仲直りする方法,友達や夫婦の関係を修復する
皆さんこんにちは!公認心理師の川島です。私は現在こちらのコミュニケーション講座の講師をしています。
今回のテーマは
「仲直りをする方法」
です。
はじめに
・友達と喧嘩してしまった
・気まずい状態が続いている
・仲直りしたい
おそらく当コラムにたどり着いた皆さんはこんなお気持ちなのではないでしょうか?そこで当コラムでは、仲直りに至るプロセスをしっかりと解説していきます。
仲直りができないストレス
仲直りができない状態は、心と体に様々なストレスがかかります。
例えば、恋人との関係であれば、一日中どうしたものか…と考え続けることになります。別れにつながってしまうこともあり、精神的に大きなストレスになります。
以下仲直りできていない状況に関する、様々なデメリットを解説しました。気になる項目を展開してみてください。
仲直りができず、お互いを無視する状況になると事態は深刻になります。
心理学者のSackett(2001)は過去にDV被害を受けた女性の心理的ダメージを検討しました。具体的には以下の5つと自己肯定感の関係について調査しました
・嘲笑
・批判
・無視
・嫉妬とコントロール(束縛)
・身体的暴力
下記の図はその結果を表しています。少し眺めてみてください。表の見方としては(‐)の数字が大きいほど影響があることを示しています。数字が大きいのが、「無視」「身体的暴力」であることがわかります。なおこの研究では母集団が少なく、有意差が得られなかったので、あくまで推測となりますが、
無視は身体的暴力に匹敵して
自己肯定感を下げる
と言えそうです。無視することは一見、相手に何も危害を加えてないと思いがちですが、実際は精神的な暴力となっていることが多いのです。
喧嘩状態の相手への怒りは、健康的にも悪影響を及ぼしてしまいます。
井澤等(2004)では、怒りと生理的な影響について研究を行いました。
男子大学生20名に対して調査をしたところ、「短気」が、血圧の上昇と関連を示す結果が得られました。
仲直りができない人、いわゆる短気な人は、日常的に高い心臓血管反応性を示し、その結果,冠動脈疾患にかかりやすい可能性があることがわかったのです。
夫婦関係の悪化は子どものメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。
菅原ら(2002)の研究では、1360名の母親を対象に夫婦関係が子どもの精神状態にどのような影響を与えるか調べました。
その結果、上図のように
「父親と母親がお互いに愛情を持っている」
場合、家族の雰囲気がよくなり、子どもの抑うつ傾向が低下することが分かります。
また、母親が父親に対して愛情を持っていると、子どもに対しても温かく接することができ、その温かさが子どもの精神を安定させるのです。
このように、夫婦関係の気まずい関係で子どもの健康状態が左右されてしまうので注意が必要です。
仲直りのための7ステップ
実際に仲直りをするためには、どうすればいいのでしょうか?専門家として7つのプロセスを提案させて頂きます。ご自身の状況に合わせて、参考になりそうなものを活用してみてください。
①感謝を思い出す
②決意を固める
③ベースの関係作り
④話し合いの提案
⑤まずは傾聴
⑥アサーティブに話し合う
⑦仲直りして関係を深める
それぞれの方法のポイントを理解して実践してくださいね。
①感謝を思い出す
喧嘩した後は、どうしても険悪なムードになってしまいます。こうした状態では、なかなか仲直りしたいという気持ちも湧いてこないでしょう。
そこで大事なことは相手を非難する気持ちを抑え、感謝できる部分に目を向けることが大事です。
喧嘩をするほど仲がいいという言葉があるように、喧嘩したということは相手との信頼関係が築けている証拠です。
きっとこれまで多くの思い出や、協力関係があったのではないでしょうか?まずはそれを思い出して、相手の存在の大事さを思い出すところから始めていきましょう。
もしうまく思い出せないという方は下記のコラムを参照ください。
②決意を固める
ケンカした相手と腹を割って話し合うことに恐怖を感じるのが人間です。しかし、ほとんどの場合、しっかり腹を割って話し合うことができれば、相手も理解してくれるものです。
まずは、「必ず話し合おう!」と決意することが大切です。相手とオープンに話し合う覚悟がなければ、いつまでたっても仲直りはできません。
厳しい現実を突きつけるようですが、この決意を固めない限りは3以降の改善策は水泡と期してしまいます。
③ベースの関係作り
話し合う決意が固まったら、ベースの関係作りをしていきます。大切なことは毎日の小さなコミュニケーションです。例えば、職場で喧嘩した同僚同士だったら、挨拶するなど小さな触れ合いからはじめましょう。
・おはよう
・おつかれ
これだけで、印象はだいぶ変わるものです。もし、喧嘩相手とSNSでつながっていたら大チャンスです。「イイネ」ボタンを押すことも1つの方法です。
まずは小さなコミュニケーションを継続する努力をしていきます。
④話し合いの提案
ベースの関係作りができたら、次にいよいよ話し合いの提案をしていきます。ここはまじめに率直に言ってO大丈夫です。
実は〇〇とずっと話し合いをしたいと思っていたんだ…としっかり告げましょう。残念ながらNGな場合もありますが、ほとんどの場合はOKをもらえずはずです。
*NGが続く場合
残念ながら相手が応じてくれない可能性もあります。その場合はどこかで諦めを付けることも大事です。
⑤まずは傾聴
話し合いの場面に入ったら、まず初めに相手の気持ちを真面目に傾聴するようにしましょう。いったん自分の考えは置いておきましょう。そうして相手の話を傾聴するなかで、
・ここは納得できるな
・ここは同じだな
と感じる部分をしっかり見つけていきましょう。
そしてその部分はしっかりと相手に伝えます。「確かに私もそう思う。そうかあ~そんなことがあったんだね」と共感を大事にしてみてください。
共感の方法については下記のコラムに書いてあります。後程練習してみてください。
⑥アサーティブに話しあう
