ノイローゼの治し方とは,解消法
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。今回は「ノイローゼの治し方」についてご相談を頂きました。
相談者
37歳 女性 結婚6年目
お悩みの内容
私は現在、フルタイムで働きながら1歳と4歳の子育てをしています。夫はあと半年は単身赴任で、それまで一人で子育をしているような状態です。
仕事でくたくたになっているところに、終わらない育児が加わると、かわいいはずの子供も、うるさいと感じてしまうことすらあります。
最近は不眠と体の疲れが取れずノイローゼ気味です。子供に母親としての笑顔を投げかけたいです。私はどうすればいいのでしょうか。
フルタイムと育児が重なると、休日もなく、心が休まる暇がないですね。特に相談者の方は、不眠と倦怠感があり、深刻な状況だと思います。
当コラムではノイローゼの対策をしっかりお伝えします。参考にしてみてください。
ノイローゼと悪影響
まずはじめにノイローゼの意味と危険性について解説していきます。
意味とは
ノイローゼは心理学辞典(2013)[1]によると以下のように定義されています。
はっきりとした不安
継続的な心配
脅迫観念
によって特徴づけられるさまざまな精神障害の総称
(一部簡略化)
簡単にすると、ノイローゼは、様々な原因で、精神や身体にいろいろな症状が現れ、日常生活に支障が出る状態を意味します。
相談者の方は、精神的には、イライラしている気持ちがあり、身体には不眠や倦怠感が見られます。この意味でノイローゼ状態と言えそうです。
ノイローゼに関連する精神疾患
ノイローゼは慢性化すると様々な心の病気や症状に結びつきます。以下代表的なものを解説します。基礎知識として抑えておきましょう。
・適応障害
適応障害は、明確なストレス因により精神的に不安定になる精神疾患です。現場感覚で最も頻繁に目にする精神疾患です。子育て期間中、残業時間が膨大な職場などで頻発します。
・不安障害
不安にとりつかれている状態を意味します。日常事から天災まで、個人差がありますが、とにかく不安が過剰になり物事をが手につかなくなります。
・うつ病
気分の落ち込みや、意欲の低下などの症状を特徴とした精神疾患です。人口の3~5%はうつ病とされており、非常に多い精神疾患です。明確なストレスない場合でも発症することがあるので注意が必要です。
なお、精神医学上、ノイローゼはうつ病では使わない言葉なのですが、日常会話では使われることもあるので念のため解説しました。
ノイローゼ状態はほかにも様々な精神疾患と関連しています。慢性化すればするほど、心と体に様々な悪影響が出てくるので、早めの治療が必要となります。ノイローゼの理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。
治療の指針と3つの視点
ノイローゼは様々な原因の影響を受けるため、多角的な視野から改善していく必要があります。この点、精神医学や臨床心理学では、心の問題は
生理 心理 環境
の3つの視点で改善していく習慣があります。以下それぞれの分野ごとに、様々な治療法を紹介します。ご自身にあてはまりそうなものがあるか検討してみてください。
ノイローゼ‐生理的改善
生理的改善は体の面、脳の面から改善してく方法です。
身体の健康を大事に
ノイローゼ気味の方は身体の健康を徹底することで治ることがあります。
例えば、私の相談者の方で、不眠不休で働き、ノイローゼ気味になっている方がいました。この方が、思い切って有休を3日間取り、泥のように睡眠をとったら、症状が随分改善してしまった事例があります。
私たちの体と脳は、心とつながっています。体と脳が安定すると、心の問題も改善しやすくなるのです。運動不足、不健康な生活をしていると感じる方は、下記のコラムを参考にしてみてください。
薬物療法
症状が重たく、日常生活に問題がある場合は精神科や心療内科など医療機関の利用を視野に入れましょう。例えば、精神科ではSSRIというお薬が処方されることがあります。
SSRIとは、不安や緊張を和らげる効果があるお薬です。私たちの脳はために風邪をひくことがあります。SSRIは脳の風邪薬のようなものでしょうか。
こちらの動画で薬物療法の概要について解説しています。特に心の状態が悪いと感じる方はご覧ください。
ノイローゼ-心理的改善
次に心理的改善について解説していきます。ノイローゼについての心理的改善については、現在様々な手法が開発されています。
症状によってやり方はことなるのですが、最も活用されているのは、認知行動療法という心理療法です。
認知行動療法
認知行動療法は、不適切な考え方や、極端な行動を改善することで、健康的な心と行動を得る手法です。
たとえば、メールの返事が来ないという出来事の場合で見てみましょう。
上記の例では、「嫌われた!」断定している極端な考え方があります。これを認知の偏りと言います。また、「もう連絡しない」という行動をとっています。認知行動療法ではこの、極端な考えと、極端な行動を改善できるように練習をしていきます。
詳しくは下記コラムを参考にしてみてください。入門編として解説させて頂きました。
森田療法
森田療法は日本人が開発した心理療法で古くから神経質で悩む方に活用されてきました。現在では、治療の主流ではないものの、長く親しまれてきたやり方です。
森田療法の哲学として「目的本位」という考え方があります。目的本位とは、気分に流されず、やるべきことをやる!という少々ストイックな考え方です。
ノイローゼになっているときは、症状に流され、なかなか前に進まないことがあります。森田療法ではこれらの症状をあるがまま受け止めながら、やるべきことをやる姿勢を大事にしています。
興味がある方は下記コラムを参照ください。
ノイローゼ-環境の改善
最後に環境の改善について解説していきます。私達の心はどんなに、健康でも環境が悪ければ、参ってしまいます。そのためノイローゼ気味になったら環境を改善することも大事にしましょう。
負担を減らす
ノイローゼの方はタスクを抱え込みすぎる傾向にあります。なんでも自分でやらなくちゃ!と考える方は思い切って、体と心を休める時間を作りましょう。やることが多すぎて心が疲れている…と感じる方は以下のコラムを参照ください。
仕事の環境改善
ノイローゼの原因として仕事の負担は大きいと思います。もし可能であれば以下のようなアイデアも視野に入れましょう。
残業20時間以上は断る
部署移動をお願いする
過度のテレワークを改善
仕事が全くあわない場合は転職を視野に
などなど皆さんの環境に応じてたくさんあると思います。やることが多すぎてノイローゼ気味であるという方は負担が増えすぎないように調整しましょう。
そうは言っても、うまく自分の意思を伝えられない…と感じる方は以下のコラムを参照ください。
育児の環境改善
「育児ノイローゼ」と言うように、子育て期間中に辛い想いをされる方が多いです。筆者の川島も3人の子育て真っ盛りです。ピーク時は、0歳、2歳、4歳の時期があり、ノイローゼ気味になったことがあります(汗)
私たち夫婦は以下のような改善をしました。
料理場と遊び場に柵を作る
掃除の回数を減らす
おもちゃは基本隠す,1日2種類だけ出す
私は夕食は立ち食いそばでさらっと済ます
全部こなそうとすると、夫婦ともども参ってしまうので、適度にサボりつつ子育てすると決め、少し肩の荷が下りたように感じています。
なんでも完璧を目指してしまう…と感じる方は以下の動画を参照ください。
まとめ
今回は、ノイローゼの治し方を中心に解説してきました。皆さんが、生理、心理、環境の3つの側面を見直して、心が軽くなることを願っています。
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・認知行動療法の学習
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 元専修大学人間科学部教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連