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恐怖心を克服する方法,なくす6の手法

日付:

恐怖心を克服する方法,なくす6の手法

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「恐怖心を克服する方法」についてご相談を頂きました。

相談者
32歳 男性

お悩みの内容
私は元々ビビりな性格で、何かと怖がりです。学生時代は、試験のたびにビクビクしていましたし、異性関係も恐怖心で積極的になれませんでした。

実は来月、社内の昇進試験を控えています。昇進試験は役員10人の前でのプレゼンの機会があります。正直、気が重たく、想像すると恐怖心が出てきます。

こんな自分を変えたいと考えています。何かできることはありますか?

何かに挑戦しようと考えると、どうしても恐怖心が出てきていまいますよね。一方で「自分を変えたい」という言葉があることに、すごく強い意志を感じました。

当コラムで対策をお伝えしますので、参考になる箇所がありましたら活用してみてください。

恐怖心とは何か

まずはじめに「恐怖心」とは何か?から考えていきましょう。

恐怖心とは何か

心理学辞典(1999)[1]では、恐怖心について以下の記述があります。

自己存在を脅かす可能性のある破局や危険を漠然と予想することに伴う不快な気分を不安という

漠然とした不安が何かに焦点化され対象が明確になったものを恐怖(fear)という

少し難しい定義ですが、不安の正体が明確になり、脅威を感じることを恐怖と呼ぶのですね。

体への影響

恐怖心を感じると、体への影響が始まります。

・汗が止まらない
・涙が出るぐらい怖い
・身体に不調を感じる

このように、心だけでなく、身体にも影響出てきてしまい、心身ともに過剰なストレスがかかります。

生活への影響

恐怖を感じやすくなると、日々の生活がしにくくなります。例えば、人が怖い感覚がある方は、仕事が制限されたり、恋愛が苦手になったりします。病気になることが怖い方は、必要以上に健康グッズを買い込んでしまい、お金を失うこともあります。

精神疾患への影響

恐怖心は感情の中でも強い感情であるため、場合によっては精神疾患として診断されることがあります。恐怖が関連する精神疾患としては、社交不安症パニック症(パニック障害)強迫症(強迫性障害)、などが挙げられます。

恐怖心とは

恐怖心の克服法

ここからは恐怖心の克服法について考えていきましょう。恐怖心と相性の良い手法を6つを紹介します。

①認知のゆがみをほぐす
②現実検討力をつける
③スモールステップで克服
④マインドフルネス力をつける
⑤恐怖突入をする
⑥体のリラックス

まずは概要を解説していきますので、ご自身の感覚に合うものを探してみてください。

①認知のゆがみをほぐす

心理学の世界では「認知のゆがみ」という言葉を使うことがあります。認知のゆがみとは、非現実的で偏ったものの見方を意味します。認知の歪みは10種類があります。その中の1つに感情的決めつけがあります。

感情的決めつけをする方は、「感情」が「現実」のように感じてしまう心の癖を意味します。例えば、

・〇〇で失敗するに違いない
・〇〇したら悲劇的なことが起こると思う
・将来〇〇なことが起こるに違いない

と、恐怖心があたかも現実かのように感じてしまいます。認知の歪みを改善するには、反芻法、コラム法、日記法などがあります。あてはまる…と感じる方は以下の折り畳みを参照ください。

ピアノの発表会がある山田さん 明日のピアノの発表会で、手が震えて、失敗するイメージを頭で繰り返しています。そして「明日は手が手が震える」「みんなに馬鹿にされる」と考え、いつの間にか失敗することが現実にすでに起こったかのように感じ、恐怖心でいっぱいになりました。

解説
上記の例ですが、「感情」と「事実」がごっちゃになってしまい、あたかも感情的な予測が現実になるかのような感覚になってしまっています。

感情的決めつけについては、まずは自分が混乱し、感情と事実がごっちゃになることに気が付くことが大事です。これは後程紹介する、マインドフルネスが役立ちます。

そして「感情的決めつけ」に気づいたら、感情を変えることはできないので、その考えが本当に起こるのか?または起こらない可能性などを考えてみます。これは「反芻法」と言います。