相手の話をしっかりと聞いた場合は、誤解が溶けます。ここまでできれば70%ぐらいは仲直りしているかもしれません。
一方で、まだ価値観のズレがある場合は、あなたの価値観も伝えるようにしましょう。ここで大事なのはアサーティブな精神を持つことです。アサーティブでは、
「相手もOK自分もOK」
という態度を取ります。
アサーティブとは相手を尊重しつつ自身の主張も伝え、建設的な関係を築いていきます。そこで、相手の話にしっかり耳を傾けたら、今度は自分の話を主張しても良いのです。
アサーティブコミュニケーションについては下記のコラムでしっかり記述しています。話し合いの前にぜひ参考にしてみてくださいね。
⑦仲直りして関係を深める
腹を割って話し合うことができれば、相手と今までよりももっと大きな絆で結ばれるはずです。これまでよりもお互いの本音を知っています。
喧嘩というとネガティブなイメージが強いですが、仲直りすることができれば、逆に絆を深めるきっかけにもなるのです。
これからも衝突することはあれど、また話し合えば乗り越えていけると確認し合うのも良いでしょう。
7つのステップ具体例
ここでは花子さんを例に、7つのステップの具体例を作成しました。より深く理解したい方は、参考にしてみてください。
それでは、お互いの価値観を認めて仲直りするステップを事例で解説していきます。
①既読無視される花子さん
花子さんは大学の友達の月子さんに
「日曜日遊ぼう!」とラインを送りました。
しかし、既読無視されてしまいました。
②めんどくさがりの月子さん
月子さんはルーズな性格です。
花子さんからのラインに返信する
こともできましたが、後でいいや
と先延ばしに・・・
③怒りをぶつけてしまう
花子さんは怒りが込み上げてきて、
「無視するなんて最低!」「もう友達じゃないから」
と続けてラインを送りました。
④月子さんからの返信
2日間無視され、日曜日の朝、月子さんからは「忙しかっただけなんだけど」
「花子の方こそ最低」との返信がありました。
それからというもの2人の間に気まずい空気が流れています。
STEP①:感謝を思い出す
⇒
STEP②:決意を固める
⇒
STEP③:ベースの関係作り
⇒
STEP④:話し合いの提案
⇒
STEP⑤:まずは傾聴
⇒
STEP⑥:アサーティブに話し合う
⇒
STEP⑦:仲直りして関係を深める
⇒
解答例
STEP①:感謝を思い出す
⇒いつも遊んでくれていることに感謝する。
先週も自分から誘って、一緒にショッピングに付き合ってくれた。
STEP②:決意を固める
⇒やっぱりもう一回、気軽に遊べる関係に戻りたいと思い、
既読無視の件をしっかり話し合おう!と花子さんは決意しました。
STEP③:ベースの関係作り
⇒花子さんは大学で会った時に挨拶を続けました。すると、3日目ぐらいに月子さんからも挨拶してくるようになりました。5日目には少し雑談もできました。
STEP④:話し合いの提案
⇒普通に雑談ができたり、月子さんからも挨拶されるようになったので、
ついに「この間のlineの件で話し合いたいんだけど…」と提案しました。
STEP⑤:まずは傾聴
⇒花子さんはまずは、月子さんの意見に耳を傾けました。すると、月子さんは、「ごめん、実はしっかり既読してたの。本当は、あの時は忙しくはなくて、返信するの後回しにしちゃったんだ…」と謝罪の言葉を口にしました。
STEP⑥:アサーティブに話し合う
⇒花子さんも「私こそ、早とちりしすぎたと思う。既読がついて数分ぐらいで無視されたと思っちゃった…ごめんね…」と自己主張し、謝罪しました。
STEP⑦:仲直りして関係を深める
⇒花子さんは月子さんと仲直りし、「また喧嘩しても今みたいに話し合えば大丈夫」と伝えました。現在も仲睦まじい関係が続いています。
まとめ+お知らせ
まとめ
仲直りのきっかけを自分から作ることは抵抗があるかもしれません。しかし、このような状態では、
・相手も悪い!自分が何かする必要はない…
・そのうち謝ってくるでしょ…
・自然と関係は修復するでしょ…
などと仲直りを後回しにしてしまいます。これでは、いつまで経っても仲直りすることができません。お互いに相手から謝ってくるの待っている状態で、時間だけが経過してしまいます。
関係修復を目指すのであれば、早めにアクションを起こすことがとても大切です。
お知らせ
公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では
・アサーティブコミュニケーション
・傾聴力をつける練習
・共感力トレーニング
・暖かい人間関係を築くコツ
など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。ぜひお待ちしています。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
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*出典・参考文献
・高橋,誠; 森本,哲介 学校教育学研究論集(26): 29-39 2012
・菅原ら(2002)夫婦関係と児童期の子どもの抑うつ傾向との関連より一部改変して掲載教育心理学研究,2002,50,129ー140
・井澤修平・長野祐一郎・依田麻子・児玉昌久・野村忍 2004 敵意性と怒り喚起時の心臓血管反応性の関連 生理心理学と精神生理学,22(3)215-224 早稲田大学
・Sackett, L. A. (2001). The Impact of Different Forms of Psychological Abuse. Psychological abuse in violent domestic relations.
・川島(2013)「Yahoo!知恵袋」に見る夫婦間葛藤解決方略 千葉大学教育学部研究紀要 第61巻 185~191頁
・松永(2008)現代青年の 友人関係 に 関する研究 Kurume University Psychological Researeh 2eO8,No .7,77−86