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ぼっちで辛い,改善する方法

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ぼっちで辛い,改善する方法

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「ぼっちで辛い」です。

 

相談者
20歳 女性

お悩みの内容
私は今、大学生2年生です。昔から友達作りが苦手で、せっかく大学に入ったのにいつもぼっちで辛いです。休みの日は1日中スマフォでゲームをして終わります。さすがにこのままではいけないと感じています。ぼっちな状況を改善するやり方を教えてください。

孤独な状況で落ち込んでいらっしゃるのですね。当コラムでは、ぼっち生活をやめたい…という方向けにぼっちの危険性や対処法をお伝えしていきます。ぜひ最後までご一読ください。

ぼっちのメリット,デメリット

まずはぼっちがもたらす心理的な特徴を抑えるところからはじめていきましょう。以下、関連する研究を折りたたんで解説しました。気になるタイトルを中心にご覧ください。

メリット

落合(1983)[1]は大学生277名を対象に孤独感を測る尺度の作成を行いました。その結果、孤独感は

・共感可能性
人はそれぞれ共感できると思う わかりあえる 
・個別性への理解
人はそれぞれ別々で個別的な存在だ 独立した存在だ

の2つの因子によって成り立っていることがわかりました。

さらに芝崎(2019)[2]は落合の研究を参考にしながら、大学生343名を対象に孤独感の詳細を分析しました。その結果の一部が下図となります。

ぼっちで辛い 共感と個別性

グループAは孤独感は少ないですが、人はそれぞれ共感できると考えている一方で、個別性に気が付いていません。そのため相手が別の意見を持っていたり、別々の道を歩もうとするときに、トラブルになりやすくなります。

グループDは人は孤独感がある一方で、それぞれ共感できると考えていて、個別性に気が付いています。そのため、お互いの価値観がズレていた時に尊重できると考えられます。

芝崎はグループAは未成熟な状態で、グループDが成熟した状態と主張しています。言い替えると、「人はそれぞれ分かり合える」「独自の考えを持つ」という2つの条件がそろった孤独感は成長した証で、お互いを認め合える質の高い孤独感と考えられます。

大東・岩元(2009)[3]は、大学生284名を対象に孤独や精神的健康について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

ぼっちで辛い 社会的な役割

図は少しわかりにくいかもしれません。心理社会的同一性とは

私は社会の一員としてちゃんと活躍している

という感覚です。孤独であっても、社会の一員として存在している感覚があれば、孤独感はそこまで強くならないのです。例えば、

受験勉強に打ち込んでいる 研究に没頭している 今は仕事に集中する時期

など、明確な目標があり、あえて一人の時間を取っている場合は問題は小さいと言えます。なぜなら孤独な状況でも、いずれは社会とつながれるという感覚があるからなにほかなりません。

孤独,仕事に打ち込む

Steiner(1966)[4]は、集団で考える場合と、個人で考える場合を比較し、「アイデアの総数」と「独創的なアイデアの数」を調査しました。その結果が以下のグラフです。

孤独感 原因

このように「個人条件」の方がグラフが伸びていることが分かります。集団であれやこれや考えるよりも、1人1人が集中して考え事をしたほうが、創造的なアイデアがでやすいのです。

その意味で、ぼっちな時期が長い方は、誰も考えたことがないような創造的なアイデアを持っていることがあるのです。


デメリット

相川(2005)[5]は大学生1002人を対象に、ソーシャルスキルを調査しました。ソーシャルスキルとは、会話力や人間関係を構築する能力を意味します。

その結果、孤独感が強い人ほど、ソーシャルスキルが低いことがわかったのです。

ぼっちで辛い ソーシャルスキル

ぼっちな状況が長く続くと、ソーシャルスキルが下がり、社会に出る際に大きなハンデになってしまいます。

相川(2005)[5]の同研究では、孤独感が強い人は、対人不安も強いことがわかりました。

 

ぼっちで辛い 対人不安

ぼっちな時間が長くなると、人づきあいに苦手意識が強くなり、人と接することに恐怖心を覚えやすくなります。特に

対人不安がとにかく強い
人と話すことを徹底的に回避する
目が合うとすごく緊張する

これらの感覚がある方は社交不安障害という障害の可能性もあるので注意が必要です。

下の図は、国の統計で、友人の数と「希望がある」と「希望がない」の人数を分析したものです。[6]

