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空の巣症候群の乗り越え方を専門家が解説

空の巣症候群の乗り越え方・克服する方法

はじめまして!学校心理士・応用心理士の栗本です。私は心理学の大学院を卒業し、カウンセリングや教育相談を行っています。本コラムでは「空の巣症候群」について詳しく解説をしていきます。しっかりと対策をお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。ぜひお付き合いください。

  • 空の巣症候群とは?
  • 原因と症状の特徴
  • 更年期障害との違い
  • 症状が出やすい人とは?
  • 発症しやすい環境を知ろう
  • 克服ポイントと【3つの研究】
  • 【3つの予防法】で対処しよう

しっかりと対策をお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。ぜひお付き合いください。

 早速ですが、みなさんは「空の巣症候群」と聞いて何をイメージしますか。「さみしい感じがする」「テレビで見かけたり聞いたことはあるけど・・・」とではないでしょうか?

「空の巣症候群」とは、我々の生活の中にとても関連深い専門用語です。正しい知識を得ることで、自分の生活や大切な人の生活に役立つと思います。

このコラムでは、「空の巣症候群」について知りたい方向けに、正しい知識を解説していきたいと思います。

空の巣症候群とは?

空の巣症候群(からのすしょうこうぐん)」(Empty nest syndrome)とは、「母親の肩の荷が下りると同時に、言葉にできないような寂しさを感じる」ことで、一過性の抑うつ症状母親の燃え尽き症候群とも言われています。

母親は子どもたちが独立すると、言葉にできないような寂しさを感じることがあります。このような状態を、ひな鳥の巣立ち後の「空の巣」に例えてつけられた用語が「空の巣症候群」です。

この空の巣症候群という用語は、子育てに限らず「中年の危機」という意味合いで、若さや力の喪失、さまざまな分離体験など幅広い意味で用いられています。

空の巣症候群の意味を解説

発症する原因・特徴

空の巣症候群が発症する原因は「空虚感」「寂しさ」などの精神的・心理的な面と、子どもの自立や独立などによる「環境の変化」があります。

たとえば、
子どもの結婚や就職などをきっかけに、母親としての「役割の喪失」が生まれます。そして心にぽっかり穴があいたような「空虚感」「寂しさ」を感じるようになり、空の巣症候群が発症するのです。

空の巣症候群の主な症状は、

虚無感:むなしい気持ちになってしまう
無関心:何に対しても興味がわかない
自信の喪失:必要とされていないと感じる

などがあります。この症状は、深刻になると自分はもう必要とされていないというような「自身の喪失」への移行するため早めに専門の医療機関を受診し、適切な治療を受ける必要があります。

更年期障害との違い

空の巣症候群と間違われがちなのが「更年期障害」です。

更年期障害は、空の巣症候群を発症する時期と重なりやすく、症状も似ています。ただし、発症する原因が異なるため、対処方法や治療方法も全く変わります。受診するときには注意が必要です。

空の巣症候群と更年期障害との違い

空の巣症候群になりやすい人とは?

空の巣症候群は、次のような人が発症しやすい傾向があります。

・ストレスを溜めやすい
・子育てが生きがいになっている(なっていた)
・人付き合いがあまりない

子育てに熱心で自分より家族を優先させてきた、良妻賢母タイプの女性は症状がでやすいといえます。また女性の中でも40~50代は発症が多いため注意しましょう。

後山(2002)は、女性をとりまく環境におけるストレスを次のように報告しています。

・本人の健康感の喪失(37.3%)
・対人関係や生活態度など(26.9%)
・子どもの生活態度や将来への心配(13.9%)
・両親の病気や介護(10.9%)

この結果から次のような構図が見えてきます。

「結婚後に全てのエネルギーを注いだ子育てが終了し、子離れという別れを受け入れられない」
「老齢化した両親の介護による心身の疲れが現れる」
「周囲環境の調整が困難であればうつ病や不安障害、身体表現性障害へと発展する」

発症しやすい環境とは?

