慰める方法や言葉のかけ方,例文,意味
みなさんこんにちは!公認心理師の川島です。私は現在こちらのコミュニケーション講座の講師をしています。
当コラムのテーマは
「慰める方法」
です。
はじめに
・友達が受験に失敗して落ち込んでいる
・失恋をした友人が自暴自棄になっている
・夫がリストラに合い精神的に落ち込んでいる
こんな時に、慰める方法がよくわからない方もいると思います。この点、私たち心理職は様々な方からお悩みの相談を頂きます。
お悩みを受けるとき、心の整理のお手伝いをさせて頂くのですが、その際に慰める方法を持っていないとプロとして失格になります。
そこで、当コラムでは私たちが日々、心がけていることを一般の方向けにお伝えしたいと思います。目次は以下の通りです。
・慰める意味とは
・どのような効果があるのか
・6つの慰める方法
是非ご活用ください。
慰めるの意味とは
慰めるという行為は、心理学の世界ではソーシャルサポートという分野で、研究されてきました。まずはソーシャルサポートの定義について見ていきましょう。
家族、友人や隣人などの個人をとりまく様々な人々からの無形、有形の援助を指す(Caplan,1974)
私たちは、困った時はお互い様の精神で、時に話を聴いたり、時に相手が喜びそうな贈り物をすることで、お互い助け合ってきました。
慰める‐心理的効果
ソーシャルサポートには実に様々な心理的、身体的な効果があります。たくさんあるので、折りたたんで掲載しました。興味があるタイトルは展開してみてください。
私たちは人から慰められると自信が回復していきます。
慰める意味に近い、褒められ体験に関する研究を1つ紹介します。浅沼ら(2018)は大学生249名を対象にほめられ経験の効果を調査しました。その結果は下図に示されています。
上記の図は「効果量」と言われる統計手法で算出された数字です。
能力をほめるとは、
「君はセンスがあるね」
「才能があるね」
など、元々持っている部分を肯定することを意味します。
努力をほめるとは、
「毎日頑張っているね」
「真剣に取り組んだね」
など結果ではなく、本人の頑張り屋、取り組む姿勢を肯定します。努力を褒めることも、能力を褒めることも効果があることがわかります。
相手が落ち込んでいるときは相手の努力や能力をしっかり認めていく必要があると推測されます。
慰めされると自己肯定感があがることも分かっています。
細田ら(2009)は、中学生305名を対象に「3つのソーシャルサポートと自己肯定感の関係」について調査を行いました。調査したソーシャルサポートは以下の3つです、
1.道具的サポート
住まいや携帯など必要な物を支援する
2.情緒的サポート
慰める、励ます、応援するなど気持ちの面を支援
3.共行動サポート
ノウハウを教えるなどの知識面で支援する
研究結果は以下となります。
この図の数字は相関係数といい、数値が大きいほど関係が強いことを示しています。図の中から、数字が大きいものを探してみてください。
父親、母親、友人、教師のいずれも、情緒的なサポートが自己肯定感を強めている傾向がわかります。
私たちはお互いを慰め合うことで、心の安定を得ていると言ってよさそうです。
大坪(2017)は、大学生254名に対して「ソーシャルサポートと心理的な関係」について調査を行いました。サポートを受けやすい方は
①疲労感
②自立神経症状
が少なくなることがわかりました。下記の図は友人のサポートと上記の2つの項目を表したものです。
このように、友人からのサポートを受けやすい人は、疲れやすさ、自立神経症状が少ないことが分かります。慰めることは相手の疲れを癒してあげたり、精神を落ち着かせる働きがあるのです。
慰める7つの方法
ここからは具体的な慰め方を解説します。具体的には以下の7つの方法を提案します。
・時間がかかることを覚悟
・相手の力を信じる
・根掘りはぼり聞かない
・無条件の肯定
・共感する
・努力の過程を認める
・視点を変える提案
ご自身の生活で使えそうなものをぜひご活用ください。
時間がかかることを覚悟
子どものころ、転んで膝小僧を打ってしまい、皮がむけてしまった経験は誰でもあると思います。この時無理に治そうとして、消毒液を必要以上にかけたり、かさぶたをはがしたりすると、治る傷もなかなか治りません。
それと同じで慰める時も、絆創膏を貼ってあげるぐらいの気持ちで、じっくりと構えることが大事です。悩みを相談された時に、あなた自身が焦り、すぐに解決しようとしても、ほとんどうまくいきません
暖かく見守る姿勢をまずは大事にしましょう。
乗り越えるのは相手
挫折や失敗を乗り越えるのはあくまでも相手です。あなた自身が相手の問題に入り込み、相手の代わりに問題を解決したとしても、相手のためになりません。
そして大概の場合は、人はきちんと問題を乗り越えていく力を持っています。基本的な精神として、相手の生きる力を信じて、きっとあなたは乗り越えていける!という気持ちをもってサポートしていくと良いでしょう。
決して、この人はこの問題を乗り越えられない、だから私が代わりに問題を解決するのだ!と考えないようにしましょう。
根掘り葉ぼり聞かない
慰める時は根掘り葉ぼり聞かないことが大事です。悩みを聞くときは、相手のペースを尊重します。
自己開示したければすればいいし、したくない場合は無理に話さなくて大丈夫という気持ちで聴くと良いでしょう。
相手を慰めようと思って、根掘り葉ぼり聞こうとすると大概の場合は、警戒心が先に来てしまい、うまく慰めることができません。
