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PDSAサイクルの意味とは?PDCAとの違い,ワークシートの使い方

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PDSAサイクルの意味とは,PDCAとの違い

みなさんこんにちは!現役経営者,公認心理師の川島達史です。私はこちらのコミュニケーション講座で講師をしています。当コラムのテーマは「PDSAサイクル」です。

PDSAサイクルは、あらゆる仕事で共通する重要な指針です。PDSAを知りたい!導入したい!と考えている方は、ぜひ最後までご一読ください。

PDSAサイクルとは?

皆さんはPDSAサイクルという言葉を聞いたことはありますか?もしかすると「え、PDCAじゃないの?」と思われた方がいるかもしれません。それぞれ以下のような違いがあります。

PDSAサイクル

PDSAサイクルは、生産技術における品質管理などを継続的に改善していく手法の1つです。エドワード・デミング(1950)[1]によって初めて提唱されました。別名デミング・サイクルとも呼ばれます。

 


PDSAサイクルは具体的には以下の4ステップで行います。

①Plan (計画)
②Do  (実施)
③Study (研究)
④Act (改善)

提唱された当初は4工程に、上記のような名称はつけられていませんでした。詳しくは後述しますが、1994年に初めて「Plan」「Do」「Study」「Act」の4つが当てられ、それぞれのイニシャルを取って「PDSAサイクル」と呼ばれるようになりました。

計画・実行した業務のデータを分析し、比較することで新たな課題や気づき発見しやすくなります。成功しても失敗しても、結果から何かを学び、改善するための業務サイクルです。

PDCAサイクル

PDCAサイクルは、生産技術における品質管理などを継続的に改善していく手法の1つです。東京大学教授の石川(1981)[2]によって提唱されました。石川はエドワード・デミング博士の「デミング・サイクル」を再構成するための理論構築を行いました。

その結果、日本のTQC(Total Quality Control,全社的品質管理)を提唱しました。この管理理論の中で、デミング・サイクルの4工程に以下の4つの名称がつけられています。

①Plan (計画)
②Do  (実施)
③Check (評価)
④Act (改善)

PDSAと酷似していますが、違うのは③Check(評価)の工程です。これは実際の結果を評価する段階で、計画時に予測されていた結果をどこまで満たせているかを確認します。PDSAでは「学び」につなげますが、PDCAでは「評価」のみにとどまります。この点では、PDSAの方が時系列的に新しいものであり、発展していると言えるでしょう。

PDCAは1950年~1980年にかけて、ビジネスの現場で長く活用されました。特に日本の製造業で徹底され、高度成長期の原動力となりました。トヨタ自動車の「カイゼン」へも影響したことから、その後アメリカに逆輸入されたという逸話もあります。

歴史

1900年代
当初の品質管理の方法として、フレデリック・テイラーが提唱した「テイラー・システム」が主流でした。生産する「物」のみを品質管理の対象とし、「仕様」「生産」「検査」の3工程を直線的な流れとして説明します。

1920年代~30年代
しかし、それから20年ほど経過した時点で、「人」が品質や企業の利益に大きな影響を与えることが分かってきました。そこで、シューハートは1939年に、新しく環状的に作業工程を進める「環状経路」を提唱しました[3]

環状経路は、「生産工程」のすべてを検査対象とみなします。そして、各工程に携わる人々の改善によって、工程ごとに「自己修正」を繰り返しながら、螺旋状のカーヴを描いて進んでいくという発想です。

1950年代
1950年になると、シューハートの弟子であるエドワード・デミングによって、環状経路は修正されることになります。デミングは環状経路は生産者目線のものであり、いまいちど消費者目線に立って見直す必要があると考えました。そこで、市場調査という「行動」を加えた4工程のサイクルを発想しました[1]。これがデミング・サイクルの始まりです。

1990年代
デミングが逝去した翌年の1994 年、「デミング博士の新経営システム論」(THE NEW ECONOMICS FOR INDUSTRY, GOVERNMENT)という著書を出版しました[4]。この本の中で、初めて4段階の各工程に「Plan」「Do」「Study」「Act」という名称が当てられました。そのイニシャルをとってPDSAサイクルという概念が誕生したのです。

