引っ込み思案な性格を直したい,長所を活かす方法
こんにちは!公認心理師の川島です。
今回のテーマは
「引っ込み思案な性格を直したい」
です。
相談者
28歳 男性 引っ込み思案
お悩みの内容
引っ込み思案な性格を直したいです。。会社では会議で意見を求められても黙ってしまいますし、恋愛ではかなり奥手で、好きな人がいてもアプローチできません。もっと積極的になりたいです。
引っ込み思案のせいで、自分らしく振舞えないことはとても生きづらいですよね。大きな挑戦から逃げることが多くなり、もっとこうしておけばよかった…と後悔される方がたくさんいます。
そこで、当コラムでは引っ込み思案の原因から対処法まで詳しく解説をしていきます。
引っ込み思案の長所と短所
まず初めに引っ込み思案の理解を深めるため、長所と短所を把握しておきましょう。それぞれ折りたたんで記載しました。参考にしてみてください。
短所
引っ込み思案な方は、欲求不満になりやすいことが分かっています。高木ら(2003)は、
・引っ込み思案児
・非引っ込み思案児
の2つのグループを比較して、欲求不満との関わりを調査しています。その結果が以下の図です。
このように、引っ込み思案児の方が、欲求不満のグラフが伸びていることがわかります。つまり、引っ込み思案な方は、欲求が満たされる体験が少ないと言えそうですね。
引っ込み思案な方は、自己期待が低い傾向にあると言われています。
高木ら(2003)は、
・引っ込み思案児
・非引っ込み思案児
の2つのグループを比較して「自己期待」との関わりを調べています。自己期待とは、簡単に言えば、自分への期待・自信のことを意味します。その結果が以下の図です。
図のように引っ込み思案の方が、自己期待の低さのグラフが伸びていることがわかります。自分への期待の低さから、「失敗したらどうしよう…」などの不安が沸き起こり、挑戦を踏みとどまってしまうのです。
引っ込み思案な男性は親密な関係になりにいことが分かっています。
石田(1998年)は、大学の新入生を対象にシャイに関する研究を行いました。まずは女性のテスト結果から見ていきましょう。
女性の場合、図の大きさは小さな差になっています。女性にとって引っ込み思案は、そこまで不利と感じないようです。
一方、男性の場合はどうでしょうか。男性のテスト結果は以下の通りです。
男性の場合、シャイな人とシャイでない人とに親密性で大きな差が出ていることが分かります。
これは人見知りな男性は人から好意を持たれないと思い込み、そして自分自身も相手に好意を持ちにくいことがわかります。
長所
引っ込み思案な方は集団で考えるよりも、一人でじっくり考えることを好みます。プラスに考えると、熟考する時間が長いので、創造力が高い傾向にあります。
Steiner(1966)の研究では、集団で考える場合と、個人で考える場合を比較し、「アイデアの総数」
と
「独創的なアイデアの数」
を調査しました。
その結果が以下のグラフです。
このように「個人条件」の方がグラフが伸びています。グループになってアイデアを出す際も、個々にアイデア出した方が量も質も高まるのです。
一方でら外向性のグループでは一見アイデアが出ているようでも必ずしも質が担保されているとは限りません。
内向的な方は、孤独に自分の中で考えを煮詰めていきますが、その分質の濃いアイデアを生み出すことができそうです。
引っ込み思案で内向的な方は感情的になることが少なく、論理的に物事を考える傾向があります。川原・松岡(2007)らは、大学生を中心とした335人を対象に内向性・外向性を調査をしました。
以下の図をご覧ください。
図を見ると
内向型の人は
合理的に考える傾向
直感的にはあまり考えない傾向
この2点がわかります。引っ込み思案な人は、考えを自分の中でしっかり熟成させ、論理的に考えることができそうですね。
内向性と知性は関連
頼藤(1998)は中学生156人を対象に養育条件について調査を行いました。その結果、内向性と知性は関連があることが示されています。
高度な職業に就いている
実際の職業からも考えてみましょう。モナッシュ大学経済学部の講師である、ゴードン(2016)は6,000人の被験者を対象に調査を行いました。
その結果、
弁護士の60%
弁理士の90%
が内向的であることがわかりました。
内向的な人は情報を探し求めるだけでなく、それをきちんと頭の中で考え、新しい情報を生み出す能力があります。例えば、マイクロソフトの創業者であるビルゲイツがこのタイプだと言われています。
成功者は深く物事を考え、社会に新しい価値観を生み出していくのです。
引っ込み思案を改善する方法
ここまで引っ込み思案について、長所と短所を把握してきました。過剰な範囲でなければ、多少の引っ込み思案はそこまで問題となりません。むしろ強みとなることも多々あります。
一方で、日々の生活で困ることが多く、行動範囲が狭くなっている場合は問題が大きくなってきます。そこで当コラムでは引っ込み思案を強く悩む方向けに6つの対策を紹介させて頂きます。
・丸ごと変えようとしない
・人の目を気にする心理を改善
・失敗過敏を直す
・マインドフルネス
・スモールステップ
・目的本位で生きる
以下それぞれ詳しく解説していきます。
丸ごと変えようとしない
引っ込み思案な人は強く悩むと丸ごと自分の人格を変えるような努力をされる方がいます。例えば、ある自己啓発セミナーでは弱い自分を大声で克服するようなワークがありました。
ただ引っ込み思案は気質の面も多く、無理に変えようとしても徒労に終わることが多いです。自分の気質としてうまく付き合っていくぐらいのおおらかな気持ちで考えていきましょう。
以下、引っ込み思案と遺伝の研究をご紹介しています。気になる方は展開してチェックしてみてください。
安藤(2000)によれば、私たちの性格は、
①遺伝
②家庭環境
③外部環境
の3つから影響を受けるとされています。引っ込み思案に近い概念として「内向性」があります。そして、「内向性」は「外向性」の対となる概念です。
