孤独感が強い,うつな気持ちへの対処法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「孤独感への対処法」についてご相談を頂きました。
相談者
34歳 女性
お悩みの内容
私は地方出身で、20代の前半に上京してきました。元々社交的ではなく、友人が少ない方でした。最近は周りも家庭を持つようになり、一緒に出掛ける人がいません。
休日一人でいると、孤独感で押しつぶされそうになります。うつ症状も出ている気がします。この状況から抜け出す方法はありますでしょうか。
孤独感を抱えると、周りから取り残されているような感覚になってしまいますよね。当コラムでは、孤独感の知識と対策を解説していきます。是非最後までご一読ください。
孤独感とは何か
孤独感の意味
まずはじめにそもそも孤独感とは何かについて考えてみましょう。心理学者のPeplau & Perlman, (1979)は以下のように定義しています。
個人が現実に経験している社会的関係が、当人がもちたいと望んでいる関係に比べて、下回ったり不満であると認知されるときに生じる不快な感情
Peplau& Perlman(1979)[1]
例えば、周りが楽しそうに遊んでいるのに、自分は休日一人で会話なく寂しいと考えると、孤独感が増えていきます。
孤独感の性質
英語では「ロンリネス(loneliness)」と「ソリチュード(solitude)」の2つの言葉があり、どちらも日本語で「孤独」という意味になります。ロンリネスは、日本語の「一人ぼっち」を意味する孤独そのものを指します。ロンリネスは、抑うつ感を増大させ、メンタルヘルスに悪影響となります。
一方、ソリチュードは、独りの状態を前向きにとらえ、精神的に自立し、自分だけの時間を過ごすことに喜びと楽しみを感じている状態を指します。
ロンリネスは苦痛や不安、孤独感を招きますが、ソリチュードは積極的な孤独として認知されています。つまり一人でいることが必ずしも孤独感に繋がるわけではなく、見方によってはプラスに捉えることもできるといえるでしょう。
約半数が孤独感を抱える
内閣官房孤独・孤立対策担当室(2022)[2]は11,218名を対象に孤独感について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。
上記のように、「常にある」「時々ある」を合わせると、約50%の方が孤独感を抱えていることがわかります。社会全体として、コミュニケーションが不足し、孤独を感じやすい世の中であると言えます。
孤独感と悪影響
心理学では孤独感の危険性について、様々な研究がなされてきました。当コラムでは5つの研究を紹介させて頂きます。気になる見出しがあったら参考にしてみてください。
孤独感への9の対処法
ここからは孤独感への9の対処法を提案させて頂きます。
①対人不安を軽くする
②会話の基礎力をつける
③ネットを利用する
④コミュニティへ所属する
⑤気長に馴染む
⑥表面的な関係を受容する
⑦見捨てられ不安に対処する
⑧アサーテイブな関係を築く
⑨自尊心を育てる
⑩孤独感を成熟させる
ご自身の生活に役立ちそうなものを中心に、組み合わせてご活用ください。
①対人不安を軽くする
前述したように、対人不安がある方は、人間関係に消極的で、孤独感を抱えやすいことがわかっています。
・人と会う前日から不安になる
・人と話すとすごく緊張する
・会話の後はどっと疲れる
これらにあてはまる方は、心理的な改善も必要になってきます。例えば、人と話すと迷惑をかけるのではないか、恥をかいたらどうしよう…という感覚がある方は要注意です。
対策としては「自分の気持ちを大事にする」「うまくいくイメージをする」などが挙げられます。あてはまると感じる方は、以下のコラムを参照ください。
②会話の基礎力をつける
人と話す環境に飛び込み、お互いの心を通わせるには、会話力が必要になります。実際心理学の研究でも会話力がある人ほど、孤独感が少なく、充実していることがわかっています。
相川ら(1993)[8]は、大学生737名に対して、孤独感についての研究を行いました。まずは以下の図を見て分析してみましょう!
