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空気が読めない・KYな人の原因と治す方法,障害,病気

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空気が読めない・KYの原因と治す方法

皆さんこんにちは。人間関係講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「KYを治す方法」です。


KYな人の特徴

相談者
30歳 女性

お悩みの内容
私は昔から空気が読めないと言われてきました。例えばこんなことがよくあります。

周りは笑っているけど面白くない
天然,不思議ちゃんと言われてきた
ふつうはわかるでしょ?と言われる

このような悩みを改善したいです。アドバイスをお願いします。

空気が読めないお悩みは、周りから理解されにくいので、深刻に悩んでこられたと感じます。当コラムでは空気が読めない原因と対策をしっかりお伝えします。是非最後まで御覧ください。

空気が読めない-意味とは

意味とは

空気が読めないという言葉が正式に使われはじめたのは、1977年に山本七平が戦時下での意思決定における「空気の研究」を出版したのが最初と考えられています。[1][2]

その後、空気が読めないと「KY」と略した言葉合2007年の流行語大賞になり、日本語としてすっかり定着しています。

空気が読めないとは

明示されてない非言語メッセージを読み取る力の不足

を意味します。すなわち、空気が読めない人は言葉にならない暗黙の了解を理解できないという意味があるのです。

言語,非言語

私たちは大きく分けて2つの方法でコミュニケーションをしています。

・言語コミュニケーション
1つ目は言葉そのものを使ったコミュニケーションです。会話、メールなど言葉のやりとりは、言語コミュニケーションにあてはまります。

・非言語コミュニケーション
2つ目は言葉以外のコミュニケーションです。表情、声の抑揚、身振り手振り、姿勢、などが挙げられます。

この点、空気が読めない人は、言語よりも、非言語コミュニケーションが苦手な傾向にあります。

空気が読めない,具体例

たとえば、友人に悩みを相談したいとします。友人に「今日の夜、電話していい?」と言った時、友人が下記のような表情で「いいよ・・・」と言ったとしましょう。表情で空気を読んでほしい人友人の表情を見てみましょう。眉毛が下がって、口がへの字になっています。また身振りでも、指を合わせて動揺しているのがわかります。友人は、「言語ではYES」と言いつつ「非言語ではNO」を表現しています。

この時、空気が読めない人は、相手の言葉を真に受け、夜電話をしてしまいます。一方で、読める方は、別の日にかける、メールで済ますなど、相手に配慮することができます。

KYと3つの原因

空気が読めない事態になる原因は大きくわけると以下の3つに分類できます。

原因① スキル不足の問題

表情をよく見ていない、声の抑揚を見る癖がない、しぐさを見ていない、と言った技術的な問題です。

これらの問題は、対人関係の経験不足や、練習方法の誤りによって起こるため、比較的改善しやすい領域といえます。

人生経験や訓練をすることで、空気が読めない場面を減らすことができるでしょう。

原因② 発達障害,脳の問題

空気が読めない方の中には、発達障害や、脳のネットワークに問題を抱えている場合があります。同じKYな症状でも、障害ごとに内容が異なります。それぞれ起こりやすいKYな特徴を折りたたんで解説をしました。理解を深めたい方は展開してみてください。

ASDは”Autism Spectrum Disorder”の略で「自閉症スペクトラム」と呼ばれています。非言語の読み取りが特に苦手という特徴があります。

相手の気持ちをくみ取ることが苦手
本音をズバズバいうので煙たがられる
日本語特有の曖昧な表現が苦手
ルールや環境に過度にこだわる

などの症状があります。理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。

自閉症スペクトラムの特徴とは

ADHDは”Attention Deficit Hyperactivity Disorder”の略で「注意欠如・多動性障害」と呼ばれています。

ADHDの方は落ち着きがなく、忘れっぽいので、空気が読めない、気遣いができないと言われることが多いです。具体的には

絶え間なくしゃべり続ける
気が散って会話に集中できない
話題をコロコロ変えてしまう
急に席を立ったりする

などの症状があります。理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。

注意欠如・多動性障害の特徴とは

LDは”Learning Disabilities”の略で「学習障害」と呼ばれています。特定の知的活動が苦手と言う特徴があります。

メールの文章が極端に短い
誤読が多い
簡単な計算を間違える
日付や時間を間違える

などの症状があります。理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。

学習障害の特徴とは

発達障害は、比較的わかりやすい症状として現れますが、それ以外でも、空気が読みにくい方もいます。原因としては脳のネットワークがうまく機能していない可能性があります。

