悲観的で疲れる方,性格を直す方法
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。今回は「悲観的な性格を直す方法」についてご相談を頂きました。
相談者
33歳 女性
お悩みの内容
私は昔から悲観的な性格でした。
未来を予想すると不安になる
恋人いてもいつかフラれると考えてしまう
どうせうまくいかない…とあきらめる
何をやるにしても、先に悲観的な未来を考えてしまうので、消極的になってしまいます。こんな自分を変えたいと思います。どうすればいいでしょうか。
行動する前に悲観的な未来を予測してしまうのですね。こんな自分を変えたい!という言葉から強い意志を感じました。
当コラムでは悲観的への対策を解説してきます。前向きに力強く生きていけるよう、心を込めて執筆したいと思います。
日本人は悲観的?
日本人はそもそも悲観的になりやすい傾向があることがわかってきています。センら(2004)[1]は、日本とアメリカの人たちのS遺伝子とL遺伝子の割合を調べました。
「S遺伝子」とは
不安、神経質、悲観的になりやすい遺伝子
「L遺伝子」とは
楽観的、ポジティブになりやすい遺伝子
を意味します。その結果以下の図のようなそれぞれの保有率は以下のようになりました。
日本はS遺伝子が多く、L遺伝子が少ないことがわかります。その割合は世界でも最高水準に位置づけられるようです。
私たちは基本的な性格として、不安を感じたり、将来を悲観しやすい傾向があると言えそうです。
メリット-デメリット
一方で、悲観的に考えることは、すべてが悪いわけではありません。大事なことは、メリット、デメリットを正しく認識し、正しく悲観すればOKなのです。
以下メリット・デメリットに関する研究を記載しました。気になるタイトルがある場合は展開してみてください。
メリット
心理学者のノレムら(1986)[2]は、将来を悲観的に捉え、あらかじめ用意することを防衛的非観と定義しました。防衛的非観が強い人は、将来ネガティブな出来事が起こると予想するためいち早く準備を行います。そのため予期しない事態が起こっても、慌てず対処できます。
例えば、
将来の不景気に備え貯金をする
ウイルスに罹ることを予測し人一倍予防する
人一倍「かもしれない運転」ができる
子育ての際が危険な場所で遊ばないようにする
など危機に備えることができます。
清水ら(2016)[3]は、女子短期大学生202名を対象に、対人関係における防衛的非観主義の役割を検討しました。その結果の一部が下図となります。
こちらの図は、防衛的主観主義が強くなるほど、相手の反応に応じた対処をしやすいことを意味します。前向きに考えると、悲観的な方は、相手が嫌な思いをしないよう、配慮をすることができます。例えば、
少しの表情の変化でNGな話題を読み取る
相手が傷つかないように話ができる
接客時にお客様が嫌な思いをしないようにする
などが挙げられます。悲観的な人は、調和を大事にして、柔軟にやり方を変えることができると言えます。
清水ら(2016)[3]は、対人関係における防衛的非観主義と相手を尊重する傾向も調査をしました。その結果、以下のようになりました。
こちらは防衛的悲観的が強くなるほど、相手を尊重できることを意味します。例えば、
相手の価値観を尊重する
悩みを抱える相手の心情に配慮できる
失敗した人を許すことができる
などが挙げられます。悲観的な人は、相手の気持ちを害することをあらかじめ予測し、それを回避するように相手を尊重しながら接することができるのです。
ガブリエル・エッティンゲン(1991)[4]はネガティブがダイエットにどのように影響するかを調べました。ネガティブと悲観は親戚のような感情になるので参考になりそうです。
この研究では、参加者の女性を、
ポジティブグループ
ネガティブグループ
に分けて1年後の体重を比較しました。その結果の一部が下記となります。
上図のように、ネガティブシンキングの女性のほうが約11kgも痩せたのです。こうした、ネガティブシンキングのメリットはダイエットだけではなく、
試験で失敗しないよう勉強する
不健康にならないよう適度に運動する
恋愛で失敗しないよう自分磨きをする
など前向きな努力に結びつけることができます。悲観的思考はメンタルヘルスには悪影響ですが、パフォーマンスを上げるメリットもある!と覚えておくといいかもしれません。
デメリット
心理学の用語の1つにワレンダ効果があります。ワレンダ効果とは、マイナスの未来を予測すると、実際失敗しやすいという心理的な効果を意味します。
カール・ワレンダ(1905-1978)は天才的な綱渡り芸人でした。彼は、最期に綱渡りで転落死しますが、その時の彼の妻によると
今までは綱を渡り切ることしか考えていなかったのに、その時に限って落ちないことに注意を向けていたる
とのことです。悲観的な未来を予測すると、その予測をイメージしてしまい、実際の動きにも影響しやすくなるのです。
試験当日ミスをする気がする
スポーツの試合で失敗する気がする
プレゼンで頭が真っ白になることを恐れる
など短期間で一気にパフォーマンスを発揮する場面では悲観は不利になると予測できます。
神谷・幸田(2016)[5]は大学生262名を対象に「ネガティブ思考」がもたらす心理的な影響について研究しました。その結果の一部が下図となります。
上図は、自己否定や過去現在を否定する人は、将来を否定的に考え、抑うつ気分が強くなりやすいことを意味しています。要約すると過去・現在を否定すると、悲観的になりやすいと言えます。
