叱り方がうまくなるコツ,部下,子供
こんにちは!
公認心理師の川島達史です。
今回のテーマは
「叱り方」
です。
はじめに
管理職や親になると、部下や子供へ教育する機会が増えてきます。この時、
・傷つけるのが怖くて叱れない
・やる気がなくなってしまうのが怖い
・ついつい甘やかしてしまう
というお悩みを持つ方がたくさんいらっしゃいます。そこで当コラムでは、健康的な叱り方、部下や子どもが成長できる叱り方のコツをしっかりと解説していききます。
具体的には以下の8つのコツを提案いたします。
①叱るに値する人間になる
②叱られる方は痛い!を自覚
③ラポール形成
④無条件肯定-サンドイッチ法
⑤焦点充て法
⑥選択案提示法
⑦自己決定法
⑧マインドフルネス力
管理職の方、指導係の方、子育て世帯の方、は是非最後までご一読ください。
①叱るに値する人間になる
まずはじめに心がけることは、あなた自身が自分を磨いているかという点です。人は信用に値しない人から叱られても全く心に響きません。
あなた自身がまずは信頼に足る人物であり、尊敬されるような行動をしておかなければなりません。誠実であり、努力家で、嘘をつかず、たまにユーモアで笑わせてくれる。
こんな上司が言うことであれば、誰でも素直に聞きたくなるものです。叱る前に、まずは自分自身が叱るに足る人物であるように努力しましょう。
②叱られる方は3倍痛い!を自覚
誰かをつねったとします。このとき、あなたは全く痛くないですが、つねられたほうは痛いのです。毎回毎回、つねってくる人とあなたは仕事を一緒にしたいと思いますか?私は絶対嫌です(汗)
思いやりのない叱り方は、つねられているようなものです。
「つねられる方は3倍痛い」
まずはこの原則を覚えておきましょう。
③ ラポール形成
次に意識したいのは、そこでまずは叱るための土台となる信頼関係を作ることが大切です。信頼関係の構築のことを心理学では「ラポール形成」と言います。
人はラポールが形成されていない人からの叱責には反抗的になってしまいます。例えば、皆さんが嫌いな上司から、怒られたらやっぱりムカッときますよね。
叱り上手は普段のコミュニケーションをきちんとしているのです。信頼関係の構築なんて言葉を聞くと、難しいのでは…と思ってしまう人もいるかもしれません。
しかし、ラポール形成の方法はいたってシンプルです。
・挨拶を笑顔でする
・お疲れさまという
・ありがとうとたくさん言う
・悩みがないか定期的に聞く
・成果をねぎらう
・たまには雑談する
当たり前のコミュニケーションを普段からしておくことです。ラポール形成に自信がない方は下記のコラムを参照ください。
④ 肯定サンドイッチ法
ラポールが形成できたら、叱るベースが出来上がった段階になります。次に具体的な叱り方場面でのコツをお伝えします。
基本として抑えておくべきは、肯定サンドイッチ法です。ポイントとしては、
肯定-否定-肯定
とサンドイッチすることです。以下の図をご覧ください。
このサンドイッチの図のように、柔らかいパンで具材を挟むことでゴツゴツとした食感が和らぎます。叱り方も同じで、肯定で「挟む」ことで印象が大きく変わってくるのです。
登場人物
・新入社員の太郎くん
・肯定ができる上司
状況
・太郎くんはプレゼン資料を1枚紛失
・上司は叱りたいと思っている
叱り方:
「あなたなりに頑張っていることは知っているよ。
ただ、もう少し確認をするように気を付けよう。
プレゼンの話し方は自体は良くできていたよ。」
太郎くんの例のように、まずは日々の関係構築をしっかりと行います。そして、叱る時は肯定で挟むことで、トラブルもない・やる気も削がない適切なアプローチとなるのです。
⑤ 焦点充て法
叱り方で大事なことは、叱る対象を広げないことにあります。そこで肝となるのが「焦点充て法」です。焦点充て法では、叱るべき内容にフォーカスして注意していきます。
例えば、遅刻をする癖がある部下がいたとします。この時、以下のように叱るのはOKです。
「おはよう~(肯定)
5分遅刻だぞ!だめだぞ~(焦点を充てた否定)
もしかして最近つかれてる?ちょっと心配(肯定)」
あくまで遅刻だけに焦点を充てて、肯定で挟んでいるので、受け入れられやすい叱り方になっています。一方で、以下のように叱るのはNGです。
「おはよう~(肯定)
5分遅刻だぞ!まったくだらしないなあ。
そういう気持ちが仕事へ現れているんだよな(人格否定)」
遅刻を注意するはずが、拡大して関係のないところまで飛び火しています。部下としては自分の人間性を否定された気持ちになり、心に傷を負ってしまうかもしれません。
⑥ 選択肢提示法
選択肢提示法とは、こちらから解決策を複数提示して相手に選んでもらう叱り方です。相手が問題をどのように解決すればよいかわからない状態で活用できます。
例えば、
作業スピードが遅い部下がいたとします。
この場合は以下のように複数の選択肢を提案して、
どれが良いか?本人に選んでもらうと良いでしょう。
解決策A:定期的に上司が様子を見に行く
→上司の監視がプレッシャーとなるが、効率が上がることが予想されるよ♪
解決策B:25分毎に5分間の休憩を挟む
→これはポモドーロテクニックと呼ばれる手法だよ。適度に休憩を取ることで集中力がキープできるよ!
