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HSPの特徴や症状とチェック,適職とは

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HSPの特徴,チェック,適職

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「HSPの特徴と向き合う方法」についてご相談を頂きました。

HSPの女性

相談者
34歳 女性

お悩みの内容
私は小さいころから、繊細な性格でした。大きな音が苦手で、ちょっとした物音ですぐに起きてしまいます。喫茶店などでも勉強することができません。穏やかに話す人は大丈夫なのですが、声が大きい人が苦手です。友人に「HSPなんじゃない?」と言われたことがあるんですが、詳しく教えてください。

音に敏感で困っていらっしゃるんですね。音は日常であふれているので、苦労が絶えないと思われます。当コラムを読み進めていくと、HSPの理解とうまく付き合う方法を抑えることができると思います。目次は以下の通りです。

全体の目次
①HSPの意味とは
②簡易診断,チェック
③精神疾患,身体症状
④HSPと前向きに付き合う方法
➄HSPと研究紹介
⑥HSPと批判

 

①HSPの意味とは

HSPの提唱者

HSPは、90年代はじめに、心理学者のアーロン博士夫妻(1997)[1]が提唱した概念で、Highly Sensitive Personの略称です。HSPの特徴として、刺激に対して反応しやすく、音や人の感情への感受性が非常に強いことがわかっています。アーロン博士は人口の約10%~15%存在すると主張しています。

SPS,DOSE

HSPの方は、感覚処理感受性(sensory-processing sensitivity)が高いと表現されることもあります。感覚処理感受性は以下の4つからなるとされています。
・情報を深く処理してしまう(Depth of processing)
・刺激を受けやすい(Overstimulated)
・周囲の些細な変化に気付いてしまう(Sensitivity to subtleties)
・情動反応が強く共感しすぎてしまう(Emotional reactivity and high Empathy)
頭文字をとってDOSEと表現されることもあります。

日本での広まり

HSPはここ5年間、比較的新しい概念として臨床現場でたくさん耳にするようになりました。日本では2015年ごろからHSPの関連書籍が目立つようになりました。2015~2017年ごろは、毎年5冊前後の本が販売され、2018年以降は、毎年10~20冊の本が販売されるようになりました(西谷ら,2021)[2]。2020年にはNHKのハートネットTVで特集が組まれるなど、HSPという用語は浸透してきました。

HSP

②HSPチェック

HSPの特徴をより詳しく見ていきましょう。アーロン博士夫妻(1997)[1]は、HSPの特徴を次のように説明しています。自分自身に当てはまるか?チェックしながら見てみてください。

チェック① 物事を深く考える

HSPの人は、知識が豊富で物事をさまざまな面から深く考えて行動する傾向にあります。いろいろなことを考えてから行動するので、人よりスロースタートなことが多くなります。

一を聞いて十を想像する
知識の広さを周りに驚かれる
考えてから動く
衝動的な言動が少ない

 

チェック② 刺激を受けやすい

HSPの人は、さまざまな感覚に対して敏感な傾向にあります。感覚とは、視覚、聴覚、嗅覚、皮膚感覚など体の器官で感じ取る感覚です。

肌着のタグなど苦痛で我慢できない
貧乏ゆすりなど目に入るとイライラする
機械音や小さな時計の音が気になる
ちょっとしたくしゃみなど気になる

チェック③ 共感性の高さ

HSPの人は、他者からの刺激にも敏感な傾向にあります。他人の気持ちや感情を汲み取ることが得意で、共感能力が高いという特徴があります。

人が怒られていると自分のことのように感じる
幼児や動物の気持ちも察することが得意
映画や本などの登場人物に感情移入しやすい
感動するシーンで人よりも涙がでる

 

チェック④ ちょっとした変化に気づく

HSPの人は、他の人が気が付かないような微妙な変化にも気づくことができます。

繊細な香りの違いも分かる
相手の表情の変化を察知する
ちょっとしたことに驚く
変化に慣れるまで時間がかかる

HSPの特徴感情移入しやすい

③精神疾患,身体症状

HSPの方はどのような問題を抱えやすいのでしょうか。3つの視点で解説していきます。

精神疾患

HSP傾向の方は、小さなリスクを一般的な方よりも大きく捉えています。わずかな情報からさまざまな可能性考えすぎてしまうので、一度リスクを考えると、ネガティブな考えが頭をグルグル回ります。心理学の研究では、抑うつ感や不安と正の相関が認められています。

研究としてはまだ発展途上ですが、うつ病、適応障害、強迫神経症、社交不安障害のリスクが一般的な方よりも高いと推測されます。

身体症状

HSPの方の中には、におい、光、音に敏感な方がいます。これまでの研究でHSP傾向が高いほど、胃痛、下痢、胸やけ、のどの痛みなど身体的症状の頻度が高いことがわかっています(Benham, 2006)[3]

