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無気力症候群の原因と改善策とは?診断・チェックもあり

無気力症候群の原因と診断・臨床心理士が専門解説①

はじめまして!臨床心理士の兵働、精神保健福祉士の川島です。私たちは現在、こちらの初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

今回は「無気力症候群」についてお話していきます。目次は以下の通りです。

  • 無気力の4種類
  • 学習性無力感型
  • モラトリアム型
  • 精神疾患型
  • 体調不良型
  • 診断とチェック

各コーナーにはもっと深く知りたい!という方のためのリンクがあります。まずは全体を読んでみて、気になる場合はリンク先をクリックしてみてください(^^)それでは早速、無気力症候群の基礎から解説させて頂きます。

無気力症候群の4つの種類

実は同じ無気力に見えても、様々な種類があります。この点を誤ってしまうと、まったく間違った対処をしてしまうこともあるので注意しなくてはなりません。無気力になってしまう原因を大きく分けると、

① 学習性無力感型
② モラトリアム型
③ 精神疾患型
④ 体調不良型

これらの4つがあります。無気力はこれらの要因が複雑に絡まり合って発生する症状です。以下それぞれについて説明します。

①学習性無力感型

努力しても結果がでない、何をやっても無駄だ、という感覚がある方は、セリグマン(Martin E. P. Seligman)が提唱した「学習性無力感」にあてはまるかもしれません。

・育児疲れ
・過剰労働
・DV家庭

こんな状態の時に陥りやすいと言えます。挫折が続き、自信を喪失している場合は学習性無力感が強くなりやすくなります。完璧主義や失敗過敏がある方が陥りやすいと言えます。

・過度の目標設定が原因?
ミハイ・チクセントミハイは自分のスキルや作業の難易度によって、無気力になってしまうことを示唆しています。縦軸が「難易度」、横軸が「スキルの高さ」になります。以下の図を概観してみてください。

やや複雑な図ですが、無力感になりやすい方は「スキルが低い」にも関わらず、「難易度が高い」チャレンジする傾向があります。ある意味ですごく頑張り屋なので、結果が出ない状態が長く続き結果的にやる気を失ってしまうのです。

・失敗過敏に要注意
学習性無力感によくある心の問題として「失敗を過度に気にする」が挙げられます。これは、心理学では失敗過敏と呼ばれることがあり、メンタルへルスに悪影響を与えることが分かっています。

斎藤ら(2003)の研究では、大学生474を分析対象に、質問紙を使って失敗過敏とその他メンタルへルスの関連について調べたました。その結果が以下の図です。

このように、失敗過敏と「対人不安」「無力感」「問題回避」は正の相関があることが分かります。問題回避とは、問題が発生した時に、それを解決しよとせずに先延ばしたり、棚上げにして回避すること意味します。つまり、無気力で過度に失敗を気にすると、対人場面が嫌いになったり、無力感にさらされたり、先延ばしをしてしまうなどが考えられます。

ポイント
学習性無力感の特効薬は、小さな成功体験です。特に頑張り屋さんが高い目標設定をしすぎて、苦しむことが多いので、まずはスモールステップで少しずつ成功体験を積み重ねていくと良いでしょう。

改善方法「60%基準法」

この心理状態を緩和するには「ほどほど」という感覚を持つことが大切です。この感覚が身につくと無気力症候群の予防にもなります。ここでは具体的に「ほどほど」の感覚を得られる2つの考え方のコツをご紹介しましょう。

・60%基準とは
心理学的には所説ありますが、人間のモチベーションは達成可能性が60%程度だとモチベーションが高くなると言われています。すなわち10回やって成功する確率が6割ぐらいだとちょうどチャレンジしよう!といいう気持ちになるのですね。

2つ目の考え方のコツはコラム③でご紹介しています。

60%基準法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・目標が高すぎると…
・失敗回避→失敗OK
無気力症候群の原因に対処「失敗Ok!60%基準法」②

②モラトリアム型

目標を見失っている、何をすればいいのかわからない、成長している気がしない・・・こんな感覚がある方は、退屈型の無気力症候群になっているかもしれません。ミハイ・チクセントミハイの図をもう一度見てみましょう。

右下の「退屈」は、「スキルが高く」「難易度が低い」状態です。このゾーンは自分のエネルギーのぶつけ所がなく、つまらない、飽きた!という心理状態になりやすくなります。

・燃え尽き症候群
仕事や勉強、スポーツに対して一生懸命頑張ってきたけれど、期待した結果にならなかった場合に起こる無気力状態。介護や看護の仕事をしている人に多いと言われていましたが、ホテルなどの接客業や教師などの職業の人にもバーンアウトが生じます。症状の経過や状態によってはうつ病と診断されることもあります。

