優柔不断の治し方,改善法
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「優柔不断の治し方」についてご相談を頂きました。
相談者
30歳 女性
お悩みの内容
私は昔から優柔不断で何を決めるのも遅い方でした。
日常的には、食べ物を決めるのに時間がかかってしまいます。取りたい資格があるのですが、迷っているうちに3年もたってしまいました。恋愛ではせっかく告白されても返事を迷っているうちに、相手が離れてしまいます。
そろそろ優柔不断を治したいと思っています。心理学で使える知識がありましたら教えてください。
日常生活、仕事、恋愛で決断力がなく、もやもやしているのですね。当コラムでは優先順位のつけ方、行動力をつけるやり方を提案させて頂きます。是非参考にしてみてください。
優柔不断と4つのタイプ
まず初めに優柔不断な方の特徴を理解していきましょう。斎藤・緑川(2015)[1]の研究によると、優柔不断には4つのタイプがあることがわかりました。
熟慮タイプ
何かを選ぶ時、些細な事まで分析するため、判断に時間がかかる
先延ばしタイプ
重要な問題の決定を先延ばしにし、直前まで決断を先送りにしてしまいがち
不安タイプ
決断をする時に自信を持って選べず、決断した後で後悔する事が多い
他者参照タイプ
他者がどうするか、何を選ぶか気になり、自分の選択が他者と違うと不安になる
同じ優柔不断でも心の中では様々なプロセスがあることがわかります。皆さんはどの傾向が強いと感じますか?
決められない-長所
優柔不断には長所と短所があります。長所については以下の3つが挙げられます。
正確な判断に役立つ
優柔不断であるという事は、よく考えることができる、と言い換えることができます。メリットとリスクを充分精査した上で決断するので、正確な判断をすることができます。
曖昧さ耐性がある
優柔不断であるということは、言い換えるとすぐに白黒つけず、曖昧な状況でも耐えられる心があると言えます。これは心理学の世界で「曖昧さ耐性がある」と表現することがあります。
曖昧さ耐性がある方は、人間関係が長続きしやすく、我慢強いことがわかっています。興味がある方は以下のコラムを参照ください。
相手の主体性を高める
優柔不断な方は決断を相手にゆだねることが多くなります。これは言い換えると、相手のリーダーシップ力を鍛えるとも言えます。
例えば、優柔不断な方同士がお付き合いすると、1年ぐらい経つと、どちらか一方のリーダーシップ力があがっていきます。これは片方が決断しないと前に進んでいかないので、自然と主体性が身についていくためです。
決められない-短所
次に優柔不断の短所を解説します。具体的には以下の3つが挙げられます。
生活の質が下がる傾向
原田ら(2007)[2]は、女性看護師227名を対象にQOL(クオリティオブライフ:生活の質)についての調査を行いました。その結果、特に優柔不断な若者にQOLが低い傾向があることがことがわかりました。
若い世代は、恋愛、就職、転職、結婚など様々な場面で決断を求められます。その際、優柔不断な傾向があると、先延ばしすることが増え、経験を得られず生活の質が下がる場面が増えると考えられます。
下図の通り、20代・30代の若い世代では、優柔不断な傾向がある方は人生の充実感がマイナスな傾向があります。
一方で、40代、50代になるにつれて優柔不断な傾向がQOLに影響しないことも示唆されています。
*上記の研究は母集団が少なく、有意差は20代のみ確認されています。あくまで参考値として考えてください
後悔しやすい
上市ら(2004)[3]は、行動選択が「後悔」にどのような影響を及ぼすかを調べています。その結果、希望があったにも関わらず行動をしなかった人は、後悔しやすいことがわかりました。
優柔不断な方は、リスクを先に考えてしまうので、行動に移すことが苦手です。その結果、時すでに遅しになることがあり、後悔しやすくなると考えられます。
実験では、大学生70名に対して、「異性に対して告白したか、しなかったか」「第一志望校を受験したか、しなかったか」について後悔の程度を調査しました。
まずは告白についての図から見ていきましょう。
図のように「告白しなかった」よりも「告白した」の方が短気的にも長期的にも後悔の程度が低い傾向にあることが分かります。フラれるリスクがあっても勇気を出して「行動する」ことで、結果として後悔が少なくなるのです。
次に受験についての図を見てみましょう。
こちらは、短期が同じ位置にあるので差がハッキリしていますね。行動しなかった人は後悔が大きくなったのに対して、行動した人は極限まで後悔が小さくなっていることがわかります。
後悔について詳しく知りたい方は下記のコラムを参照ください。
買い物を楽しめない
田中ら(2013)[4]は、中高生259名を対象に「意思決定スタイルが購買行動にどのような影響を与えるか」を調査しました。
その結果、優柔不断な方ほど、買い物の場面で充実感がなく、心理的な負担が大きい結果になっていました。買い物は、選択の連続です。考えすぎるが故に楽しむことができないと推測されます。
図のように、買い物の充実感は低く、認知的負担は大きい、そして他人の決定に流されやすくなるのですね。
