逃げ癖を直す4つの方法,恋愛,仕事
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「逃げ癖を直す方法」についてご相談を頂きました。
相談者
33歳 男性 会社員
お悩みの内容
私は昔から、不安を感じやすい方で、逃げ続けてきた気がします。
以前、大型資格を取ろうか迷った時期があったのですが、勉強時間に躊躇して、結局チャレンジしませんでした。恋愛では、好きな人ができても、一度も告白したことはありません。
あのとき、こうしていたら…と後悔することが多いです。どうすれば逃げ癖を改善できるでしょうか?
お悩みから、もっと積極的な自分になりたい。というお気持ちが伝わってきました。当コラムでは逃げ癖の心理と改善策を解説していきます。是非参考にしてみてください。
逃げ癖のデメリット
まずはじめに、逃げ癖のデメリットから考えていきましょう。逃げ癖には3つの大きなデメリットがあります。
経験値を得られない
皆さんはドラゴンクエストというゲームをしたことはありますか?私は小学生の頃、このゲームにはまっていました。ドラゴンクエストでは、敵と遭遇すると以下の選択コマンドが出てきます。
たたかう
にげる
子供の頃の私は、このコマンドを見ると、大変迷ったものでした。勇気を出して「たたかう」を選択すると経験値が増え、ストーリーも厚みを増していきます。
逆に「にげる」ばかりを選択すると、経験値を得られずレベルが一向にアップしません。いつまでもストーリーが前に進まず、行動範囲は狭いままです。ゲームとして全然面白くないのです。
現実の人生においても同じだと思います。仕事でも恋愛でも、逃げてばかりいると経験値が上がらず、一向にレベルアップしません。その結果、成果を出せず、嫌になってしまうのです。
不安の増大
三田村・横田(2006)[1]は、人間関係に逃げ癖がある方は、対人恐怖症の傾向が強くなると主張しています。以下の図をご覧ください。
小さな不安が段々と大きくなって、対人恐怖になっています。心理学の研究では、不安を回避すると、その不安は大きくなり、ついには恐怖に発展していく可能性があることがわかっています。
回避は一時的には不安を小さくしますが、長期的にみると不安を大きくしている面もあるのです。
後悔しやすくなる
心理学の研究では、回避癖がある方は後悔が多く、メンタルヘルスが悪い傾向にあることが分かっています。
あの時こうしておけばよかった…
あの時チャレンジしておけばよかった…
もし〇〇だったら…
と、過去を悔やむ機会が増えてしまうのです。逆に行動をした人は、結果に関わらず後悔が少ないこともわかっています。
以下、回避についての研究を紹介しています。詳しく知りたい方は折り畳みを展開してみてください。
疋田ら(2017)[2]は、
こちらは回避行動をすると不安が増えることを意味しています。
疋田ら(2017)[2]は、大学生345名を対象に、回避行動とネガティブな反復思考について調査を行いました。結果の一部が下図となります。
こちらの図は、回避行動とネガティブな反復思考はお互いを刺激し合うことを意味しています。逃げ癖をつけると、後悔、自責の念が強まり、その考えがさらに回避行動を促進すると予測されます。
上市ら(2004)[3]は、大学生70名を対象に、異性に対して「告白しなかったグループ」「告白したグループ」にわけて、後悔の程度を調査しました。結果の一部が下図となります。
上記「告白しなかったグループ」は「告白したグループ」よりも、短期・長期ともに後悔の程度が大きくなっています。恋愛においても、逃げ癖がつくと後悔しやすくなることがわかります。
林ら(1997)
は、大学生485名に対して、認知の複雑性と心理的な影響について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。N-SCとは、ネガティブな側面での自己認知の複雑性(negative self complexity)で、自分のネガティブな面をたくさんみつけてしまう心の癖を意味します。上図ですと、上位群は自分のネガティブな面をたくさんみつけてしまう群となります。
そして、ネガティブ情報回避欲求とは、自分についてのネガティブな情報から逃げてしまう傾向のことです。
つまり「自分のネガティブな面をたくさん見つける人は、苦手な場面から逃げてしまいやすい」という結果を表しています。
逃げ癖を改善する方法
ここからは、逃げ癖を改善する5つの方法をお伝えします。ご自身に合いそうなアイデアがありましたら組み合わせてご活用ください。
①スモールステップを徹底!
