無気力の4つの原因に即した対処法
みなさんこんにちは。心理学講座の講師をいている公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。今回のお悩み相談は「無気力を改善したい」です。
相談者
29歳 男性 会社員
お悩みの内容
私は元々明るい性格だったのですが、ここ1年元気が出ないです。仕事ではステップアップができず、無気力になっています。
プライベートでは、友人や長年付き合った恋人はいますが、なぜか虚しい気持ちが襲ってきます。どうすればいいでしょうか…
最近は不眠で食欲もなくなってきています。
日々の生活で元気が出ないのは辛いですね。当コラムでは原因別の改善策を提案させて頂きます。ご自身に合いそうなものを日々の生活の中に取り入れてみてください。
無気力の原因
対処を誤ると悪化
無気力になってしまうとき、大事なことは原因別の対策を考えて行くことです。なぜなら無気力の原因は様々で、対策を間違えると、効果がないばかりか余計に悪化してしまうことがあるからです。
そこで当コラムでは、臨床心理学、精神医学の観点から無気力を原因別に分類し、それぞれに応じた対策を解説していきたいと思います。
4つの原因
無気力になってしまう原因は多岐にわたりますが、臨床現場でよく見るのは
① 学習性無力感型
② バーンアウト型
③ モラトリアム型
④ 精神疾患型
これらの4つです。無気力はこれらの要因が複雑に絡まり合って発生する症状です。以下それぞれについて、対処法と合わせて解説していきます。
原因①学習性無力感型
学習性無力感型とは
1つ目は学習性無力感型の無気力です。学習性無力感とは
努力をしても結果に結びつかない事が続き、やる気を失ってしまう心理
を意味します。失敗や挫折が続き、自信を喪失することで、何をしても無駄だ!と考え、無気力になってしまうのです。以下の項目にあてはまるか検討してみてください。
残業時間が膨大で考える気力がない
勉強をしても点数が伸びない
挫折や失敗が続いている
自由を失っている感覚がある
これらにあてはまる感覚がある方は、学習性無力感型の可能性が高いです。
改善策
学習性無力感型については、全体の指針として、オーバーワークになっている状況を見直し、成果の出やすい環境に変えていくことが大事です。
課題が多すぎて無気力になっている…と感じる方は、以下の改善策を組み合わせてご活用ください。
学習性無力感の方は、課題に優先順位を決め、できること、できないことを明確にすることが改善の第一歩です。下記のコラムでは優先順位を決め、心を整理する手法を解説しています。
課題が膨大でどこから手をつければいいかわからない…と感じる方は参考にしてみてください。
心を整理する方法
①により減らすタスクが決まったら、仕事の依頼、友人の誘い、頼まれ事などを、思い切って断ることも大事になってきます。無気力な状態で無理に課題をしようとしても、自分にとっても、相手にとってもうれしいことにはならないのです。
もちろん断り方も大事です。自分の状況を柔らかく伝え、相手の意思も尊重しながら、断ることが大事です。健康的に断る手法は以下のコラムで解説しています。
断るのが苦手…と感じる方は参考にしてみてください。
断り方がうまくなる方法
パワハラ、DV、仕事の相性が悪いなど、自分ではどうしようもない環境にある場合は、限界を見極め、環境を変えるのも1つの手段です。
例えば、仕事や結婚はあくまで、幸せになるためにするものです。もし仕事が自分自身を苦しめているのなら、なんのために働いているのか、本末転倒になってしまいます。本当に努力をして、それでもダメな場合は、自分の中で環境を変える選択肢についても考えておきましょう。
以下のコラムでは、限界の見極め方と、限界を超えた時の対処法を解説しています。限界を超えて無気力になってしまっている…と感じる方は以下のコラムを参考にしてみてください。
学習性無力感型の方は頑張りすぎて、不眠、体のだるさ、頭痛など体の不調を抱えていることがあります。体の健康は心の健康と深い結びつきがあります。
頑張りすぎて身体の調子が悪いな…と感じる方は以下のコラムを参照ください。体を休める手法を紹介しています。
原因②バーンアウト型
バーンアウト型とは
2つ目のバーンアウト型による無気力です。バーンアウトとは
燃え尽きたかのように突然やる気を失ってしまうこと
を意味します。学習性無力感の方は、結果が出ないことによって陥りやすいですが、バーンアウト型の方は、何かを達成してしまってやることが無くなってしまった時に陥りやすくなります。
以下の項目にあてはまるか検討してみてください。
1日がとても長く感じる
なんとなく日々が過ぎていく
疲れ果ててしまった
受験勉強が終わった
子育てが終わった
これらにあてはまる感覚がある方は、バーンアウト型の可能性が高いです。
種類
バーンアウト型は、さらに細かく分類すると以下の種類があります。
燃え尽き症候群
仕事、スポーツに対して一生懸命頑張って、結果が出たり、引退した後に起こります。
空の巣症候群
主に子育てが終わった後に起こります。
スチューデントアパシー