上記は、日常的にあった出来事などの、経験の開示がある人ほど、孤独感が低いことを意味しています。
会話力をつけるには、
・傾聴力をつける
・発話力をつける
・表情や声の抑揚を豊かにする
ことが必要になります。会話のトレーニングについては、筆者の講座で体系的に練習・改善することができます。興味がある方は以下の講座を参照ください。
③ネットを利用する
対人不安への対処法、会話スキルの向上は、準備運動のようなものです。次の段階として、実際に人と関わる機会を増やすことをおすすめします。ファーストステップとしては、ネット上でのやり取りが、比較的気軽なのでおすすめします。
具体的には以下のようなやり方が挙げられます。
X(旧ツイッター)で同じ趣味を持つ人をフォローする
慣れてきたらコメントしてみる
好きな漫画のオンラインサロンに入る
匿名でブログを書いて、ブログ同士で交流してみる
会話OKなオンラインゲームをしてみる
リアルの友人作りはハードルが高いですが、ネット上であれば手軽に始められます。ネットでは、共通の趣味を持つ人も見つけやすいですし、現実のしがらみがなく横の関係でつながる事ができます。
気の合う方を探して、簡単な交流をするだけでも最初は充分です。完全な孤独にならないように気をつけましょう。
ただし、ネットについては、病的使用、出会い系サイトでの実害、ネットいじめ、サロンの利用での被害などもあります。以下のコラムでメリット、デメリットを解説したので、健康的に使用するようにしてみてください。
④コミュニティへ所属する
ネット上でのやり取りが増え、コミュニケーションに前向きになってきたら、所属コミュニティを増やしていくことをおすすめしています。例えば以下が挙げられます。
ネットのオフ会に参加してみる
登山サークルに参加してみる
家族と話す機会を増やす
職場のランチで誰かと話してみる
私は、所属するコミュニティは最低でも3つ程度は必要と考えています。コミュニティが3か所あれば、1か所で失敗しても、他の2か所でフォローが効きくからです。
以下のコラムでは、コミュニティの見つけ方を解説しています。気さくに会話できる場所がない…と感じる方は参考にしてみてください。
⑤気長に馴染む
いざコミュニティに所属したとしても、すぐに馴染むことは現実的には難しいでしょう。人間関係を築くのは時間がかかるものです。
そんなときは、単純接触効果という心理学の用語を覚えておいてください。単純接触効果とは以下の意味があります。
何度も接すると、それだけで好感を持つこと
会話が多少ぎこちなくても、粘り強くコミュニティへ参加し続けていれば、自然と周りはあなたといると安心感を持ってくれるものです。
いきなり仲良くなろうと思う必要はなく、コミュニティに継続して顔を出していくだけで、だんだんと馴染んでいくものです。
2回、3回顔を出しただけで、「馴染めない…」と悲観する必要はありません。焦らず気長に馴染んでいくことを意識しましょう。
具体的なやり方に興味がある方は以下のコラムを参照ください。
⑥表面的な関係を受容する
ある程度コミュニティに継続して参加すると、それなりに馴染んでくるものです。ただし、お互いの心を完全に理解するような深い交流まで進むことは稀です。だからと言ってがっかりする必要はありません。
大人同士の付き合いは、ある程度表面的になるもので、距離感があるのが普通なのです。おおらかに考えておきましょう。
大事なことは、そのような表面的な関係でも、ふとした瞬間、わかりあえるタイミングがあるということです。その瞬間を大事にできれば良いのです。
もしあなたが深い関係を求めがち…と感じる場合は、以下の動画を参考にしてみてください。
⑦見捨てられ不安に対処する
コミュニティに所属し、ある程度仲良くなると、新しい問題が出てきます。
仲良くなると逆に不安になる…
返信がないとすごく不安になる…
いつかいなくなってしまうのでは…と感じる…
こうした不安は、心理学の専門用語で「見捨てられ不安」と言います。見捨てられ不安は、特にある程度仲良くなってきた時に芽生えてきます。周りに人がいるのに、なぜか孤独感がある…という方は、見捨てられ不安が根底にあるかもしれません。
