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自分らしく生きるコツ,本来感を高める10の方法を解説

日付:

自分らしく生きる10の方法

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「自分らしく生きるコツ」についてご相談を頂きました。

アイデンティティ 研究

相談者
30歳 女性

お悩みの内容
私は先月30歳になりました。節目の年齢なので、自分自身を振り返ることが多くなっています。小さいころから、自分で考えることが苦手で、周りと同じような生き方をしてきました。なんとなく大学に行き、なんとなく就職してしまいました。

自分自身の個性を発揮した!という感覚が人生で一度もありません。最近は無気力になってしまい、ため息ばかりついています。自分らしく生きて行けるコツを知りたいです。どうすればいいのでしょうか。

30歳という節目のご年齢もあり、自分自身と向き合っているのですね。当コラムでは、自分らしく生きるコツに関する心理学の知識を紹介していきます。是非参考にしてみてください。

自分らしさとは何か

本来感と自分らしさ

自分らしさは、心理学の世界では「本来感」という言葉で研究されてきました。伊藤ら(2005)[1]は本来感を以下のように定義しています。

自分自身に感じる自分の中核的な本当らしさの感覚の程度

いかがでしょうか。少し難し定義ですね。簡単に言い換えると、

自分の個性を発揮できている
素直な自分として生きている
自分の力を発揮できている

このような感覚が本来感になります。

本来感の不足と問題

心理学の研究では本来感が不足すると、メンタルヘルスや行動上の問題が起こりやすくなります。川崎(2009)[2]は、18歳から22歳の男女343名(男性169名、女性174名)を対象に調査を行いました。

その結果、本来感が低い人は、率直な関係を回避することがわかりました。すなわち探り合いのような疲れるコミュニケーションになりやすいと推測されます。

また、自分の欠点を周囲に見せないため、いいところも悪いところも含めた本来の自分でコミュニケーションできないこともわかりました。

以下の折り畳みではより詳しく解説をしています。理解を深めたい方は参照ください。

直接的関係の回避とは、不快なことがある時に話し合うことを避けることを意味します。本来感との関係は以下のようになりました。

自分らしさと関係回避

本来感と直面的関係の回避は、負の相関があることがわかりました。つまり本来感が高いほど、逃げることなく話し合えると言えます。

率直な関係希求とは、一時的に不快な感情が湧いたとしても率直なコミュニケーションを求める傾向です。本来感のとの関係は以下のようになりました。

自分らしさと率直な関係希求

本来感と率直な関係希求は、正の相関があることがわかりました。つまり、本来感が高いほど、腹の探り合いではなく、本音と本音で話し合いたいと感じやすいと推測できます。

自信喪失の回避とは、自分の実力不足が顕在化する状況を避ける傾向です。本来感との関係は以下のようになりました。

自分らしさと自信喪失の回避

本来感と自信喪失の回避は、負の相関があることがわかりました。つまり、本来感が高いと、自信を失う可能性がある体験を避ける傾向が少なくなると言えます。

欠点露呈の回避とは、自分の短所やネガティブな姿を見せないようにする傾向です。本来感との関係は以下のようになりました。

自分らしさと欠点露呈

本来感と欠点露呈の回避は、負の相関があることがわかりました。つまり、本来感が高いと、自分の欠点でも恥ずかしがらず周りに見せられると言えるでしょう。


もしあなたが、自分らしく生きることができていない…と感じていたとしたら、注意が必要です。

自分らしさの感覚

自分らしさと10の方法

で自分らしく生きる感覚を呼び起こすにはどうすれば良いのでしょうか?今回はこれまでの研究と心理職20年の経験から10のコツを提案させて頂きます。

①よく思われようとしない
②日記を書く
③マインドフルネスを実践
④本棚セラピーで長所を確認する
➄コンプレックスを活かす
⑥目標を定める
⑦活動に打ち込む
⑧コミュニケーションを充実させる
⑨コミュニティに所属する
⑩危機的状況を活かす

ご自身の生活に活かせそうなものがありましたら参考にしてみてください。

①よく思われようとしない

益子(2010)[3]は大学生163名を対象に、本来感について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

