ポジティブシンキングになる方法
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。今回は「ポジティブシンキングになる方法」についてご相談を頂きました。
相談者
34歳 女性
お悩みの内容
私は昔からネガティブな性格でした。
チャレンジをすると失敗すると考える
恋愛ではいつもフラれると考える
将来のことを考えると落ち込む
何をやるにしても、先にネガティブ思考が来てしまうので、前向きな行動ができません。ポジティブシンキングを増やすにはどうすればいいでしょうか。
何をするにもネガティブに考えてしまうと、消極的になってしまいますよね。当コラムでは、ポジティブシンキングになるための手法を紹介させて頂きます。是非最後までご一読ください。
5つのポイント
セリグマンとポジティブ心理学
心理学の世界では、1998年にある転機が訪れました。それは、アメリカ心理学会の会長であるセリグマンが「ポジティブ心理学」という分野を提唱したことです。[1]
セリグマンは、マイナス面の改善に焦点を充てた心理学から、ポジティブ心理学を21世紀のテーマにしようと宣言したのです。
それまでの心理学は、不安や恐怖などのマイナス感情に焦点をあてた研究が大半を占めていました。それだけでなく、幸福感、自己肯定感に焦点をあていこうとするのが、ポジティブ心理学の基本的な考え方になります。
こちらはセリグマン先生の動画です。お時間がある方はご覧ください♪
5つの柱
当コラムに訪れた方は、ポジティブ心理学を「前向き・楽観的に考える方法」とイメージされたかもしれませんが、それだけではありません。
セリグマンは2011年、ポジティブ心理学の基本的な柱として以下の5点を挙げています。[2]
①ポジティブな感情が豊富 positive emotion
②没頭できるものがある engagement
③前向きな人間関係 positive relationship
④人生に意味を見出す meaning
⑤達成感のある生活 achievement
一時的なポジティブシンキングの獲得だけではなく、本人が満足して幸せに生きていくための「主観的幸福感」を増やしていくことを目的としているのが、ポジティブ心理学なのです。
当コラムでは、上記の5点に合わせ、生き方の改善を含めた方法も提案させて頂きます。ご自身の生活に活かせそうなものがありましたら活用してみてください。
①ポジティブな感情
ポジティブな感情は、「楽しい」「嬉しい」「幸福」といった感情です。当たり前ですが、これらの感情があるからこそ人生は生きがいのあるものになります。
楽しい活動を増やす
まずは単純に、ポジティブ感情を持てる活動を増やしてみましょう。
趣味の時間をとる
楽しそうなイベントに行く
好きなお茶を飲む
いい香りの入浴剤を入れて湯船に浸かる
趣味を楽しんだり、リラックスしてゆったり心地いい感覚を味わったり、自分が「楽しい」「幸せ」と思える活動を大事にしましょう。
前向きに考える
ポジティブ感情を増やすには、前向きな考え方も必要になります。例えば、失敗や挫折をしたときに以下のように考えるといいかもしれません。
失敗から学ぶことはあるか?
実は成長している点があるのでは?
実はチャンスなのではないか?
本当に深刻な状況よりはマシなのでは?
