考えすぎる性格を治す,やめたい方へ,過度な読心への対策
皆さんこんにちは。
公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。
今回の相談は
「考えすぎる性格を治したい,やめたい」
です。
相談者
35歳女性
対人関係が不安定
お悩みの内容
私は幼少期に親から、厳しくしつけられてきました。しつけと言うよりも虐待に近かったかもしれません。親の顔色をうかがく癖がついてしまい、相手の本心を考えすぎる性格になってしまいました。
考えるすぎることをやめたいです。どうすれば良いでしょうか。
過去に大変な思いをされて、考えすぎる癖がついてしまっているのですね。当コラムでは、思い切って行動していくコツをお伝えします。一緒に改善していきましょう。
考えすぎる性格のメリット
まずはじめに考えすぎる性格の長所から考えていきましょう。
失礼な言動が少ない
相手の気持ちをよく考える分、失礼な言動が少ないということが挙げられます。こんなことを言ったら傷つくかも、もしかしたら本音は違うかも、と考えることで相手の気持ちによりそった話ができます。
リスクに強い
考えるすぎるということは、その分リスクを充分吟味できるということです。突拍子もない行動をしてしまい、大きな問題になることが少ないと言えます。
大局観がある
考え抜くことで、全体像が見えてくることがあります。すぐに行動をして失敗するよりも、精査して戦略的な設計図を描いて一気に物事を推し進めていく方もいます。
論理的である
内向的で考えすぎる方は論理的であることも分かっています。興味がある方は下記の研究を展開してみてください。
川原・松岡(2007)らは、専門学校生・大学生・大学院生335人を対象に質問紙調査を実施しました。その結果、以下のように情報処理スタイルの違いが確認されました。
内向性群
合理性の尺度得点が直観性尺度得点よりも有意に高い
外向性群
直観性の尺度得点が合理性の尺度得点よりも有意に高い
この結果から、物事の情報処理の仕方に次のような違いがあることが分かりました。
内向型の人は
合理的に考える傾向がある
外向型の人は
直観的に処理する傾向がある
内向的な人は、メリットやデメリットなをしっかりと合理的に考える傾向があります。こうした、ネガティブな面から目を背けない姿勢が思慮深さにつながっているのかもしれません。
また、内向的な人は、感情や思考をしっかり吟味できる性質があるので、論理性の高いトークをすることができます。そのため、芯の通った主張ができることが長所です。
考えすぎる性格のリスク
一方で考える過ぎることはリスクもあります。
悩み疲れる
何事も考えるタイプの方は、些細なことにも悩んでしまいます。例えば買い物をするときに、どちらにしようか悩み、購入した後も、正解だったかと悩み続けてしまいます。
田中ら(2013)は、意思決定スタイルが買い物にどのような影響を与えるかについて調査を行っています。その結果が以下の図になります。
図のように買い物の充実感は低いという結果が出ています。
考えすぎる性格の人は時間をかけて熟考しながら、ベストな商品を選ぼうとします。しかし、結果的に選択肢が増え、選ばなかった選択に意識が向かいやすいのです。
決定が負担になる
考えるタイプの方は決断することにストレスを感じます。決定的な結論が出るまでは行動することができないので、中途半端な結論を出すことにストレスを感じてしまいます。
田中ら(2013)は、優柔不断と決断に負担を感じる「認知的負担」について調査を行いました。
このように、優柔不断が高いと、認知的負担感も高くなっていることが分かります。
後悔しやすい
心理学の研究では、行動をしない人は、後悔をしやすいことが分かっています。例えば、告白をしようか?しまいか?迷っているうちに、誰かが告白をしてしまい、好きな人とお付き合いできなかったというケースはよくあります。
考えているうちに、考えずに行動する人にどんどんチャンスを奪われてしまうこともあります。
考えすぎる性格の原因
考えすぎる性格は、先天的、後天的様々な原因の影響を受けます。いくつか紹介させて頂きます。
内向型である
心理学の性格分析の中に「内向型」と呼ばれるタイプがあります。
スイスの精神医学者であるカール・ユングは、エネルギーが自分の内側に向かっていて、主観的認識を基準に行動する傾向にある人を内向的と説明しました。
たとえば
・躊躇、反省が多い
・受け身の姿勢
・人をよく観察する
という考えすぎる性格に該当します。
人の目を気にする
心理学の世界では人の目を気にする人ほど、行動しにくいという研究があります。周りの目を気にして、正解、不正解を考えると、自分の思い通りに行動できなくなります。
失敗過敏がある
行動する前に、失敗を考える癖がある方は注意が必要です。心理学の用語としては失敗過敏と言います。マイナスの未来を想像する癖があると、行動しようという気持ちになれません。
また実際に、失敗するのではないか?と過剰に考えると、実際に失敗しやすくなることも分かっています。
考えすぎる性格を治すコツ
では考えすぎる性格を克服するには、どうすればいいのでしょうか。今回は4つ紹介させて頂きます。
・心を読みすぎない
・時間を区切る
・ポジティブなイメージも持つ
・恐怖突入
心を読みすぎない
考えすぎる性格の人は過度の読心をしてしまいます。過度の読心とは、相手のちょっとした言葉や言動からありもしない想像をしてしまう状態を意味します。
例えば、職場で営業先から帰ってきた太郎さんに、オフィスにいたあなたが声をかけました。しかし、返事がありません。
もしあなたが、夜になっても相手の気持ちを考えてしまっていたら要注意です。
・無視された。。もしかして何か悪いことした?