 自分らしさ よく思われたい欲求 本来感こちらはよく思われたいと思うほど、本来感が減っていくという意味があります。相手に好かれたいがゆえに、嫌なことをされてもニコニコしてしまう、必要以上に相手を手伝う、過剰に着飾る、これらの行動は、自分らしく生きる感覚を減らしてしまう可能性が高いです。

あてはまると感じる方は、周りの評価を土台として行動するのではなく、自分自身で評価をできるか、を土台として行動していく習慣が大事になります。

②日記を書く

益子(2010)[3]の研究では以下の結果も出ています。

自分らしさ 内省傾向

こちらは自分と向き合い、反省できる人ほど本来感が増すことを意味しています。自分らしさを持つには、あなた自身の行動や内面を客観的に捉え記録していくことが大切と言えます。

おすすめなのは日記です。日記を書くためには、自分としっかり向合う必要があります。あなた自身が自分についてどんな時にうれしいか、何が起こると気分が下がってしまうかなど、普段気づかないような自分らしさの傾向を知ることができます。

日記が書けるということは、あなたが自分としっかり向き合った証拠です。日記を書くことで、より多くの自分らしさに気付けるようになるでしょう。

自分らしく生きるコツ 日記

③マインドフルネスを実践

西野ら(2009)[4]は、大学生53名(男性10名、女性43名)を対象にマインドフルネスが本来感に与える影響について調査を行いました。その結果、本来感とマインドフルネスは、正の相関(.546**)があることがわかりました。マインドフルネスを実践することで、本来感を高めることができるのです。

マインドフルネスでは「今この瞬間」に意識を向けます。過去の失敗や未来への不安に捉われず、今おきている状況をそのまま受け入れていきます。マインドフルネスが実践できると、ありのままの自分でコミュニケーションができるため、本来感が高められるのです。マインドフルネスの詳しいエクササイズは下記を参照ください。

マインドフルネス,エクササイズ

④長所を発見,本棚セラピー

私のカウンセリングでは、自分らしさを見つけられないときに、本棚セラピーと言うワークを行うことがあります。本棚セラピーでは、自分の特徴を様々な角度から考え、長所や能力を発見していくワークです。

日記と合わせて実施してみると、自分らしさが発見できるかもしれません。具体的には下記の図を箇条書きで埋めていくワークとなります。

コンプレックスを克服する練習

詳しいやり方は下記のリンクにあります。興味がある方は参考にしてみてください。

長所を発見本棚セラピー

➄コンプレックスを活かす

コンプレックスを活かすことで自分らしさを高めることができます。

アドラー心理学を提唱したアルフレッド・アドラーは、劣等感にはプラスの面とマイナスの面があるとしています。うまく活かせば前向きな力となる一方で、虚勢をはればコンプレックスとして心に影を落としてしまうのです。

アドラーによると、コンプレックスは前向きに捉えることで、原動力にもなるとしています。まずはコンプレックスを受け入れ、自分らしさとして活かしてみましょう。コンプレックスをポジティブな自分らしさに変える具体的な方法は、下記のリンクにあります。興味がある方は参考にしてみてください。

アドラー心理学

自分らしさを持つ方法

 

⑥目標を定める

伊藤ら(2011)[5]は、大学生273名を対象に本来感の調査を行いました。下図をご覧ください。

自分らしく生きるコツと将来の目標

こちらは、将来の目標があると本来感が増す、すなわち自分らしさを感じるようになることを表しています。

自分と向き合い、自分らしさがぼんやりと見えてきたとき大事なことは、将来の目標を立てることが大事になります。

この目標は先程お伝えした通り、答えはありません。どんな書籍を読んでもその答えは書いていないので、自分自身で定めていかなくてはなりません。

暖かい家庭を築く
福祉の世界で生きて行く
大好きな趣味に没頭する

様々な答えがあると思います。是非どういきるか?どんな人生にしたいのか?自分なりに模索してみてください。

⑦成長するための努力をする

目標が定まったら、あとは活発に行動をして、努力を継続していく必要があります。この時期は自分らしさを実感できる時期になります。下図をご覧ください。

自分らしく生きるコツと成長への努力

この図には、成長への努力をしていると自分らしく感じるという意味があります。日々なんらかの努力を積み重ねていくことが、自分らしさ土台となると言えそうです。

⑧コミュニケーションを充実させる

最後に、自分らしさとコミュニケーションの重要性を抑えておきましょう。以下の図をご覧ください。

自分らしく生きるコツと対人調和・意識表出スキル

この図は何を意味しているのかといと

・コミュニケーションスキルがある人は
 自分らしく感じる

・コミュニケーションスキルがない人は
 自分らしさを感じられない

という2つの意味があります。例えば、自己開示が苦手な人は、自分の気持ちを伝えたり、自分の価値観を主張することができません。その結果、自分らしく表現ができないという感覚になりがちです。