・スチューデント・アパシー
学生(特に大学生)に多くみられる無気力症状です。受験という大きな目標を達成した後、次の目標を見つけ出せずに、喪失感をのもと勉強に無関心になります。

・モラトリアム
モラトリアムとは、簡単に言えば目標を見失っていて、どこにエネルギーを向けていいのかわからないような状況です。アイデンティティ拡散という言葉を使うこともあります。

ポイント
退屈型の方は新たな目標を見つけることがカギとなります。元々能力が高い方が多いので一度目標を見つけると、びっくりするぐらい改善することもあります。少し大変ですが自分と向き合い、新しい行動をすることで充実した日々に戻ることができるでしょう。

改善方法「アイデンティティ確立」

無気力を克服するにはアイデンティティの確立が不可欠となります。アイデンティティとは「自分らしさ、自分なりの価値観」を意味します。中学生以降の思春期〜青年期の20歳前後に人は大人として成長する過程でアイデンティティを模索すると言われています。

「自分と人とは違う人間だ」と気づきそれを受け入れ、「自分はどのように人生を生きていくのだろう」と自分らしさを見つけていきます。

そして、「これこそが本当の自分の生きる道だ」という自分を発見し自我を定めることを「自我同一性(アイデンティティ)の確立」呼びます。

無気力症候群の特徴

みなさんは次の問いに対してどの程度答えることができますか?具体的に考えていきましょう。

「私は何者なのだろう?」
「私はどんな人生を歩みたいか?」
「私はどんな仕事がしたいのか?」
「私はどうして生きているのか?」

これらの問いに全く答えられない人は、アイデンティティが拡散している可能性があり、無気力になりやすいかもしれません。実はこうした問いの答えを明確にする方法があるのです。

アイデンティティを確立をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・質問法とは
・好奇心ツリー
無気力症候群の改善策!〇〇したい!を育てる‐アイデンティティ確立③

③精神疾患型

特に理由が無いのに絶望的にやる気がでない、生きる気力がない、ほとんど頭が働かない・・・これらにあてはまる方は精神疾患に分類される無気力に該当するかもしれません。

・うつ病
うつ病の症状の一つとして「無気力」が挙げられます。この場合の無気力は、日常生活全般に対する無気力、無関心で、「自分はダメな人間だ」という自責の念を感じやすく、ネガティブな悪循環を招いてしまいます。

・統合失調症
陰性症状として無気力になっているように見えることがあります。感情表現が乏しくなり、視線が合わない、表情が乏しいなどの症状が現れます。

ポイント
このように精神疾患の影響を受けている可能性がある場合は、いたずらに「やる気をだそう」と思ってもなかなかうまく行かないことが多いと言えます。生きる気力がない、体を動かすことすら億劫という状態になっている方は、精神科や心療内科を受診するようにしましょう。

心療内科・精神科での治療

精神疾患の治療を心療内科・精神科で受ける時は、大きく分けて「心理療法」と「薬物療法」の2つがあります。

1.心理療法
カウンセリングや教示を通して認知、情緒、行動などを変化させ、精神障害や心身症の治療、心理的な問題、不適応な行動などの解決の図ろうとする治療法です。

具体的な手法としては、「認知行動療法」「来談者中心法」「精神分析療法」「マインドフルネス心理療法」「ソーシャル・スキルス・トレーニング」などがあります。

薬物依存が起こらず、自分自身でストレスに対処できるコーピングスキルが向上します。また、悩みを作り出している問題を直接的に解決するため、人生の質も良くなると考えられます。選択の幅も広く、一度覚えれば、一生を使えるというのが大きな魅力です。

薬物療法についてはコラム④で詳しく解説していきます。

精神疾患型をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・心理療法のデメリット
・薬物療法の特徴
・精神科に行く基準
無気力症候群の原因「精神疾患型」④

無気力症候群の問題

④体調不良型

・やる気と脳内物質の関係
身体の不調、睡眠が不規則、食生活の乱れがあると無気力になりやすいと言われています。例えば、睡眠には様々な脳内物質を分泌する働きがあります。

その脳内物質の中には、やる気と関係が深い「セロトニン」「ドーパミン」「アドレナリン」などが含まれているため、睡眠不足や不規則な睡眠によってこれらの脳内物質があまり分泌されないと、日中にやる気が起きないというメカニズムができあがります。