・もしかして私、嫌われている?
これは、心の読みすぎで相手の気持ちを悪い方向へ考えてしまっている状態です。
相手の気持ちは、断片的な行動や言葉で判断する事はできませんし、正しい情報はその人にしかわかりません。太郎さんは「クレーム対応について考えていた」など他事を考えていたのかもしれません。
単純に声が聞こえていなかった可能性すらあります。
相手の気持ちを読む事は、気が利く・場を察するなど良い意味ももちろんあります。しかし、悪い方向へ考えてしまうと”一人相撲”をしている状態になってしまいます。
相手の気持ちを考えることは大事ですが、根拠もないことを、長時間考えることは控えるようにしましょう。
②時間を区切る
考えすぎる事は大切ですが、1日中考えているような方は要注意です。ある程度意識的に時間を区切ることが大事です。
例えば、お昼が終わったら仕事に集中するなど、やるべきことをしっかりやるようにしましょう。
いついつまでは考える時間にするが、それ以降はエイヤ!で行動しよう!こんな気持ちを持つことが大事です。
③ポジティブなイメージも持つ
特に失敗するイメージが先行してしまう方は、行動するまでに相当な時間がかかってしまいますし、逃げてしまうことも多々あります。逃げるということは、経験値を積む機会を失うことにもなります。
大事なことは失敗を考えるだけでなく、成功した時のイメージもしていくことです。そうすればリスクだけでなく、メリットも感じるので、行動することが早くなっていきます。
ポジティブなイメージをすることはワレンダ効果と言われ、実際に成功しやすくなります。失敗だけでなく成功イメージをすることも大事にしてみてください。
関連コラムを2つ紹介させて頂きます。後程ご一読ください。
④恐怖突入
最後は少々ストイックなやり方です。心理学の世界では「恐怖突入」という言葉があります。恐怖突入とは、怖い怖いと思う対象に思い切って飛び込んでみよ!という考えです。
これは森田療法という日本人の心理療法家が考えた手法です。私たちは怖い、不安という感情があると、どうしても考えすぎてしまいます。そして行動しない理由を見つけてしまうのです。
しかし、あらゆる行動には恐怖や不安はつきまとうものです。そのたびに行動することをやめていたらいつまでたっても行動することはできません。
そこで森田は、思い切って恐怖の対象に突っ込んでみよ!と主張しているのです。なかなか思い切った考えですが、1つのh時出しとしてぜひ持っておいてください。
しっかりと理解されたい方は以下のコラムを参照ください。
まとめとお知らせ
まとめ
今回は、考えすぎる性格の対処法ついてお伝えしました。じっくり考えることは大事ですが、過剰にならないようにしましょう。
どっちみち失敗するのであれば、早く失敗してしまった方が効率が良いです。ある程度、考えたら後は流れに身を任せてやってみる!という思い切りが大切です。ぜひ、4つのコツを実践してみてください♪
お知らせ
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・心理療法の基礎
・性格診断で自己理解を深める
など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。是非お待ちしています。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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出典・参考文献
・田中ら(2013)中高年者の意思決定スタイルが購買行動に与える影響に関する検討
・川原正広, & 松岡和生. (2007). 外向型・内向型における注意機能特性と情報処理スタイルの関連性. 現代行動科学会誌, (23), 1-10.
・女性看護職の強迫傾向が主観的QOLに及ぼす影響 原田 貴史, 中村 明美, 友竹 正人, 大森 哲郎 47 巻 (2007) 1 号 p. 33-40