例えば、HSPの方の中には、たばこのにおいを嗅ぐと気分が悪くなる人がいます。私が知るケースですと、職場で隣の人が喫煙者だったために、ストレスで休職してしまった方もいます。

コミュニケーションの問題

HSPの方の中には、他人の言動や感情を繊細に受け取る方がいます。西谷ら(2021)[1]は大学生300名を対象に、HSPに関する研究を行いました。その結果の一部が下図となります。

HSPと適応感

こちらはHSPの特性の1つである、興奮のしやすさ(感受性の強さ)が高い人ほど、適応感を持ちにくいことを意味しています。HSP傾向がある方は、批判を大きく解釈して傷つく、共感しすぎて自分も悩む、空気を読みすぎて言いたいことを言えない、など人間関係に疲れやすいと推測できます。

コミュ障と悩む大学生

④HSPとうまく付き合う方法

HSPは先天的な影響も大きく変えることはできないと考えられています。ただし、うまく付き合っていくための方法は複数あります。そこで以下5つのアイデアを提案させて頂きます。使えそうなものがありましたら参考にしてみてください。

①美しいものを感じ取る
②思考停止法を学ぶ
③マインドフルネス力
④環境を調整する
⑤身体の緊張をほぐす

①美しいものを感じ取る

HSPは感受性の高さが特徴となりますが、言い換えると、「美しいこと」「楽しいこと」を人一倍感じ取れるとも言えます。高橋・熊野(2019)[4]はHSPと美的感受性との関連について、大学生578名を対象に調査をしました。その結果の一部が下図となります。

HSPと精神的健康

上図のように美的感受性は、精神的健康を高めることがわかります。美しいものを敏感に感じ取れる方は、日々の小さな幸せに気づくことができ、心が豊かになっていくのかもしれません。次に特性不安を見ていきましょう。

HSPと特性不安

上図のように美的感受性は、特性不安を下げることが分かります。目の前の美しさに気づくことで、将来への不安や過去の後悔が少なくなることが考えられます。

感受性の高さは、ポジティブに働けば、他の人が気が付かないような、すばらしい視点をもたらしてくれます。野に咲く花の美しさ、ふとした生活にあるデザインのすばらしさ、人間の美しい一面をたくさん感じ取り、豊かな1日を過ごすように心がけましょう。

②思考停止法を学ぶ

HSP傾向がある方は、一度ネガティブな情報を受け取ると、そのことを考えすぎて止まらなくなってしまうことがあります。これを改善するには心理療法の1つである思考停止法が効果的です。

思考停止法とは、「もう考えない」「ネガティブ止め!」と心の中で叫んで、それ以降は生産的な活動に集中していくという手法です。HSPでネガティブな考えが止まらない方に有効な手法です。

詳しくは以下のコラムを参照ください。

思考停止法のやり方

③マインドフルネス力をつける

HSP傾向がある方は、嫌な情報を受け取ると、感情が混乱し、冷静な判断ができなくなってしまいます。これを改善するには心理療法の1つであるマインドフルネス療法が効果的です。

マインドフルネス療法は、感情を客観的に眺め、冷静さを取り戻す手法です。例えば、音がうるさい!という感覚がある場合は、「音がうるさいと感じている自分がいるな…」と客観的に自分を眺める力をつけていきます。

そのうえで、その場を離れる、今すべきことに集中する形になります。マインドフルネスは特に嫌な気持ちがあるとなかなか抜け出せない方に有効です。詳しくは以下のコラムを参照ください。

マインドフルネス力をつける

④環境を調整する

HSPの方はどうしても環境は合わないことがあります。できる限りご自身に合うように調整することも大事にしましょう。例えば、オフィスで自分の席がゴミ捨て場の近くで苦しい場合は、環境がそもそもあっていないと言えます。

このような場合は、ごみ置き場に防臭シートを張ったり、改善が難しい場合は部署移動を主張するなども視野に入ってくるでしょう。

④体の緊張をほぐす

HSPの方は絶えずストレスにさらされているため、身体が緊張しやすい傾向があります。心と体は繋がっているため、身体をリラックスさせることで、心をゆったりさせることもできます。

以下のコラムでは体のリラクゼーション法をまとめました。体が固くなりやすい…と感じる方は参考にしてみてください。

身体のストレスの改善,ほぐす方法

まとめ

ここまでHSPのチェック項目、心理面の長所,注意点を紹介してきました。HSPの方は感受性が豊かであるが故、様々なことに気が付きます。うまく付き合いながら是非、自分の長所として、芸術面や、日々の活動に活かしてほしいなと感じています。