製造業から各分野へ

当初のPDSAサイクルは、製造業から派生してきた理論であるため、以下のようなモノづくりの過程における検討項目が多く含まれていました。

①Plan (計画)
実施するテストの候補を挙げる 効果の予測 

②Do  (実施)
小規模での実験 効果測定 比較 

③Study(研究)
結果の分析 効果との違い その原因分析

④Act (改善)
より効果を出すための対策 材料の変更 製造過程の変更 人員の対策

(デミング,1994)

一方で、このようにPDSAの考え方は、製造分野だけでなく、あらゆるビジネスの分野、教育やスポーツでも活用できるものです。そのため、PDSAという枠組みはあらゆる分野で広がっていくことになりました。

PDSAの項目候補

PDSAの枠組みは、どの分野でも活用できます。現実的には、ご自身が所属するプロジェクトや目的に応じて、柔軟に作成することをおすすめします。製造業以外でのサンプルとしては、小川(2017)[5]のPDSAワークシートが参考になると思います。

PDSAを理解しよう

Studyの部分に「学びになったことは?」という項目が入っています。単なる評価ではなく、学習できたことを明確にしてく項目を入れていくと良いでしょう。

PDSA具体例

以下PDSAの具体例を作成しました。イメージを明確にしたい方は参考にしてみてください

<登場人物 花子さん>
環境保全ベンチャー勤務で広報
プラスチックに変わる、環境にやさしい新梱包材を開発
新梱包材の知名度アップを企画を求められる
プラスチックと新梱包材の比較実験をYouTube、TikTokで広める

①Plan(計画)

理念や価値観に沿っているか?
自社は環境保護を大切しているためOK。

解決したい問題は深刻か?
業界の知名度が低い。新商品を作ってもこのままでは埋もれてしまう

この計画は実行できそうか?
実験はすでに会社内で日常的に行われている これを映像化するだけなのでコストはほぼかからない

②Do(実施)

計画通りに進んでいるか?
撮影は順調だが、興味を引く動画編集が難しい

計画通りに進めるには?
予算を取って映像の画質を改善。編集技術を有料で学ぶ。

やり始めて分かったことは?
撮影そのものよりも、編集に労力がかかる。

③Study(研究)

計画通りに終わったか?
途中遅れ気味になったが、最終的には計画通りにできた。SNSでも拡散された。自社のイメージアップが図れた。

自分は何をしたのか?
動画技術の向上。YouTube、TikTokの仕組みの理解。

学びになったことは?
動画は最初は視聴数が伸びないが、良い動画であればいずればバズることがわかった

④Act(改善)

改善すべきポイントは?
比較実験だけの単発の動画だけではあきられる ドラマチックな展開になるような仕組み作りが必要

学びを次にどう活かすか?
新梱包材を海外に営業して受注を得るまでをドラマ化する

もっと効率良くこなすには?
動画のテロっプなどは外注する。

<登場人物 太郎君>
IT系企業に勤務,人事部に所属
新入社員が1年で40%退社
社長から離職率の改善が求められる
ノー残業デーを2日制度を提案
実施日は強制的に電源を落とす

①Plan(計画)

理念や価値観に沿っているか?
自社は働きやすい環境づくりを重視しているためOK。

解決したい問題は深刻か?
新規獲得コストがかかっている、やめた社員は悪評を広めるため、人材がさらに悪化

この計画は実行できそうか?
半強制的に電源を落とす、上司が率先して帰るので実現できる

②Do(実施)

計画通りに進んでいるか?
半強制的に電源を切るため見た目は実行できている ただし在宅で残業している社員がいる

計画通りに進めるには?
残業もNGとするため上司からこまめに聞き取りを促す

やり始めて分かったことは?
社員が早く帰ることで、読書をしたり、情報収集をしてそれが会社の新しい知識となっている

③Study(研究)

計画通りに終わったか?
会社全体としては計画通り進められた。週2回は残業なしで帰る意識が、各部署で高まった

自分は何をしたのか?
あらかじめ動画を作ってノー残業デーの意義の説明とルール作りをした

学びになったことは?
時間を制限することで、業務の効率化意識が高くなった 一方でやりがいを求める社員も一定数いてバランスをとる必要あり

④Act(改善)

