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逃げ癖を直す4つの方法,恋愛,仕事

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逃げ癖を直す6つの方法,恋愛,仕事

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「逃げ癖を直す方法」についてご相談を頂きました。

相談者
33歳 男性 会社員

お悩みの内容
私は昔から、不安を感じやすい方で、逃げ続けてきた気がします。

以前、大型資格を取ろうか迷った時期があったのですが、勉強時間に躊躇して、結局チャレンジしませんでした。恋愛では、好きな人ができても、一度も告白したことはありません。

あのとき、こうしていたら…と後悔することが多いです。どうすれば逃げ癖を改善できるでしょうか?

お悩みから、もっと積極的な自分になりたい。というお気持ちが伝わってきました。当コラムでは逃げ癖の心理と改善策を解説していきます。是非参考にしてみてください。

逃げ癖

逃げ癖と悪影響

私たちは新しい出来事に遭遇すると不安になるものです。この時、逃げる癖をつけてしまうと様々な悪影響があります。

不安の増大

心理学の研究では、回避行動をすると、余計に不安を増大させてしまうことがわかっています。一見回避をすると、不安が小さくなるように見えますが、実際にはその対象に対して不安が大きくなってしまうのです。

経験値を得られない

逃げ癖をつけると、問題があるたびに避けることになるため、経験値を得ることができません。仕事では同じ作業の繰り返しを好み、スキルを向上させる機会を逃すことになります。恋愛では、会話をする力、デートコースの選び方、楽しませ方など、経験値が上がらない状態になります。

自信がつかない

チャレンジすることを避けると、達成感や成長を実感することができず、自信を持ちにくくなります。自信を持てないと次のチャレンジにも消極的になってしまい、余計に自信を失うことになります。

後悔しやすくなる

心理学の研究では、回避癖がある方は後悔が多く、メンタルヘルスが悪い傾向にあることが分かっています。

あの時こうしておけばよかった…
あの時チャレンジしておけばよかった…
もし〇〇だったら… 

と、過去を悔やむ機会が増えてしまうのです。

以下、回避についての研究を紹介しています。詳しく知りたい方は折り畳みを展開してみてください。

疋田ら(2017)[2]は、大学生345名を対象に、回避行動が人間の心理にどのように影響するかを調査しました。その結果の一部が下図となります。

逃げ癖と不安

こちらは回避行動をすると不安が増えることを意味しています。

疋田ら(2017)[2]は、大学生345名を対象に、回避行動とネガティブな反復思考について調査を行いました。結果の一部が下図となります。

逃げ癖とネガティブな反復思考

こちらの図は、回避行動とネガティブな反復思考はお互いを刺激し合うことを意味しています。逃げ癖をつけると、後悔、自責の念が強まり、その考えがさらに回避行動を促進すると予測されます。

上市ら(2004)[3]は、大学生70名を対象に、異性に対して「告白しなかったグループ」「告白したグループ」にわけて、後悔の程度を調査しました。結果の一部が下図となります。

後悔しない

上記「告白しなかったグループ」は「告白したグループ」よりも、短期・長期ともに後悔の程度が大きくなっています。恋愛においても、逃げ癖がつくと後悔しやすくなることがわかります。

林ら(1997)[4]は、大学生485名に対して、認知の複雑性と心理的な影響について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

N-SCとは、ネガティブな側面での自己認知の複雑性(negative self complexity)で、自分のネガティブな面をたくさんみつけてしまう心の癖を意味します。下図ですと、N-SC上位群は自分のネガティブな面をたくさんみつけてしまう群となります。

また、ネガティブ情報回避欲求とは、自分についてのネガティブな情報から逃げてしまう傾向のことです。

逃げ癖 ネガティブこの図は、N-SC上位群は下位群よりもネガティブ情報回避欲求が強いことを現わしています。言い換えると「自分のネガティブな面をたくさん見つける人は、苦手な情報が起こりそうな場面から逃げやすい」といえます。

例えば、仕事について自分の失敗や欠点ばかりを考える癖があると、困難を避ける仕事を選びがちになると言えます。この点、自分が成長できるような仕事は困難がつきものです。ネガティブな面を見つけやすい人は成長する機会を逃しやすいと推測できます。

 

回避行動と安全行動

心理療法では「回避行動」「安全行動」という重要な考え方があります。

回避行動とは何か

回避行動とは、不安や恐怖心を経験しないようにするため、その状況を意図的に回避することを意味します。以下のような事例が挙げられます。

あがり症だから、人前に立つことを避ける
恐怖心があり、新しい店に入ることを避ける
恋愛に不安があり、異姓との会話場面をさける
雑菌が不安で、物に触れられない 

心理学の研究では、不安を回避すると、その不安は大きくなり、ついには恐怖に発展していく可能性があることがわかっています。回避は一時的には不安を小さくしますが、長期的にみると不安を大きくしている面もあるのです。