図を見ると、友人が多いほど将来に希望を持っていることが分かります。逆に友人が少ない人は将来に対する希望が少ない状況になっています。ぼっちな状況が続くと、将来に悲観的になりやすくなるので注意が必要です。

疎外感は孤独感よりもより深刻な感情で「集団から排除されている」「仲間に入れてもらえない」という感覚を意味します。西野(2007)[7]の研究によると、疎外感は自己価値が下がることが分かっています。

自己価値とは、文字通り、自分に価値を感じることを意味します。ぼっちな状況が深刻化すると「自分なんていらなくなっていいのかな」「社会にいらないのかな」という感覚が強くなってしまうのです。

疎外感は様々な悪影響を及ぼします。詳しく知りたい方はこちらの動画も参照ください。

 

仲直りと疎外感

 

対策が必要な目安

ここまで解説したように、ぼっちにはメリットとデメリットがあります。まとめると、

お互いの違いを尊重した孤独感
何かにチャレンジしている
短期的な状態である
日々充実している
会話力はそこまで低下していない

これらを満たす場合は問題ないと言えます。人生には集中して物事に取り組む時期があるものです。精一杯自分のエネルギーをぶつけていきましょう。

一方でぼっちな状況が長期化して精神的に辛い場合は対策が必要になってきます。

孤独感が強く精神的に落ち込みやすい
悩みを相談する人がいない
充実している人をみると羨ましい

これらにあてはまる方は以下にあげる対策を参考に生活を改善していきましょう。

 

ぼっち,メリット,デメリット

ぼっち生活,抜けだす7つの方法

ここからはぼっちを抜け出す7つの方法を提案させて頂きます。

➀人の目を気にしすぎない
②失敗OKと考える
③基礎的な会話力をつける
④緊張をほぐす
⑤暖かいコミュニティを探す
➅スモールステップを意識する
⑦社交不安症に注意

ご自身の状況に合わせて組み合わせて使ってみてください。

➀人の目を気にしすぎない

ぼっちになりやすい人は、公的自己意識が過剰であることが挙げられます。公的自己意識とは、

相手に嫌われたくなく
評価を下げたくない
周りに気に入られたい
異性にもてたい

といった周りの目を気にする自意識です。ぼっちを改善するには、公的自己意識だけでなく、私的自己意識を強くすることが、改善のコツとなります。私的自己意識とは

自分の評価お自分で決める
自分が話したい話をする
楽しい話をしたいから話す
異性と話したいから話す

これらの意識を意味します。私的自己意識を増やしていくと、緊張せずリラックスして話せるようになっていきます。人の目を気にして、うまく話せない…と感じる方は、これらの私的自己意識を高めることが改善の鍵になります。詳しくは以下のコラムを参考にしてみてください。

人の目が気になる時の対処法

 

人見知り,私的自己意識

②失敗OKと考える

ぼっちで悩む方は、人間関係で失敗することをおそれ、人と接することを回避する傾向があります。人間関係は誰でも失敗するものです。以下のように肩の力をぬいてコミュニケーションするようにしましょう。

最初は参加するだけでも充分だ
会話が苦手なんだから、まずは話しかけただけでもOK
失敗してもOK!とりあえず話題を振ってみよう

このように、肩の力が抜けるような考え方を自分の中で作っておきましょう。失敗してもOKの精神をより深く知りたい方は下記をご覧ください

失敗は成功の元,挑戦が怖い時

③基本的な会話力をつける

ぼっちが長期化しやすいかたは、会話に自信がなく、人と接する気持ちになれない傾向があります。人と接しても何を話せば良いかわからない方は、会話の練習することおすすめします。