自分らしくあるためには、コミュニケーションを充実させることが大事になることも抑えておきましょう。是非様々な方と交流し、様々な価値観にふれ、自分なりに気づきにつなげてみてください。

なおコミュニケーションを独学で向上させるのが難しいと感じる方は、筆者が運営する講座をおススメしています。傾聴力や発話力など体系的に練習できる場所となります。是非お待ちしています。

人間関係講座でコミュ力をUPする

⑨居場所を作る

石本(2010)[6]は、大学生138名(男性55名、女性83名)を対象に、居場所と本来感の調査を行いました。その結果、本来感と社会的居場所は、正の相関(.432**)があることがわかりました。誰かと一緒にいる時の居場所(社会的居場所)は、自分らしい感覚を持たせてくれるのです。

調査では、誰かの役に立っていると感じる場が多い人ほど社会的居場所を確保できることも分かりました。コミュニティにいくつか所属するなど、役に立てる場をより多く持つことで、自分らしく生きられるといえそうです。コミュニティに所属する方法は、以下を参考にしてみてください。

コミュニティに所属する方法

⑩危機的状況を活かす

心理学の世界にはアイデンティティクライシスという言葉があります。アイデンティティクライシスとは、

リストラされた
コロナウイルスで生活が一変
家族と死別した
病気にかかった
引きこもりになった

など、人生の価値観を揺さぶられるような危機的な時期を意味します。

このような危機的な状況に私たちは、本気で人生と向き合うことになります。相談者の方は、今とても落ち込んでいらっしゃるとお見受けします。

元気がない時期は休息をとることも大事ですが、少し余裕があるときは、今の時期が自分らしさを発見できるチャンスと前向きに考えると良いかもしれません。

アイデンティティクライシスの意味とは

自分らしさがある人の特徴

まとめ

今回は自分らしさについて見てきました。時間がかかるかもしれませんが、ご紹介した方法を参考に、自分が納得できる「自分らしさ」を見つけてみてください。

きっと皆さんが人生を充実させるための大きな気づきが得られると思います。応援しています!!

もっと学びたい方へ

当コラムの内容をしっかり身につけたい方は、公認心理師による講座をおすすめします。内容は以下のとおりです。

・自分らしさを発見する心理学の学習
・自分の長所を探す,ストレングスワーク
・ありのままを受け入れる,マインドフルネス
・無理をしない,健康的な人間関係を築くコツ

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)

自分らしく生きるコツ,本来感を高める7つの方法を解説,心理学講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]伊藤正哉・小玉正博(2005).自分らしくある感覚(本来感)と自尊感情がwell-beingに及ぼす影響の検討 教育心理学研究, 53, 74-85.
 
[2]川崎直樹(2009).現実回避傾向と自尊心及び本来感の関連 日本心理学会第73回大会,セッションID: 3PM003
 
[3]益子洋人(2010).大学生の過剰な外的適応行動と内省傾向が本来感におよぼす影響 学校メンタルヘルス13巻1号 
 
[4]西野 華乃弓, 佐柳 信男(2018).マインドフルネスが本来感に与える影響, 日本教育心理学会総会発表論文集, 60 巻, 第60回総会発表論文集, セッションID PE50, p. 469
 
[5]伊藤正哉・川崎直樹・小玉正博(2011).自尊感情の3様態―自尊源の随伴性と充足感からの整理― 心理学研究,81,6,pp.560-568.
 
[6]Gabrile Oettingen & Thomas A. Wadden(1991).Expectation, fantasy, and weight loss : Is the impact of positive thinking always positive? Cognitive Therapy and Research Volume 15, Issue2