ぼっちで辛い,改善する方法
皆さんこんにちは。人間関係講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「ぼっちで辛い」です。
相談者
20歳 女性
お悩みの内容
私は今、大学生2年生です。昔から友達作りが苦手で、せっかく大学に入ったのにいつもぼっちで辛いです。休みの日は1日中スマフォでゲームをして終わります。さすがにこのままではいけないと感じています。ぼっちな状況を改善するやり方を教えてください。
孤独な状況で落ち込んでいらっしゃるのですね。当コラムでは、ぼっち生活をやめたい…という方向けにぼっちの危険性や対処法をお伝えしていきます。ぜひ最後までご一読ください。
ぼっちのメリット,デメリット
心理学の研究においては、「ぼっち」には、様々なメリットとデメリットがあることが分かっています。まずは心理的な特徴を抑えるところからはじめていきましょう。以下それぞれ折りたたんで表示させて頂きます。気になる項目についてご覧ください。
メリット
大東・岩元(2009)は、大学生に孤独の捉え方に関する調査を行いました。その結果、以下のことがわかったのです。
図は少しわかりにくいかもしれません。心理社会的同一性とは
私は社会の一員としてちゃんと活躍している
という感覚です。孤独であっても、社会の一員として存在している感覚があれば、孤独感はそこまで強くならないのです。例えば、
受験勉強に打ち込んでいる 研究に没頭している 今は仕事に集中する時期
など、明確な目標があり、あえて一人の時間を取っている場合は問題は小さいと言えます。なぜなら孤独な状況でも、いずれは社会とつながれるという感覚があるからなにほかなりません。
Steiner(1966)は、集団で考える場合と、個人で考える場合を比較し、「アイデアの総数」と「独創的なアイデアの数」を調査しました。その結果が以下のグラフです。
このように「個人条件」の方がグラフが伸びていることが分かります。集団であれやこれや考えるよりも、1人1人が集中して考え事をしたほうが、創造的なアイデアがでやすいのです。
その意味で、ぼっちな時期が長い方は、誰も考えたことがないような創造的なアイデアを持っていることがあるのです。
デメリット
相川(2005)は大学生1002人を対象に、ソーシャルスキルを調査しました。ソーシャルスキルとは、会話力や人間関係を構築する能力を意味します。
その結果、孤独感が強い人ほど、ソーシャルスキルが低いことがわかったのです。
ぼっちな状況が長く続くと、ソーシャルスキルが下がり、社会に出る際に大きなハンデになってしまいます。
相川(2005)の同研究では、孤独感が強い人は、対人不安も強いことがわかりました。
ぼっちな時間が長くなると、人づきあいに苦手意識が強くなり、人と接することに恐怖心を覚えやすくなります。特に
対人不安がとにかく強い
人と話すことを徹底的に回避する
目が合うとすごく緊張する
これらの感覚がある方は社交不安障害という障害の可能性もあるので注意が必要です。
下の図は、国の統計で、友人の数と「希望がある」と「希望がない」の人数を分析したものです。
図を見ると、友人が多いほど将来に希望を持っていることが分かります。逆に友人が少ない人は将来に対する希望が少ない状況になっています。ぼっちな状況が続くと、将来に悲観的になりやすくなるので注意が必要です。
疎外感は孤独感よりもより深刻な感情で「集団から排除されている」「仲間に入れてもらえない」という感覚を意味します。西野(2007)の研究によると、疎外感は自己価値が下がることが分かっています。
自己価値とは、文字通り、自分に価値を感じることを意味します。ぼっちな状況が深刻化すると「自分なんていらなくなっていいのかな」「社会にいらないのかな」という感覚が強くなってしまうのです。
疎外感は様々な悪影響を及ぼします。詳しく知りたい方はこちらの動画も参照ください。
対策が必要な目安
ここまで解説したように、ぼっちにはメリットとデメリットがあります。まとめると、
何かにチャレンジしている
短期的な状態である
日々充実している
会話力はそこまで低下していない
これらを満たす場合は問題ないと言えます。人生には集中して物事に取り組む時期があるものです。精一杯自分のエネルギーをぶつけていきましょう。
一方でぼっちな状況が長期化して精神的に辛い場合は対策が必要になってきます。
孤独感が強く精神的に落ち込みやすい
悩みを相談する人がいない
充実している人をみると羨ましい
これらにあてはまる方は以下にあげる対策を参考に生活を改善していきましょう。
ぼっち生活,抜けだす6つの方法
ここからはぼっちを抜け出す6つの方法を提案させて頂きます。
①基礎的な会話力をつける
②暖かいコミュニティを探す
③スモールステップを意識する
④失敗OKと考える
⑤人の目を気にしすぎない
⑥社交不安障害に注意
ご自身の状況に合わせて組み合わせて使ってみてください。
①基本的な会話力をつける
ぼっちが長期化しやすいかたは、会話に自信がなく、人と接する気持ちになれない傾向があります。人と接しても何を話せば良いかわからない方は、会話の練習することおすすめします。
例えば、人の話を聴くときは、一言肯定する文言を入れるだけで随分印象が変わります。
(話し手)
私はソフトボール部でした
(聞き手)
ソフトボールですか~
+
ヒットを打つと気持ちよさそうですね
(話し手)
私はラーメンが大好きです
(聞き手)
ラーメンおいしいですよね!