三田村・横田(2006)[1]は、人間関係に逃げ癖がある方は、対人恐怖症の傾向が強くなると主張しています。以下の図をご覧ください。逃げ癖の負のスパイラル

小さな不安が段々と大きくなって、対人恐怖になっています。このように回避は不安や恐怖心を余計に強くするリスクがあることを抑えておきましょう。

安全行動とは何か

安全行動とは、行動はするものの、不安や恐怖心を防ぐために過剰な安全策をはかることを意味します。以下のような事例が挙げられます。

あがり症だから、原稿を全て棒読みする
恐怖心があり、新しい店に入る時は安定剤を持ち込む
恋愛に不安があり、異姓との会話では暗い店を選ぶ
雑菌が不安で、物に触れたら、手を何度も洗う 

これらの安全行動も回避行動と同じく、一時的には安心できますが、結果的には「安全行動がないと行動できない」という心の状態をより強くしてしまいます。例えば、あがり症の方であれば、原稿なしで話す恐怖心は余計に強くなってしまうのです。

逃げ癖を改善する方法

ここからは、逃げ癖を改善する6つの方法をお伝えします。ご自身に合いそうなアイデアがありましたら組み合わせてご活用ください。

①現実的に考える,認知療法
②スモールステップを徹底!
③マインドフルネス力をつける
④森田療法を学ぶ
➄失敗=経験値と考える
⑥逃げてもOKの基準を作る

①現実的に考える

不安や恐怖心が強い方へのカウンセリングの手法の1つに認知療法があります。認知療法では、「考え方の偏り」を現実的にしていくことで、不安や恐怖心を軽くしていきます。例えば、あがり症の方は、

あがり症がばれると評価が下がる あがり症は恥ずかしいことだ 緊張すると弱いと思われる 

という考え方がよくあります。しかし、人前に立った時にあがっている人を見た時に、「あがったから評価を下げよう」と考える人はそこまで多くありません。またあがっている人を見て、「あいつは恥ずかしい奴」だと感じる人も稀です。緊張している人を「弱い人間だ」と考える人はほとんどいないでしょう。

そう考えると、あがり症についての自分の中での考えは、非現実的な考えと言えます。そこで以下のように考え方を見直していくことが大事になります。

あがり症だからと言って、評価が下がるわけでもない 緊張は誰でもするものだ 緊張しながら自分なりに一生懸命話せればOK 

このように考え方を見直していくと気持ちが楽になっていきます。認知療法については以下のコラムで詳しく書きました。考え方が偏っているかもしれない・・・と感じる方は参考にしてみてください。

考え方を現実的に,認知療法の基礎

②スモールステップの徹底

前述した、「回避行動」「安全行動」がある方には、行動療法という手法がおすすめです。行動療法では適切な目標設定をしていくことで、避けている場面にチャレンジしていく手法になります。例えば、逃げ癖がある方の特徴として、理想を高く持ちすぎているという特徴があります。

人前に立つときは流ちょうに 堂々として話さなくてはならない 

このような大きな目標では、不安や恐怖心が強くなりすぎて、行動することは難しくなってしまいます。そこで以下のような段階を作って行動していきます。

チャレンジ①
人前に立てるだけでOK 原稿OK 噛み噛みでも合格 

チャレンジ②
人前に立つ 原稿を30%削る 一部だけ原稿なしで

チャレンジ③
人前に立つ 原稿を50%削る 口を大きく開けて話す

このように、乗り越えることができるサイズの目標を立てながら、1つ1つクリアしていくことが大事になります。丁度よい目標設定や、スモールステップを作る方法を学びたい方は、以下のコラムを参照ください。

チャレンジを階層に分ける-行動療法

不信感を少しづつ減らしていこう

③マインドフルネス力をつける

逃げ癖・回避癖がある方は、「逃げたい…!」という感情にどっぷりつかってしまい、行動が制限されてしまう傾向があります。感情にどっぷりと浸かってしまう状態は、「自動操縦状態」と言います。

この自動操縦状態を改善するには、「マインドフルネス」という手法があります。マインドフルネスとは、自分の感情を客観的に眺め、「今この瞬間」の自分に気付くことを目指す心理療法です。