改善すべきポイントは?
基本は早く帰るのは健康によく仕事の能率を上げるが、一部やる気に満ちた社員の気持ちをそがない仕組みが必要 

学びを次にどう活かすか?
ベンチャー気質のあるチームを選択できるようにする そのチームに関しては自由に労働時間を決めるようにする

もっと効率良くこなすには?
ペーパーレス化、情報のクラウド化、無意味な慣習を減らす


カスタマイズしよう

紹介したPDSAの項目はあくまでサンプルです。ご自身のプロジェクトの状況に応じてフォーマットは使いやすくカスタマイズすることをおすすめします。場合によってはもっと削ってもOKですし、より詳細な分析が必要な場合は、社内で話しあい、項目を追加していきましょう。

メタ認知のトレーニング例題

定着させるポイント

PDSAサイクルは理論を学ぶのは簡単で、実際に機能させるまでが大変です。そこで私の実戦経験も含めPDSAサイクルを会社で機能させるためのポイントを5つお伝えします。

責任者を決める

PDSAサイクルは、責任者なくして機能しません。全体を統括するリーダーを必ず決めるようにしましょう。現実的には、プロジェクトリーダー、部門長、課長など、様々なケースが挙げられます。

メンバーと共有する

PDSAサイクルは、メンバーと共有する仕組み作りが大事です。最近では、PDSAのひな形がたくさんそんざいします(具体例)。使いやすそうなひながたを選び、クラウド上にあげて一緒に管理することをおすすめします。

リズムよく回す

PDSAサイクルは、リズムよく回していく必要があります。その回す速さは、プロジェクトごとに決まってきます。初規模のテストをたくさんしたい場合は、極論すると3時間単位で回すこともありますし、経営陣では4半期で1回転というパターンもあります。

1回転、1回改善は絶対

PDSAサイクルをうまく機能させるには、1回目よりも、2回転目、2回転目よりも3回転目に精度が上がっていることが大事です。

リーダーはPDSAをただ回すだけでなく、しっかりチームが成長しているか、商品力が上がっているかを徹底的にこだわっていきましょう!

項目を見直すことも

繰り返しになりますが、PDSAサイクルの内訳は、プロジェクトによって全く異なってきます。形に捉われるず、実践的にきちんと機能するPDSAサイクルを是非作ってみてください。

そしてビジネスの現場は刻一刻と変わっていきます。1回転目、2回転目では機能していたPDSAサイクルの項目が、3回転目から機能しなくなる…ということもよくあります。

リーダーは絶えず、PDSAサイクルの内訳が実践的になっているかをチェックするようにしましょう。

PDSAサイクル

まとめ

PDSAサイクルは、実際に機能するようになるまで、粘り強く取り組んでいく必要があります。何十回も回転させることでやっと実際の成果に結びついていくものです。

しかし、この根気強くコツコツ改善していく姿勢は日本人の気質にもあっていると思います。私も含め、一緒にPDSAをしっかり回して、強い日本経済を作っていきましょう♪

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
 
[2]石川馨(1981).日本的品質管理 TQCとは何か 日科技連 東京
 
[3]Shewhart, W.A. (1939).Statistical Method from the Viewpoint of Quality Control, New York : Dover. 
 
[4]Deming, W. E.(1994).The New Economics: for Government, Education, Second Edition, The MIT Press:Cambridge, Massachusetts.
 
[5]小川恵里佳, 高垣マユミ, 清水誠. (2017). メタ認知的活動を促すことが科学概念形成に及ぼす効果: 中学校第 1 学年 「物質の状態変化」 の学習を事例にして< 教育科学. 埼玉大学紀要. 教育学部, 66(1), 13-26.
 
その他の参考文献
山本文茂(2012).音楽教育における PDCA サイクル活用の視点と可能性(1/2)―成立経緯と実践仮説を中心に― 名古屋芸術大学研究紀要第 33 巻 355 ~ 372 頁