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過剰適応とは?心理学の専門家が解説

過剰適応とは?症状や職場での問題、子供の特徴をチェック!

はじめまして!精神保健福祉士の川島です。こちらの初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。今回は「過剰適応」についてお話していきます。*ページ最下部には動画解説もあります。動画で解説を見たい方は参考にしてください。

過剰適応とは?

過剰適応とは何か?

過剰適応については以下のように定義されています。

福島(1981)
内的に阻害するものが多すぎることによって、自己システム自体が枯れてしまい、外側の殻だけの存在になってしまうこと

桑山(2013)
外的適応が過剰なために内的適応が困難に陥っている状態

学術的な定義はやや難しいですね。もう少し平易に表現すると、自分の気持ちを押し殺して、相手や環境に必要以上に合わせる状態を意味します。

例えば、上司の無茶ぶりになんとか答えようとする、恋人の理不尽な要求になんでも応じてしまう、明らかにブラック企業でも本音を押し殺して適応しようとしてしまう、などが当たります。

外的適応-内的適応

心理学の世界には2つの適応があります。

・外的適応
社会的な要求や役割を守って実際に行動している状態。気持ちはどうあれ職務を全うしている状態です。過剰適応では外的適応はできています。

・内的適応
気持ちが満たされ良好な状態です。自分自身納得して前向きになっている状態です。一方過剰適応状態では、内的適応はできない状態になります。

たとえば、
・嫌いな人なのに親の意向で結婚した
・嫌いな会社に笑顔で務める
・パワハラする上司をおだてる

などが挙げられます。このように、一見うまくいっているように見えて、内面的には全く良くない状態が続いている状態が典型的な過剰適応状態と言えます。

不眠やうつのリスク

感情労働と過剰適応

感情労働が求められる職場では、過剰適応の状態が続くため注意が必要です。感情労働とは、自分の感情を抑える労働のことです。しかし、特に高度な接客技術が求められる職場は感情労働が強く求められ、過剰適応になりやすいと言えます。

例えば、
キャビンアテンダント、元気が売りの飲食業、看護師、営業職などがあたります。

気持ちの良い接客はとてもうれしいものですが、働いている人も人間です。心が良好でない場合に、無理に感情労働が続いていないか?日々のストレスやイライラする気持ちにきちんと目を向けていくことが大切です。

長期化と不安,不眠

感情労働の状態が続くと、不安や不眠に襲われることも分かっています。荻野(2004)の研究では、感情労働が不眠に与える影響を調べています。実験では、231名の看護・介護職を対象に質問紙を用いて調査を行いました。

その結果、上図のようになりました。「感情の不協和」は感情労働の1つの要素で、これが原因となって燃えて「不安や不眠」「うつ病」といった症状が表れています。また、その中でも「不安と不眠」の数値が大きいことが分かります。

このように感情の消耗が続くと、睡眠の質にも影響を与えてしまいます。自分の感情を抑え続けると精神的にも身体的にも不健康なものになってしまうのですね。

嫌と言えない性格の方は注意

過剰適応しやすい3つの心理

過剰適応を構成する主な要素は、「自己抑制」「自己不全感」「良く思われようとする」などです。これらの傾向が強い人は、過剰適応になりやすく抑うつ傾向も高くなるため、精神疾患のリスクが高まる可能性があります。

風間(2015)が大学生260名を対象に過剰適応について研究を行いました。その結果、過剰適応を構成する3つの要素と抑うつに相関関係があることが分かりました。

こちらの図は、数値が高いほど相関があることを示しています。過剰適応を構成する3つの要素の中でも「自己抑制」と「自己不全感」は、抑うつ症状に影響があることが分かりますね。

過剰適応を構成する3つの要素と抑うつの関連

職場や学校など、集団の中で「自分の気持ちを抑えたり」「自分が役に立っていない」「絶えず印象をよく思われたい」と感じる傾向がある人は、注意が必要です。

幼少期、成人期と過剰適応

幼少期と過剰適応

過剰適応は、子供にもみられる症状です。小野、宮本ら(2005)は、過剰適応している子供を「よい子」と捉え、次のような特徴があるとしています。「表面的には素直に大人の言うことを聞き、実行し、成績が良く、明るく元気に振舞う適応的な面と、自分が何を感じ、何をやりたいのかを明確にできない面がある」

このような状態が続けば、表面的に良好でも見えない部分で大きな問題を抱えてしまう事にもなりかねません。過剰適応など「よい子」として無理をしてきた子供は、何かのきかっけで不登校などの問題につながることもあります。

 

外的適応と内的適応の違い

対策①「限界設定」で過剰適応を予防しよう

ここからは過剰適応してしまう方向けの予防策について考えていきます。具体的には「限界設定」「アサーション」「専門機関で練習」の3つを提案させて頂きます。まずは全体を概観して、気になるリンク先をクリックしてみてください。まずは1つ目の「限界設定」について解説します。

尽くしすぎることに注意
過剰適応してしまう人は、なんでも引き受けてしまい、頼まれ事が増えてしまうと考える傾向があります。その結果、自分を犠牲にしてまで相手に尽くし続けてしまうのです。例えば、仕事をなんでも引き受けてしまう、パートナーの要求をなんでも引き受けてしまう、という方は要注意です。

「限界設定」をする
やさしさとは、過剰に相手に尽くすことではありません。健康的な人間関係を築くためには「限界設定」が重要です。限界設定とは、自分の余裕を考えて「配慮できるところと、できないところ」を明確にするというものです。

過剰適応しがちな方は「ここまではできる」「だけどここまではできない」という線引きを明確にする癖をつけることがとても大事です。

限界設定についてより詳しく理解したい方はこちらのコラムを参照ください。

対策② アサーションで過剰適応を改善!