あくまで相手のペースを大事にする意識を持ちましょう。
無条件の肯定
では実際にあなたにが何ができるのでしょうか?大事なことは、あなた自身が安全基地であるということです。安全基地であるということは、当たり前の日常をあたりまえのようにしていくということです。
・声をかける
・なにはさておき話を聴く
・気にかけている旨を伝える
・また明日!と声をかける
・屈託のない雑談をする
こんな形で、問題を抱えている人の安全基地であることが何よりの相手の支えとなります。あなたが安全基地でさえあれば、相手の心は間接的にですが、回復しやすくなるのです。
無条件の肯定を日常生活で増やしたい!と感じる方は下記のコラムを参照ください。
共感して傾聴する
相手が苦しい気持ちを自己開示してくれたら、共感的に聞くといいでしょう。心理学の世界ではロジャースという心理療法家が以下のように共感を定義しています。
相手の内部的照合枠を、そこに伴って生じる情動的要素なども含めて正確に知覚すること
ロジャースは、相手の私的な世界を、”あたかも”自分自身のものであるかのように、感じ取ることだとも主張しています。
具体的な下記のような感じで聴いていくと良いでしょう。
・どんな状況で辛いのかを知ろうとする
・自分でも同じ状況なら辛いだろうなあと想像する
・素直な自分である 本当に共感できたときに
大変だったね と声をかける
つまり共感とは、相手のことを理解しようと努め、理解できたと感じたときに、そうかあ…それは辛いね。。と声をかけていくのです。
相手と同じ苦しみを味わう必要はありません。”あたかも”自分のことのように考え、相手を理解するよう努める事です。自分のことのように感じる中で、お互いに距離を取らずに触れ合うようになり、慰める事ができるのです。共感力をもっとつけたい方は下記を参照ください。
努力の過程を認める
相手を慰める時には、相手の努力した過程や気持ちをフォーカスすることが大切です。「慰める言葉が伝わらない…」「慰めるつもりが逆効果に…」と感じてる人は、「過程>結果」を意識して慰めてみましょう。
慰める言葉が上手な人は「過程」をしっかりと見ています。結果に至るまでの過程をポジティブな言葉で相手に伝える事で、相手のことを心から励ましているように感じられます。慰める事が苦手で、そっけない言葉になりがち…と言う方には特におすすめの方法です。
視点を増やす提案
最後は積極的な慰め方です。共感的に傾聴をして、努力を認める発言をしていくと、時間はかかりますが、人間はだんだんと前向きになっていくものです。
相手が少し回復してきたな…と感じたら、あなた自身の考えもいくばくか示していくと良いでしょう。具体的には、相手の視点を増やしていくような発言がおススメです。
例えば失恋で落ち込んでいた友人がいたら
・失恋をすると辛いけど
次に出会った異性をより大事にできるかもね
・失恋をすると、人の痛みが分かるようになるよね。
こんな感じで新しい視点を提案していきます。もちろんそれを受け入れるかは相手次第ですがあなた自身の意見も提案していくと良いでしょう。
たくさんの視点を提案できるようになりたい!と感じる方は下記のコラムを参照ください。
まとめ
まとめ
慰めることは想像以上に相手にとって心の支えになります。
時に「いまはそっとしてあげようと」落ち込んでいる相手を慰めることを躊躇ってしまうこともあると思います。
それでも、何か一言でも前向きな言葉をかけてあげることで楽な気持ちになるものです。
もちろん、相手がひどく落ち込んでる場合は一人にさせてあげることも大切ですが、少し時間が空いたら、慰めの言葉をかけてあげましょう。
お知らせ
もし公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では
・アサーティブコミュニケーション
・傾聴力をつける練習
・共感力トレーニング
・暖かい人間関係を築くコツ
など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。ぜひお待ちしています。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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*出典・参考文献
・大坪岳 追手門学院大学心理学論集;Otemon Gakuin University Psychological Review 2017 青年期のコミュニケーション・スキルとソーシャル・サポートがレジリエンスに及ぼす影響
・細田ら(2009)中学生におけるソーシャルサポートと自他への肯定感に関する研究 教育心理学研究,57,309-323
・城 佳子 2013 大学生の自己開示・ソーシャルサポートが被受容感に及ぼす影響の検討 : 被開示スキルとの関連を通して 人間科学研究 34,63 -72 .
・If You Need Help, Just Ask: Underestimating Compliance With Direct Requests for Help Journal of Personality and Social Psychology 95(1) · August 2008 with 139 Reads Vanessa Bohns
・浅沼 美里 山本 奬(2018)教師からのほめられ経験・叱られ経験がその後の自己効力感に与える影響 岩手大学大学院教育学研究科研究年報 第 2 巻(2018.3) 49−57