仲良くなるほど孤独を感じる…という方は、以下のコラムも参考にしてみてください。対処法を学ぶことで、安定した人間関係を作れるようになります。
⑧アサーテイブな関係を築く
人間関係が充実し、交流が増えたにも関わらず、孤独感が改善しない方もいます。原因として、あなた自身が率直な気持ちでお話できていない可能性が考えられます。
言いたいことが言えない
周りを意識して受け身である
相手の機嫌を絶えずうかがってしまう
これらの傾向があると、結局孤独感は続いてしまうことになります。改善策として、自分の気持ちと相手の気持ちを両方大事にしながら建設的に語り合う、アサーションを学ぶことをおすすめします。
腹を割った素直なやり取りを増やすことで、お互いの理解を深めることができるでしょう。
⑨自尊心を育てる
諸井(1987)[9]は、大学生396名を対象に自尊心と孤独感について調査を行いました。その結果が以下の図です。まずは男子の結果から見ていきましょう。
上図は自尊心が下がることで、孤独感が上がること示しています。それでは、女子の結果を見ていきましょう。以下の図をご覧ください。
こちらも男性の場合と同様に、孤独感が上がることが分かります。自尊心が低い場合、「自分は誰からも大切にされていない…」と感じることが多く、孤独感を感じてしまうと推察されます。
これは逆にいうと、自尊心を育てることで孤独感も改善できる可能性があるということです。自尊心を育てる方法については、以下で解説しました。自分に自信がない…と感じる方は、ぜひご一読ください♪
⑩孤独感を成熟させる
孤独感研究の第一人者である落合(1974,1983)[10][11]は、同じ孤独感でも未熟なものと成熟したものがあると考えました。
未熟な孤独感とは、相手と自分が一体化したい、何も言わずとも以心伝心したいと願うことから起こる孤独感を意味します。未熟な孤独感を持ち続けると「言わなくてもわかるはずだ」「どうして自分の気持ちを理解してくれないのか」とトラブルが起こりやすくなります。
一方で、成熟した孤独感とは、相手と自分は別々の人間で、異なった価値観を持っていると覚悟をすることから起こる孤独感を意味します。そして「お互い異なった人間だからきちんと話し合う必要がある」「相手の意見も自分の意見も違って当たり前、お互い尊重しよう」と考えることができます。詳しくは以下の動画で解説しました。仕上げとしてご活用ください。
あとがき
先日、History Channelで「ALONE 孤独のサバイバー」という番組を見ました。番組を要約すると、
・サバイバルのプロを10人集める
・山奥でサバイバルを行う
・援助は一切なし 最後まで1人
・最後までリタイアせず続けられると
5000万円もらえる
という内容でした。この番組を見ていると、脱落する理由の多くが
「孤独に耐えられない」
というものでした。参加者は屈強なサバイバーたちです。そんな彼らが「孤独感」を抱え、脱落していったのが印象的でした。飢えや渇きに匹敵するぐらい、孤独感は強烈な感情なのです。
実は筆者の川島は、21歳の頃、引きこもりを体験したことがあります。当時は半年近く、一切誰とも話さないこともありました。当時を思い出すと孤独で世界から疎外されているような感覚がありました。
孤独感は、一部メリットもあるものの、ほとんどの心理学の研究ではメンタルヘルスにマイナスとなります。皆さんが、豊かな人間関係を築き、屈託のない関係性を築き、笑いのある暖かい日々をすごされることを願っています。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・孤独感の改善,講座で仲間作り
・人と話す恐怖心の改善
・会話の技術練習,楽しく話す
・健康的な人間関係を築くワーク
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10件のコメント
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うーん。講座への勧誘は流石に胡散臭いと思う。
内容自体はそこまでひどくはなさそうなので、ちょっと問題ないと思います。にしても、孤独に限らず世の中のヒエラルキー、いわゆる負け組とか弱者だとか、そういうものはできるだけ無くしていきたいですよね。