+
いろいろなスープが楽しめるので私も好きです
いかがでしょうか。一言肯定するだけで随分、印象がよくなりますよね。会話は練習するだけうまくなっていきます。会話が苦手…という傾向がある方は下記ご覧ください。
②暖かいコミュニティを探す
ある程度会話の基礎力が付いたら、所属できそうなコミュニティを探すことが大切です。例えば以下のようなコミュニティが挙げられます。
*社会人の方
趣味のサークルを探す 職場の同期会に顔を出す 大学の友達と定期的に遊ぶ
*学生の方
部活で友達を作る 外部で習い事をする 家族と話す スクールカウンセラーと話す
など、安心してお話できるコミュニティを探しましょう。コミュニティを探す方法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
③スモールステップを意識する
コミュニティに参加したら、スモールステップで少しずつ馴染んでいきましょう。
まずは挨拶すればOK
できたら少し雑談をしてみる
自己開示をしてみる
など段階を踏んで自分を出していきましょう。長く続けていれば人は自然と仲良くなっていくものです。最初から高い目標を立てず、小さなステップを積み重ねて、少しずつ親睦を深めていきましょう。
スモールステップをより深く知りたい方は以下のコラムの中盤の内容を参考にしてみてください。
④失敗OKと考える
ぼっちで悩む方は、人間関係で失敗することをおそれ、人と接することを回避する傾向があります。人間関係は誰でも失敗するものです。以下のように肩の力をぬいてコミュニケーションするようにしましょう。
最初は参加するだけでも充分だ
会話が苦手なんだから、まずは話しかけただけでもOK
失敗してもOK!とりあえず話題を振ってみよう
このように、肩の力が抜けるような考え方を自分の中で作っておきましょう。失敗してもOKの精神をより深く知りたい方は下記をご覧ください
⑤人の目を気にしすぎない
ぼっちになりやすい人は、公的自己意識が過剰であることが挙げられます。公的自己意識とは、
相手に嫌われたくなく
評価を下げたくない
周りに気に入られたい
異性にもてたい
といった周りの目を気にする自意識です。ぼっちを改善するには、公的自己意識だけでなく、私的自己意識を強くすることが、改善のコツとなります。私的自己意識とは
自分の評価お自分で決める
自分が話したい話をする
楽しい話をしたいから話す
異性と話したいから話す
これらの意識を意味します。私的自己意識を増やしていくと、緊張せずリラックスして話せるようになっていきます。人の目を気にして、うまく話せない…と感じる方は、これらの私的自己意識を高めることが改善の鍵になります。詳しくは以下のコラムを参考にしてみてください。
人の目が気になる時の対処法
⑥社交不安障害に注意する
最後に念のため、社交不安障害について注意喚起をさせて頂きます。社交不安障害は、10代の中盤ぐらいから20代の後半ぐらいまでに、すごく多い心の病気です。
人と話す場面をとにかく避ける
会話があるとどっと疲れる
発表する前に異常に緊張して汗が噴き出す
このような症状がある方は注意が必要です。実は筆者の川島も社交不安障害になった経験があったのですが、自分が病気と気がつくのに、6年近くかかりました。治療が遅れると、長い間辛い時間が続きます。
あてはまるかも…と感じるい方は、予防として以下のコラムも参考にしてみてください。
まとめ
人間関係が希薄で苦しい…という状態を放置すると、メンタルへルス的には不健康になりやすくなります。自分が安心できるコミュニティを見つけ、会話の技術を磨きながら、少しずつぼっちな状況を改善してみてくださいね。
皆さんに、気を許せる友人がたくさんできて、屈託のない関係を築かれることを切に願っています。
おまけ動画
関連動画として有名人がなぜ孤独を推奨するのか?について解説しました。孤独は果たして良いことなのか?悪いことなのか?気になる方は参考にしてみてください。
人間関係講座のお知らせ
ぼっちな状況を公認心理師の元で改善していきたい方は、私たちが開催している人間関係講座をおすすめします。講座では
・緊張しやすい心理の改善
・暖かい人間関係を築くコツ
・積極的になれる心理学
・あがり症の改善
など練習していきます。筆者の川島も講師をしています。皆様の御来場を是非お待ちしています。↓興味がある方は下記のお知らせをクリック♪↓
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
Twitter→
*出典・参考文献
・成人用ソーシャルスキル自己評定尺度の構成 東京学芸大学紀要. 第1部門, 教育科学 56, 87-93, 2005-03-31 相川, 充 藤田, 正美
・我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 内閣府
・孤独感の高い大学生の対人行動に関する研究 : 孤独感と社会的スキルとの関係 社会心理学研究 8(1), 44-55, 1993