「明日は手が震える」「みんなに馬鹿にされる」

→反芻
・前の発表では震えなかった
・これまで手が震えたのは
 20回中1回だけ95%は自然とできた
・仮に震えても、みんな温かく聴いてくれる

このように反芻すると、恐怖心が落ち着いていきます。非現実な考えによって、混乱して、恐怖心が大きくなっている方は、注意しましょう。

認知の歪みは感情的決めつけ以外に、「白黒思考」「完璧主義」「マイナス化思考」など9種類あります。恐怖心をほぐすための気づきになるので、ぜひ理解を深めていきましょう。より詳しく認知の歪みを理解したい方は以下のコラムを参照ください。

認知の歪みを改善する

 

②現実検討能力をつける

現実検討能力とは、頭の中にある考えが現実的かどうかを検討する力です。私たちは、日々さまざまな思考・感情が浮かびます。その中には、起こりそうもない非現実なもの多くあります。

特に過剰に恐怖を感じている時は、極端な考え方に陥っていることが多いです。そこで、現実検討能力をつけて、必要以上に恐怖を膨らませないようにすることが大切です。

田中さんは飛行機が怖くて、乗ることができません。飛行機に乗ると、墜落するイメージが頭から離れず、恐怖心でいっぱいになります。田中さんは、「飛行機に乗ると必ず墜落する」「他の乗客や乗務員に笑われるだろう」と考え、自分が飛行機事故に巻き込まれる現実がすでに起こったかのように感じます。

解説
田中さんの場合、飛行機に乗ることに対する恐怖心が非常に強く、その恐怖心が飛行機が墜落するというイメージとして頭から離れません。このような場合、現実検討能力をつけることが重要です。

まずは感情と事実を分けて考えることが必要です。田中さんが考えている「飛行機に乗ると必ず墜落する」「他の乗客や乗務員に笑われるだろう」という考えは、感情的な予測であり、事実とは異なります。

現実検討能力をつけるためには、次のようなことを考えてみることが有効です。

・実際に墜落した経験は何度もない
・多くの人々が安全に利用している
・怖がっているからといって笑われるとは限らない

このように考えることで、田中さんの恐怖心が軽減され、飛行機に対する不安も和らぐでしょう。感情的な予測と現実とのギャップを理解し、客観的な視点で状況を見ることが大切です。

現実検討能力を高めたい方は以下のコラムを参照ください。

現実検討能力,反証とは何か?

 

現実検討能力

 

③スモールステップで克服

恐怖心を克服するコツとしては、とにかくスモールステップで、少しずつチャレンジの幅を広げていくことです。いきなり大きなゴールを目指す必要はありません。

1つ1つの積み重ねが、最後に大きな実りになると考えましょう。例えば、あがり症で悩んでいる方がいたとしたら、

↓まずは1対1で練習
↓慣れてきたら3人に増やす
↓慣れてきたら10人の前に立つ

という形で練習していくことをオススメします。詳しくは下記のコラムを参照ください。

スモールステップ,行動療法の基礎

スモールステップ

 

④マインドフルネス力をつける

恐怖心を克服するコツとして、マインドフルネス療法もオススメです。マインドフルネスとは「今この瞬間の自分の状態に気づき、客観的に眺める状態」を意味します。

具体的には、恐怖心に駆られたことに気づいたら、まずは自分の感情を眺め、客観視する練習を行っていきます。合わせて呼吸の練習もすると冷静になり、自分のペースで物事を進めていけるようになります。

鈴木さんは婚活中で、初めて婚活パーティーに参加しました。会場に足を運ぶと、初対面の人たちとのコミュニケーションや、自己紹介の場面でフラれることを想像して、心臓がドキドキし始めました。過去の失敗や挫折の経験が頭をよぎり、不安と恐れが急速に膨れ上がっていきました。

解説
鈴木さんの場合、婚活パーティーに初参加した際に、初対面の人たちとのコミュニケーションや自己紹介の場面でフラれることを想像し、心臓がドキドキし始めました。このような場合、マインドフルネス力をつけることが解決策として有効です。

マインドフルネスとは、今この瞬間に集中し、感情や考えに振り回されることなく客観的に受け入れることです。鈴木さんが不安や恐れを感じる瞬間に、以下のような方法でマインドフルネスを実践することができます。

①呼吸に集中する
不安や恐れを感じたときに、深呼吸をしてみてください。息を吸い込むときには「吸う」と意識し、吐くときには「吐く」と意識します。これによって、心を落ち着かせることができます。

②感情や考えを観察する
不安や恐れが湧いてきたときに、その感情や考えを客観的に観察してみましょう。それが過去の失敗や挫折に関連しているとしても、今この瞬間に焦点を合わせます。

