承認欲求が強い人の特徴,なくす方法
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。今回は「承認欲求をなくす方法」についてご相談を頂きました。
相談者
28歳 女性
お悩みの内容
私の家庭は厳格で、親からは否定されて育ってきました。そのせいか承認欲求が強いと感じています。
実は、3年前ぐらいからSNSへの投稿をはじめ、言ったカフェなどをアップすると、イイネをたくさんもらい、それ以来SNSにアップをすることが楽しくなってしまいました。
自分でも病的と感じるのが、SNSでイイネをもらうために、高いレストランに行ったりすることです。書き込みで承認欲求が強い女だな…と書かれていてショックを受けています。
過剰な承認欲求をなくす方法を知りたいです。私はどうすればいいのでしょうか。
承認欲求が大きくなり悩んでいらっしゃるのですね。承認欲求自体は、自然な感情なのである程度あるのは健康的な証拠です。
一方で、承認欲求が過剰ですと、自分を大きく見せるようとしてしまい、疲れてしまう方が多いです。当コラムでは承認欲求の理解と対策をお伝えします。参考にしてみてください。
承認欲求とは何か
承認欲求の意味とは?
承認欲求は心理学辞典(1999)で以下のように定義されています。
自分の存在を認めてもらいたい、
自分の考え方を受け入れてもらいたい
という欲求
おそらくこのような欲求は誰でも感じたことがあると思います。承認欲求は極めて自然な感情です。
例えば
お互いを認め合う職場
お互いを貶し合う職場
どちらに勤めたいかは言うまでもありません。
メリット
承認欲求を健康的な範囲で持つことができると、
・人前に立つなど積極的になれる
・自分の考えを発信できる
・周りの反応を見極めることができる
などのメリットがあります。承認欲求があるからこそ私たちは積極的な行動をしたり、社会に発信するモチベーションが生まれてくるのです。
デメリット
一方で、承認欲求が過剰になっている方は、欲求が満たされないときに、一時しのぎの行動をしようとします。例えば、
・SNSで投稿するために、
必要のないものを購入する
・高価な贈り物をして
相手を独占しようとする
・キャバクラやホストクラブに行ってしまい、
一時の承認欲求を満たす
このような行動は一瞬だけ満たされる承認欲求であり、後悔することが多くなります。注意しましょう。
承認欲求が強い人の特徴
筆者の川島カウンセリングを行ってきた中で、承認欲求が強い人には以下の4つの特徴があると感じています。
基本的な生活基盤はある
承認欲求はアメリカの心理学者マズローが提唱したマズローの欲求5段階仮説により有名になりました。
この仮説は人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するとされる有名な理論です。
以下の図を見てもわかるように、承認欲求は高度な欲求であることがわかります。
現代社会では、生理的欲求、安全欲求は比較的満たされていることが多いです。実際、カウンセリングをしていますと、承認欲求が強い方は、収入もそれなりにあり、安全な暮らしをしている方が多いです。
不安が強い傾向がある
承認欲求が強い人は、不安感が強いことがわかっています。石井は(2017)中高生623名を対象に承認欲求とストレス反応の関連について調べました。その結果の一部が下図となります。
この図からわかるように、承認欲求が強い人は、抑うつ感や不安が高いという特徴があることがわかりました。
承認欲求が強い人は、不安で落ち着かないため、周りから良い反応をもらって、安心したいと感じていると推測できます。
自己像が不安定
承認欲求が強い方は、自分の軸が定まっておらず、周りの評価に合わせて演じようとしてしまいます。小塩 (2001)は青年の心理について調査を行いました。研究結果の一部を下図に作成しました。
注目されたい!賞賛されたい!と感じる人は、周りが求める人を演じるため、自分がどんな人間なのか不安定になり、結果的に自尊心が上下しやすくなると言えます。
不安定な家庭環境だった
承認欲求が強い人の中には、家庭環境の不和がある方がいます。特に親のしつけが厳しかったり、ネグレクトを受けていたり、充分愛情をもらっていない場合に、漠然とした不安感を抱えてる方がいます。
そのため、絶えず他人の気を引こうと焦ってしまう部分もあると考えられます。
過剰な承認欲求への対処法
ここまで承認欲求について、メリットとデメリットの理解を進めてきました。ここからは過剰な承認欲求をなくす4つの方法を提案させて頂きます。
・自己承認力をつける
・内発的動機を高める
・肯定的コミュニティに所属
・限界設定をする
①自己承認力をつける
承認には、他者承認、自己承認の2種類があります。他者承認とは人からもらう承認で、不安定であることをお伝えしてきました。
これに対して自己承認は、「自分で自分を承認していく」行為になります。自己承認はいつでもできるので、とても安定しています。
自分のことを認める感覚が不足している…と感じる方は以下の折り畳みを展開してみてください。
自己承認をする時にNGなのは、条件をつけることです。例えば
イイネをもらえた自分を褒める
評価が高い会社に入ったから自分を褒める
営業成績がよかったから褒める
などが挙げられます。このような褒め方は、結果が出ないときに自分を認められないので不安定になりがちです。
これに対して無条件に自己承認ができると精神的に安定しやすくなります。例えば
勉強したのにテストで50点だった
⇒勉強した分は無駄にはならない。よく頑張った!
失恋した
⇒告白できた自分は勇気がある証拠!えらいぞ!
