マウンティングする人の心理,対処法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「マウンティング」です。
相談者
30歳 女性 OL
お悩みの内容
友人のマウンティング発言にうんざりしています。「じつは私の彼氏、東大出身なんだ」とか「彼氏いないの?!今度男を紹介するよ」とか…、友人のマウントにはどのような対処をしたらいいでしょうか。
マウンティングは、悪口を言われているわけでもないのに、非常に不愉快な思いをしますよね。世の中にあるマウンティングの危険から自分の身を守りたいものです。そこで今回は、マウンティングの理解と対策についてしっかり解説しますのでぜひ最後までご覧ください。
マウンティングの歴史
まずはじめにマウンティングの意味から理解を進めていきましょう。
意味
瀧波・犬山(2014)[1]によるとマウンティングは以下のように定義されています。
「自分の方が立場が上」と思いたくて、言葉や態度で自分の優位性を誇示してしまうこと
具体的には、学歴や年収などのステータス、持ち物などを自慢したり、他人を見下す言動を指します。
歴史
マウンティングの語源は、英語の「mount」です。mountには「山に登る・馬に乗る・騎乗する」という意味でつかわれていました。
その後マウンティングは、1960年代くらいから生物学の分野で使われるようなりました。例えば、1960年に行われた香川大学野中教授のジュウシマツに関する論文[2]の中で、ジュウシマツの交尾の姿勢をマウンティングと呼び、調査が行われました。
また1973年には、霊長類研究所の森教授が、サルが自分の順位を確認するために他の雄に乗っかるしぐさをマウンティングと名付け研究されるようになっていきました[3]。
その後、2014年になると、瀧波(たきなみ)ユカリと犬山紙子(いぬやま かみこ)の共著である『女は笑顔で殴りあう:マウンティング女子の実態』のなかでマウンティングという用語が登場し上記のようにマウンティングが定義されました。
さらには、同年にテレビドラマ『ファーストクラス』で「マウンティング」しあう女子の様子が描かれ「2014ユーキャン新語・流行語大賞」に「マウンティング(女子)」がノミネートされます。このことで、一気にマウンティングという用語が浸透していきました。
マウンティングの型
マウンティングには「直接型」「間接型」の2つの型があります。
直接型
直接型は、わかりやすいマウンティングです。
面接の待合室で「みんな内定持ってないんすか?俺5つ持ってるんですけど〜〜」(市川,2019)[4]
言ってる側も、言われている側も「マウンティングをしている(されている)」ことを理解しています。ある意味すがすがしいマウンティングと言えます。
間接型
間接型は、やや複雑なマウンティングになり「他者の肯定+湾曲表現」で構成されます。
「○○さんって、身長高くてスタイル良くていいな~(肯定) 私なんて、小さいから男の子に助けてもらうしかなくって……(湾曲表現)」(市川,2019)[4]
間接型は、知らず知らずのうちにマウントされるため、その場では気が付かないこともあります。あとで思い返すと「マウンティングされた~」と悔しい思いをすることもあったりします。
マウンティングの種類
市川(2019)[4]はテレビドラマや書籍を対象にマウンティングの種類を検討しました。その結果、マウンティングは大きく分けて3つのカテゴリーがあることがわかりました。
伝統的な女性マウンティング
貞淑さ 既婚の安定 彼氏の存在 子どもの存在 年の功 実家資源
<具体例>
「旦那の同僚の男子を紹介するね~」
「父の会社だから遠慮しないで」
「東大生の彼氏ができてさ~」
地位・能力マウンティング
学歴 仕事の有能さ 苦労 経済力 独身の自由 海外経験 居住地 趣味・教養
<具体例>
「へえ~国内旅行が好きなんだね。」
「私は○○大学だから大したことないよ」
「最年少でリーダーになったから大変」
性的魅力マウンティング
モテ経験 男のセンス 趣味・教養 美しさ ファッションセンス
<具体例>
「お医者さんと付き合ったことがある」
「○○ちゃんってメイクが上手だね」
「3人告白されてもタイプじゃないから困るよね」
マウンティングする人の心理
マウンティングする人の心理には、4つの特徴があります。
①略奪される焦り
サルの上下関係の性質を元に紹介します。
野生のサルには、自然界にある豊富な資源を手にすることができるためボスザルが存在しません。一方で、飼育のサルの場合、食べ物や移動に制限があります。集団の中で争いが起きることもあるため、安定を図るために上下関係が生まれボスザルが必要になります。
人間で置き換えるなら、豊かな社会であればマウンティングはほとんど存在しないでしょう。
一方で貧しい社会であれば、競争が発生してマウントが勃発してしまいます。
マウンティングする人は、自分の限られた環境や資源を奪われてしまう焦りからマウントしてしまうと推測されます。
②抑うつ感が強い
