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人と比べるのをやめる,なおす方法

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人と比べるのをやめる,なおす方法

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「人と比べるのをやめる方法」です。

人と比べてしまうのをやめたい

相談者
28歳 女性
独身 営業職

お悩みの内容
私は周囲の人と自分をすぐ比べてしまいます。同僚が出世したとき、彼氏をゲットした友人を見た時、劣等感からすごく落ち込みます。

人と比べるのをやめたら、ずいぶん楽な生き方ができるのでは?と考えています。比較癖をやめるにはどうしたらいいでしょうか。コツを教えてください。

人と比べることで、自信を無くしているのですね。当コラムでは比べる癖をなおす方法を解説していきます。

人と比べる心理は直接的な研究は少ない状況です。例えば学術的な論文が検索できるGoogle Scholarで「比較癖 心理」「比べる 心理」と検索しても心理学の研究はありませんでした。

一方で比べる心理は「妬み」「嫉妬」「劣等感」などと絡めた研究なら複数存在します。そこで当コラムでは、これらの妬み研究をベースに解説を進めて行きます。

ぜひ最後までご一読ください。

なぜ私たちは比較するのか

人間は他人と比べる生き物

私たちは、なぜ人と比べ、妬みを持つのでしょうか?心理学者の坪田(2011)[1]は、妬みが生命の危機を回避するために機能してきたと主張しています。たとえば、資源が乏しい環境下で

周りはご飯をたくさん配分されている
自分だけご飯が少なく配分されている

このような状況だったとしましょう。この時、平気な顔で見過ごしていると、あなただけが飢え死にしてしまうかもしれません。

このような事態を防ぐため、他人と自分の状態を比較し、不平等がある場合は、妬み」を感じ、自己主張するようにしていたのです。つまり人と比べることは、進化の過程で、自分を守るために必要だったということになります。

成績や能力を比較する

私たちはどのような点を人と比較することが多いのでしょうか?原(2013)[2]は大学生160名に、妬みを持った時の対象について調査を行いました。結果の一部が下図となります。

人と比べて妬みやすい項目

上記のグラフから、人と比較するのは成績や能力が多く、財産や外見などにはそこまで妬みはもっていないことが分かります。この傾向は、成人になってもある程度は受け継いでいくと推測できます。

成績や技術は努力によってコントロール可能ですが、財産や外見は生まれ持ったもので、努力ではどうしようもない部分もあります。人は努力によって違いが生じるものについて、妬みやすいと推測できます。 

過剰な比較は自尊心が低下

一方で比較癖が強くなりすぎると、ネガティブな影響も出てきます。澤田(2008)[3]は大学生201名を対象に、妬み感情について調べました。その結果の一部が下図となります。

人と比べる 自尊感情

図のように、自尊感情と妬み感情の間には負の相関(-.32**)があることが分かりました。これは、人と比較しすぎて妬み感情を持つと、自尊心が低下することを意味しています。

学歴が高い人と自分と比べる、容姿が優れた人と自分を比べる、このような比較が日常的になると、自分の良さを見失うことになるので注意が必要です。


比較癖,自尊心低下

 

比較癖を改善する方法

ここからは比較癖を改善する7つの方法を提案させて頂きます。

➀暴走防止!怒りへの対策
②勝ち負けで測らない
③絶対的な価値を認める
④自尊心を向上させる時間を作る
⑤妬み→尊敬に変える
➅社会のために活かす
⑦交互作用を理解する

ご自身の生活に取り入れられそうなものがある場合は組み合わせてご活用ください。

➀暴走防止!怒りへの対策

過剰な比較クセがある方は、怒り、妬み、他者嫌悪など、マイナスの感情を持ちやすくなります。場合によっては、面と向かって暴言を吐いたり、SNSで悪口書き込んでしまいます。。ネガティブな行動は、今の社会では記録として残りやすく、結局自分を苦しめる結果になってしまいます。

人の悪口やこけおろしを衝動的にしてしまう方は、下記のコラムを参照ください。自分の感情を冷静に見つめなおす練習をすることができます。

アンガーマネジメント力をつける

 

②勝ち負けで測らない

筆者の経験則として「勝ち負け思考」が強い方は、人と比べやすい傾向にあります。勝ち負け思考とは、なんでも勝負にしてしまい、勝った、負けたと、なんでも競争してしまう思考の癖です。