③自分を受け入れる練習
自分自身を受け入れることが大切です。過去の失敗や挫折は、鈴木さんが成長するための経験であり、それを否定する必要はありません。自分を受け入れることで、不安や恐れが和らぎます。

これらの方法を実践することで、鈴木さんは不安や恐れに振り回されることなく、婚活パーティーに臨むことができます。マインドフルネスを通じて、現在の状況に集中し、恐怖心を受け入れる心構えを持つことが重要です。

恐怖に巻き込まれると我を失う…という方は下記を参照ください。

マインドフルネス心理療法の基礎

 

⑤恐怖突入をする

5つ目は少々劇薬?的な心理療法です。森田療法という心理療法では、「恐怖突入」という考え方があります。恐怖突入には以下の意味があります。

恐怖に感じることも、実際やってみると大したことがないことが多々ある。それが人生において意味のあることであるならば、恐怖に巻き込まれことなく、恐怖に突入していきなさい

いかがでしょうか?なかなかストイックな考えですよね。

恐怖心はいつでもどこでも、私たちの心を襲ってきます。ですが、その恐怖心と毎回付き合っていると私たちは何もできなくなってしまいます。「いっそのこと、その恐怖に突入して、あるがまま、やるべきことをやりなさい」という思想があります。

少し激しい考え方ですが、より詳しく知りたい方は下記の森田療法のコラムを参考にしてみてください。

森田療法,恐怖突入

 

⑥体のリラックス

・漸進的筋弛緩法

肩の荷を下ろすという言葉があるように、肩の動作は心のありようを表現できると言われています。そこで、肩を楽に動かし、ほぐすことでことで、こころを楽にすることができます。

恐怖場面で体がかたまっている…という感覚がある方は下記を参照ください。
漸進的筋弛緩法-心身のリラックス法

・深呼吸をする

深呼吸をするだけでも、肩の力が抜けることがあります。体が固まっているな、と気づいたら、息を吸って、ゆっくり長く細く息を吐いてみましょう。鼻から吸って口からゆっくり吐く、ということを意識するだけでも、気持ちが落ち着くかもしれません。

・副交感神経を活性化させる

恐怖心は、自分の意思とは関係なく、内臓の働きや体温などをコントロールしている「自律神経」に影響します。恐怖は主に交感神経を活性化させるので、交感神経の活性化を減らして、副交感神経が働くようにするのが恐怖心克服のコツになります。

自律神経についてより深く知りたい…という方は下記をご覧ください。
交感神経・副交感神経とは

 

身体のリラックス

 

まとめ

恐怖心は、100%悪い感情ではありません。適度で一時的なものであれば、プラスの働きをもたらしてくれます。火事場の馬鹿力と言われるように、危機的状況ではパフォーマンスも向上してくれるものです。

一方で、過剰で長期的なものになると、やはり私たちのパフォーマンスを低下させてしまうと言えます。恐怖心を緩めたい方は、紹介した対策を組み合わせてご活用ください。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・恐怖心を克服するワーク
・リラックスする考えを増やす訓練
・マインドフルネス療法で冷静になる
・心と体をほぐすリラックス練習

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^) 
恐怖心を克服する方法,なくす手法,心理学講座

 

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7件のコメント

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    • パンダ
    • 2024年1月23日 8:18 PM

    私はよく怖い話が心霊番組などに興味があるのですが、それをみてしまったせいで幽霊などがとても怖くなってしまいました。1人でいるとどうしても怖くて、トイレに行けなくなったり、2階に上がることに後ろめたさを感じてしまいます。どうしたら、克服できるでしょうか。

    返信する
    • リズ
    • 2023年10月7日 1:03 PM

    僕は、お化け屋敷がとても好きですが、心底怖いです。どうしたら

    返信する
    • リズ
    • 2023年10月7日 1:03 PM

    僕は、お化け屋敷がとても好きですが、心底怖いです。やばい

    返信する
    • リズ
    • 2023年10月7日 1:03 PM

    僕は、お化け屋敷がとても好きですが、心底怖いです。

    返信する
    • リベル
    • 2023年10月7日 1:00 PM

    僕は、怖いと感じたことがありません

    返信する
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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] 中島 義明・子安 増生・繁桝 算男・箱田 裕司・安藤 清志(編)(1999). 心理学辞典 有斐閣