浜口ら(2009)[5]は、中学生603名を対象に、攻撃性に関する調査を行いました。その中で抑うつ感と仲間支配の関係を調べています。その結果、抑うつ感と仲間支配は正の相関にあることがわかりました。
これは、抑うつ感が高い人ほど仲間支配が強くなる傾向にあることを示しています。支配する心理は、マウンティングと非常に近い関係にあります。このことから、マウンティングする人は、抑うつ感が強いといえるでしょう。
③不満解消意欲が強い
荻野ら(1996)[6]は、首都圏の大学生662名を対象に性格研究を行いました。研究一部では、支配性について調べています。以下の図は、不満解消意欲について支配性高群(マウントしやすい群)と支配性低群(マウントしにくい群)を比較しています。
支配性強群「マウントしやすい群」:不満解消意欲が強い
支配性低群「マウントしにくい群」:不満解消意欲は弱い
つまりマウンティングしやすい人は、何らかの不満があり解消するためにマウンティングしてしまうといえます。
④承認されたい
荻野ら(1996)[6]の研究では、承認欲求についても調査をしています。以下の図は、承認について支配性高群(マウントしやすい群)と支配性低群(マウントしにくい群)を比較しています。
支配性強群「マウントしやすい群」:承認欲求が強い
支配性低群「マウントしにくい群」:承認欲求が弱い
つまりマウンティングしてくる人は「褒めて欲しい」「認めて欲しい」など承認されたいという願望が強いと言えます。
マウンティングする人への対策
マウンティングする人から身を守るための対策として6つ紹介します。
①背景の心理を探る
マウンティングをしてくる人が「なぜそのようなことをするのか?」を考えると解決するヒントになります。
たとえば、「この人は自尊心が低いのかもしれない」「もしかしたら、弱い自分を隠そうとしているのかもしれない」「何らかの不満があるのかもしれない」など、まずは相手が「なぜマウンティングをしてくるのか?」を考え、相手の背景を探るようにしましょう。
②承認してあげる
マウンティングする人は、「周囲から認められたい」「注目されたい」「褒められたい」という気持ちから、自分の価値を際立たせるような発言をしてしまいます。心理的な背景をよく考えた結果、愛情不足や劣等感が原因と考えられる場合は「承認してあげる」ことが対策の1つになります。
具体的には、積極的にほめる、受容的に接する、成果を認めるなどが挙げられます。承認欲求を満たしてあげることで、相手はマウンティングを取る必要がなくなり、穏やかな発言が増えることがあります。
ただし、少し大人の対応になるため、自分に余裕がある時に実践してみてください。
③牽制球を投げる
マウンティングを承認する余裕がない、マウンティングに乗っかれない、という場合には、相手に気づいてもらうことが必要です。相手の土俵で戦うのはNGです。やんわりと牽制をすることで相手に気づいてもらいましょう。
たとえば、
「あれ?もしかしてマウントですか(笑)」
「今の発言、何気に傷つくかも~」
「え!やば!怒られますよ~」
このような言葉で相手のマウンティングを上手くかわすことも大切です。
④肯定部分を全力で認める
マウンティング発言の肯定部分について、全力で認めるという対策もあります。間接型のマウンティングには、肯定的な表現が含まれていることがよくあります。
「○さんって身長高くてスタイル良くていいな~(肯定) 私なんて、小さいから男の子に助けてもらうしかなくって……(湾曲表現)」
と言われたら、肯定部分をしっかりと受け止めて相手に返します。
「そうなの!自立している女性が好きな男子にけっこうモテるのよ」
肯定的な面を自分の成果にしてしまうと、相手はマウンティングがしにくくなります。
⑤不快感を伝える
牽制球を投げたり、承認をしてあげたり、肯定部分に乗っかても、マウンティングをやめない人は一定数いらっしゃいます。相手が空気が読めず気づけないような状況では、自分の気持ちを直球で伝えるようにしましょう。
たとえば、
「それって私を下に見てますよね。やめて欲しいです。」
「田舎を馬鹿にされたようで深いです。」
「今のいい方は、さすがにないんじゃないですか。」
このような強い主張も時には必要です。
⑥サルと思え!
マウンティングは、サルの世界では上限関係を明確にする原始的な反応として行われます。つまりマウンティングをする人は、サルの本能的な行動をしているともいえます。
マウンティングする人と遭遇したら「あ!この人はサルの本能がのこっているんだな」と考えると、気持ちがが楽になります。大きな心で考えていけるといいでしょう。
まとめ動画
当コラムは動画でも解説しています。まとめとしてご活用ください。
もっと学びたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・マウンティングの心理と対策
・断り上手になる練習
・嫌な気持ちを伝える,自己主張訓練
・健康的な人間関係を築く練習
🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→

名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
*出典