例えば、人の話を聴くときは、一言肯定する文言を入れるだけで随分印象が変わります。

(話し手)
私はソフトボール部でした

(聞き手)
ソフトボールですか~
 +
ヒットを打つと気持ちよさそうですね

(話し手)
私はラーメンが大好きです

(聞き手)
ラーメンおいしいですよね!
 +
いろいろなスープが楽しめるので私も好きです

いかがでしょうか。一言肯定するだけで随分、印象がよくなりますよね。会話は練習するだけうまくなっていきます。会話が苦手…という傾向がある方は下記ご覧ください。

会話力トレーニング

④緊張をほぐす

心理学や生理学の研究では、体の緊張をほぐすと、心もほぐれることがわかっています。体をほぐす方法は様々なやり方があります。例えば、臨床動作法という心理療法では、肩上げ体操を行うことがあります。手順としては以下の通りです。

➀肩をギューッと上げる
②5秒程度キープする
③ゆっくり肩を下げる
④手がぽかぽかする感覚を味わう

人と話すときに緊張しやすい方は事前に肩上げ体操をしておくと、リラックスして会話に臨むことができます。体をほぐす方法は他にもたくさんのやり方があります。体が緊張しやすい方は以下のコラムも参照ください。

体のリラックス法,エクササイズ

⑤暖かいコミュニティを探す

ある程度会話の基礎力が付いたら、所属できそうなコミュニティを探すことが大切です。例えば以下のようなコミュニティが挙げられます。

*社会人の方
趣味のサークルを探す 職場の同期会に顔を出す 大学の友達と定期的に遊ぶ

*学生の方
部活で友達を作る 外部で習い事をする 家族と話す スクールカウンセラーと話す 

など、安心してお話できるコミュニティを探しましょう。コミュニティを探す方法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。

コミュニティの意味とは-探す方法,

➅スモールステップを意識する

コミュニティに参加したら、スモールステップで少しずつ馴染んでいきましょう。

まずは挨拶すればOK
できたら少し雑談をしてみる
自己開示をしてみる

など段階を踏んで自分を出していきましょう。長く続けていれば人は自然と仲良くなっていくものです。最初から高い目標を立てず、小さなステップを積み重ねて、少しずつ親睦を深めていきましょう。

スモールステップをより深く知りたい方は以下のコラムの中盤の内容を参考にしてみてください。

スモールステップの作り方,行動療法

スモールステップ,引っ込み思案

⑦社交不安症(障害)に注意

最後に念のため、社交不安障害について注意喚起をさせて頂きます。社交不安障害は、10代の中盤ぐらいから20代の後半ぐらいまでに多い心の病気です。

人と話す場面をとにかく避ける
会話があるとどっと疲れる
発表する前に異常に緊張して汗が噴き出す

このような症状がある方は注意が必要です。実は筆者の川島も社交不安障害になった経験があったのですが、自分が病気と気がつくのに、6年近くかかりました。治療が遅れると、長い間辛い時間が続きます。

あてはまるかも…と感じるい方は、予防として以下のコラムも参考にしてみてください。

社交不安障害の基礎知識と治療法

まとめ

人間関係が希薄で苦しい…という状態を放置すると、メンタルへルス的には不健康になりやすくなります。自分が安心できるコミュニティを見つけ、会話の技術を磨きながら、少しずつぼっちな状況を改善してみてくださいね。皆さんに、気を許せる友人がたくさんできて、屈託のない関係を築かれることを切に願っています。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・ぼっち環境の改善,コミュニティに実際に所属
・ぼっちから友人を作るコツを学ぶ
・会話の基礎力UPトレーニング
・イベントを通して友人作り

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^) 

ぼっちで辛い,改善する方法,心理学講座

助け合い掲示板

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] 落合良行(1983).孤独感の類型判別尺度 (LSO) の作成 教育心理学研究 31 巻 4 号 p. 332-336 
 
 
[3] 大東美穂子,岩元澄子(2009).青年の孤独に対する捉え方-孤独感,自己意識,精神的健康,自我同一性との関連 久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research 8 75-84, 久留米大学大学院心理学研究科
 
[4] Steiner, I. D.(1966)Models for inferring relationships between group size and potential group productivity Volume11, Issue4 July 1966 Pages 273-283 nuary 8, 2016.
 
[5] 相川充, 藤田正美(2005).成人用ソーシャルスキル自己評定尺度の構成 東京学芸大学紀要. 第1部門, 教育科学 56, 87-93,
 
[6] 内閣府 (2014). 平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査  第3部 有識者の分析 3/4