アメリカのデューク大学のブルメット教授は2005年に冠動脈疾患とメンタルヘルスの調査を行いました[6]。具体的には、患者866名を
・ポジティブ思考のグループ
・ネガティブ思考のグループ
にわけ、その後、約11.4年間追跡調査を行ったのです。その結果、ポジティブ思考の人の方がネガティブ思考の人よりも約22%も生存率が高いことがわかったのです。
絶えず悲観的になっている状況は、体への負担も大きいと推測できます。
エレーヌ・フォックス(2014)[7]は、女性修道士180人を対象に、ポジティブシンキングと寿命の長さを調査をしました。
まずは、平均年齢22歳の頃の手記の内容が確認されました。女性修道師は事あるごとに手記を残す習慣があったのですね。
その手記の内容は精査され、
ポジティブグループ
ネガティブなグループ
にわけられました。その後、60年後の健康状態が比較されたのです。
その結果、プラスの感情が多いポジティブシンキングを大事にしていた人のほうが寿命が長く、10年以上長生きしていたことが分かりました。
健康といえば、睡眠や運動、食事などを気にするものですが、気持ちの部分も十分に大切な要素なのです。
このように悲観的な思考にはメリットもあればデメリットもあります。悲観の性質を理解して、バランスよく悲観することが大事なのです。
改善する5つの方法
ここからは悲観的思考が過剰になり、深刻度が高い方向けの対処法を5つ提案させて頂きます。
①リフレーミング
②現実検討力をつける
③思考停止法
④問題解決力にしてしまう
⑤森田療法,目的本位に生きる
ご自身の感覚に合いそうなものを組み合わせてご活用ください。
①リフレーミング法
悲観的な思考が多い方に有効なのが、リフレーミング力をつけることです。リフレーミングは、物事を多角的な視点から見ることを意味します。例えば
前向きな人はどう考える?
本当にそれは起こるの?
行動するとどんなメリット?
失敗したとしても経験は得られるかも
など様々な視点から物事を見る練習をしていきます。特にいつも悲観的になってしまう方は、リフレーミングで引き出しを増やすことがすごく効果的です。
前向きに考える引き出しが少ない…と感じる方は下記のコラムの練習問題に取り組んでみてください。
②現実検討力をつける
悲観的な人は、現実的には簡単に起こらないことまで心配して、とりこし苦労をしてしまいます。
万が一仕事を失ったらどうしよう…
ちょっとでも外出したら感染するのでは…
もし嫌われたらどうしよう…
もし年金がなくなったらどうしよう…
特に、万が一、もし〇〇したら・・・というフレーズをよく聞きます。ですが大概のマイナスの未来は起こらなかったのではないでしょうか?
このような取り越し苦労には、「現実検討練習」が有効です。現実検討とは、
非現実的な考えをしていないか?
確率的にほどんど起こらないのでは?
自分の考えには根拠があるか?
など自分の考えを見直すことを意味します。現実検討力をつけると、取り越し苦労が多い…というお悩みに有効です。
非現実的な思い込みが多い…と感じる方は下記のコラムを参照ください。
③思考停止法
悲観的思考が強い人は「ネガティブ反すう」傾向が高くなります。反すうとは、悲観的な出来事を繰り返し考え、何度も嫌な未来をイメージしてしまいます。
思考停止法では、この反すうを意図的にストップさせる練習をしていきます。
悲観的思考はあと3分でやめ!
充分考えた!さあ勉強するぞ
悲観思考ストップ,楽しい思考はじめ!
という感じで掛け声をかけて思考の方向性を変えるのです。一度悲観的になると止まらない…という方はこちらのコラムを参照ください。
④問題解決力にしてしまう
前半のメリットでもお伝えしたように、悲観的思考はメンタルヘルスには悪影響ですが、パフォーマンスを上げることもあります。
そこで悲観的思考を変えずに、むしろ活かしてしまう方法が「じゃあどうする法」です。悲観的思考が浮かんだら、
じゃあどうする?
と考え、解決策を練るのです。悲観的思考をむしろ前向きに活かしたい!と感じる方は、下記を参照ください。
悲観的思考の親戚概念である、ネガティブ思考の活かし方コラムで詳しく解説しています。
⑤森田療法,目的本位に生きる
心理療法の中に目的本位という言葉があります。目的本位とは、
感情に流されることなく、やるべきことをきちんとやる
という考え方です。
何かを行動するとき、私たちは多かれ少なかれ悲観的になるものです。ただ悲観に1回1回付き合っていると、やるべきことをやらない習慣がついてしまいます。
大事なことは、悲観的な面を持ちながらも、目的をもって、やるべきことをやるという姿勢です。マイナスの未来を予測してしまったとしても、それを受け入れながら、目の前のやるべくことをやる!これが目的本位な生き方となります。
詳しくは下記のコラムを参考にしてみてください。特に感情に流されやすい…という方におススメです。
まとめ
今回は悲観的な性格についての特徴と直し方を解説してきました。繰り返しになりますが、悲観的な性格は過剰でなければ、皆さんの生活の見方になってくれます。
うまく付き合いながら、活かすべき点は活かし、改善すべき点は改善することで、メンタルヘルスの向上を獲得されることを願っています♪
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
pessimism in “risky” situations. Cognitive Therapy and Research, 10, 347-362.