住宅や車など、高額なものを購入する場合は別ですが、普段の何気ない買い物においては失敗してもOK!と考えてサクッと決断するように心がけたいですね。
優柔不断の治し方
診断はいかがでしたか?ここからは強すぎる優柔不断を改善する5つのやり方を紹介します。
①決断納期法
②ベストよりベター法
③成功イメージを増やす
④自分基準で決める
⑤マインドフルネス力をつける
ご自身にフィットしそうなものがありましたら参考にしてみてください。
①決断納期法
優柔不断を治すには、最初に制限時間を決めることが有効です。例えば、ランチメニューだったら
よし!30秒以内に決めるぞ
と心の中で宣言してしまうのです。そして実際に時間が来てしまったら、「えいや!」で選択してしまうのです。迷う…という事は、メリット・デメリットが均衡している状態なので、どちらの選択肢を選んでもそこまで大差はないことがほどんどです。そんな時は時間を節約して決断してしまうのも1つの手です。
いつも不安で決断できない…という方は以下のコラムで練習問題にもチャレンジしてみてくださいね。
決断納期法の練習
②ベストよりベター法
物事を決める時、100%正しい選択、リスクがない決断というのは現実的には存在しません。また、その時はベストな判断だったとしても状況の変化で「あれ、違った…」という事もあります。
べストを求めるばかりに優柔不断になってしまうのであれば、ベターだと思える判断や決断をして行動した方が最良の結果につながります。何事もベストな決断をしなければ…と思ってしまう方は、以下のコラムを参照ください。
③成功イメージを増やす
優柔不断になりやすい方は、メリットよりもリスクを大きく見積もってしまいます。失敗するイメージばかりが先行してしまって自分自身で恐怖心を煽ってしまうのです。
大事なことは成功するイメージを増やすことです。うまく行った場合に得られるもの、楽しい感情、成長している自分を想像してみましょう。きっと行動する勇気が湧いてくると思いますよ。
詳しくは下記のコラムを参照ください。
④自分基準で決める
優柔不断な方の傾向として、自分の判断に自信がなく、周りの目や周りの情報を元に決めていく傾向があります。
しかし、これでは他人に人生の選択をゆだねることになってしまいます。他人の意見に流されたり、人の判断を優先するような態度を改めて、全てを自分で決断する癖をつけることが大事です。
周りの意見ではなく、
私自身はどうしたいのか?
を基準に考える癖をつけましょう。あくまで、決断に責任を負うのは自分です。「自分の答え」「自分の人生」なのです。「人と違っても良し!」とする勇気を持ちましょう。人の目がどうしても気になる…と感じる方は以下のコラムを参照ください。
⑤マインドフルネス力をつける
何かを決断するとき、恐怖心が芽生えない方はいません。しかし、恐怖心に取り込まれていると、私たちは行動に移すことができません。恐怖心に取り込まれやすい方は心理療法の1つであるマインドフルネス療法の学習をオススメします。マインドフルネス療法では、
感情を客観的に眺める
冷静に自分を見つめる
恐怖心に支配されないようにする
これらの練習をしていきます。不安や恐怖心が強く、優柔不断になりやすい方は下記のコラムを参照ください。
まとめ
最後に、私の話を少しさせて頂きます。私自身は「迷う」ということは、メリットデメリットが均衡している証拠と考えています。明らかにNG、明らかにOKであれば、わざわざ迷わないですからね。
迷うということは、結局はどちらを選択しても大差ないという心のサインと考えています。そのため、迷った場合はとりあえず決断してしまって、結果は受け入れるようにしてみます。
人生やってみないとわからないことだらけですからね。当コラムが皆さんの人生に役立つことを切に願っています。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・優柔不断な気持ちの改善
・決断力をつける,成功イメージを増やす
・積極的なチャレンジ,行動療法
・不安や恐怖心との付き合い方
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1]斎藤 聖子・緑川 晶 (2015). 優柔不断尺度の作成と信頼性および妥当性の検討 心理学研究, 87, 535-545.[2]原田 貴史・中村 明美・友竹 正人・大森 哲郎 (2007). 女性看護職の強迫傾向が主観的QOLに及ぼす影響 心身医学, 47, 33-40[3]Ueichi, H, & Kusumi, T. (2004). Change in feelings of regret over time: Relation to decision-making style, behavior, and coping methods. The Japanse Journal of Psychology, 74, 487-495.[4]田中 真理・鎌田 晶子・秋山 美栄子 (2013). 中高年者の意思決定スタイルが購買行動に与える影響に関する検討 生活科学研究, 35, 3-9.
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