ここからは、過剰適応を改善する方法を見ていきましょう。過剰適応の改善には、アサーションの考え方が有効です。アサーションとは、自他自尊のコミュニケーションを大切にする考え方で、3つの自己表現を大切にしています。

1:攻撃的自己表現
自分を主張を最優先に考えて行動します。そして時には他人を傷つけたり踏みにじるようなこともあります。
2:非主導的自己表現(過剰適応)
自分より他人の主張を優先して行動するため、自分の気持ちを伝えないなかったり言い損ねたりします。過剰適応の人の自己表現です。
3:アサーティブな自己表現
自分の気持ちを正直に、その場にふさわしい方法で表現し行動します。 

過剰適応を改善するアサーションとは過剰適応を改善するには、アサーティブな自己表現が有効です。アサーティブな自己表現には、

・自分もOK、他人もOK
・自分の感情を大切に権利
・他人の感情を大事にする心がけ
・折り合いをつけることを大事にする精神
・過剰な要求は断る

の考え方があります。日ごろから実践をして、過剰適応の改善を目指しましょう!

アサーションの練習問題

ここでは練習問題をやってみましょう。

練習問題
社会人の太郎さんは、コンパで知り合った学生の花子さんと半年前から付き合っています。花子さんはとてもかわいらしい女性で、太郎さんのタイプです。花子さんが学生ということで、デート代は太郎さんが全て支払っていました。最近はデートのたびに、プレゼントまで要求されるようになっています。この状態が続くかと思うと太郎さんは不安です…。
この状態を改善する表現を、アサーション3つの自己表現で考えてみましょう。

「攻撃的」

「非主導的(過剰適応)」

「アサーティブ」

 

解答例
攻撃的
→いい加減にしてくれないか!

非主導的(過剰適応)
→かわいい彼女だから手放してはいけない…。付き合い続けるためにも我慢して払い続けよう。

アサーティブ
→僕は社会人だから、デートの支払いはなるべくする。プレゼントは特別な日に贈るものにしたいな。この状況は僕にも原因があるごめんね。。

このように過剰適応をしてしまうことが多い…と感じる方は、アサーティブコミュニケーションをベースに主張する練習などがおススメです。もっと詳しくアサーションを学びたい方はこちらのアサーションコラムを参照ください。

対策③専門機関で練習する

独学で学ぶことに不安や限界を感じた場合は、専門家の元でしっかり学ぶこともお勧めしています。 私たち臨床心理士・精神保健福祉士は、メンタルヘルスの向上を目指し、心理学講座を開催しています。独学に限界を感じた方、体系的に勉強されたい方のご参加をぜひお待ちしています。

執筆者も講師をしています(^^)
 ・自己主張,アサーション練習
 ・人の目を気にする状態を改善‐認知療法
 ・リラックスした人間関係を築く会話練習
初学者向けコミュニケーション教室を開催しています

動画でも解説しました

過剰適応について、動画でも解説しました♪良かったら参考にしてみてください。チェンネル登録をして頂けると励みになります!

専門家の講義を受けたい方へ

過剰適応について心理学の論文、研究、過剰適応の症状や問題を紹介しました。社会に出れば、多かれ少なかれ感情のコントロールが求められるでしょう。しかし自分の気持ちを抑えつづた笑顔では、心身共に疲れしまいますよね。「疲れているな…」と感じた時には、自分の内面に目を向けて正直になってみてくださいね。

そして、専門家から直接学びたい!という方は良かったら私たち臨床心理士・精神保健福祉士が開催している、コミュニケーション講座への参加をおススメしています。コラムだけでは伝えきれない知識や実践的なワークを進めています。みなさんのコミュニケーション能力が向上するよう、講師も一緒に頑張ります!よかったらいらっしゃってくださいね(^^)

社会人講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
適応の心理(1965) 北村晴朗(著)誠信書房
入門人格心理学 加藤 義明 (編集), 中里 至正 (編集)1989
風間惇希 2015 大学生における過剰適応と抑うつの関連 青年心理学研究 27(1), 23-38
小野 由衣子 宮本 正一 2005 親・教師・友達が関わる欲求不満場面での過剰適応と攻撃性の関連, 1, 13-20
外界への過剰適応に関する一考察–欲求不満場面における感情表現の仕方を手がかりにして 桑山 久仁子 京都大学大学院教育学研究科紀要 (49), 481-493, 2003
福島章 1981 機械じかけの葦 朝日新聞社

荻野ら(2004)対人援助職における感情労働がバーンアウトおよびストレスに与える影響 The Japanese Journal of Psychology , Vol. 75, No. 4, 371-377