今は色々な人が意見を発信しているのでまだマシですが。コメントさせて頂きます。
孤独はとても辛いですよね。
私も孤独で悩んでいましたので辛い気持ちはわかります。
飲み会などに誘われない、話を聞いてくれない、このような状況は本当に辛くて悲しいですよね。
怒りで一杯であることに気づいたのなら怒りを発散してみてください。
そして自分自身に(色々と辛い思いをしたよね、もう大丈夫だよ)(私は私自身が好きだよ)(私は私自身を愛しているよ)このような声掛けを自分にしてあげてください。
自分のことを好きになることで周りの人からも好かれるようになるかもしれませんよ。
ご参考になりましたら幸いです。孤独が辛くて死にたいです。精神科通ってもデイケア通っても、私は表層的にしか人とかかわれず、デイケア仲間の飲み会とかには一度も誘われませんでした。子供の頃から友達が出来ず、今も一人もいないため、話をする相手もなく、一人で色々活動しても誰も話を聞いてもらう相手はいません。おしゃれしても見てくれる人はいない。旅行に行っても話を聞いてくれる人はいない。結婚出来るひと、友達が普通にいる人、人間関係が作れる人と私は何が違うのか。結局わかりません。ポジティブにしていてもそれはフリだけで、ちょっとした事でものすごく怒りが出てしまい、「私は本当に怒りで一杯なんだな」と悟ります。イライラしてるんだと思います。それが隠そうにも自力では隠し切れないまま社会生活するのがストレスです。どんどん自分をキライになる。当然全くモテません。私は人に好かれない、なんで?知りたいです。
孤独ですねぇ。
ホントに。
このくらいで、すーっと消えてしまえたらいいのにと思います。
コミュニティかぁ。
嫌ですね。
もう人の和の中に入りたいとは思わないなぁ。
人とうまくやっていけるとは全く思っていないので諦めていますが。
ものすごい孤独をどうすれば良いのか全然わかりません。コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
・出典[1] Peplau, L. A., & Perlman, D. (1979). Blueprint for a social psychological theory of loneliness. In M. Cook & G. Wilson (Eds.), Love and attraction (pp. 99-108). Oxford, England: Pergamon.[2] 内閣官房孤独・孤立対策担当室(2022).人々のつながりに関する基礎調査(令和3年)調査結果の概要[3] 相川充,藤田正美(2005).成人用ソーシャルスキル自己評定尺度の構成 東京学芸大学紀要. 第1部門, 教育科学 56, 87-93,03-31[4] 内閣府(2014).平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査[6] 斉藤雅茂, 近藤克則, 尾島俊之, 平井寛 (2015). 健康指標との関連からみた高齢者の社会的孤立基準の検討 10年間のAGESコホートより 日本公衆衛生雑誌, 62, 95-105.[7] 法務省(2013).無差別殺傷事犯 研究部報告50[8] 相川充, 佐藤正二, 佐藤容子, 高山巌(1993).孤独感の高い大学生の対人行動に関する研究 : 孤独感と社会的スキルとの関係 社会心理学研究8巻1 号[9] 諸井克英(1987).大学生における孤独感と自己意識 実験社会心理学研究26巻2号[10] 落合良行(1974).現代青年における孤独感の構造(I) 教育心理学研究,22,3,162-170.[11] 落合良行(1983). 孤独感の類型判別尺度(LSO) の作成 教育心理学研究,31,4,332 – 336.
人にも物にも興味がほとんど持てず、ただただ毎日つらくて怖くてどうしたらいいのかわからずいます。
孤独感がそうさせているのかどうかも、気持ちに蓋がされていて正直わかりません。
自分が嫌いで、嫌いで、なにをどうしたいのか希望すら持てません。
人と楽しく接せるようになりたいと思う瞬間もあるのですが、恐怖と緊張でお店にも行けません。
助けてほしいです。