解決策C:タスクを細分化する
→仕事を細かく捉えることで、スモールステップで肩の力をぬいてできるかも!
このように解決策を3つほど提示して、その中から相手に選択してもらいます。大事なことは、上司が決めるのではなく、部下が選択できるようにすることです。
強制されたという感覚が薄いので、叱られた感じが少なくなる効果があります。
STEP⑦ 自己決定法
自己決定法は、選択肢法以上に、相手の主体性を尊重する方法です。
ざっくりと
「自分の頭で考えさせる」
教育法になります。
こちらから相手の考えを引き出す質問を行い、主体的に原因・解決策を考えてもらいます。例えば、
・どうしたらミスが改善できると思う?
・ミスが起きた原因は何だと思う?
・ミスをすることの問題点は何だと思う?
というような質問をしていきます。
このように、相手に考えさせることで能動的な解決を促します。自分の頭で考えるため、責任感やモチベーションのUPが期待できます。
STEP⑧ マインドフルネス
叱るのが下手な方は、感情に任せて、快不快で起こる方です。感情的に怒ると、人は論理性を失い、建設的な議論ができなくなります。
そこでオススメなのがマインドフルネス力をつけることです。マインドフルネスとは、「良い/悪い」などの判断をせずに、観察して放っておくことという意味で捉えられます。
マインドフルネスを使った叱り方
マインドフルネスを理解する上で、以下の2つのワードを抑えておく必要があります。
①自動操縦
感情に流されて自動的に行動してしまう状況です。例えば、部下がミスをした時に怒りに任せて怒鳴ったり、暴言を吐いてしまうといった状態です。
②脱中心化
自分の感情や思考に巻き込まれない状態です。思考や感情はあくまでも、一時的な現象にすぎないとして観察していきます。
このうち、脱中心化を意識して行うことで、冷静で合理的な叱り方になります。感情に巻き込まれないため、自分のエネルギーも消耗しません。
それでは、例題でマインドフルネスを活かした叱り方を見ていきましょう。
登場人物
・新入社員の太郎くん
・自動操縦で叱る上司
状況
・太郎くんはクライアントとの商談に遅刻
・クライアントは幻滅している様子
・上司は叱りたいと思っている
自動操縦で叱る先輩
感情・考え:
「あいつ、何でこんな大事な時に遅刻するんだよ。」
自動操縦:
(あ~イライラする。ムカつく!!)
叱り方:
「お前クライントにどれだけ迷惑かけてるかわかってんの?
こんな大事な日に遅刻するなんて危機感なさすぎ!!」
このように、上司はイライラした気持ちに流されてしまっています。その結果、頭ごなしに太郎くんを叱るばかりで、建設的なアドバイスがありません。
では、ここで脱中心化で叱る上司と叱り方の比較をしてみましょう。
脱中心化で叱る上司
感情・考え:
「あいつ、何でこんな大事な時に遅刻するんだよ。」
脱中心化:
(あ、今イライラしているな・・・)
叱り方:
「どうしてこんな大事な日に遅刻したんだ?
太郎はいつも仕事は丁寧なんだから、次はから気を付けろよ。」
このように、自分の感情・考えを客観視して、冷静に叱っていることが分かります。マインドフルネスを学ぶことで、感情的に巻き込まれない合理的な叱り方を身に付けることができるのです。
発展ーハラスメントと叱り方
永冨(2016)の研究では、職場でハラスメントを受けたときに、どのようなプロセスで高いストレスになっていくかをモデル化しています。
調査専門サイト「アイリサーチ」にモニター登録されている正社員365名を対象に、調査票を用いて研究を行いました。
その結果が以下の図です。
このように、ハラスメントが多いことが、職場の人間関係を悪化させています。そして、人間関係の悪化が仕事の自由さを奪い、様々な心理的ストレスにつながっていることが分かります。
つまり、パワハラ・セクハラのような常識を逸脱した叱り方は、従業員のストレスを増加させてしまうと言えます。思いやりのある叱り方を心がけたいところですね。
まとめとお知らせ
まとめ
このように叱り方には様々なアプローチがあります。基本的にはラポール形成をしっかり行ったうえで、思いやりのある叱り方をしていきましょう。
上手に叱ることで、部下のモチベーションをキープもしくは、向上させることができます。ぜひご紹介したテクニックを活用してみてくださいね。
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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出典・参考文献
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