学生(特に大学生)に多くみられる無気力症状です。受験という大きな目標を達成した後、次の目標を見つけ出せずに、無気力になります。アパシー・シンドローム(無気力症候群)と呼ばれ,大学生に限ったことではないのですが,大学1年生で多く,また卒業を控え,社会人としての目標が求められる大学4年生でも見られます。
改善策
バーンアウト型の方は、新たな目標を見つけることがカギとなります。元々能力が高い方が多いので、再び目標を見つけると、びっくりするぐらい改善することもあります。
自分と向き合い、新しい行動をすることで充実した日々に戻ることができるでしょう。改善策を以下にまとめました。ご自身にあてはまる対策を活用ください。
そもそもバーンアウトとは「燃え尽きてしまっている状態」なので、まずは疲れた自分を労う期間を設けることも大切です。
たくさん頑張ってひと段落ついた後、気が抜けて一時的に無気力になるのは当然のことかもしれません。疲労感や無気力感は心身のSOSの場合もあります。
自分の状態を確認し、「今は無気力でも仕方ないかな」と思ったら、一旦しっかり休むことも視野に入れましょう。そしてエネルギーが戻ってきたら、②以降の対策を試してみてください♪
バーンアウトになると、次に打ち込めることが見つからない方もいます。最初はエンジンがかからなくてもOKです。まずは行動していく中で、だんだんと興味関心が湧いてくることもあります。
最近日々の繰り返しでワクワクしない…という方は下記のコラムを参考にしてみてください。好奇心を育てるコツを解説しています。
好奇心を持つ方法
次にやりたいことが見つかったら、バーンアウトを繰り返さないために「フロー状態」を目指すことも大切です。フロー状態にするには2つの鍵があります。それは
①適度に難しい課題をみつける
②自分の高い能力をぶつける
この2つです。私たちは簡単すぎる課題でも、難しすぎる課題でも、無気力になってしまいます。自分自身が成長できる、頑張れば達成できそうな課題に、最もやる気を出すことができるのです。
日々を充実させたいという方は下記のコラムを参照ください。フロー状態に入るためのコツを解説しています。
燃え尽きて「やることがなくなった」と感じていると、腰が重くなり、ついつい物事を先延ばしにしてしまうことがあります。「やろうと思っても腰が重くて行動できない」と感じる方は、課題をスモールステップにすることをおススメします。
例えば、勉強を8時間やろう!と考えると最初から気が重いですね。そうではなく、とりあえず10分やろう…と考え体を動かしてページをめくってしまうのです。そして10分実施したら、もう10分やろう…とまたスモールステップを作って行動していきます。
そうするといつの間にか集中して課題に取り組めることもあります。無気力でついつい先延ばしをする…という方は以下のコラムを参照ください。
原因③モラトリアム型
モラトリアム型とは
3つ目はモラトリアム型の無気力です。モラトリアムとは
力がまだ十分に発揮していない青年が、社会に対して一定の距離を置いている状況
を意味します。モラトリアムはもともと、学生に対して使われる言葉でしたが、小此木(1978)[1]の「モラトリアム人間の時代」にも挙げられているように、現代社会では、青年期に限らないとする考えも出てきています。
以下の項目にあてはまるか検討してみてください。
日々の作業に意味を感じられない
情熱をもって打ち込む対象がない
何かを決断を先延ばしにしている
昇進、出世、キャリアアップに興味がない
これらにあてはまる感覚がある方は、モラトリアム型の可能性があります。
改善策
成人期にモラトリアムになっている方は、仕事をしていて一見自立しているように見えても、やりがいを感じられず、漠然とした状態に不安を感じていると考えられます。
モラトリアム期間を脱するには、自分と向き合う時間を取る、日記をつける、メタ認知をして自分の価値観を探るなどの方法があります。詳しくは以下のコラムを参照ください。
原因④精神疾患型
精神疾患型とは
3つ目は精神疾患型による無気力です。精神疾患型とは
うつ病、適応障害、統合失調症、認知症などの症状として現れる無気力
を意味します。学習性無力感、バーンアウト型は、課題の量や目標のありなしが原因となりますが、精神疾患型は、脳の問題が中心となり、無気力になってしまうのです。
以下の項目にあてはまるか検討してみてください。
客観的には幸せな状態だが無気力である
特定の時期から急に無気力になった
取り立てて生活に変化がないのに無気力である
消えてなくなりたいと感じる
支離滅裂なことをいってしまう
このような感覚がある方は、精神疾患型の無気力症候群の可能性があります。
種類
精神疾患型の場合は、病気によって対応が全く異なったものになります。以下あてはまると感じるものがありましたらリンク先で正しく知識を理解してください。
うつ病
日常生活全般に対してやる気が起きなくなり、自分は無価値な人間だと感じます。やらなきゃいけないとわかっていても体と心が鉛のように重く感じます。
適応障害
仕事での挫折、失恋、パワハラ、家族との死別などがあったときに、絶望的な虚無感に襲われることがあります。このような場合は、適応障害と診断されることがあります。学習性無力感型で強く症状が出るときに当てはまることがあります。
統合失調症