空の巣症候群の症状がでやすい40~50代の女性で、次のような環境やライフイベントがある場合は、発症のリスクが高くなるため注意しましょう。

・夫婦の会話不足
一般的に、中高年女性の夫は職場で責任ある役に付いていることが多く、仕事が多忙になりがちです。そのため家庭内では夫婦の会話時間が減少する傾向にあります。そのため家庭で過ごす時間が多い女性は「孤独感」が増すことで「空の巣症候群」を発症しやすくなります。

・子供の自立や孤独
空の巣症候群が発症する大きなきかっけに、子供の自立や独立があります。子供の進学や就職、または結婚するタイミングは発症しやすくなるため、注意が必要です。

・介護からの解放
介護から解放されたタイミングで「空の巣症候群」を発症するケースも増加しています。献身的な介護をする人ほど発症しやすいでしょう。 

空の巣症候群になりやすい環境を解説

空の巣症候群の研究と克服ポイント

心理学の世界では、「空の巣症候群」についてその原因解明や治療、予防のためにさまざまな研究がされてきました。その中からいくつか見ていきましょう。

研究①:夫婦関係が影響する?

國吉ら(2004)は、大学生の子供を持つ母親151名を対象に「夫婦関係の良好さと母親の子離れの様相」という視点から調査を行いました。調査は、質問紙法を使って「母親の認知する夫婦関係の良好さ」と、子離れの概念の一端を表わすと考えられる「母親感情」との関連を分析しました。

▼結果はこちらです。

子供の成長に対する寂しさと空の巣症候群と

表から、
夫婦が良好であると認知している母親より夫婦関係が良好でないと認知している母親は、子どもの成長に対する寂しさが強いということが分かります。

夫婦関係が良くないと、夫との関係よりも子供との密着が強くなりがちです。そんな子供が成長し、いざ巣立った時には喪失感がより強くなることが考えられます。

つまり空の巣症候群の発症には、子供との関係だけではなく、“夫婦関係”が大きくかかわっているといえます。

研究②:予防のカギは夫婦関係の良さ

國吉ら(2004)の研究では、母親と夫の会話について調べています。この調査では、「母親の認知する夫婦関係の良好さ」と、母親と子供との出来事について夫に話した時の気持ちの変化などを分析しています。結果は以下の通りです。

①夫婦関係が良好なグループ
「子どもの成長を認めよう」
「心配が信頼に変わった」
「夫も同じ考えでいてくれる」
「夫婦間で気持ちや考えを共有できている」
 など、ポジティブな変化

②夫婦関係が良好でないグループ
「夫に話しても寂しさがつのるだけ」
「夫は子供についての話を真剣に聞いてくれない」
など、ネガティブな変化

結果から、
「子離れ」という課題に対して、夫婦関係が良好なグループは考え方がポジティブであることが分かります。

つまり、空の巣症候群の予防には、夫婦の良好な関係が重要であるということです。

空の巣症候群は夫婦関係も影響する

研究③:仕事と空の巣症候群の関係

母親の就業形態と空の巣症候群の関係について調べた論文を見ていきましょう。

清水(2004)は、子供の巣立ちを終えた母親のアイデンティティについて就業形態ごとに、調べています。この研究では、一人以上の子供が巣立った母親を対象に、子供の巣立ちを終えた母親のアイデンティティを2つに分け「フルタイム」と「専業主婦」に分類して集計をおこないました。

