生理的に無理な男性,旦那への対処法
みなさんこんにちは。人間関係講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「生理的に無理への対処法」です。
相談者
35歳 女性
お悩みの内容
私は男性が苦手で、特に初対面に身体少しでも触れるとぞっとしてしまいます。結婚をはじめて3年が経ちますが、旦那に慣れるのもかなり時間がかかりました。旦那も私のこうした性格に嫌気が指している感じです。
信頼できる人とわかっているのですが、生理的に無理というか、体が拒絶してしまうんです。最近はそんな自分にも怒りを覚えるようになりました。男性嫌いを改善する方法があればご教授願いたいです。
いい人だと頭でわかっていても、生理的に受けつけない…。とても複雑でお辛い状態ですよね。当コラムでは生理的に無理な男性への原因と対処法を解説していきます。目次は以下の通りです。
①生理的に無理,先行研究
②生理的に無理な4つの原因
③生理的に無理への対策
男性との良好な関係を築くためにも、ぜひ最後まで一読してみてください。
生理的に無理,先行研究
当コラムでは、女性向けに生理的に無理の原理と、対策の仕方をしっかりとお伝えします。男性の方は女性心理を理解する気持ちでご覧いただけると幸いです。
これまで心理学の世界では、生理的に無理に近い意味を持つ「嫌悪感」について研究がなされてきました。例えば、オウラタンジ(2007)[1]は「嫌悪感」は、「中核的嫌悪」「動物的嫌悪」「汚染嫌悪」などによって生じるとしています。
レイチェル・ハーツ(2010)[2]は生理的嫌悪を体の仕組みについて分析をしています。具体的には、脳の島皮質や免疫システムが影響していると主張しています。
一方で、人間関係に限定した研究は少ない状況です。そこで当コラムでは、先行研究を参考にしつつ、筆者(川島)の経験も加えながら、人間関係にで起こる生理的無理の種類を4つ紹介してきます。
なお、日本でも生理的に無理な感情に関連する研究がなされてきました。以下折りたたんで掲載をしたので、気になるタイトルがあったら展開してみてください。
羽成(2009)[3]は男女ごとの嫌悪感情について調査をしました。その結果が以下の図です。
上記のグラフのように、すべてのカテゴリーに共通していることは、女性の方が異性に対して生理的に無理と感じやすいということです。
羽成(2014)[4]は大学生275名を対象に「父親」「母親」「父親に近い年齢の知人男性」「自分に近い年齢の知人男性」に対する嫌悪感を調査しました。
その結果の一部が下記のグラフです。
まず女性では、「父親に近い年齢の男性に対して最も嫌悪感を感じる」という結果となっています。おじさんには切ない結果となっていますね。。
見ず知らずのおじさんは第一印象で「生理に無理」と思われる可能性が高いようです。父親と自分の年齢に近い男性は、ほぼ僅差という感じです。
続いて男性の場合は、やはり「父親に近い年齢の男性のグラフ」がもっとも伸びています。おじさんは男女ともに嫌われるやすいというわけですね。。女性と違う点は母親が自分に近い年齢の男性よりも、嫌悪感が高いことです。
男性は友達同士でいる時のほうがストレスを感じない傾向があります。このように、父親に近い年齢の男性と生活をともにしたり、一緒に出かけることは「生理的に無理」と答える人が多いようです。
*監修の川島が動画でも解説しています。
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生理的に無理な4つの原因
衛生面のリスク
1つ目は衛生面のリスクがあるときの「生理的に無理」です。
煙草、タンを吐く、汗がいや、悪臭、口臭、服を洗っていない、フケ、病的な人
これらは原始的で先天的に備わっている生理的な無理な感情です。原始的な社会では、風邪をひいたり、感染症にかかるとそれが死に直結していたと言えます。それゆえ不潔なものについて、本能レベルでリスクを回避しようとするのです。
不道徳への嫌悪
2つ目は常識がない人、道徳的でない人への「生理的な無理」です。
食べ方が汚い、ケチ、暴言、手を挙げる、奇妙な会話、ギャンブル依存
これら文化慣習からも私たちは生理的に無理と感じることがあります。
例えば、平気で列に割り込む人がいたとします。この時、私たちは人間性を疑い、この人とはやっていけないという気分にさせられます。
私たちは文化慣習の中でやっていいこと、悪いことを学び、そのルールから逸脱する人に対して、生理的に無理と感じるのです。
恋愛関連
3つ目は、恋愛場面でも「生理的に無理」という感覚が起こりやすくなります。例えば
頭髪が薄い、低身長、毛深い、体格が貧弱
これらに対する嫌悪感が挙げられます。女性の生理的に無理な感覚には出産リスクが挙げられます。女性は生涯で出産できる子供の数は限られています。
そのため、遺伝的に不利な男性は避けて、できるだけ健康的で、容姿も頭も良い男性を選び、有利な子どもを産みたいと本能的に感じてしまうのです。
一方で、男性は女性に対して生理的に無理と感じることはそこまで多くありません。これは出産リスクがないからと言えそうです。好みはありますが、特に肌が触れて嫌だ!と感じるところまではいかないのです。
産後に起こる嫌悪
2012年にNHKあさイチで「産後クライシス」が報道され、2013年には坪井による産後クライシスについての本が出版され、出産後に夫婦関係が冷え込むリスクがあることがわかってきました。具体的には、出産後に