・ジェームズ=ランゲ説とは
体と感情のメカニズムにはいくつかの説があります。そのうち、ジェームズ=ランゲ説は「身体の変化が感情を引き起こす」という説です。動悸がしたり食欲が落ちたりするなど、身体の反応が起きた結果、人は悲しいと感じるというメカニズムです。

平たく言うと、“体が訛っているから無気力なのだ”ということになります。ジェームズ=ランゲ説はやや強引な理論と感じた方も多いと思います。ただ、やはり体と心は連動しているので、私は参考にはなると考えています。もう少し実感しやすく説明しますと、

「体の調子が良く、食生活が安定、睡眠バッチリな時」
          ↕
「運動を全くしていない、睡眠時間ない、カップラーメンが3日連続続いた」

どちらが無気力な気持ちが大きくなりそうでしょうか。おそらく後者の体がだるい時でしょう。体と心は連動していますので、心のあり方だけでなく、体の面からのアプローチも一定程度有効であると考えるといいでしょう。

*自殺の理由

自殺の理由の1位は「健康問題」であることがわかっています。その中でも心理的な問題以外を理由に自殺する人も多く、体の不調は自殺率の理由の1位と言える状況になっています。体の不調が生きる気力を減退させていると言えるでしょう。

生活リズム改善!

・運動をすると抑うつのリスクが減る?
運動と抑うつの関係について、あるIT企業の社員を調査した研究があります。甲斐(2011)は、IT 関連企業 の従業員2952名に対して、余暇時間にどのくらいの運動をしているかで、1年後の抑うつのなりやすさを調査しました。

下の図を見てください。余暇時間に運動をする時間が1週間当たり「0分」の人たちを基準として、1週間に運動する時間が「135分未満の人たちと135分以上運動する人たち」とを比較しました。

無気力 対処法

その結果、135分以上運動している人たちに比べて、135分未満の人たちうつ病のなりやすさが2倍以上に上ることが分かりました。

この研究から、日々の生活の中に積極的に運動を取り入れることで、抑うつのリスクを減らすことができると考えられます。週に2時間以上、というとちょっと大変かもしれませんが、運動する習慣がメンタルの健康にもよい効果をもたらすのです。

生活リズムを整えるをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・ジェームズ・ランゲ説とは
・睡眠と無気力の関係
・日光を浴びる重要性
無気力症候群の改善方法「生活リズムを整える」⑤

専門機関を利用する

心理療法を独学で学ぶことに不安がある場合は、専門家の元でしっかり学ぶこともお勧めしています。 私たち臨床心理士・精神保健福祉士は、無気力の改善、やる気が持続する目標設定のコツ、対人不安の改善を目指し、心理学講座を開催しています。体系的に勉強されたい方のご参加をぜひお待ちしています。

執筆者も講師をしています(^^)
 ・やる気が持続する‐行動療法
 ・無気力とうまく付き合うマインドフルネス療法
 ・人生の目標とアイデンティティ
初学者向け心理学教教室を開催しています

無気力症候群簡易診断

定期的にこちらの無気力症候群診断で自己チェックしておくことをお勧めしています。客観的な状況を知りたい方はご活用ください。
無気力簡易診断とチェック⑥

無気力症候群コラム

ここまで、無気力症症候群になる原因と解決策をご紹介しました。次回は、無気力症候群を改善する1つ目の方法「失敗OK!60%基準法」についてご紹介します。お楽しみに!(もう少し下に次のコラムボタンがあります)

★ 診断・チェック!4つの改善策で無気力症候群を克服しよう

目次

①無気力症候群-概観
②「失敗Ok!60%基準法」
③「アイデンティティ確立」
④「心療内科・精神科」での治療
⑤「生活リズムを整える」
⑥無気力症候群簡易診断

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・桜井茂男・大谷住子 1995 完全主義は無気力を予測できるのか 奈良教育大学教育研究所紀要,31, 171–175.
・対人援助職従事者におけるバーンアウトと感情労働の関係性について 49 事例分析を通した検討
・ミハイ・チクセントミハイ著,今村浩明訳:フロー体験 喜びの現象学,新思索社,2000
・認知行動療法を学ぶ(下山晴彦編 金剛出版,2011)
・認知行動療法(坂野雄二 日本評論社,1995)
・よくわかる臨床心理学 山口 創著 川島書店
・自己志向的完全主義の特徴 : 精神的不健康に関する諸特性との関連から 2009 齋藤, 路子; 今野, 裕之; 沢崎, 達夫対人社会心理学研究. 9 P.91-P.100

・甲斐 裕子 永松 俊哉 山口 幸生  徳島 了 (2011)余暇身体活動および通勤時の歩行が勤労者の抑うつに及ぼす影響. 体力研究, 109, 1-8.