仲直りする方法,うまく伝えるやり方
皆さんこんにちは。人間関係講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「仲直りする方法」です。
相談者
29歳 女性
お悩みの内容
実は2週間前ぐらいに、お互いの価値観の違いで口論になり、友人を怒らせてしまいました。それ以来、気まずい状態になっています。できれば仲直りしたいのですが、どうすれば良いでしょうか。また元の仲の良い時に戻りたいです。
価値観のすれ違いで溝ができてしまったのですね。「仲の良い時に戻りたい」という言葉から前向きな気持ちが伝わってきました。当コラムでは、仲直りするための方法を解説していきます。是非最後までご一読ください。
仲直りができないストレス
仲直りができない状態は、心と体に様々なストレスがかかります。以下、人間関係がうまくいかない状況のデメリットを解説しました。気になる見出しを展開してみてください。
仲直りできない状況は、お互いに疎外感を感じやすくなります。疎外感とは「私は相手にとって必要がない」「私は不要な存在なのだ」という感覚です。
西野(2007)の研究によると、疎外感を受けると自己価値が下がることが分かっています。
仲直りできない状況が続くとお互いの、自己価値が低下していくので注意が必要です。
心理学者のSackett(2001)は夫婦関係の不和と女性の自己肯定感の関係について調査しました。下記の図はその結果を表しています。少し眺めてみてください。
表の見方としては(‐)の数字が大きいほど影響があることを示しています。数字が大きいのが、「無視」「身体的暴力」であることがわかります。この研究では母集団が少なく、有意差が得られなかったので、あくまで推測となりますが
無視は身体的暴力に匹敵して
自己肯定感を下げる
と言えそうです。無視することは一見、相手に何も危害を加えてないと思いがちですが、お互いにとって精神的にかなり負担になるのです。
夫婦関係で仲直りできない状況が続くと、子どものメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。菅原ら(2002)は、1360名の母親を対象に夫婦関係が子どもの精神状態にどのような影響を与えるか調べました。少し複雑な図となりますが、ざっと眺めてみてください。
その結果、上図のように「父親と母親がお互いに愛情を持っている」場合、家族の雰囲気がよくなり、子どもの抑うつ傾向が低下することが分かります。
また、母親が父親に対して愛情を持っていると、子どもに対しても温かく接することができ、その温かさが子どもの精神を安定させるのです。
逆に言えば、夫婦喧嘩が絶えず、仲が悪い状況は続くと、子供の心理状況が悪くなるとも言えるので注意が必要です。
このように「短気」「怒り」は血圧の上昇と関連を示す結果が得られました。怒りっぽいところがある、感情的になってしまい、強い口調になってしまう方は注意が必要です。
仲直りする‐8ステップ
実際に仲直りをするためには、どうすればいいのでしょうか?専門家として8つのプロセスを提案させて頂きます。ご自身の状況に合わせて、参考になりそうなものを活用してみてください。
①自分から仲直りする
②感謝を思い出す
③前向きな決意を固める
④ベースの関係作り
⑤話し合いの提案
⑥まずは傾聴
⑦アサーティブに話し合う
⑧仲直りして関係を深める
それぞれの方法のポイントを理解して実践してくださいね。
①自分から仲直りする
気まずい状況が長期化する原因は、お互いが
相手も悪い!自分が何かする必要はない…
そのうち謝ってくるでしょ…
自然と関係は修復するでしょ…
このように考えているケースです。これではいつまで経っても仲直りタイミングは訪れません。
ここで大事なことは「自分から」という意識を持つことです。喧嘩をしてしまったら、理由はいったんわきにおいておいて、自分から仲直りのアクションを起こすことが大事であることをまずはおさえましょう。
②感謝を思い出す
一方で、明らかに相手に非がある場合は、仲直りしたいという気持ちもなかなか湧いてこないでしょう。
ここで1つ思い出してほしいことがあります。それは「喧嘩をするほど仲がいい」という諺です。喧嘩をしてしまったということは、きっとたくさんの感謝ができる部分が相手にはあるはずです。
