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毒親とは?生きづらさを緩和する方法

毒親とは?生きづらさを緩和する方法①

みなさんこんにちは、はじめまして臨床心理士の加賀です。私は、これまで臨床心理士として精神科・心療内科クリニックでカウンセリングを行ってきました。その経験や心理学の知識の中から皆さまのお役に立てられるような情報をお伝えしていきたいと思います。

本コラムでは「毒親」について詳しく解説をしていきます。目次は以下の通りです。

  • 毒親とは?特徴と問題
  • 3つの要素を知ろう
  • 内的ワーキングモデル
  • 毒親を予防する3つの方法

しっかりとその問題や対策についてお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。是非お付き合いください。

毒親とは?

皆さんは毒親という言葉をご存知でしょうか。この言葉は、子どもの人生を支配する親のことを意味し、元々は「毒になる親(Toxic Parents)」(Forward, 1990玉置訳2001)という本からできた言葉だとされています。その後、毒親関連の書籍が多数出版されていることを考えると、「毒親」への世間の関心の高さが分かります。

・毒親の特徴

毒親の特徴には、以下のような点が挙げられます。

・子どもの自由を認めない
・理不尽なことで怒る
・自分の都合で子どもをコントロールする

個人差はありますが、共通点は、子ども自身を尊重せず必要な養育がされていないということだと思われます。子どものころは自分の育つ家と他の家庭を比較することができません。そのため親がおかしな事を言っても自分の親はおかしい、親のほうが悪いとは思えません。

親から理不尽なことで怒られたとしても、親の言うことが聞けない自分が悪いからと自分を責めてしまうのです。そのような体験を重ねていくことで、心身ともにさまざまな影響があることが分かっています。

毒親とは定義や意味

・毒親育ちの問題

毒親に育てられた子どもには、どんな影響があるのでしょうか。「毒親」という言葉は、専門用語に言い換えると「不適切養育」にあたると考えられます。人間にとって親子関係はとても大切なものですから、毒親≒不適切養育については古くから研究されてきました。不適切養育が与える影響について、研究をもとに解説します。

【研究①】成人してからの問題が増大
アメリカで8,613名の成人を対象として大規模調査が行われました。その結果、幼少期に不適切養育を受けた子どもは、成人してからの

・アルコール依存・薬物依存
・退学や中退
・各種精神疾患リスクの増大
などが多いことがわかっています(Duve et al., 2003)。

【研究②】社会的スキルへの悪影響
日本では小学生524名を対象に、家庭の社会的スキルと児童の社会的スキルを質問紙で評価する調査を行いました。その結果、学校における社会的スキルと家庭における社会的スキルの間にはいずれも中程度の相関が認められました。

この研究では、社会的スキルは場面が異なっていても内容的にはほぼ同じような行動をとっていることがわかりました。人間関係などは家庭内で学ぶことも多いので親の社会的スキルの低さが子どもにも影響している様子が見られます。

毒親育ちの問題以上のように毒親に育てられると、成人してから様々な問題が起こる可能性が高くなり、幼少期から社会的スキルにも影響が及ぶことが分かっています。

毒親になる3つの原因

皆さんは、なぜ毒親になってしまうのか気になりませんか?毒親の心理メカニズムについて、心理学の研究で分かっていることを解説します。毒親になる要素には、3つあると考えられています。

①ストレス要因
②個人要因
③環境要因

ぞれぞれについて見ていきましょう。

①ストレス要因

日本の研究において夫婦関係や周囲の人間関係のストレスは、毒親になってしまう重要な要因だと考えられています。そこで母親の身近な人間関係におけるストレス感と不適切養育への関連性を示した研究をご紹介します。

浦山・金川・大木(2009)では、383名の1歳6か月・3歳児検診に訪れた母親を対象に身近な人間関係のストレス感がどのように不適切養育に影響するのかを質問紙で調査しています。この研究では、子どもに対するストレスがある群とない群の2群で母親が感じているストレスを検討しています。結果を以下に図でしめしました。

母親の子どもに対するストレスと周囲に対するストレス

子どもに対するストレスがある親は、
・夫に対するストレスも高い
・親族へのストレスも高い
・他の人間関係へのストレスが高い
ことなどが分かります。浦山ら(2009)は、母親のストレスを軽減させるには、まず夫に関するストレスを緩和することが必要であり、そのことが子どもに対するストレス感の緩和に繋がるのではないかとも考察しています。

②個人要因

心理学の研究では、親側の認知の偏りと不適切養育の関連も明らかになっています。認知の偏りとは、考え方のクセのようなものです。

子どもの行動を親が理解し対応していくためには、その行動がどうして起こっているのか?を考える必要があります。このような考え方は、原因帰属と呼ばれます。つまり原因をどこに持ってくるか?という考え方のことです。