⑤HSPと様々な研究

ここから先は発展編となります。興味があるタイトルがありましたら、クリックして理解を深めてみてくださいね♪

HSPに向いている仕事を解説しました♪良かったら参考にしてみてください。

HSPの人は、なぜ刺激に敏感なのか?それは、脳機能にあると言われています。HSPの人は、非HSPの人と比較しては脳が過剰に活性化することで敏感になっていると言われています。その活性化する脳の部分は、

・黒質/腹側被蓋野
情報処理にかかわる

HSP脳機能,黒質/腹側被蓋野

・島
感覚や情動

HSP脳機能,島

・背外側前頭前野
記憶や注意など

HSP脳機能,背外側前頭前野

以上の脳部位の強い活性化が認められることがわかっています(Acevedo et al., 2014)[5]

HSPの人は、刺激を処理する脳の部分が非HSPの人よりも忙しく働き、また記憶や感情もより豊かに動きます。そのため刺激への敏感さを引き起こし、他人との些細な出来事を深く考え記憶に残りやすいと考えられます。

赤城・中村(2017)[6]の研究では、HSP傾向の人のソーシャルスキルと精神的回復力について514名の大学生を対象に検討しました。調査によって以下の3グループに分けられました。

①一般グループ
一般的な感覚があるグループ

②HSP 感覚不快+順応的敏感
感覚が鋭く、大きな音などが苦手
芸術など豊かな内面がある

③HSP 感覚不快のみ
感覚が鋭く、大きな音などが苦手

ソーシャルスキルが低い傾向

以下の図は「ソーシャルスキル」の結果です。ソーシャルスキルとは、挨拶や人とのコミュニケーションなど社会の中で生きていくために必要なスキルのことです。

HSPと感覚不快,順応的感覚

各グループのソーシャルスキルを比較したところ、一般グループと比較してHSP者は有意にソーシャルスキルが低い、HSP者であっても順応的敏感さが高ければ一般グループと同等のソーシャルスキルがある、ことがわかりました。

回復力が低い

つづいて「精神的回復力」の結果です。

HSPと感覚不快,順応的感覚

各グループの精神的回復力を比較したところ、一般グループと比較してHSP者は有意に精神的回復力が低い、HSP者であっても順応的敏感さが高ければ一般グループと同等の精神的回復力がある、ことがわかりました。

これらの結果から、HSPの人は、一般グループの人と比較すると、ソーシャルスキルや精神的回復力が低いのですが、芸術的な思考など内面的に豊かである、順応的敏感さが高ければHSP傾向をカバーできることがわかりました。

 

⑥HSPに対する批判

現在注目されているHSPですが、様々な批判の声も上がっています。

定義の曖昧さ

HSPの提唱は、どう定義されているかが曖昧で、既存のパーソナリティ特性との相関が高すぎることが指摘されています。これにより、HSPが他の特性とどう違うのか、疑問が生じています。

根拠の欠如

HSPの定義には「深い認知的処理」が含まれますが、その根拠となる動物の研究が不足しています。したがって、HSPと動物の関係性については疑問が残ります。

発達障害との混同

HSPのブームは、科学的な根拠が不足しており、発達障害と混同されたり、過剰診断される可能性があります。これは、適切な支援や治療を必要としている人々にとって深刻な問題です。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・神経質な考えをほぐすワーク
・思考停止法の実践練習
・冷静になる,マインドフルネス心理療法
・HSP傾向を長所として活かす

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HSPの特徴や症状とチェック,適職とは,心理学講座

 

 

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]Aron, A., Melinat, E., Aron, E. N., Vallone, R. D., & Bator, R. J. (1997). The experimental generation of interpersonal closeness: A procedure and some preliminary findings. Personality and Social Psychology Bulletin, 23(4), 363-377.
 
[2] 西谷健次,小野秀樹(2021).適応感との関連に基づく HSP(Highly Sensitive Person)特性の検討 作新学院大学臨床心理センター研究紀要14 号 p.1 – p.9
 
[3] Benham, G. (2006). The highly sensitive person: Stress and physical symptom reports. Personality and individual differences, 40(7), 1433-1440.
 
 
[5] Acevedo, B. P., Aron, E. N., Aron, A., Sangster, M. D., Collins, N., & Brown, L. L. (2014). The highly sensitive brain: an fMRI study of sensory processing sensitivity and response to others’ emotions. Brain and behavior, 4(4), 580-594.
 
 
[6] 赤城知里, & 中村真理. (2017). 感覚処理感受性とソーシャルスキル, 精神的回復力の関連性の検討. 東京成徳大学大学院心理学研究科臨床心理学研究 Bulletin of clinical psychology, (17), 59-67.