕事が1日はかどらなかった場合には、8時間×2,000円なので16,000円を盗んでいるのと同じです。
これぐらいの感覚を持つと、遅刻や納期遅れが減って人間関係がよくなっていきます。時間に関する意識をしっかり持つように心がけていきましょう。
⑥小出しに主張する
人間関係でストレスをためやすい人は、小出しにすることを意識しましょう。
ストレスを溜めやすい人は1つ1つの小さなストレスをため込んでしまい、どんどん膨らませてしまう傾向があります。気が付くと解決できないぐらい大きな問題となってしまう事もあります。一方でストレスをためこみにくい人は、小さなストレスを感じたら小出しに主張してその都度解決していく習慣があります。ストレスを翌日に持ち越さ無いため、不満や悩みがたまりにくいです。
ストレスは今日、この瞬間に主張して解決していきましょう。職場で問題があればその都度話し合って解決していく習慣を持つようにしましょう。人間関係での不満や問題を小出しに主張して、明日に繰り越さないようにすることが大事です。ぜひ実践してみてください。
⑦課題の分離
課題の分離はアドラー心理学で重視されていて「自分の課題と相手の課題をごちゃまぜにせずわけて考えるという」意味があります。
たとえば、
遅刻をした
連絡をしなかった
仕事をさぼった
というチョンボを自分がして怒られたとしましょう。
まあこの状況はしかたがないです。「自分が悪かった」と反省することも大事です。
一方で、
遅刻をせず時間厳守している
ほうれんそうをしっかり
与えられた仕事は完璧にこなしている
これでも上司が怒っている場合は、どうでしょう。
この状況では、自分の問題ではなく上司の問題です。自分のやるべきことをやったら、後は上司の問題だと割り切って考えることが大事になります。もしかしたら「上司の家庭がうまくいっていない」「健康に問題をかかえているかもしれない」など、原因は分からないかもしれませんが、上司の怒りに巻き込まれては自分の人生を生きれなくなります。
「自分の問題」と「相手の問題」をわけて考えることも人間関係でストレスをためないようにするために大事にしましょう。
仕上げの動画
職場の人間関係について動画でも解説しました。仕上げとしてご活用ください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・人間関係の疲れを改善ワーク
・温かい声がけ練習,無条件の肯定,
・嫌なことは断る,ストレスフリーに
・職場の人間関係が明るくなる心理学
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
*出典