勝ち負け思考は、スポーツ、ビジネス場面では必要となる場面もありますが、日常的な人間関係では、人間関係を殺伐としたものにしてしまいます。

競争すべきときは、勝ち負けにこだわり、会話をするときなどは、ただ純粋にその場を楽しむ姿勢を大事にしましょう。

 

③絶対的な価値を認める

私たちは物事の価値を決める時、2つの方法で判断をしています。

相対的価値判断
相対的価値判断は、周りと比べて価値があるかを判断する方法です。

*具体例
私は〇〇よりも年収が高いか
私は〇〇よりも身長が高いか
私は〇〇よりも学歴が高いか

人と比べてしまいがちな人は、自分と他人を相対的にみる相対的価値判断をする傾向があります。人と比較するのをやめたいのであれば、互いの価値を比較することなく、以下のように絶対的に考えていくようにしましょう。

絶対的価値判断
そのものの価値を比較せずそのまま表現します

*具体例
私の専門は〇〇で必要とされている♪
私は、誠実でうそをつかないところが魅力だ♪
私の学歴は経営学部で経済の基礎がわかる

このように、○○と比べて…と考えるのではなく、ズバリ〇〇がある!と言い切ってしまうのがコツです。是非ご自身でも、私は〇〇ができる!と100個ぐらい、挙げてみてください♪

 

比較癖を改善する方法

 

④妬み→尊敬に変えよう

周りと比べ、自分より優れた人を見つけた時は、「嫉妬や嫉み」ではなく「尊敬」「目標」にしてしまうと健康的です。

〇〇さんはどう努力したのだろうか?
〇〇さんから学べることはあるだろうか?
〇〇さんの良いところを真似しよう
周りに頑張っている人が多いほうが刺激になる

多くの場合、成功している人は、努力や日々の積み重ねがあるものです。本人の努力や頑張りを見つけ、自分も頑張ろうというエネルギーに変えてしまいましょう。

 

⑤自尊心を向上させる時間を作る

人と比べすぎてしまう人は「自分に自信がない…」「誇れるものがない…」と自分のネガティブな面ばかりに目が行きやすくなります。

おすすめなのが、1日1回は、自分を肯定する時間、良い記憶を思い出す時間を作る事です。これはポジテイブ心理学の創始者であるセリグマン博士(2005)[4]も推奨しているやり方です。

例えば、布団に入って目をつぶった瞬間からは、ポジテイブタイムと決めてしまうのです。

今日頑張れたこと
今日成長できたこと
今日一番うれしかったこと

を振りかえるようにしましょう。周りと比べて嫉妬する時間より、自分を褒める時間、良い記憶を思い出す時間を作るようにしましょう。

自尊心を向上させる方法は他にもあります。詳しくは以下のコラムを参照ください。

自尊心を高める方法

➅社会のために活かす

劣等感研究の第一人者であるアルフレッドアドラーは、劣等感は周りに勝とうとしたり、打ち負かそうとするのではなく、むしろ社会に役立つ形で活かしていくことが大事であると主張しています。[5] [6] 例えば、以下のような活かし方はおすすめできません。

周りに比べて背が低い 
スポーツで負けることが多い
 ↓
周りに勝つために体を鍛える
相手に勝ってざまあみろと思う

一方で以下のような活かし方は自分も周りも幸福にします。

周りに比べて背が低い 
スポーツで負けることが多い
 ↓
同じ思いをする人のために技を磨く
成績を上げて、背が低い人に勇気を与える

このように劣等感は自分のためだけでなく、周りにポジティブな影響を与える意識を持つように活かしていくことが大事になります。周りと比較をして劣等感が強くなっていると感じる方は以下のコラムを参照ください。

劣等感を前向きに活かす方法

 

⑦交互作用を理解する

最後に人と比べる気持ちを抑制する1つの知識として「交互作用」を抑えておきましょう。交互作用には以下の意味があります。

ある要素と別の要素とが組み合わさる事で生まれる相乗効果

わかりやすく言うと、組み合わせることで生まれる価値を意味します。例えば、こんな思考実験をしてみましょう。

おいしさの基準を100点とした時に、

たまご しょうゆ ごはん

をそれぞれ「独立して」食べると想像してみてください。皆さんは何点で評価しますか?