Montes et al., (2001)では、親の原因帰属と不適切養育の関係について報告しています。この研究では、虐待リスクの高い親の子どもの違反行動に対する帰属において、以下のような結果になったことを報告しています。

・子どもが親をわざと困らせようとした
・この場面以外でも他の状況でも生じる

日本においても不適切養育と母親の原因帰属の研究が行われています。中谷(2016)では、幼稚園児の親296名を対象に質問紙調査で親の原因帰属と不適切養育を検討しています。そして、その際どのような感情が影響を及ぼすのかという報告がされています。

この研究では、日常的課題場面で以下の3場面を親にとって対応の難しい「困難場面」として設定しました。

<親の要求に不従順な子どもの行動>
・食事拒否
・かんしゃく
<親の思い通りにおかない状況>
・トイレの失敗

そして困難場面でどのような思考や行動に至るのかという質問に回答を求めています。結果を図に示しました。

育児の困難場面における親側の要因

この結果では、不適切な養育得点の低群と高群を比較しています。まず困難場面の感情、帰属、背景では、不適切な養育の高群が

・怒り、嫌悪が統計学的に有意に高い
・意図性が有意に高い
・家族の育児協力が有意に低い

以上のことがわかりました。

この結果から親の子どもの困難場面に「わざと私を困らせる」という意図性の帰属次元、怒りの感情、そして家族の育児協力が低いことが不適切養育に関連のあることがしめされました。

③環境要因

アメリカの研究でBelsky(1980)が、さまざまな領域で不適切養育について研究された結果を1本の論文にまとめて報告しています。

この論文では、親の被虐待歴や抑うつ、そして子ども側の要因と考えられる育てにくさや障害などを調査したところ、夫婦不和や経済的問題など親子を取り巻く環境要因がリスク要因として指摘されました。

自分が追い詰められてしまうような場面では、ストレスは1つではなく複合的な場合が多いとされています。この結果は、毒親≒不適切養育になってしまう人の環境的なリスクも高いことを示しているのかもしれません。

毒親の3つの要素これまでの研究をまとめると、毒親になってしまう要因は個人ととりまくストレスやその受け止め方である考え方、そして環境との相互作用という結果が多いようです。

毒親の連鎖のメカニズムとは

自分が子育てをするときに、自分が親にしてもらったように行動することが多いと思います。どうしてそうなるのか、そのひとつの考え方として「内的ワーキングモデル」というものがあります。

内的ワーキングモデルとは、過去に特定の他者との間に形成された関係性のテンプレートのようなものです。他者が自分に対してどのように働きかけるかということを様々な経験を通して学びます。それをもとに様々な人間関係を形成していくと言われています。

この内的ワーキングモデルは、特別な経験がない限りは変化しにくいことが知られています。そのため、不適切養育に関しても幼少期から形成された内的ワーキングモデルによって、親子間の虐待―被虐待という関係の質が次世代、つまり自分と自分の子どもとの関係に伝達され、養育関係の連鎖が生まれる結果となることが多い(Buchanan 1996)といわれています。

ここまでは、毒親とは何か、毒親になってしまう要因などをご紹介しました。浦山ら(2009)では、育児で重要なことは、

・親自身の人格的成熟
・夫婦関係の安定、親密さ
・暖かく支持的な家庭環境

であることを示しています。3つのポイントを参考に毒親にならない育児を目指しましょう。

毒親にならないための解決策

毒親にならないためにできる事として、3つの方法を提案させていただきます。

①ネガティブ感情コントロール
②ソーシャルサポート
③安心できる居場所

1つ目の「ネガティブ感情のコントロール」は、感情をむやみに他人を押し付けないことです。2つ目の「ソーシャルサポート」は、ストレスをためない、いつでも助けを求められる状態を作っておく環境づくりです。そして最後3つ目は「安心できる居場所づくり」は、自分を休めるセルフケアに繋がっています。

それではひとつずつ具体的にご説明します。

①ネガティブな感情のコントロール

前述の中谷(2016)の研究結果で、怒りの感情と不適切養育に関連があるとお伝えしました。人は怒らないようにすることは難しいですが、怒りをコントロールすることは可能です。今回は、怒りの感情コントロールをお伝えします。

人は怒りを感じた時に身体に変化が起こると思います。例えば、

・顔が熱くなる
・肩や腕に力が入る
・呼吸が浅くなる

など身体は戦うモードに変化しています。その戦うモードのままで怒りに任せて子どもに対応しては良い結果にはなりません。まずは、怒りを感じた時にはまずはクールダウンしてから行動を起こすことがおすすめです。