旦那との性行為が嫌になる
身体的接触を避けたくなる
以前は平気だったしぐさが嫌になる
などが挙げられます。産後クライシスは、ホルモンバランスの変化、育児への不参加により起こるとされています。
生理的に無理への対策
「生理的に無理」な感覚は根が深く、せっかく好きになれそうな異性がいたとしても、一度思い込むとなかなか元に戻れないこともあったりします。そこで対策を6つ提案させて頂きます。
➀恋愛初期は気長に考える
②解決できるものなのか考える
③関係性をまずは築く
④前向きな表現で伝える
⑤一緒に成長する
➅限界設定をする
ご自身でも使えそうなものを組み合わせてご活用ください。
➀恋愛初期は気長に考える
松井(1990)[5][6]は大学生173名を対象に、青年の恋愛について調査を行いましました。その結果、初期においては、男性よりも女性の方が恋愛感情を持ちにくいことがわかりました。
女性は恋愛初期においては、警戒心も相まって、身体接触などに生理的嫌悪を覚えるのが普通です。一方で長期的に信頼関係を築き、安心できる関係になると、スキンシップがOKになることもあります。生理的嫌悪が自然とおさまるケースもあることをおさえておきましょう。
②解決できるか?考える
生理的に無理!と感じる対象が、「努力で改善できるものなのか?」を考えるようにしましょう。例えば以下のような嫌悪感は改善ができそうです。
爪に垢が溜まっている
→洗えば解決!
靴が汚れている
→綺麗な靴をプレゼントする
食べ方が汚い
→信頼関係を築いてから、改善をお願いする
汗がにおう
→信頼関係を築いてから、消臭スプレーを使ってもらう
上記のような対象であれば、長い目で見れば、問題は解決できそうです。あきらめるのはもったいないと言えそうです。
一方で、顔の骨格、身長などは変えようがありません。。これらがどうしても自分のタイプと合わないと感じる場合は残念ですが、関係を続けるのは難しいと判断できると思います。
③関係性をまずは築く
さて!解決できそうな対象の場合は、前向きに考えてOKです。ここで大事なことは、すぐにそれを直すことを要求しないことです。例えば、初対面の人の鼻から鼻毛が出ているとしましょう。このとき、直球で
鼻毛出ていますよ!
鼻毛出ていますよ!と言われたら、この女性結構ずけずけ言ってくるなあ~と感じてしまうものです(私は面白がってしまいますが)。
そこで、まずは関係性を作ることが大切です。1か月程度は、仲良くなることに時間を使って、親しくなってから気長に指摘していこうと考えていきましょう。
信頼関係を築く間、もしかしたら生理的に無理な状況は続くかもしれません。しかし、将来的に直してもらえればOKと楽観的に考え、悪いところだけでなく、良い面も見るように心がけましょう。
④前向きな表現で伝える
相手との関係性がきちんとできたら、次に直してほしいところを伝えていきます。ただし、一気にはNGです!1つ1つ直してもらうようにしましょう。ここで大事なのは、主張するときに、相手の利益を合わせていう事です。例えば、
鼻毛が少し出てるね。。しっかり切ると、仕事上も信頼されると思うよ♪
こんな形で伝えていきます。このように相手のメリットも合わせながら伝えると、納得しやすくなります。
これ以外にも主張するときの、バリエーションを増やしたい方は以下のコラムを参考にしてみてください。様々な手法を紹介し知恵ます。
⑤自分も成長する旨を伝える
相手に指摘するときは、あなた自身も相手に何かできないか?提案するようにしましょう。
例えば、パートナーが太っていたら、私が健康的になれるメニューを考える!と提案してみるなど、共同作業にしてしまうのも絆を深めるチャンスになるかもしれません。
一緒にダイエットをしたり、筋トレをするのもいいかもしれないですね。相手に努力を要求する分、自分自身も何か相手が喜ぶ努力をすると良いでしょう。
➅限界設定を伝える
残念ながら話し合いがうまく行かず、折り合いが合わないときも出てくるかもしれません。その際は、限界をきちんと相手に伝えることも大事です。
例えば、洋服を変えず毎回同じ服で、きちんと選択せずデートに来る男性がいたとします。要求をしても、のらりくらりと交わされてしまったら、「次同じ服だったら残念だけどもう会えない」と宣言するのです。
これは最後の手段ですが、自分自身の中で区切りをつけるためにも重要です。詳しくは下記を参照ください。
まとめ
生理的な無理な人と出会った時には、すぐに拒絶するのではなく、相手が「改善できるか?」を考えていきましょう。
もし、相手が嫌いな部分を修正することができれば、後々大切なつながりとなるかもしれません。少しだけ心を広くして、嫌だな~と感じる相手とも交わってみましょう。
深く付き合っていくなかで、隠れた魅力に気付いたり、素晴らしい人間性を兼ね備えていたりするものです。まずは「試しに」という感覚で気楽に関わってみてくださいね。
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
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名前
長田洋和
経歴
- 元専修大学人間科学部教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連