脳に関する研究は90年代から、MRIやCT技術の発達によって、盛んになってきています。その結果、私たちの脳は複数の領域が相互に関わることで、コミュニケーションをしていることが分かってきました。

以下は代表的な脳ネットワークです。

メンタライジングネットワーク
他者の内的状況を推測する、忖度する

偏桃体ネットワーク

社会的刺激への情動反応、親和的な行動

共感ネットワーク

他者との共感

ミラーリングネットワーク

他者の行動・情動表出の観察

脳ネットワーク

出典:kennedy & Adolphs(2012)による図を一部修正

脳ネットワークの中でも「メンタライジングネットワーク」は空気を読むために重要となります。メンタライジングとは以下のように定義されています。

他者のこころの状態(欲望、意図、信念)を推測することで相手の行動を説明し、予測すること(Firth & Firth, 2003)

この機能を使うことで、相手とのやりとりで他者の裏の意図を読み取り、気遣いや、思いやりを持った行動をすることができるのです。

メンタライジングネットワークは様々な領域に関連するため、先天的に動きが悪かったり、後天的な事故で脳が障害されることで、空気が読めない症状が出ることがあります。

 

原因③日本とKY文化

空気が読めない事態は、文化が原因になることもあります。様々な人種がいる国では、文化や考え方の違いがあることが当たり前です。考えや価値観は、言葉にしないと伝わらないため、コミュニケーションは言葉にした明確なやりとが求められます。

一方で日本のように同質な人が多い国では、わざわざ口にしなくてもわかるとされがちで、暗黙のルールから逸脱した人が批判されやすいとされています(鍋倉,1997)。

空気が読めないを解説

 

空気が読めない6つの治し方

ここからは、空気が読めない方向けの、対処法を6つ提案いたします。

① 全体の指針をおさえる
② オウム返しでかなり改善
③ 非言語を読み取る
④ あらかじめ相手に伝える
⑤ 長所として活かす
⑥ 専門機関を頼る

ご自身に合いそうなものを組み合わせてご活用ください。

①全体の指針をおさえる

筆者の川島は、空気が読めない方へのカウンセリングの際、改善可能な領域と改善不能な領域を分けて考えています。

空気読めない

改善できる部分は、しっかりトレーニングをしていく必要があります。一方で、努力では改善できない部分は、環境や周りの理解を得ながら、うまく付き合っていくことが大事です。

まずはざっくりと上記の図を意識しておきましょう。

 

②オウム返しでかなり改善

KYを改善する上では、1つの重要スキルがあります。それは「オウム返し」です。オウム返しは、「自分の意見がいらない」という最大のメリットがあります。

「自分の意見がいらない」というのはどういうことでしょうか?例えは下記のような会話があったとします。

*話し手
先日行列ができるラーメン屋に行ったんだ~おいしかった~

   ↓
*聞き手

ラーメンはおいしいですよね~

このように相手が言ったことをそのまま返すだけなので、相手の気持ちが多少わからなくても、自然な返し方になります。

空気が読めない時は、ひとまず相手の言葉をそのまま返す!と意識すれば、かなりのケースでうまくいきます。詳しくは下記のリンク先を参考に練習してみてください。

事実のオウム返し
感情のオウム返し
言い換えのオウム返し
人間関係講座で実践練習

 

③非言語力を読み取る

空気が読めない人の多くは、相手の表情や声の抑揚に注目していないという特徴があります。改善するためには、相手の非言語に注目する習慣をつけましょう。

非言語は複数ありますが、全部を見ているとオーバーヒートしてしまうと思います。そこで最低限、以下の2つのポイントだけは意識しましょう。

表情をよく見る
言葉ではOkが出ていても、表情が曇っている場合は、NGな可能性があります。特に眉毛と眉毛の間の皺眉筋に皺が寄っている場合は要注意です

声の抑揚をよく見る
言葉ではOKが出ていても、声が暗い感じだったら、NGな可能性があります。特に声は本音が出やすい部分です。低い声、戸惑うような間がある場合は注意しましょう。

