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叱り方のコツ「無条件の肯定」

叱り方がうまくなる方法,子供や部下が成長する‐公認心理師が解説①

はじめまして!公認心理師,精神保健福祉士の川島です。今回のテーマは「叱り方」です。

  • 改善するお悩み
  • ・叱り方が分からない
  • ・感情的に叱ってしまう
  • ・部下や子供が言うこと聞かない
  • 全体の目次
  • 入門①叱り方のコツ概観
  • 入門②無条件の肯定
  • 入門③感情コントロール
  • 発展選択肢提示法
  • 発展コーチング法
  • 発展相手を信頼する
  • 助け合い掲示板

入門①~③を読み進めていくと、基本的な知識と対策を抑えることができると思います。是非入門編は最後までご一読ください。

部下や子供への叱り方を間違えると、やる気を削ぐ・反感を買うといった危険性があります。出来る限りトラブルを避けつつ、成長させたいところですよね。

実は、心理学の世界には「角が立たない叱り方」がいくつか存在するのです。

叱り方

叱り方を誤る問題 

まずは、叱り方を間違ると、どのような悪影響を及ぼすのかを見ていきましょう。

人格否定の悪影響

特に相手に対して、暴言を吐く・強い口調で叱責をするといった人格否定はパワーハラスメントに当たります。

ハラスメントを受けた人は、以下の流れを経て、イライラ感、不安感などの心身の問題を感じます。

パワハラの心理面への影響プロセス

つまり、過激な叱り方をされた人はストレスを経験し、その結果、怒られないために頑張りすぎてしまいます。いつしか限界に達してしまい、うつや不安感、イライラなどを引き起こしてしまうのです。

永冨(2016)の研究では、職場のハラスメントが心理的ストレスにつながるという研究結果が報告されています。より詳しく知りたい方は以下をご覧ください。

(↓クリックで開きます)

永冨(2016)の研究では、職場でハラスメントを受けたときに、どのようなプロセスで高いストレスになっていくかをモデル化しています。まずは、以下の図を眺めてみてください。

ハラスメントがストレッサー、ストレス反応に及ぼす影響

この研究結果で報告されたように、ハラスメントにより仕事上の人間関係、仕事そのものに影響を受けます。

入門②肯定+条件付き否定

円滑に相手を叱るためには、心理療法の1つであるストロークという概念が活用できます。ストロークとは、簡単言うと、「人との関わり方・接し方」という意味で、叱り方も含まれます。

