信頼関係の意味とは?築く,構築する方法を解説
みなさんこんにちは。
公認心理師の川島です。私は現在こちらのコミュニケーション講座で講師をしています。
今回のテーマは
「信頼関係」
です。
はじめに
私はカウンセラーとして15年活動をしてきました。カウンセリングにおいては、相談者の方と信頼関係を築くことが大事になります。
当コラムでは、信頼関係の原理を解説し、実際にどうすれば構築すればいいのか?専門家の現場経験も含めて、しっかりと解説していきます。目次は以下の通りです。
・信頼関係の意味
・信頼関係の研究
・診断とチェック
・構築する6つの方法
信頼関係の意味と構築方法をぜひマスターしてください。
信頼関係の意味とは
意味
信頼関係を辞書で調べると、以下のように定義されています。
お互いを疑わず、信じて頼りにすること
この定義からわかることは、信頼関係には
・疑わないこと
・お互いを頼ること
の2つがあることがわかります。
具体例
例えば、スポーツではお互い信頼関係を築いているチームが強いのは誰でもわかることです。
サッカーでは、お互いの動きを信じるからこそ、スルーパスを出すことができ、相手の裏をかくようなプレーが可能となります。
ビジネスの世界では、信頼関係があるからこそ、お金の管理を任せたり、重要な仕事を任せることができるのです。
もしお互い信頼していなかったら、パスも出せないですし、仕事も任せられません。信頼関係はあらゆる人間関係の基本にあるのです。
信頼関係と研究
信頼関係については心理学の世界で古くから研究されてきました。以下折りたたんで掲載しました。気になるタイトルがありましたら、展開してみてください。
信頼関係に近い概念に、基本的信頼感があります。
これはアメリカの心理学者であるエリクソンによって提唱された概念です。Erikson (1959)は基本的信頼感を以下のように定義しています。
生後1か年の経験から獲得される社会や他者に関しての筋の通った信頼 、 自己に関する信頼する価値、という感覚を意味する(一部簡略化)。
基本的信頼感は、生まれてから1年間に原型ができるとされ、その後の心理的な発達に広く影響されるとされています。以下の図はエリクソンの発達段階を図にしたものです。
このように、乳児期の0~1才半の間に、基本的信頼感は構築されるのです。この時期に母子関係から十分な愛情を得られれば「自分はなんとかやっていける」という信頼感が得られます。
もし皆さんが親になったら、しっかり抱っこをして、愛情を注ぐことが重要です。この時期にしっかりと愛情を注ぐと、人を信じるという人間の基本的な精神が育っていくことになります。
石田(1998)の研究によると、信頼関係が得らえないことによって孤独感が高まることも示唆されています。これは感覚的にわかりやすい話だと思います。
人を信頼できない人は、コミュニケーションに回避的になり、孤独な状況に陥りそうです。
「一人の時間が好き」という人もいるかもしれませんが、他人を信頼しない状況が続くと孤独感が深まってしまいます。
三好(2007)は大学生285名を対象に、質問紙を用いて、精神的健康と基本的信頼感など項目の関わりを調べました。その結果は以下の通りです。
図の⇔は相関関係を表しています。
三好(2007)は大学生285名を対象に、質問紙を用いて、精神的健康と基本的信頼感など項目の関わりを調べました。その結果は以下の通りです。
信頼できる人は敵意が小さくなることがわかります。
信頼関係を構築する6つの方法
ここからは信頼関係を築くコツを6つお伝えします。
①無条件の肯定
②何気ない会話が土台
③アサーティブに接する
④信頼に保険を掛けない
⑤先に信じる
⑥人によって態度を変えない
ご自身の状況に合わせて参考にしてみてください。
①無条件の肯定
信頼関係の土台は無条件の肯定です。無条件の肯定とは、相手がどのような状況であれ、ねっこの部分を肯定していく姿勢を意味します。
例えば、日々の挨拶があります。
挨拶には条件はないはずです。機嫌が良い時も、悪い時も、喧嘩をしたときも、ひとまずあいさつだけはする。これが無条件の肯定です。
あいさつだけでなく、
・何はともあれ向き合う
・何はともあれ話を聴く
・人間性を肯定してくれる
・喧嘩をしても話し合いはする
このような態度が信頼関係のすべての土台です。信頼関係はこうした肯定の積み重ねで段々と大きくなっていくことを基礎として理解しておきましょう。
無条件の肯定をもっと理解したい方は、以下のコラムを参照ください。
②何気ない会話を大事にする
信頼関係の基礎は屈託のない会話です。
1つ参考になる例をお伝えします。公認心理師の中には、引きこもり支援をしている方がいます。この点、引きこもりの方は、警戒心が強いため、話し合いにならないことがあります。
この時、援助者はまずは雑談から始めるケースが多いです。引きこもりの方がはまっている漫画、ゲーム、テレビの話を屈託なくできる関係を築きます。実際にこれらの漫画を読むこともよくあります。
そうして何気ない会話を通して、お互いのリズム感を理解して、信頼関係を深めていくのです。このやり方は引きこもり以外の方にも同じように使うことができます。
・食事を一緒にして雑談する
・エレベーターで一緒になったら小話をする
・近況をお互い交換する
こうした目的のない会話が信頼関係構築には非常に大事なのです。
もし雑談が苦手…というお悩みがありましたら下記のコラムも参照ください。
③アサーティブに接する
信頼関係を築くには、アサーティブにコミュニケーションを取ることが大切です。アサーティブとは、「相手の意見も自分の意見もしっかり主張し合い、正々堂々と話しあえる姿勢」を意味します。
アサーティブに主張できる人とそうでない人を比較してみましょう。
非アサーティブ
1.本音を言わず,お互い偽る
2.偽りあうので疲れる
3.信頼関係を築けない
アサーティブな人
1.互いの本音を伝えあう
2.その上で譲り合う
3.本音がわかるので
お互いにストレスにならない
4.信頼関係ができる