②マインドフルネス力をつける
③森田療法を学ぶ
④失敗=経験値と考える
⑤逃げてもOKの基準を作る
➀スモールステップの徹底
逃げ癖がある方の特徴として、目標を高く持ちすぎているという特徴があります。
フロー心理学という分野では、あまりにも大きな目標・遠い未来の目標は、モチベーションが保ちづらいとされています。
大きな目標を立てたとしても、それを達成するには、目の前の小さな1作業をこなしていくしかありません。逃げ癖を回避するには、未来を考えすぎず、目の前の1つ1つの作業に目を向けることが大事です。
例えば、私は国家試験の受験生だった頃、スランプがあり、勉強のやる気がでませんでした。そこで、作業を細分化して1つ1つクリアしていくことにしました。
具体的には、とりあえず2行読むことからはじめました。2行とりあえず読んで「そのあとのことはその時考えよう!」と自分をだます(?)のです。
そうして実際2行読んでみて、「もう2行読んでそしたらまた考えよう」と再び自分をだますのです。
これを繰返すと、いつの間にか勉強に没頭している自分がいました。
いきなり半日勉強しよう!と考えるのではなく、目の前の30秒の小さな課題から1つ1つ丁寧に片付ける。こんな意識を持つと回避癖も改善できると感じています。
丁度よい目標設定や、スモールステップを作る方法を学びたい方は、以下のコラムを参照ください。
やる気がでる目標設定-フロー心理学
チャレンジを階層に分ける-行動療法
②マインドフルネス力をつける
逃げ癖・回避癖がある方は、「逃げたい…!」という感情にどっぷりつかってしまい、行動が制限されてしまう傾向があります。感情にどっぷりと浸かってしまう状態は、「自動操縦状態」と言います。
この自動操縦状態を改善するには、「マインドフルネス」という手法があります。マインドフルネスとは、自分の感情を客観的に眺め、「今この瞬間」の自分に気付くことを目指す心理療法です。
マインドフルネスができるようになると、逃げたい…という自分を客観的に眺め、本当にやるべきことを選択的に行動できるようになります。
逃げたい…と一度感じると、勝手に体が逃げ出してしまう…こんな感覚がある方は、下記のコラムを参照ください。
③森田療法
逃げ癖を改善する上で、森田療法はとってもオススメです。森田療法は100年ぐらい前に日本人が作った心理療法です。森田療法の哲学を要約すると、以下の2点になります。
あるがまま
感情は無理になくさなくともよい
目的本位
感情を受け入れ、目的を大事にして生きよ
逃げ癖がある方は、不安や恐怖があると、その感情をどうにかなくそうともがきます。しかし、森田は感情に抗わなくてもOKと説くのです。
不安、恐怖は自然なことだから、それは自然なものとして受け入れ、その感情はそのままに、「目的」を大事に生きていこう、という考え方です。詳しくはコラムで解説しました。森田療法の歴史や詳しい哲学をより深く学習したい方は、こちらのコラムを参考にしてみてください。
④失敗=経験値と考える
逃げ癖がある方は、失敗することを恐れ、チャレンジをしない傾向があります。ここで私が好きな話を紹介したいと思います。
私たちの部屋を明るく照らす電球を作ったのは、エジソンです。エジソンは学生時代、教師から、
too stupid to learn anything
(何を勉強させても愚かだ!)
と言われてたそうです。さらにエジソンは、若いころ2つの仕事で解雇をされています。
電球を発明し、インタビューを受けた際、エジソンは下記のように答えたそうです。
I didn’t fail 1,000 times!The light bulb was an invention with 1,000 steps!
(私は1000回の失敗をしたのではない!1000のステップを踏んだのだ!)
皆さんいかがでしょうか。エジソンでさえ失敗しまくっているのです。私たちがチャレンジして少々失敗したところで、エジソンに言わせれば1つの経験を積んでいると言えるかもしれません。
失敗が怖くなって逃げたくなったら、
失敗してもそれは経験になる
だから逃げずにチャレンジしてみよう
と心のなかで呟いてみることをおすすめします。きっと勇気が湧いてくると思います。
関連コラムとして、以下のコラムを提案させて頂きます。気になる方は、一通りコラムを読んだ後に参考にしてみてください。
⑤逃げてもOKな基準を決める
ここまで逃げ癖をなくす方法を解説してきました。基本的には行動しようか迷ったときは、逃げずにチャレンジすることを大事にしましょう。一方で、
心が疲れ果てている
失敗する確率が90%以上
相手に迷惑が掛かる
このような事情がある場合は、逃げるという選択肢も現実的になってきます。心が悲鳴を上げているときはちゃんと休むことももちろん大丈夫です。
回避するリスクをきちんと理解した上で、前向きに「チャレンジを辞めることもあり」という選択肢も持つようにしましょう。
まとめ
今回は逃げ癖について解説してきました。人生は一度しかありません。一度しかない人生ですから、チャレンジを重ねて、失敗、成功に関わらず、後悔のない生き方を皆さんにしてほしいなと感じています。応援しています!
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・逃げ癖を改善する心理学
・不安に強くなる,マインドフルネス療法
・恐怖心に強くなる,あるがまま森田療法
・スモールステップの作り方
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1] 三田村 仰・横田 正夫 (2006). アサーティブ行動阻害の要因について ――対人恐怖心性からの検討 パーソナリティ研究, 15, 55-57.[2] 疋田 一起・山本 竜也・首藤 祐介・坂井 誠 (2017). 回避行動とネガティブな反復的思考が抑うつと不安に及ぼす影響 中京大学心理学研究科・心理学部紀要, 17, 47-52.[3] 上市 秀雄・楠見 孝 (2004). 後悔の時間的変化と対処方法-意思決定スタイルと行動選択との関連性- 心理学研究, 74, 487-495.[4] 林文俊 堀内孝(2023).自己認知の複雑性 に関する研究 Linvilleの指標をめぐって愛知工業大学 67 巻 6 号 p. 452-457
人が苦手で話すことがとても嫌いで怖いですまだ私は子供なのでよく発表のときほとんど言いませんそれでよく先生に怒られますなのでたまに死にたいとか思ったりしますこの性格を治したいです