非言語の読み取りについては以下のコラムでさらに詳しく解説しています。より深く理解したい方は、下記をご覧ください。コラムとしては恋愛がテーマですが参考になると思います。

相手の気持ちを読み取る,チェックポイント

空気が読めない人の解決策

④あらかじめ相手に伝える

オウム返し、非言語の読み取り訓練で、KYはある程度改善できます。一方で、これらの努力をしたとしても、複雑なやりとりがある場合は、苦労する部分は残るでしょう。

そこで長期的に付き合いが発生しそうな場合は、あらかじめ苦手なことを相手に伝えておくことをおすすめします。例えば、抽象的な言葉の読み取りが苦手な方は、

なるべく、できれば、適当に、普通は 
など抽象的な言葉が苦手である

5分 2時間 3回 5センチ
など具体的な言葉にすると理解できる

と伝えておくといいでしょう。もし可能であれば、当コラムも合わせて紹介してみてください。関係改善に役立つと思います。

 

⑤長所として活かす

私たちの体には個性があるように、脳にも個性があります。平均的な脳の持ち主は稀で、多かれ少なかれ皆デコボコの特徴を持った脳をしているものです。

特に空気が読めない方は、特殊な能力を持っていることも結構あります。歴史上の偉人にも空気が読めない方はたくさんいます。

できないことを探して落ち込むより、ご自身の長所をたくさん探し、活き活きと発揮していきましょう。

 

⑥専門機関の利用

「もしかしたら発達障害かもしれない…」と思ったら、専門機関を利用するのも1つのやり方です。

①発達障碍者支援センター
各都道府県にあります。その名の通り発達障害について情報を多数掲載しています。発達障害の疑いが強い場合は一度相談してみると良いでしょう。

②保健所の精神福祉相談員
身近な場所で相談したい方は、保健所の精神福祉相談員に相談するのも良いでしょう。

③精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは精神疾患に関するあらゆる情報が集まっています。お近くにある場合は訪ねてみるのもいいかもしれません。

④精神科クリニック
空気が読めず、人間関係でトラブルを抱え、精神的に参ってしまっている方は精神科クリニックも考えてみましょう。ただ精神科のクリニックは統合失調症やうつ、神経症がメインである傾向にあります。発達障害についてはお医者様の力量次第医のことが多いです。

KYと発達障害の相談ができるところ

まとめ

改善策はいかがでしたか?現実問題として、「空気が読めない人」が急に「空気が読める人」になれる魔法のようなものはありません。しかし、技術的に改善するやり方は意外とあるものです。

また改善できない部分があったとしても、あなたにはそれを補うありあまる長所があるはずです。活き活きと個性を発揮し、一度しかない人生を力強くいきていきましょう。

 

人間関係講座のお知らせ

空気が読めない悩みを公認心理師などの元でしっかり改善したい方は、人間関係講座へのご参加をおすすめします。講座では

・オウム返しの実践練習
・社交性スキル練習
・相手の気持ちを知る練習
・暖かい人間関係を築くコツ

など練習していきます。独学での練習に限界を感じた方のお手伝いをさせて頂きます。是非お待ちしています。↓詳しくは下記のお知らせをクリック↓

空気が読めない・KYな人の原因と治す方法,障害,病気,コミュニケーション講座

助け合い掲示板

1件のコメント

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    • 1
    • 2022年4月4日 2:29 PM

    参考になりました!ぜひほかのほうほうがあればおしえてください!

    返信する

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]山本七平(1977). 空気の研究 文芸春秋.
 
[2]大石千歳(2009). 「空気が読めない」 とはどういうことか? 東京女子体育大学・東京女子体育短期大学紀要 第44号
 
[3]Kennedy, D. P., & Adolphs, R. (2012). The social brain in psychiatric and neurological disorders. Trends in cognitive sciences, 16(11), 559-572