会議でうまく発言できなかった
⇒失敗するのも自分らしさ。幸せになれないわけではない。
このように、自己承認に条件をつけないようにするのがコツです。日常生活は、いいことばかりじゃないですよね。なかなか結果が出ない時、うまくいかないときも多いものです。
そしていつも頑張り続けるのも辛い時もあります。そんなときは自分自身をいたわる習慣をつけるようにしましょう。
条件付き、無条件の褒め方について理解を深めたい方はこちらのストロークコラムを参考にしてみてください。
②内発的動機を増やす
心理学の理論では、人間が行動するときは、「外発的動機」「内発的動機」の2つがあると言われています。
外発的動機
人に認められたいから行動する
親に褒められたいから行動する
異性にモテたいから行動する
社会的に評価が高いから
というような他人のコントロール下にある動機
承認欲求に近い意味があります
内発的動機
とても面白いと思うからチャレンジする
自分自身がやりたいと感じるから
時間を忘れてハマれるから
自分が楽しいから行動する
このように自分自身の気持ちをベースにした動機を意味します。承認欲求を減らすには、外発的動機ではなく、内発的動機を高めて行くことが大事になります。
自分がどうしたいか?を増やしていくと、他人の評価に振り回されることが減っていくでしょう。具体的には以下を参考にしてみてください。
・SNSで“いいね”が欲しいから海外旅行に行く
⇒本音:本当は国内旅行がすき
⇒変化:国内旅行を楽しむ
・賢いと思われたいからTOICEで高得点を目指す
⇒本音:本当は英語よりも中国語を習いたい
⇒変化:中国語の勉強をはじめる
・親を安心させるため大手の安定した会社に入った
⇒本音:本当は小さいけどゲームの会社に入りたかった
⇒変化:思い切って転職を視野に入れる
③肯定的コミュニティに所属する
内発的動機、自己承認力は、自分自身の中で承認欲求を満たしていくやり方です。
一方で、人間はそこまでストイックな生き物ではありません。やはり周りから暖かい言葉かけをもらうことも現実として大事になってきます。
自分のやりたいことを追求しつつも、日常生活でくったくのない会話をしながら、お互い認め合っていく環境はとても大事です。
過剰にならない程度であれば、暖かいコミュニティに所属して、他者から承認をもらうことは自然なことです。内発的動機、自己承認をベースにしつつも、たまには甘えるぐらいの気持ちがちょうどいいでしょう。
お互いを承認する関係が少ない…という方は下記のコラムを参照ください。
④限界設定を大事に
承認欲求は、人間の基本的な欲求で、中毒性がある欲求です。どこかで歯止めを利かせることが大事です。心理療法の世界では「限界設定」という言葉を使うことがあります。
限界設定とは、ここまではOKだけど、これ以上はだめ!という境界をしっかり区切ることを意味します。承認欲求を例にすると、
・SNSのイイネを確認するには1日1回
・メールは1日3回まで
・10人中10人好かれようと思わない
2人ぐらい好きになってくれれば充分
など数字などを使うと有効です。参考にしてみてください。
まとめ
最後に私の体験談をお話させて頂きます。私は数年前からYOUTUBEチャンネルを開設しています。いくら投稿しても100人ぐらいしかチャンネル登録がありませんでした。
どうにかチャンネル登録を伸ばそうともがく日々…コメント欄に批判があるとすごく落ち込みました、登録者数が伸びないと辛くて仕方がありません…だんだん投稿につかれるようになりました。。
承認欲求はうまくコントロールできないと、強迫的になってしまうことも分かっています。承認欲求はもろ刃の剣で、自分を苦しめる感情でもあるのです。
近年では有名人がSNSで悪口を言われたために自殺をするという事件も起こったりしています。この背景には承認欲求のマイナス面が実は隠れています。
その後、私が取り組んだことは、数字にとらわれず、好きなことを上げていくことでした。もちろんある程度数字にはこだわりますが、それ以上に自分の気持ちも大事にするようにしました。
継続投稿を続けた今は3500人ぐらいまで増えてくれています。数字を追いかけていた当時よりも登録が増えたことはとても不思議でした。
皆さんも承認欲求を健康的に活かして、行動のエネルギーにすると共に、過剰にならないように注意してみてください♪
筆者のチャンネルはこちら
お知らせと発展編
公認心理師の元でメンタルヘルスを安定させたい方は、私たちが開催している心理学講座をオススメしています。講座では
・無条件の自己承認練習
・肯定的コミュニティへの所属
・自己肯定感を向上させるワーク
・性格診断で自己理解を深める
など練習していきます。興味がある方は下記のお知らせをクリックして頂けると幸いです。たくさんの仲間もできますよ♪是非お待ちしています。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
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*出典・参考文献
石井麻美子, 荻田純久, & 善明宣夫. (2017). 中学生・高校生を対象とした過剰適応に関する研究: 承認欲求とストレス反応の関係から. 教職教育研究: 教職教育研究センター紀要, (22), 101-110.
上村有平. (2007). 青年期後期における自己受容と他者受容の関連: 個人志向性・社会志向性を指標として. 発達心理学研究, 18(2), 132-138.
廣瀬清人, 菱沼典子, & 印東桂子. (2009). マズローの基本的欲求の階層図への原典からの新解釈.