2020年以降、コロナショックで大変な世の中でした。一方で、こういった大変な時代には必ずと言っていいほど、力を伸ばす人も出てきます。ある飲食店は、お客さんが来ないことがわかるや否や、ミシンを3台購入し、自作のマスク製造工場を作成したのです。皆が落ち込んでいる時に、自分にできることは何かを考え、行動していたのです。発想が柔軟ですよね。
ポジティブに考える引き出しを増やす練習法として、リフレーミングが挙げられます。リフレーミングでは、1つの出来事に対して、様々な角度から考える訓練をしていきます。詳しくは下記のコラムを参考にしてみてください。
②没頭できるものがある
セリグマンは没頭できるものを持つことが大事であると強調しています。心理学の世界では「没頭している状態」を「フロー状態」と呼ぶことがあります。フロー状態に入るための条件は2つあります。
1:手ごたえのある課題に取り組む
2:自分の能力を充分発揮している
集中力は、課題が簡単すぎても難しすぎても低下してしまいます。自分にとってちょうどよい課題を設定し、取り組んでいくことが大事なのです。
もしあなたがフロー状態に入ることができたら、きっと日々の生活は充実するでしょう。以下の図はカルフォルニア大学のナタリー先生の研究結果[3]です。
フロー状態と希望が正の相関関係にあることがわかります。フロー状態になると、
努力することが苦にならない
1日が楽しくてあっという間に過ぎていく
ワクワクした時間が多い
やる気に満ちて取り組んでいる
という感覚が増していくのです。
没頭できるものがない…という方は下記のコラムを参考にしてみてください。フロー心理学の活かし方をしっかり解説しています。
③前向きな人間関係
心理学の研究では、人間関係が充実している人ほど、幸福感が高い、抑うつ感が少ない、認知症になりにくい、という特徴があることが分かっています。当コラムでは前向きな人間関係のためできることとして、3つ提案させて頂きます。
感謝の気持ちを持つ
感謝の気持ちを持つよう心がけると、相手への肯定的な感情が増し、人間関係も円滑になります。
また、最近の生物学の研究では、協調性や感謝の気持ちを持つと、「オキシトシン」という脳内物質が出ることがわかっています。オキシトシンは別名幸福ホルモンと言われ、免疫力の向上や、肯定的な気持ちを増やすことがわかっています。
感謝の気持ちが少ないな…という方は下記のコラムを参考にしてみてください。
人を好きになる
人を好きになりやすい方は、相手の発言に肯定的で、人間関係を楽しく築くことができます。そうした楽しい感情が土台となり、ポジティブな感情が増えていくのです。
「警戒心を持ちやすく、人間関係でネガティブになりやすい」と感じる方は、人を好きになる心を育んでいくことをおすすめします。
あてはまると感じる方は、以下のコラムを参照ください。人が嫌いな心理を改善するコツを解説しています。
会話力をつける
暖かい人間関係を築くことができる方は、会話を楽しむ会話力があります。とりとめもない暖かい会話が苦手…という方は、筆者が主催する人間関係講座に是非いらっしゃってください。
会話力を基礎からしっかりトレーニングしていくことができます。
④人生に意味を見出す
4つ目は人生に意味を見出すということです。人生に目的を持つことは、アイデンティティの分野で盛んに研究されています。アイデンティティが確立している状態とは、
人生の目的とはなにか?
自分とは何者か?
どんな仕事が向いているか?
これらが定まっている状態です。アイデンティティが確立されている人は充実感が高く、活き活きと生活していることがわかっています。
やりたいことがない、目的がない、という方は以下のコラムを参考にしてみてください。
⑤達成感のある生活
最後は達成感になります。
やりたいことを見つける
私たちは、チャレンジをして成功体験を積み重ねることで、自分に自信を持ち、この世の中を主体的に生きていけると確信することができます。
一方で達成感を獲得するには、まずはそもそもの目標を設定しなくてはなりません。この目標がなかなか見つけられない方もいます。もしやりたいことが見つからないと感じたら以下のコラムを参照ください。
行動する
目標が定まってきたら、積極的に行動することも大事になります。この時、いきなり大きな成果を求めると、失敗ばかりが増えてしまいます。結果が出やすくするためには、スモールステップで進める、不安とうまく付き合うなどが大事になってきます。詳しくは以下のコラムを参照ください。
ポジティブ思考と研究
ポジティブシンキングについては、近年様々な研究が盛んです。それぞれ折りたたんで記載したので、興味がある項目を展開してみてください。
榊(2005)[4]は、大学生を対象に、ポジティブな記憶を思い出すとどのように気分が変化するか研究を行いました。実験は以下の手順で行われました(簡易的に改変しています)。
①6分間、火垂るの墓の映像を見て、まずは悲しい気持ちになる
②ポジティブな記憶を5つ思い出してもらう
③思い出した記憶はどれぐらい重要なポジティブか答える
④気分が変化したかを測る
その結果が下記のグラフです。
グラフを見ると、ポジティブな気分とポジティブ記憶の重要度にプラスの関係があることが分かります。両者の間には0.3程度の相関があり、重要度の高いポジティブな記憶を思い起こすほど、気分がポジティブに変化することが示されています。
デボラターナー(2001)[5]は、女性修道師180名を対象に、寿命調査を行いました。やり方はユニークで、まずは、本人の過去の手記(平均年齢22才時)が分析されました。