私ですが、

たまご50点 ごはん50点 しょうゆ5点 =合計 105点

と評価しました。醤油だけペロペロ舐めても辛いだけですからね。。さて、思考実験は続きます。次に「卵がけご飯」として3つを混ぜあって食べたらそれぞれ何点になるでしょうか。

交互作用の解説卵かけご飯

今度はバラバラに食べるのではなく、混ぜて食べることができます。おいしそうですね♪

たまご80点 ごはん90点 しょうゆ80点 =合計 250点

こんな感じになるのではないでしょうか?なんと混ぜて食べると、途端にお互いの価値が高くなり、145点もアップしてしまいました。このように「組み合わせによって生まれる価値」を「交互作用」と言います。

ここで大事なことは、私たちはそれぞれ違うこと自体に価値があるということです。同じ食材ばかりでは、交互作用が生まれないように、私たちはそれぞれの個性を磨いて、むしろ違いを作っていくことが大事になります。

周りと比較しすぎず、比べようがない個性を磨いていくという気持ちも、意識してみてください。

 

練習してみよう

最後に練習問題を作成いたしました。

・勝ち負けで測らない
・絶対的な価値を探る
・妬み→尊敬に変える

の3つについて練習してみましょう。

二郎くんは同期の太郎くんと自分をいつも比べてしまいます。

太郎くんは、
・僕より営業成績がいい
・僕よりボーナスが良かった
・僕も努力をしたが結果が出なかった
「太郎くんの活躍する姿を見るのが非常に悔しい」

二郎君の比べすぎてしまう心理を緩めてみましょう。

①勝ち負けで測らない

②絶対的な価値を探る

③妬み→尊敬に変える



解答例

①勝ち負けで測らない
⇒営業成績は太郎くんの努力があったからこそ


②絶対的な価値を探る
⇒自分なりに精一杯やったから悔いはない


③妬み→尊敬に変える
⇒太郎くんのいいところは真似をしていこう

花子さんはクラスメートの雪子と自分を比べてしまいます。

雪子さんは
・私より見た目がいい
・私より男女問わず人気がある
・いつも楽しそう
「私の容姿がもう少し可愛かったら…」

花子さんの比べすぎてしまう心理を緩めてみましょう。

①勝ち負けで測らない

②絶対的な価値を探る

③妬み→尊敬に変える



解答例
①勝ち負けで測らない
⇒周囲に好かれる雪子さんはとても魅力的だ

②絶対的な価値を探る
⇒私には手足が長いという魅力がある

③妬み→尊敬に変える
⇒雪子さんの明るいところは素敵!私も魅力的な人になろう

あなたが比べてしまう相手を前提として以下の3つを基準に捉えなおしてみましょう。

①勝ち負けで測らない

②絶対的な価値を探る

③妬み→尊敬に変える

 

まとめ

比較癖が過剰になると、いつまでも終わらない競争意識の中で疲れ果ててしまいます。「○○と比べて」と価値を計るのではなく、互いの良いところを探って、そのまま受け止めるようにしてみてくださいね。

皆さんが自分の価値に気が付き、自信をもって、活動されることを願っています。

比較癖の改善を目指そう

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・比較癖を治す,心理学の学習
・自分の価値を見つける,長所発見ワーク
・劣等感をバネにする,アドラー心理学
・健康的な人間関係を築く練習

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人と比べるのをやめる,なおす方法,コミュニケーション講座

 

 

助け合い掲示板

1件のコメント

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    • なつ
    • 2019年8月20日 9:03 AM

    尊敬に置き換える事が難しい場合はどうしたらいいでしょうか
    自分の方が努力しているのに努力しない友達の方が手に入れるものが多いと感じています。世の中努力しなくてもなんとなく上手くいく人っています。

    返信する

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]坪田 雄二(2002).自尊感情と嫉妬の関連性   広島県立大学論集 6(1), 1-10, 
 
[2]原奈津子(2013).妬みの対処方略と個人内要因との関連について 就実論叢 (43), 127-138,  
 
 
[4]Seligman, M.E.P., Steen, T.A., Park, N., & Peterson, C. (2005).Positive psychology progress: Empirical validation of interventions. American Psychologist, 60,410-421.
 
 
[6]野田俊作(1992). 共同体感覚の諸相 日本アドラー心理学会 アドレリアン第5巻第2号(通巻第9号)