仕事でやる気がでない3大原因を解説,病気の可能性も
みなさんこんにちは。公認心理師の川島達史です。私は現在、初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。
今回のお悩み相談
「仕事でやる気がでない」
相談者
30歳 男性 会社員
お悩みの内容
私は現在、大手の金融系の会社で事務職として働いています。安定していて社会的にも評価の高い会社なのですが、ここ半年、急に仕事が嫌になってきました。
なんというか大事な人生を無駄にしている感じです。
最近はほとんどやる気が出なくなり、会社に行きたくありません。不眠で食欲もなくなってきています。どうすればいいでしょうか。
仕事でやる気が出ないのですね。特に食欲がないという面が心配です。仕事は人生の時間の三分の1を締めると言われています。
当コラムではやる気がでないときの重要な論点と、改善策を提案させて頂きます。ご自身に合いそうなものを日々の生活の中に取り入れてみてください。
やる気がでないのはなぜ?
誤った対処の危険性
私たちが仕事でやる気が出ない理由には、さまざまな原因があります。誤った判断をしてしまうと、さらに悪化してしまう可能性があります。まずは原因から慎重に検討することが必要です。
そこで当コラムでは、心理学、精神医学の観点からやる気が出ない状態「無気力」を分類し、適切な対策を解説していきます。
まずは全体を読んでみて、ご自身の当てはまる箇所について熟読をお願いします。
やる気がでない3大原因
仕事でやる気が出ない原因には、大きく分けて3つあります。
① 過剰タスク型
② モラトリアム型
③ 精神疾患型
これらが複雑に絡み合うことでやる気が出ない状態が発生します。当コラムでは、それぞれの原因と対処法を解説していきます。
①過剰タスク型
まずは簡易診断!
以下に当てはまる項目はありますか?チェックしてみてください。
長期間ストレスにさらされている (長時間残業,パワハラ,クレーム処理) |
挫折や失敗が続いている |
仕事などで自分の裁量がない |
拘束感,自由を失っている感覚がある |
当てはまる項目が複数ある場合は、過剰タスク型のやる気が出ない状態になります。
過剰タスク型は、何をやっても無駄だという心理状況です。心理学では「学習性無力感」と呼ぶこともあり、失敗や挫折が続いたことで自信を喪失してしまったことが引き金となっています。
学習性無力感とは
ミハイ・チクセントミハイは自分のスキルや作業の難易度によって、無気力になってしまうことを示唆しています。
縦軸「難易度」
横軸「スキルの高さ」
になります。以下の図を概観してみてください。
やや複雑な図ですが、やる気が出ない状況は
「難易度が高い」
「乗り越えるスキルが低い」
場合によく見られます。
過剰タスク型と改善策
ここでは、過剰タスク型の改善策を解説します。まずはコラム全体を読んだ後に展開をしてください。そして自分に当てはまる改善策があれば、試してください。
① タスクの整理整頓
「何から手を付けていいのかわからない…」という方は、タスクを減らし優先順位を決めてから作業することをオススメします。
過剰タスク型の方は、いろいろな事に手を出しすぎて、やりくりが上手くいかなくなっているケースが多いです。まずは手元のタスクの整理整頓をして、ひとつひとつ進めていくといいでしょう。
タスクの中にはできない事もあります。できる事とできない事を明確にしてから優先順位を決め、作業を進めていきましょう。何から手を付けていいのかわからない…という方は、以下のコラムも参考にしてください。
② 断る習慣を身につける
「頼まれると断れなくて…」という方は、断る習慣を身につけることをオススメします。
過剰タスク型の方は、人から依頼された作業を断れず抱え込んでしまう傾向にあります。タスクに追われすぎてしまった結果、本来のパフォーマンスができなくなってしまうのです。
仕事の抱え込みすぎは、自分にも相手にもプラスの結果とはならないことが多いです。仕事量が多いな…と感じた時には、断ることも必要です。頼まれごとを断るのは苦手…という方は、以下のコラムも参考にしてください。
③ 環境を変える
パワハラ、仕事の相性が悪いなど、自分ではどうしようもない環境にある場合は、限界を見極め、環境を変えるのも1つの手段です。
例えば、仕事はあくまで、幸せになるためにするものです。もし仕事が自分自身を苦しめているのなら、なんのために働いているのか、本末転倒になってしまいます。
本当に努力をして、それでもダメな場合は、自分の中で環境を変える線引きも考えておきましょう。詳しくはこちらの限界設定コラムを参照ください。
④ 身体を労ろう
「身体の不調がづついている…」という方は、過剰なタスクで心身共に頑張りすぎている可能性があります。
過剰タスク型の方は、不眠や身体のだるさ、腰痛、頭痛など体の不調を抱えている事があります。身体の不調は、心の健康にも悪影響を与えます。
無理をせず、自分の心と体をいたわってあげましょう。体調がすぐれない…という場合は、以下のコラムを参考にしてみてください。
モラトリアム型
まずは簡易診断
まずは以下の項目にあてはまるか検討してみてください。
仕事が簡単すぎて成長していないと感じる |
先が見えてしまっている |
力を発揮している感じがしない |
退屈な仕事が続く |
当てはまる項目が複数ある場合は、モラトリアム型のやる気が出ない状態になります。
モラトリアム型は、目標を見失っている状態です。余力があるにも関わらずぶつけるところが無いため、無気力になってしまうのです。
モラトリアム型とは
ミハイ・チクセントミハイの図をもう一度見てみましょう。