・怒りははじめの6秒我慢する!
怒りは6秒我慢するとピークを過ぎて衝動的な言動や行動を回避できると言われています(岡本,2018)。そこで、6秒をうまく我慢する方法を3つご紹介します。

毒親対策3つの方法

・怒りの温度計
怒りを感じた時にまずはその怒りがどのくらいのものなのか自分の怒りをモニタリングする方法です。それでは、怒りを感じた場面を想像していきましょう。

場面…こどもがせっかく作ったごはんであそび全然食べない。注意してもやめない子どもにあなたは、カチンときたのを感じます。そこで、6秒我慢するために

1:温度計を想像します
2:怒りは何度でしょうか?(0~10度)
3:自分の怒りの温度を確かめましょう

この3段階で6秒の時間を我慢することが可能です。怒りが10度に達していることに気づいたとき、「わたしって今すっごく怒っているんだな」と振り返ることができて、クールダウンできれば成功です。

・怒りを逃がすグーチョキパー
怒りのコントロール2つ目です。怒りを感じた時には身体に力がぎゅっと入っています。その怒りを逃がすために意図的に体に力を入れ一気に抜いていく方法です。それでは、怒りを感じた場面を想像していきましょう。

場面:出かける寸前で子どもが急にぐずりだした。せっかく着替えさせた服も地面に汚れている。あなたはそれを見てイラっとして「早く立ちなさい」ときつい言葉が出そうになっている。そこで6秒我慢するために

1両手をグーにして思いっきり力をこめる
→手のひら、腕、肩の方まで力を入れます

2:力をグーっと入れていた両手をチョキにする
→少しずつ力を抜く準備段階です

3:両手をパーにして一気に力を抜く
→心の中で「パァ~」とのんびり唱えてみると効果的です

この3段階で怒りを6秒我慢でき、体の力を抜くことに繋がります。

6秒を乗り切る

・10秒呼吸法
怒りのコントロール3つ目です。怒っているときは戦うモードになっているということをお伝えしました。これはつまり交感神経優位の状態です。この交感神経優位の状態からリラックスして副交感神経を優位にしていきましょう。それでは怒りを感じる場面を想像していきましょう。

場面…あなたが子どものために注意したことに腹を立て子どもが反抗的な態度をとって言い返した。あなたは思わず手が出そうになる。そこで6秒我慢するために

1,2,3で…
 息を大きく鼻から吸いこみます。
4で…
 息を止めます。
5,6,7,8,9,10で…
 ゆっくり口から細く長く息を吐きます。

この3段階で10秒使うので6秒間怒りを我慢でき、かつ副交感神経優位に導くことが可能です。

②困ったときには、ソーシャルサポート!

毒親のストレスや自分が毒親なのではないか?といった問題を一人で抱え込みぐるぐる同じことを考えてしまうと、いっそう問題は複雑になってしまいます。実際にネガティブ思考を続けていくとより一層その思考に支配されてしまうという研究結果もあるのです(神谷・ 幸田, 2016)。

そこで、困ったときには問題解決のためにソーシャルサポートを利用してみるのもおすすめです。ソーシャルサポートとは、社会的関係の中でやりとりされる支援のことを指します。たとえば、 

・家族や親せき 
・友人・知人  
・専門的なサービス 

など自分を取り巻く環境の中でサポートしてくれる人やものをさします。

石毛・無藤(2005)の研究では、ソーシャルサポートがストレス反応を下げるといった結果も出ています。ソーシャルサポートを利用するのは無駄ではありません。はじめは相談することに勇気がいるかもしれませんが、 問題を一人で抱えるよりも良い方法が見つかるかもしれません。困ったらソーシャルサポートを利用して解決しましょう!

ソーシャルサポートで毒親対策

③安心できる居場所で毒親ストレスをケア!

自分の親は毒親だ!と気づいている人や、親とちょっと付き合いづらいなぁと感じてとてもストレスを感じている人も多いと思います。しかし意外と

・親子は仲良くするべき
・親には
恩返しするべき
・親の悪口はNG

など思いこみがあり、ストレスは解消されていない場合があります。たとえ親にストレスを感じていても「100%縁を切る!」という選択肢は選べない人も多いと思います。だから親へのストレスは悩ましいものです。

まずは、感じているストレスを積極的に解消するセルフケアをしていきましょう。第一歩としておすすめなのは、自分が安心できる!と思える居場所をたくさん作っておくことです。