大事なことは相手を非難する気持ちをいったん抑え、感謝できる部分に目を向けることが大事です。
笑わせてくれたこと 悩みをきいてもらったこと 一緒に遊びに行ってくれた 声をかけてくれた
まずはこれらをしっかり思い出して、相手の存在の大事さを再認識するところから始めていきましょう。もしうまく思い出せないという方は下記のコラムを参照ください。
③前向きな決意を固める
相手と腹を割って話し合う前には「相手がより怒るのではないか?」「また喧嘩になったらどうしょう?」と恐怖を感じるのが人間です。
しかし、ほとんどの場合、しっかり腹を割って話し合うことができれば、相手も理解してくれるものです。
話し合えばわかりあえるはずだ
話し合って仲直りしよう
と前向きに決意することが大切です。心理学の世界には返報性の原理と言う言葉があります。返報性の原理とは、自分の想いは相手からも返ってきやすいという心理です。
あなたが、仲直りしたい!と感じれば感じるほど、相手にもその気持ちが伝わり、返ってきやすくなります。まずはその気持ちを強く持つようにしましょう。
④ベースの関係作り
話し合う決意が固まったら、ベースの関係作りをしていきます。大切なことは毎日の小さなコミュニケーションです。例えば、職場で喧嘩した同僚同士だったら、挨拶するなど小さな触れ合いからはじめましょう。
おはよう 今日は暑いね~ 今日は涼しいね~ おつかれ
これだけで、印象はだいぶ変わるものです。相手は最初戸惑うかもしれないですし、返してくれないこともあるかもしれません。それでも続けていきいましょう。
もし、喧嘩相手とSNSでつながっていたら大チャンスです。「イイネ」ボタンを押すことも1つの方法です。まずは小さなコミュニケーションを継続する努力をしていきまましょう。
⑤話し合いの提案
ベースの関係作りができたら、いよいよ話し合いの提案をしていきます。ここは率直に伝えてOKです。
実は〇〇とずっと話し合いをしたいと思っていたんだ…
〇〇の件で話があるんだけどいいかな…
としっかり告げましょう。残念ながらNGな場合もありますが、ほとんどの場合はOKをもらえずはずです。
*NGが続く場合
残念ながら相手が応じてくれない可能性もあります。その場合は、時間が解決してくれることもあります。またしばらくしてから、声をかけていきましょう。
⑥まずは傾聴
話し合いの場面に入ったら、まず初めに相手の気持ちを真面目に傾聴するようにしましょう。いったん自分の考えは置いておきましょう。そうして相手の話を傾聴するなかで、
ここは納得できるな ここは同じだな
と感じる部分をしっかり見つけていきましょう。
そしてその部分はしっかりと相手に伝えます。「確かに私もそう思う。そうかあ~そんなことがあったんだね」と共感を大事にしてみてください。
共感の方法については下記のコラムに書いてあります。後程練習してみてください。
⑦アサーティブに話しあう
相手の話をしっかりと聞いた場合は、相手の気持ちは随分和らぎます。ここまでできれば70%ぐらいは仲直りしているかもしれません。
一方で、まだ価値観のズレがある場合は、あなたの価値観も伝えるようにしましょう。ここで大事なのはアサーティブな精神を持つことです。アサーティブとは
相手もOK 自分もOK
の精神をもって人と関わることを意味します。
アサーティブとは相手を尊重しつつ自身の主張も伝え、建設的な関係を築いていきます。相手の話にしっかり耳を傾けたら、今度は自分の話を主張しても良いのです。あなたが感じていることも、伝えて、建設的に話し合っていきましょう。
アサーティブコミュニケーションについては下記のコラムでしっかり記述しています。話し合いの前にぜひ参考にしてみてくださいね。
⑧仲直りして関係を深める
腹を割って話し合うことができれば、相手と今までよりももっと大きな絆で結ばれるはずです。これまでよりもお互いの本音を知っています。
喧嘩というとネガティブなイメージが強いですが、仲直りすることができれば、逆に絆を深めるきっかけにもなるのです。
これからも衝突することはあれど、また話し合えば乗り越えていけると確認し合うのも良いでしょう。
具体例
喧嘩をしてしまった、花子さん、月子さんを例に、8つのステップの具体例を作成しました。より深く理解したい方は、参考にしてみてください。
花子さん,月子さんのいざこざ
花子さんと月子さんは大学の同級生で、とても仲が良く、入学以来仲良しです。