右下の「退屈」は、「スキルが高く」「難易度が低い」状態です。このゾーンは、つまらない、飽きた!という心理状態になりやすくなります。
改善策
モラトリアム型を改善するカギは、新たな目標です。成長につながる目標が見つかれば、驚くような改善をしてくれることもあります。
自分と向き合いながら新たな事にチャレンジすることで、やる気がない状態からの改善が目指せると思います。
まずはコラム全体を読んだ後に展開をしてください。そして自分に当てはまる改善策があれば、試してください。
① フロー状態を目指す
モラトリアム型の方の最大の課題は、新しく打ち込む仕事を探していくという点にあります。打ち込むものを見つけると、心理学的に、ゾーンに入る、フロー状態になると言われています。
目標を見つけたい、日々を充実させたいという方はこちらのフロー状態,心理学コラムを参考にしてみてください。
② 責任のある仕事をもらう
モラトリアム型の状態は、責任がない仕事や自分が思ったように仕事なできないと、やる気が出ない状況になりやすいです。責任が伴う少し高度な仕事を任せてもらえるよう、会社に志願してみるのもいいかもしれません。
モラトリアム型の方は、もともと高い能力を持っている方が多い傾向にあります。チャレンジ精神を大切に行動してみましょう。
③ 企画をして提案をしてみる
モラトリアム型の方は、指示された仕事ばかりが続くと、やる気が出ない状況になりやすいです。
モラトリアム型の方は、もともと高い能力を持っている人が多い傾向にあります。思い切って新たな事にチャレンジして目標を見つけるのもいいでしょう。
企画を提案したり、社内で新たな仕事を作っていくのもいいかもしれません。仕事は成功するか失敗するか分からないくらいの方が面白みがあるかもしれませんよ。
④ 転職,副業も視野に
「職場ではチャレンジさせてくれない…」という場合は、転職や視野にいれてもいいでしょう。
チャレンジする気持ちを実現できる環境が職場に無い場合には、思い切って新たな職場を探ってみるのもひとつの方法です。また副業で自分の新たな目標を見つけていくのもいいでしょう。
SNSやYouTubeなど、自分の力を発信する方法はさまざまあります。やってみたい気持ちを大切にできることからはじめてみましょう。
精神疾患型
3つ目にあげられるのが精神疾患型です。まずは以下の項目にあてはまるか検討してみてください。
自分なんていなくなっても良いと思う |
ぼうっとしてしまい難しいことを考えられない |
若い時は元気だったが、高齢になり無気力になった |
普段は平気だが、仕事にいくと極端に無気力になる |
このような感覚がある方は、精神疾患型のやる気が出ない状況の可能性があります。
うつ病
うつ病の症状の一つとして「無気力症状」が挙げられます。
無気力症状は、日常生活全般に対してやる気が起きなくなる状態です。身体と心が鉛のように重く感じられ動くことができません。
やらなきゃいけない…と分かっていても動けないため、自分は無価値な人間だと感じてしまいます。
適応障害
絶望的な虚無感からやる気が出ない状態が続く場合は「適応障害」と診断されることがあります。適応障害は、仕事での挫折やパワハラ、失恋や家族の死別などがあった時に起きやすいです。
過剰タスク型で強く症状が出るときに当てはまることがあります。
適応障害
統合失調症
統合失調症は考えや気持ちがまとまらなくなる心の病気です。陰性症状としてやる気が出ないように見えることがあります。感情表現がなくなり、目を合わせない、無表情といった症状が発生します。10代,20代の方によく見られます。
認知症
高齢になると脳機能が低下することで、積極的だった人が急にやる気がなくなることがあります。
改善策
うつ病、適応障害、統合失調症、などに当てはまる可能性を感じた方は、心療内科か精神科を利用するのが基本となります。
以下動画で解説をしました。上記の精神疾患にあてはまる方は参考にしてみてください。
下記の動画で心療内科、精神科、心理療法の基本的な知識を抑えましょう。
まとめとお知らせ
まとめ
最後に私なりに仕事でやる気が出ない時の過ごし方をお伝えします。私は、やる気が出ないときは、出ないなりの過ごし方をしています。
良くやるのは、PC上のフォルダの整理や事務所の掃除です。特に私はなぜかトイレ掃除をすると気持ちが整理されます。新しい洗剤を買って、ブラシを買いに行き、しっかり洗うとなぜか気持ちがすっきりします。
少し心がほぐれたら、当コラムにあるように、具体的な対策をとるようにしています。皆さんが心の整理をして、充実した日々を過ごされることを心から願っています。
お知らせ
最後にお知らせがあります。私たち公認心理師・精神保健福祉士は、メンタルヘルスの向上について心理学講座を開催しています。
心理学を体系的に勉強されたい方のご参加をぜひお待ちしています。
執筆者も講師をしています(^^)
・やる気が戻るフロー心理学
・落ち込みやすい心理を改善
・ビジネスコミュニケーションの基礎
・暖かい人間関係を築く練習
この機会に心理学をしっかり学んでみたい!という方におすすめです。詳しくは下記の看板からお待ちしています。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
Twitter→
*出典・参考文献
・ミハイ・チクセントミハイ(2000)フロー体験 喜びの現象学
・対人援助職従事者におけるバーンアウトと感情労働の関係性について 49 事例分析を通した検討
・桜井茂男・大谷住子 完全主義は無気力を予測できるのか 奈良教育大学教育研究所紀要 1995,31, 171–175.
・認知行動療法を学ぶ(2011,下山晴彦編 金剛出版)
・認知行動療法(1995,坂野雄二 日本評論社)
・川島書店 山口 創著 よくわかる臨床心理学