マインドフルネスができるようになると、逃げたい…という自分を客観的に眺め、本当にやるべきことを選択的に行動できるようになります。

逃げたい…と一度感じると、勝手に体が逃げ出してしまう…こんな感覚がある方は、下記のコラムを参照ください。

感情の客観視-マインドフルネス療法

④森田療法

逃げ癖を改善する上で、森田療法はとってもオススメです。森田療法は100年ぐらい前に日本人が作った心理療法です。森田療法の哲学を要約すると、以下の2点になります。

あるがまま
不安や恐怖心は無理になくさなくともよい

目的本位
感情を受け入れ、目的を大事にして生きよ

逃げ癖がある方は、不安や恐怖があると、その感情をどうにかなくそうともがきます。しかし、森田は感情に抗わなくてもOKと説くのです。

不安、恐怖は自然なことだから、それは自然なものとして受け入れ、その感情はそのままに、「目的」を大事に生きていこう、という考え方です。詳しくは以下の動画で解説しました。

より深く森田療法を理解したい方はこちらのコラムを参考にしてみてください。

森田療法の基礎と活かし方

➄失敗=経験値と考える

逃げ癖がある方は、失敗することを恐れ、チャレンジをしない傾向があります。ここで私が好きな話を紹介したいと思います。私たちの部屋を明るく照らす電球を作ったのは、エジソンです。エジソンは学生時代、教師から、

 too stupid to learn anything
(何を勉強させても愚かだ!)

と言われてたそうです。さらにエジソンは、若いころ2つの仕事で解雇をされています。電球を発明し、インタビューを受けた際、エジソンは下記のように答えたそうです。

 I didn’t fail 1,000 times!The light bulb was an invention with 1,000 steps!
(私は1000回の失敗をしたのではない!1000のステップを踏んだのだ!)

皆さんいかがでしょうか。エジソンでさえ失敗しまくっているのです。私たちがチャレンジして少々失敗したところで、エジソンに言わせれば1つの経験を積んでいると言えるかもしれません。

エジソン失敗,回避癖

失敗が怖くなって逃げたくなったら、

失敗してもそれは経験になる
だから逃げずにチャレンジしてみよう
 

と心のなかで呟いてみることをおすすめします。きっと勇気が湧いてくると思います。関連コラムとして、以下のコラムを提案させて頂きます。気になる方は、一通りコラムを読んだ後に参考にしてみてください。

失敗が怖い心理を改善する方法

 

⑥逃げてもOKな基準を決める

ここまで逃げ癖をなくす方法を解説してきました。基本的には行動しようか迷ったときは、逃げずにチャレンジすることを大事にしましょう。一方で、

心が疲れ果てている
失敗する確率が90%以上
相手に迷惑が掛かる
 

このような事情がある場合は、逃げるという選択肢も現実的になってきます。心が悲鳴を上げているときはちゃんと休むことももちろん大丈夫です。

回避するリスクをきちんと理解した上で、前向きに「チャレンジを辞めることもあり」という選択肢も持つようにしましょう。

まとめ

皆さんはドラゴンクエストというゲームをしたことはありますか?私は小学生の頃、このゲームにはまっていました。ドラゴンクエストでは、敵と遭遇すると以下の選択コマンドが出てきます。

 たたかう
 にげる

子供の頃の私は、このコマンドを見ると、大変迷ったものでした。勇気を出して「たたかう」を選択すると経験値が増え、ストーリーも厚みを増していきます。

逆に「にげる」ばかりを選択すると、経験値を得られずレベルが一向にアップしません。いつまでもストーリーが前に進まず、行動範囲は狭いままです。ゲームとして全然面白くないのです。

人生は一度しかありません。一度しかない人生ですから、チャレンジを重ねて、失敗、成功に関わらず、後悔のない生き方を皆さんにしてほしいなと感じています。応援しています!

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・逃げ癖を改善する心理学
・不安に強くなる,マインドフルネス療法
・恐怖心に強くなる,あるがまま森田療法
・スモールステップの作り方

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^) 

逃げ癖を直す4つの方法,恋愛,仕事,心理学講座

 

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1件のコメント

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    • 匿名
    • 2020年5月4日 9:05 PM

    人が苦手で話すことがとても嫌いで怖いですまだ私は子供なのでよく発表のときほとんど言いませんそれでよく先生に怒られますなのでたまに死にたいとか思ったりしますこの性格を治したいです

    返信する

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] 三田村 仰・横田 正夫 (2006). アサーティブ行動阻害の要因について ――対人恐怖心性からの検討 パーソナリティ研究, 15, 55-57.
 
[2] 疋田 一起・山本 竜也・首藤 祐介・坂井 誠 (2017).  回避行動とネガティブな反復的思考が抑うつと不安に及ぼす影響 中京大学心理学研究科・心理学部紀要, 17, 47-52.
 
[3] 上市 秀雄・楠見 孝 (2004). 後悔の時間的変化と対処方法-意思決定スタイルと行動選択との関連性-  心理学研究, 74, 487-495.
 
[4] 林 文俊・堀内 孝 (1997). 自己認知の複雑性 に関する研究 Linvilleの指標をめぐって  心理学研究,  67, 452-457.