たとえば、
・居心地のいいカフェ
・一人カラオケ
・お風呂
・友人の家
など自分が安心できる場所をできるだけ多く作っておきましょう。そして、ストレスが溜まった時やエネルギーをチャージしたい時などには、その居場所で時間をすごしてみてください。

自分一人で、のんびりしたり、感情を発散したり、自分を振り返ることができる居場所はすぐには使わないかもしれません。しかし困ったときの回避策として必要になる場合が多いのです。また解決策②と解決策③は同じような方法だと感じられる方もいるかもしれません。しかし、解決策②のソーシャルサポートは主に自分以外の人にサポートをもらう方法です。解決策③は自分ひとりのストレス解消を目的とした解決策です。

安心できる場所を持とう

考え方の癖などの個人要因を解消する方法についてのすぐに役立ちそうな有効な方法はたくさんあります。しかし、すぐに解決できなさそうに感じる問題の場合に(特に毒親ストレスなどの問題のときには特にです(;´Д`))、まずは安心できる居場所で一休憩することも大事です!ということをおまけとしてお伝えしたいと思います。

毒親ストレスを解消して毎日に安心感!

この「毒親」コラムでは、毒親とは何か?国内外で分かっている毒親についての研究結果、そして毒親からのストレス解消法や毒親にならないための怒りのコントロールを解説してきました。

解決法で挙げたワークでは3つの方法をご紹介しました。親子関係は人間にとってとても大事なものですから、問題があるととても大きなストレスになってしまいます。

毒親のストレスから自分を守る、自分が毒親を連鎖させない、困ったらソーシャルサポートを利用することなど何かひとつでも生活に取り入れてみるとまたあらたな気づきがあるかもしれません。

コラムを読み終えて「明日から何かひとつやってみよう」と思って頂けると嬉しいです。また、ご紹介した解決方法を実践する中で、あなたが悩んでいた問題が少しずつ解消されることを実感して頂けたら幸いです。

・専門家の講義を受けたい方へ

最後に、これまで「毒親」コラムにお付き合いして頂き、ありがとうございました。新しいことを生活に取り入れ、これまでの習慣を変えるのはなかなか大変なことです。焦らず、できそうなことから根気強く取り組んでみて下さい。

そして、専門家から直接学びたい!という方は良かったら私たち臨床心理士・精神保健福祉士が開催している、コミュニケーション講座への参加をおススメしています。コラムだけでは伝えきれない知識や実践的なワークを進めています。みなさんのコミュニケーション能力が向上するよう、講師も一緒に頑張ります!よかったらいらっしゃってくださいね(^^)

人間関係講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・引用文献
・Belsky, J. (1980). Child maltreatment: An ecological integration. American psychologist, 35(4), 320.
・Buchanan, A. (1996). Cycles of child maltreatment: Facts, fallacies and interventions. Wiley.
・Dube, S. R., Felitti, V. J., Dong, M., Chapman, D. P., Giles, W. H., & Anda, R. F. (2003). Childhood abuse, neglect, and household dysfunction and the risk of illicit drug use: the adverse childhood experiences study. Pediatrics, 111(3), 564-572.
・石毛みどり, & 無藤隆. (2005). 中学生における精神的健康とレジリエンスおよびソーシャル・サポートとの関連. 教育心理学研究, 53(3), 356-367. 
・神谷慶, & 幸田るみ子. (2016). 大学生の抑うつにおける自動思考とネガティブな反すうの関連. ストレス科学研究, 31, 41-48. 
・久保田まり. (2010). 児童虐待における世代間連鎖の問題と援助的介入の方略: 発達臨床心理学的視点から. 季刊・社会保障研究, 45(4), 373-384.
・浦山晶美, 金川克子, & 大木秀一. (2009). 母親の身近な人間関係におけるストレス感と不適切な養育行動の関連性について. 石川看護雑誌, 6, 11-17.
・岡本真なみ. (2018). 怒りをコントロールする 「アンガーマネジメント」(第 3 回) 6 秒待てる自分づくり. 金融財政事情, 69(17), 68-69.
・Milan, S., Lewis, J., Ethier, K., Kershaw, T., & Ickovics, J. R. (2004). The impact of physical maltreatment history on the adolescent mother–infant relationship: Mediating and moderating effects during the transition to early parenthood. Journal of Abnormal Child Psychology, 32(3), 249-261.
・Montes, M. P., de Paúl, J., & Milner, J. S. (2001). Evaluations, attributions, affect, and disciplinary choices in mothers at high and low risk for child physical abuse. Child Abuse & Neglect, 25(8), 1015-1036.
・中谷奈美子. (2015). 子どもの行動に対する母親の帰属と不適切な養育――感情を媒介として――. 心理学研究, 87-14074.