行動遺伝学では、外向性の遺伝率の調査結果が出ています。結果は…
・遺伝率は 49%
・家庭環境は2%
・外部環境は49%
になりました。以下のグラフをご覧ください。
つまり、引っ込み思案は約50%遺伝の影響を受けるという結果になっているのです。
もう少し簡単な表現をすると、引っ込み思案は半分は生まれつき、半分は育ちや努力で決まってくるそんな風に解釈することができます。
性格と遺伝についてより深く知りたい方は下記をご覧ください。
人の目を気にする心理の改善
まず1つ目に抑えておきたいのが人の目を気にする心理の改善です。心理学の世界では「公的自己意識」という言葉をつくことがあります。公的自己意識が高くなると、
・緊張や不安が大きくなる
・対人関係が苦手なる
などの悪影響があります。
改善策としては、「自分の意識を高める」ことがコツです。例えば、食事を誰かとするときに、うまく話せるかな?と相手の目を気にするのではなく、「おいしいご飯をたべたい!」と自分の意識を大事にするのです。
このように自分の意識を大切にすると話す不安はかなり改善していきます。人の目を気にする…という方は下記のコラムを参照ください。
失敗過敏を直す
引っ込み思案な方は、人と話す前に失敗をイメージしがちです。恥をかいたらどうしよう…嫌われたらどうしよう…というイメージが先行してしまい、積極的な行動ができないのです。
これを改善するには、きっと楽しく会話ができる!一緒に遊べばすぐに慣れる!など前向きなイメージを増やしていくことです。
確かに失敗することもありますが、なんやかんや人間関係は実際に会話をしてみると楽しく終われることがほとんどです。失敗を先に考えてしまう…という方は下記を参照ください。
マインドフルネス
マインドフルネスとは「気付き」という意味で、不安、緊張、恐怖などの感覚とうまく付き合う方法です。
引っ込み思案な方は、不安になると我を失い、感情の赴くままに行動してしまう傾向があります。
マインドフルネス力をつけると、自分自身を客観的に見て、冷静に感情と付き合うことができるようになるのです。一度不安になるとなかなか抜け出せない…という方は下記のコラムを参照ください。
スモールステップ
引っ込み思案な考えを克服するために「行動療法」の学習がおススメです。行動療法はスモールステップで目標を立てて、恐怖や不安が少ない行動から始めていくことで着実に引っ込み思案を克服することができます。
また、リラクゼーション法を用いて落ち着いた心と身体で無理なく行動する方法もご紹介します。着実に引っ込み思案をを克服したい・・・という方は、以下のコラムを参照ください。
目的本位で生きる
日本人が考えた森田療法という心理療法では、目的本位を重視しています。目的本位とは、感情をあるがままに受け止め、目的を大事にして生きていくという考え方です。
引っ込み思案をあるがまま受け入れてそれはそれとしてうまく付き合いながら、やるべきことをやる!そんな少々ストイックな手法となります。
自分を変える、引っ込み思案な自分を否定するのではなく、自然なものとして受け入れていく姿勢を大事にしています。
人生に大事な目標がありその目標をちゃんと達成していきたい!という方は下記を参照ください。
まとめとお知らせ
まとめ
引っ込み思案が強い人の多くは、自分の考えを否定的に捉え、悲観的になり、ときには恐怖さえを感じて、悩みを抱えています。
一方で引っ込み思案だからと言って、人間関係をあきらめる必要は全くありません。ここまでに挙げた手法をうまく活かしながら是非、前向きな自分の性格として活かしてください♪
講座のお知らせ
もし公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元で心理学や人間関係を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では
・マインドフルネスの基礎
・暖かい人間関係を築くコツ
・積極的になれる心理学
・あがり症の改善
など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。お知らせ失礼いたしました。
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
Twitter→*出典・参考文献
・七條 佳代・高木 尚子・佐々木 和義 2003 引っ込み思案と不合理な信念の関連(2) : 中学生について 日本教育心理学会総会発表論文集 45, 529.
・高木 尚子・七條 佳代・佐々木 和義 2003 引っ込み思案と不合理な信念の関連(1) : 小学校高学年について 日本教育心理学会総会発表論文集 45, 528.
・川原正広, & 松岡和生. (2007). 外向型・内向型における注意機能特性と情報処理スタイルの関連性. 現代行動科学会誌, (23), 1-10.
・心はどのように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観,安藤 寿康,講談社 (2000)
・Steiner, I. D.(1966)Models for inferring relationships between group size and
potential group productivity Volume11, Issue4 July 1966 Pages 273-283
・Gordon, Leslie A. (January 1, 2016). “Most lawyers are introverted, and that’s not necessarily a bad thing”. ABA Journal. Archived at the Wayback Machine. Archived from the original on January 8, 2016.
よろしくお願いいたします