ある日、友達の月子さんに「日曜日遊ぼう!」とラインを送りました。しかし、既読無視されてしまいました。
一方で月子さんはルーズな性格です。花子さんからのラインに返信することもできましたが、後でいいや!と先延ばしに・・・
花子さんは怒りが込み上げてきて、「無視するなんて最低!」「もう友達じゃないから」と続けてラインを送りました。
2日間無視され、日曜日の朝、月子さんからは「忙しかっただけなんだけど」「花子の方こそ最低」との返信がありました。それからというもの2人の間に気まずい空気が流れています。
花子さんと8つのステップ
1か月すると、花子さんは、このままじゃいけない…と考え7つのステップを試してみました。
STEP①:自分から仲直り
きまずい状況が長くなり、このままではずっと喧嘩が続くと考え、自分から行動しようと花子さんは考えました。
STEP②:感謝を思い出す
いつも遊んでくれていることに感謝する。ショッピングにも付き合ってくれた。
STEP③:決意を固める
やっぱりもう一回、気軽に遊べる関係に戻りたいと思い、既読無視の件をしっかり話し合おう!と花子さんは決意しました。
STEP④:ベースの関係作り
花子さんは大学で会った時に挨拶を続けました。すると、3日目ぐらいに月子さんからも挨拶してくるようになりました。5日目には少し雑談もできました。
STEP⑤:話し合いの提案
普通に雑談ができたり、月子さんからも挨拶されるようになったので、ついに「この間のlineの件で話し合いたいんだけど…」と提案しました。
STEP⑥:まずは傾聴
花子さんはまずは、月子さんの意見に耳を傾けました。すると、月子さんは、「ごめん、実はしっかり既読してたの。本当は、あの時は忙しくはなくて、返信するの後回しにしちゃったんだ…」と謝罪の言葉を口にしました。
STEP⑦:アサーティブに話し合う
花子さんも「私こそ、早とちりしすぎたと思う。既読がついて数分ぐらいで無視されたと思っちゃった…ごめんね…」と自己主張し、謝罪しました。
STEP⑧:仲直りして関係を深める
花子さんは月子さんと仲直りし、「また喧嘩しても今みたいに話し合えば大丈夫」と伝えました。現在も仲睦まじい関係が続いています。

まとめ
私たちは人間であり、誰しも完璧ではありません。時には誰かに迷惑をかけたり、かけたりをしながら成長していくものです。仲直りをするスキルは、長く人間関係を続けるために必ず必要になります。
当コラムの知識が皆さんの、長く安定した人間関係に役立つことを願っています♪
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2件のコメント
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友達と大喧嘩をしてしまいました。すぐに誤ったけど許してくれませんんでした。どうやってはなしかけたらいいでしょうか。仲直りしてまた楽しい時間を過ごしたいです。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
Twitter→*出典・参考文献
・高橋,誠; 森本,哲介 学校教育学研究論集(26): 29-39 2012
・菅原ら(2002)夫婦関係と児童期の子どもの抑うつ傾向との関連より一部改変して掲載教育心理学研究,2002,50,129ー140
・井澤修平・長野祐一郎・依田麻子・児玉昌久・野村忍 2004 敵意性と怒り喚起時の心臓血管反応性の関連 生理心理学と精神生理学,22(3)215-224 早稲田大学
・Sackett, L. A. (2001). The Impact of Different Forms of Psychological Abuse. Psychological abuse in violent domestic relations.
・川島(2013)「Yahoo!知恵袋」に見る夫婦間葛藤解決方略 千葉大学教育学部研究紀要 第61巻 185~191頁
・松永(2008)現代青年の 友人関係 に 関する研究 Kurume University Psychological Researeh 2eO8,No .7,77−86
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