ストロークには以下の4種類があります。

①条件付きの肯定
成績が良かったから褒めるなど、
条件があって相手を肯定するストローク

②条件付きの否定
テストの点数が低いから叱るなど、
条件があって相手を否定するストローク

③無条件の肯定
あいさつをするなど
そのままの相手を肯定するストローク

④無条件の否定
人格を否定するなど
そのままの相手を否定するストローク

以下の図はこれらの4つのストロークをまとめたものです。

叱り方

この中で、相手を叱るときは無条件・条件付きの肯定的ストロークを上手く活用していく必要があります。

肯定と条件付き肯定でサンドイッチ♪

それでは、具体的に無条件の肯定を使った「叱り方」をご紹介していきます。ポイントとしては、無条件の肯定と、条件付きの肯定でサンドイッチすることです。

否定的な言葉を伝える時は、ポジティブな表現で挟みこむことで角が立たない表現になります。以下の図をご覧ください。

否定する時は肯定で挟む

このサンドイッチの図のように、柔らかいパンで具材を挟むことでゴツゴツとした食感が和らぎます。叱り方も同じで、肯定で「挟む」ことで印象が大きく変わってくるのです。

ここで、ポイントなのは終わりは「条件付きの肯定」にするということです。無条件の肯定だけでは、結果への意欲が薄れてしまう可能性があります。

そのままの相手を肯定しつつ、いつもの頑張りも認めてあげることが大切なのです。

例題で理解を深めよう

それでは、ここで例題で理解を深めていきましょう。

登場人物
・小学生の太郎くん
・無条件の肯定ができない先生

状況
・太郎くんは自分なりにテスト勉強をした
・結果は40点。赤点を取ってしまった
・先生は叱りたいと思っている

叱り方叱り方:
「勉強時間が少ないから成績が悪くなるのです。
遊んでないでもっと勉強しましょう。」

このように、否定だけの叱り方は太郎くんのモチベーションを下げてしまう可能性があります。直接的に叱るよりも、現状で努力している部分は褒めるようにしましょう。

ここで、無条件の肯定ができるお母さんの例で比較してみましょう

無条件の肯定ができるお母さん

子どもを叱る

叱り方:
「あなたなりに頑張っていることは知っているよ。
ただ、もう少し勉強時間を増やせる成績も伸びてくるはず。
40点取れた部分は自信して良いと思う。」

太郎くんの例のように、まずは日々の関係構築をしっかりと行います。そして、叱る時は無条件の肯定で挟むことで、トラブルもない・やる気も削がない適切なアプローチとなるのです。

無条件の肯定をさらに詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
・無条件の肯定の練習
・否定する時は行動を
・メリットと原因を伝える
叱り方のコツ「無条件の肯定」を習得【練習問題】②

入門③感情コントロール法 

叱り方が過激になってしまう…という方は、「感情コントロール法」が活用できます。

感情コントロール法は心理学の世界にいくつも存在します。その中の「マインドフルネス」が冷静な叱り方をする上で、ひと役買ってくれます。

マインドフルネスとは

マインドフルネスとは、もともと東洋の瞑想で用いられていた言葉で、主な定義は以下の3つがあります。

定義①:Kabat-Zinn(1994)
「今ここでの経験に、
評価や判断を加えることなく、
能動的に注意を向けること 」

定義②:心理学辞典(1999)
「積極的にカテゴリーに注意を向け、
それを創出している心的状態をいう」

定義③:北川(2013)
「すべてのことを迎え入れ、
それをあるがままにしておく」

つまり、今ここで起きている事柄に対して、「良い/悪い」などの判断をせずに、観察して放っておくことという意味で捉えられます。

例えば、叱り方が過激になりそうな時に、「あ、いま自分はイライラしているな」と気づくと、スッと冷静さを取り戻すことができます。

マインドフルネスを使った叱り方

マインドフルネスを理解する上で、以下の2つのワードを抑えておく必要があります。

①自動操縦
感情に流されて自動的に行動してしまう状況です。例えば、部下がミスをした時に怒りに任せて怒鳴ったり、暴言を吐いてしまうといった状態です。

②脱中心化
自分の感情や思考に巻き込まれない状態です。思考や感情はあくまでも、一時的な現象にすぎないとして観察していきます。

このうち、脱中心化を意識して行うことで、冷静で合理的な叱り方になります。感情に巻き込まれないため、自分のエネルギーも消耗しません。

叱り方のコツ

例題で理解を深めよう

それでは、例題でマインドフルネスを活かした叱り方を見ていきましょう。

登場人物
・テニス部1年生の太郎くん
自動操縦で叱る先輩

状況
・太郎くんのミスで試合に負けてしまった
・太郎くんは試合前の練習を頑張っていた
・先輩は叱りたいと思っている

自動操縦で叱る先輩

先輩に叱られる

感情・考え:
「うわー、最後にミスしたよ。
なんであそこで空振りするかな。」

脱中心化:
(あ~イライラする。ムカつく!!)

叱り方:
「なんで最後の最後でミスするの?
あんなの簡単に打ち返せるじゃん。」

このように、先輩はイライラした気持ちに流されてしまっています。その結果、アドバイスらしき言葉が1つも見当たらず、ただ自分の主観を押し付けているように感じます。

では、ここで脱中心化で叱るコーチと叱り方の比較をしてみましょう。

脱中心化で叱るコーチ

後輩を指導しよう

感情・考え:
「うわー、最後にミスしたよ。
なんであそこで空振りするかな。」

脱中心化:
(あ、今イライラしているな・・・)