①同一性達成
現在目標に打ち込んでいるものがあり、人生の決断を主体的に下してきた。

②同一性拡散
現在目標に打ち込んでいるものがなく、将来も打ち込むものを積極的に探していない。

▼①同一性達成の結果はこちらです。

フルタイムと専業主婦の同一性達成の比較

▼②同一性拡散の結果です。

フルタイムと専業主婦の同一性拡散の比較

結果は、フルタイム群と専業主婦群でやや対照的となりましたね。

「フルタイム」では
「同一性達成」が多く「同一性拡散」が少なかった。
「専業主婦」では
「同一性達成」が少なく「同一性拡散」が多かった。

この結果から、

フルタイムで働く母親
⇒子供が巣立ってもアイデンティティが安定している

専業主婦の母親
⇒子供が巣立つとアイデンティティの不安定さがみられる

といえそうです。アイデンティティが不安定になってしまうということは、簡単に説明すると「自分が自分ではないような感覚になってしまう」ことと思ってください。

この結果から、フルタイムで働く母親は子供が巣立っても仕事などで打ち込むことがあり、アイデンティティが不安定にならないことが考えられます。

つまり、「子育て」という母親の役割だけでなく、「仕事」という家庭以外の役割をもつことが予防と克服のために大切だといえます。

空の巣症候群を予防・克服のために大切なこと

空の巣症候群を克服!予防・対処法

ここからは、空の巣症候群の予防・対処するための、具体的な方法についてみていきましょう。

予防・対処法①:夫婦関係を良好にしよう
夫婦関係が良好でないと認知している母親は、良好であると認知している母親よりも子どもの成長に対する寂しさが強いです。夫婦関係が良くないと、夫との関係よりも子供との密着が強くなます。そんな子供が成長し、いざ巣立った時には喪失感がより強くなります。

子供との関係だけではなく、夫婦関係も大きく関わっていますので、関係を良好に保っていくことが大切になるでしょう。時には思い出の地に出かけることや、昔を思い返すことも良好な関係を保っていくことになると思います。

予防・対処法②:夫婦で乗り越えよう
子どもが巣立つことは、うれしい気持ちもありますが、悲しい気持ちももちろんあります。そんな時、その悲しみを一人で抱え込まず夫婦で考えるといいでしょう。

悲しみを共有してくれる存在が近くにいれば、乗り越え方も見えてくるでしょう。

大切なパートナーは、心の問題についても大切な存在になります。子どもについてよく話し合ったり、気持ちを分かり合っておくことで、「空の巣症候群」を予防できます。お互いの事を思いやり、時には一緒に何かをすることで、良好な関係を維持していきましょう。

予防・対処法③:仕事に打ち込む
家庭外の役割である「仕事」に打ち込むことは、悲しみや寂しさを紛らわせるために有効です。

子供の巣立ちがつらいというときは、子育てを優先していた生活から仕事にシフトチェンジしてもいいでしょう。新たな発見が出会いから、熱中できるものが見つかるかもしれません。興味があったボランティアや趣味をはじめてみるのもいいかもしれません。

空の巣症候群の予防法

空の巣症候群の乗り越え方-まとめ

これまで、空の巣症候群とは何なのか?症状や特徴、空の巣症候群を克服するための方法などをご紹介してきました。

空の巣症候群とは、とても簡単に表現すると「母親の肩の荷が下りると同時に、言葉にできないような寂しさを感じる」ことです。

子どもが巣立ったことで、悲しい気持ちや寂しい気持ちを抱きます。その気持ちをうまく発散することで、また新しい生活を送ることも可能です。子どもが巣立った後、楽しい夫婦生活を送ることや仕事をすることで、よりよい生活を過ごすことができます。

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
後山 尚久 2002 成長した子供と母親との関係が女性の心身に与える影響 女性心身医学 7, 2, 192-197.
Deykin,EY,Jacobson,S,Klerman G, et al. 1966 The empty nest: Psychosocial aspects of conflict between depressed women and their grown children, Am J Psychiatry 122: 1422-1426.
國吉 裕加・高橋 靖恵 2004 青年期の子どもを持つ母親の子離れに関する研究 日本青年心理学会大会発表論文集 12, 24-25.
清水 紀子 2004 中年期の女性における子の巣立ちとアイデンティティ 発達心理学研究 15, 1, 52-64.