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感情労働が多い仕事とは?ストレスとの上手な付き合い方

感情労働


感情労働が多い仕事とは?ストレスとの上手な付き合い方を考える①

感情労働を専門家が解説

みなさんはじめまして!社会心理学の専門家 川島です。私は社会心理学の大学院で、成人のコミュニケーションについて研究をしてきました。現在では成人向けのコミュニケーション講座の講師として活動しています。当コラムは「感情労働」をテーマに専門家が解説をしています。全部で2コラムあります。しっかりとお伝えしたいので全部で5分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。是非お付き合いください。

感情労働が多い仕事

ポジティブ感情が求められるビジネス

みなさんは居酒屋やデパートに行ったとき、定員さんが笑顔で接客してくれるとどんな気持ちになるでしょうか?とてもうれしい方がほとんどだと思います。実際、ポジティブな感情と会社の利益は深いかかわりがあることが様々な実験で確かめられています。例えばPUGHという学者は、銀行員のポジティブな接客態度が顧客満足度を上げているということを明らかにしました。私たちがサービスを受ける際はポジティブな態度を無意識に求めてしまうものです。

しかし、

もし自分自身が、そのポジティブな感情を表出する立場だったとしたら…

実は考えなくてはならいことがあるのです。

感情労働とは?

 

感情労働とはなにか?

感情労働とは社会学者A・R・ホッシールドが提唱した理論で「Emotional Labor」と言う言葉から来ています。ホッシールドは「仕事ならではの感情のコントロールは肉体労働と同じく評価すべきだ」と主張したのです。この感情労働とはどういう意味があるのでしょうか?

昔マクドナルドで「スマイル0円」という表示がありました。しかし、実はスマイルになるというのは、肉体的な披露以上に大変な面があります。例えば、お客さんが理不尽で無礼な方だったとします。舌打ちを打ちながら、なんやかんやとケチをつけてくる。どう考えても、こちらに非はない。こんな状況でプライベートでしたら、無愛想に返したくなりますよね。しかし、仕事上はどうにか、感情をコントロールをして、なるべく穏便に微笑んで受け答えする方が多いでしょう。

それでも仕事とは言え・・・どっと疲れしまいますよね。このように「本当の感情」と「実際に表現する感情(表層演技・深層演技)」に乖離(かいり)が生じると人間は精神的な疲労を覚えるのです。特に感情労働が起こりやすいのが、
・看護職
・接客業
・クレーム担当
・秘書業務
・集金関連
の仕事などにあたります。またどの業種でも社会に出ると、多かれ少なかれ社会人として感情労働が求められます。感情と表現の乖離(かいり)については感情労働として心理学の分野で最近研究がなされてきました。感情労働の問題

「表層演技」「深層演技」とは

ホッシールドは感情労働には「表層演技」「深層演技」の2つがあると主張しています。
表層演技とは、笑顔や声の抑揚を使って望ましい感情を表現することです。例えば、職場の上司に、もっと笑顔で接客しましょう。と言われた時にいつもよりも笑顔を多めに意識して接客するとします。これは表層演技にあたります。

深層演技とは、心を変えようと努力することです。例えば、職場の上司に、「お客様のありがとうをもらう意識を持とう!そうすれば仕事が楽しくなる」こんなことを言われたとします。これは心の深い部分を変えようとする意味で深層演技と言います。

このように私たちは仕事上、表層演技、深層演技を意識して、どうにか職場に適応しようともがくものです。もちろんこういった努力は自分磨きのために前向きにしたほうがいいでしょう。自分を貫いて、いつも無愛想!では仕事にならないですからね。。しかし、この感情労働が過剰になり、自分の気持ちとのギャップが大きくなってしまったら・・・かなり注意が必要です。表層演技、深層演技には限界があるのです。

疲れてしまうと燃え尽き症候群に

感情労働が起こりやすい仕事についている方は、感情をコントロールすることを仕事として求められますが、人間は感情と表現にくいちがいがあればあるほど混乱し、ストレスを感じてしまいます。感情労働をして燃え尽き症候群になり、それが蓄積すると精神的に疲れてしまって、うつ病の症状が出てきてしまうこともあるため注意が必要です。

片山(2010)は、看護師123名に「看護師の感情労働測定尺度」と「職業性ストレス簡易調査票」を用いてアンケート調査を行いました。結果が下記となります。少し眺めてみてください。

いかがでしょうか。表出抑制とは、その場にふさわしくないと判断した感情を抑制する意識的な努力を意味します。表出抑制と疲労感とに関連が見られることがわかります。このように、感情を抑える行為は、看護師にとってストレスの高い感情労働であり、心理的負担が大きいと考えられます。

今回の論文は看護師を前提としていますが、仕事上、福祉職、接客業、キャビンアテンダントなど、笑顔で接客する必要性が高い職種などでお悩みの方が多いと言えます。

感情労働と脱人格化

佐野ら(2013)は教師の燃え尽き症候群がなぜ起こるのかを分析しました。その中の1つに「脱人格化」が原因の1つとしてあげられると主張しています。「脱人格化」とは自分自身が自分でなくなってしまうような感覚で、感情労働に近い概念だと言えます。

自分が自分でなくなってしまう感覚があると、心理的な支柱を失うような感覚となり、無気力になってしまいます。重篤になると「離人症」という症状まで発展することもありますので注意が必要です。皆さんはいかがでしょうか?お仕事をしているときに、「自分らしさ」を発揮している感覚がありますでしょうか?それとも「偽りの自分」を演じている感覚がありますでしょうか。後者の場合は注意しましょう。

リスクのある感情労働に対処する

感情労働とは「本当の感情」と「実際に表現する感情(表層演技・深層演技)」との乖離によって生まれるということをお伝えしました。また、感情労働のしすぎで疲弊してしまい、燃え尽き症候群、さらにはうつ病になってしまうリスクがあるということです。では、感情労働を予防するには、どうしたらよいのでしょうか?

次回の感情労働コラムでは、感情労働との上手な付き合い方についてお伝えします。お楽しみに!(もう少し下に次のコラムボタンがあります)

★燃え尽き症候群にならないために感情労働にしっかり対処を!
社会人講座

感情労働としての看護労働が職業性ストレスに及ぼす影響 片山 はるみ 山陽学園大学看護学部看護学科 2010 日本衞生學雜誌 65
対人援助職としての教職に関する考察  大塚弥生 南山大学紀要 アカデミア 人文・自然科学編 2018 
佐野洸文・水澤慶緒里・中澤清 2013 教師のバーンアウト要因に関する研究 関西学院大学心理学研究

Hochschild, A. R. (1983). The Managed Heart: Commercialization of Human Feeling. Berkeley, CA: The University of
California Press. 



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