叱り方:
「惜しかったな。最後まで集中力を保つことが今後の課題だな。
しっかり自分の中で振り返って、また明日から練習頑張ろう。」

このように、コーチは自分の感情・考えを客観視して、冷静に叱っていることが分かります。先輩は感情に自動操縦されてしまい、思うがまま発言をしています。マインドフルネスを学ぶことで、感情的に巻き込まれない合理的な叱り方を身に付けることができるのです。

行動批判を身に付けたい方は、下記のリンク先に練習問題を用意しましたのでクリックしてみてください。

・卓球のダブルスで相方がミス
・緊張で支離滅裂になる後輩
・ハンバーガー店でオーダーミス
叱り方で冷静さを保つ方法「マインドフルネス」【練習問題】③

発展-叱り方のコツ

ここからは、さらに叱り方を磨きたい人向けに発展編としていくつ方法をご紹介していきます。

発展 選択肢提示法

選択肢提示法とは、こちらから解決策を複数提示して相手に選んでもらう叱り方です。相手が問題をどう解決すればよいかわからない状態で活用できます。

・選択肢提示法の具体例
例えば、部下の作業スピードを遅い場合は、

解決策A:定期的に上司が様子を見に行く
解決策B:集中力を鍛えてもらう
解決策C:タスクごとに時間を計測する

といったように、解決策を3つほど提示して、その中から相手に選択してもらいます。すると、突破口が見えない状態から行動指針が定まり、改善していくことがあります。

注意の仕方

発展 コーチング法

コーチングは簡単に説明すると、「自分の頭で考えさせる」教育法になります。こちらから相手の考えを引き出す質問を行い、主体的に原因・解決策を考えてもらいます。

指示的な叱り方は、伝え方を誤ると反感を買ってしまうかもしれません。コーチングでは、何かを押し付けられることがなく、能動的な解決を促します。

自分の頭で考えさせることで、反感を買うどころか責任感やモチベーションのUPが期待できます。

・デメリットもあり
ただし、相手が適切な解決策を考えられないことがあります。コーチ側が持っている質の高い解決策とは、一致しないことも多いので我慢が必要です。

発展 相手を信頼する

入門①無条件の肯定の部分でお話した内容と少し重なりますが、相手への信頼が少ないほど本音を言えなることが分かっています。

相手をよりよい方向に導くきたい場合は、時にはビシっと叱ることも大切です。しかし、信頼関係が構築できていないと、言うべきことが言えなくなってしまうのです。

松永ら(2008)は「本音、気遣い、うわべ」と様々な心理的な指標について調査を行いましました。

今回は「対人的信頼」との関連をピックアップして解説していきます。対人的信頼は、「周囲に対する信頼感」のことを意味しています。


「本音群」のグラフが高くなっています。特に「うわべ群」とは差が開いています。本音を押し殺して、うわべや気遣いをする方は、周りの人を信用していない傾向があると考えられます。

言い換えれば、周りを信用していない人はうわべ・気遣いに走ってしまうと言えるのです。

まとめ+助け合い掲示板

入門①まとめ

入門①の解説は以上となります。叱り方が相手に響かない原因としては主に、「信頼関係が構築できていない」「相手への肯定がない」「過激な口調を使ってしまう」「合理的な支持がない」の4つが考えられます。

ぜひ、それぞれの問題点を解消するために入門②以降の練習問題に取り組んでみてください。

助け合い掲示板の活用

ページ下部には助け合い掲示板があります。当コラムは叱り方についてコメントが多く集います。お互いの悩みや経験談など相談してみましょう。*お互いを思いやったご投稿をよろしくお願いします。

講座のお知らせ

もし公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では

・心理療法の基礎
・対人不安の改善
・暖かい人間関係を築くコツ
・無条件の肯定のコツ

など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。お知らせ失礼いたしました。それでは入門②に進みましょう!

助け合い掲示板

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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出典・参考文献
中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣
・永冨陽子. (2016). 職場のハラスメント状況下におけるストレッサ―の生起過程. 大阪経大論集, 66(5), 243.
・松永(2008)現代青年の 友人関係 に 関する研究 Kurume University Psychological Researeh 2eO8,No .7,77−86