このような違いがあります。
アサーティブでいることで相手や自分に対してオープンでいられ、お互いにとって納得できる状態を導き出すことができます。自他尊重の姿勢を大切に、対立が起きたら話し合うようにしましょう。
アサーティブをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
④保険をかけない
信頼関係を結ぶときは、ある意味で保険を掛けないことが大事になります。
例えば、信頼関係を結ぶときに、契約書を交わすことは、その裏の意味で、あなたのことを実は信用していないというサインになってしまうのです。
長くなってしまうので、あとは折りたたみました。保険をかけずに信じるってどういうこと?!と感じる方は以下の折り畳みを参照ください。
私たちが「保険」と聞くと、一見メリットが大きく感じますよね。
・契約書がある
・担保がある
・NGな場合の保証がある
などが挙げられます。賃貸物件契約においては、貸す相手をあまり信頼できなくても、担保と言う保険があるから安心するのです。
しかし、実は「保険」を求めすぎると、信頼関係が構築しにくくなっしまうのです。
保険のあり,なし
ここで1つイメージをしてみましょう。
例えば、あなたは画期的なアイデアを思いつき起業をすることにしました。しかし、残念ながら1000万円足りません。
この時、以下の2つの候補がったとしましょう。
保険がないと貸してくれない銀行
・退職金を担保にして500万円貸してくれた
・ただ、もう担保はなくなってしまいました
・もう少し貸して欲しかった
・銀行は担保がないなら諦めてくださいと言う
保険無しで貸してくれる投資家
・素晴らしいアイデアだ!
・君の熱意もわかった
・この1,000万円で必ず成功してくれ
・担保はなくてもいい
無条件に信頼されると絆が深まる
ここで皆さんに質問です。この2つの貸主のどちらをあなたは信頼するでしょうか?おそらく、信頼してくれる投資家だと思います。
もちろん銀行には感謝をしますが、自分のアイデアや人柄を無条件に信頼してくれた投資家の方が、より感謝の度合いも大きいでしょう。
「信頼」は無条件に相手をなるべく信用しようとする行為であり、人は信頼されると、信頼された方をまた信頼します。こうして信頼関係は強くなっていくのです。
④まずは信頼する
ある社会心理学の実験では囚人のジレンマという葛藤状況で
・相手を信じて付き合っていく
・相手を疑って付き合っていく
どちらがパフォーマンスが高いか?という研究が盛んにおこなわれてきました。その結果、まずは相手を信じる方が、パフォーマンスが高いことがわかっています。
最初から人を疑ってかかるのか?最初から信頼して付き合っていくのか?私は後者をお勧めします。実際私も15年会社を経営していて、様々な方と付き合ってきましたが、後者でほとんどがうまくいきました。
もし実験に興味がある場合は以下のコラムを参考にしてみてください。
⑥人によって態度を変えない
人から信頼されるには、誰でも一貫した付き合い方をすることが大事です。
肩書が偉い人、上司、収入が高い人にはぺこぺこして、自分より下の人と見るや尊大な態度をとるような人は信頼されません。
社会的にどのような立場の人であれ、一貫して公平に接していくことが信頼される人物の特徴になります。
ありのままの相手を認める方は、どのような環境であれ、ちゃんと向き合ってくれると相手は感じ取り、信頼関係を築きやすくなるのです。
まとめとお知らせ
まとめ
ここまで信頼関係を築くためのコツをお伝えしてきました。実はカウンセラーの私自身、若いころは不信感の塊になってしまった時期がありました。
しかし、そうした不信感は相手に伝わり、結局お互いの信用できず苦しい関係にしかならないことに気が付きました。
今は心から信頼できる仲間に囲まれ、充実した感覚がすごくあります。
もしかしたらいつかは裏切られることもあるかもしれないですが、それでも私は自分から相手を信じようと思っています。
良かったら参考にしてみてくださいね(^^)
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
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Twitter→*出典・参考文献
・石田靖彦(1998). 友人関係の親密化に及ぼすシャイネスの影響と孤独感 名古屋大学 社会心理学研究 14( 1). 43-52,
・Casioppo, J. T., & Patrick, W. (2008). Lonliness : Human Nature and the Need for Social Connection. (カシオポ, J.T, & パトリック, W. 柴田裕之 (訳) (2010). 孤独の科学 ――人はなぜ寂しくなるのか―― 河出書房新社)
Baumeister, R. F., Twenge, J. M., Nuss, C. K. (2002). Effects of social exclusion on cognitive processes: Anticipated aloneness reduces intelligent thought. Journal of Personality and Social Psychology, 83(4), 817-827.
Journal of Economic Behavior & Organization Volume 92, August 2013, Pages 163-175Prisoners and their dilemma MenuschKhadjaviAndreasLange
河津・杉山・中須(2012)スポーツチームにおける集団効力感とチームパフォーマンスの関係 の種目間検討
信頼関係を構築する5つの方法のほとんどが精神論なんですが・・・
人を信頼できない人に「まずは信頼してみる」ってそれが出来ないから悩んでいるのでは?