ポジティブな手記を書く人もいれば、ネガティブな手記を書く人もいたようです。その後、60年後の当人の健康状態を比較しました。
研究の結果の一部を以下に図示しました。
その結果、肯定的な感情が多いポジティブシンキングを大事にしていた女性修道師のほうが生存率は高く、10年以上長生きしていたことが分かりました。
10年とはすごいですよね!健康というと、運動や食べ物に気を遣いがちですが、前向きに考えるという事は非常に大事であることがわかります。
高橋・森本(2012)[6]は、都内大学生234名を対象にポジティブシンキングが心理的にどのような影響があるかを調査しました。
下図を見るとわかるように、自分のポジティブな面を見つけると、幸福感が増大する傾向があることがわかりました。
また、ネガティブシンキングも減ることが統計的に明らかになりました。日々の生活のなかで、前向きに考えることが人生を幸福に生きる上で重要であると言えます。
高橋・森本(2012)[6]は、都内大学生234名を対象にポジティブシンキングが心理的にどのような影響があるかを調査しました。
下図を見ると、他人のポジティブに注目することが、幸福感を向上させていることが分かります。つまり、他人のよいところに目を向けるほど、幸福を感じやすいと言えるのです。
さらに他人に対するポジティブシンキングは、ネガティブな気持ちを減らすことが分かりました。以下の図をご覧ください。
相手の良い部分に目を向けることは、自分のマイナスな思考を軽減させてくれるのですね。また、他人のポジティブな側面に注目することは、他人を軽視する傾向も減らしてくれることが分かっています。
日常的に周りの良い面に気づく人は、相手を軽蔑しない傾向にあると言えます。
こちらは、国の統計(我が国と諸外国の若者の意識に関する調査)[7]から引用した図です。「友人の数」と「将来への希望」を分析したものです。友人が多いほど将来に希望を持っていることが分かります。
友人の数が多い人は、ポジティブシンキングでき、将来を肯定的にとらえていると推測されます。逆にポジティブシンキングができない人は、周りの人間関係に恵まれていないのかもしれません。
ストレスを抱えると表情が暗くなりがちになり、周囲が近づきにくい雰囲気を作ってしまいます。結果的に人間関係がうまくいかなくなり、さらにストレスを抱えてしまうこともあります。
このような状態が続く事は過度なストレスとなり、心身のバランスを崩すことにもつながり、うつなどの精神疾患を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
まとめ
紹介した研究のように、ポジティブシンキングはメンタルヘルスに前向きな影響があることが分かっています。
過剰なポジティブを追い求める必要はないですが、ぜひ健康的に前向きに考える姿勢を高めてほしいなと思います。皆さんが、日々の喜びをたくさん感じて生活することを切に願っています。
心理学講座のお知らせ
公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でポジティブシンキングの基礎を固めたい方は、私たちが開催している心理学講座をオススメしています。講座では
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心に届きませんでした。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1]Seligman, M .E.P(1998). Building human strengths :Psychology’s forgottenmission .APA Monitor, 29,January[2]Seligman, M. E. P. (2011). Flourish: A visionary new understanding of happiness and well-being. Free Press.[3]Faria, N. (2017). Positive Psychology and Student Success : How Flow , Mindfulness , and Hope are Related to Happiness , Relationships , and GPA.[4]榊美知子(2005).感情制御を促進する自伝的記憶の性質 心理学研究 76 巻 (2005-2006) 2 号[5]Danner, D. D., Snowdon, D. A., & Friesen, W. V. (2001). Positive emotions in early life and longevity: Findings from the nun study. Journal of Personality and Social Psychology, 80(5), 804–813.[6]高橋誠,森本哲介(2012).ポジティブ側面への積極的注目に関する研究 : ポジティブ志向,主観的幸福感,ネガティブ認知,他者軽視との関連 東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科 学校教育学研究論集(26): 29-39[7]内閣府(2014).平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 生活環境と個性が友人数に与える影響
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