統合失調症は考えがまとまらなくなってしまう精神疾患です。統合失調症の中には陰性症状が出る方がいます。1日中ぼうっとしてしまったり、無表情になってしまいます。
認知症
若い頃はエネルギッシュだったのに、高齢になってから無気力になってしまった場合は、認知症が始まっている可能性があるので注意が必要です。
改善策
うつ病、適応障害、統合失調症、などに当てはまる可能性を感じた方は、心療内科か精神科を利用するのが基本となります。以下動画で解説をしました。上記の精神疾患にあてはまる方は参考にしてみてください。
下記の動画で心療内科、精神科、心理療法の基本的な知識を抑えましょう。
まとめ
最後に私なりに無気力な時期の過ごし方をお伝えします。私は、やる気が出ないときは、出ないなりの生活を大事にしています。
例えば、私はなぜかトイレ掃除をすると気持ちが整理されます。新しい洗剤を買って、ブラシを買いに行き、しっかり洗うとなぜか気持ちがすっきりします。
少し心がほぐれたら、当コラムにあるように、自分の心を整理する時間にしています。参考まで♪
無気力な時期は必ず終わりが来ます。皆さんが心の整理をして、充実した日々を過ごされることを心から願っています。
心理学講座のお知らせ
無気力を公認心理師・精神保健福祉士の元でしっかり改善したい方は、私たちが主催する心理学講座をおススメします。心理学講座では、
・心理療法の基礎
・前向きな思考を増やす方法
・やる気が戻るフロー心理学
・暖かい人間関係を築く練習
など学んでいきます。筆者も講師をしています。是非お待ちしています。↓詳しくは下記の看板をクリック♪↓
4件のコメント
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自分と向きあって落ち着いたら両親に伝えてみてはどうでしょうか。
時間をかけて考えることも大切だと思います。
きっと同じ思いをしている方は沢山いるので新しい世界に踏み出してみると心から信頼し
あえる人に出会うと思います。
私も受験のときに同じく苦しい思いをし失敗してしまいました。
なので、今志望校ではない学校に行っていますが自分に新しい世界ができました。
生きている中で何があるかわからないので思いっきり別の視点から物事を見るのもいいと
思います。
自分の心の声を大切にしてあげてください!高1女子です
念願の志望校に合格し友達もそこそこいて学校生活はかなり充実していたはずなのですが、“なんで勉強をしなきゃいけないの?” “生きている意味って何?” と急に思い始めてきました。最近では家の階段を上る時後ろから追いかけられてるような気がしてとても怖いです。自室にいてもベットの下に何かがいる気がして自分の安心できる場所がありません。夢の中でも幻覚?のようなものが見えて怖くて起きたこともあります。母は「単位落とさないように計算しながら休みなさい」 「休み続けていたらもっと行きずらくなるよ」と言うのですが正直もう家から1歩も出たくないです。既に4日間ほど家から出てません。原因を色々調べていく中で見つけたのが無気力症候群というものでした。セルフチェックができたのでやってみるとかなり可能性が高いと診断されました。
これは親に伝えた方がいいのでしょうか
長分失礼しました…私は受験を控えているというのに学業に対して全くやる気が出ません。
勉強が嫌いだから勉強をしたくないと言うよりかは、勉強をしようと思ってもいざ勉強するとなると急に体がだるくなってしまいます、、
そのせいで焦ってしまい、もっとやる気が出なくなります。
2年前までは何時間勉強しても足りないと思っていたのに、今は10分も辛いです。
どうしたら勉強をしようと思えるでしょう、😭最近は全てにやる気が出ません。このままだとおかしくなってしまいそうで怖いです、
誰にも相談する勇気がでなくてここに書いてみようと思いました。語彙力なくて伝わらないかもしれないかな、、😂外に出ることができず、毎日お辛いのですね。負のスパイラルにはまってしまうと、抜け出すのは容易なことではないのだと思います。
専門の方には相談されましたでしょうか。私の娘は、数ヵ月前に自ら命を絶とうとしましたが、メンタルクリニックで治療し、話を聞いてもらい、周りの人達に支えられながら、元気を取り戻しつつあります。一度試してみていかがですか。コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1] 小此木 啓吾 (1978). モラトリアム人間の時代 中央公論社
はじめまして。
投稿読ませていただきました。
苦しい気持ちを抱えながらも、どうしたら現状を変えられるかと問題と向き合っている姿が頭に浮かんできました。
ご両親は、あなたが学校へ行けない日が続くと当然心配されると思います。計算しながら休んだらいいと言ってくださってるようなので、そうしながら進級・卒業していけるのならそれでなんの問題もないとは思います。ただ、この先欠席が増えていきそうまたは現に欠席がかさんでいるのなら、保護者にあなたが学校へ行けない理由を話して、あなたにとってこれからどうしていくのが1番いいのかを一緒になって考えてもらうのが良いのではないかと私は考えます。子どもが苦しんでいる時にサポートをするのは親としての務めですし、相談・協力を得ることは変なことではありませんからね。