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恨みを晴らし方と蓄積される問題

恨みを晴らす方法と蓄積される問題・解消法①

みなさんこんにちは、はじめまして臨床心理士の加賀です。私は、これまで臨床心理士として精神科・心療内科クリニックでカウンセリングを行ってきました。その経験や心理学の知識の中から皆さまのお役に立てられるような情報をお伝えしていきたいと思います。本コラムでは「恨み」について詳しく解説をしていきます。

  • 恨みとは?意味や定義
  • 甘えとの関係
  • 殺人動機の実態
  • いじめに加担する可能性大
  • 敵意で生活の質が低下
  • 蓄積すると抑うつが強まる

恨みの問題や最近の研究結果についてしっかりお伝えしたいので少々お時間がかかります(^^;ちょっと大変ですが、是非お付き合いください。

恨みとは何か?

恨みという言葉は、

・あの時の恨みを果たす
・~さんを恨んでいる
・恨み辛みを吐き出す

などネガティブな感情を表すときに使われます。学問的には次のように定義されています。

・山野(1987年)
だれかにひどい仕打ちをされて不快になった思いを、辛抱し続けた結果でてくる感情

つまり、恨みとは不快な出来事からすぐに生まれるわけではなく、ある程度時間が経過して生まれる感情のようです。

恨みとは?

恨みと甘えの関係

 恨みの根底には、意外なことに甘えの感情もあるそうです。“甘え”の研究で有名な精神分析家 土井建郎(2007)によると、

・愛されたい
・気持ちをわかってほしい
・自分の都合に合わせてもらいたい

という甘えの感情が満たされない時に、憎しみや怒りが生まれ、甘えの感情が表現されず押さえ込まれた結果、恨みの感情が出るということです。そして、甘えと恨みの感情が混ざり合い「すねる」「ひがむ」「ひねくれる」など被害者意識につながるということです。

恨みと甘えの関係

「どうしようもない…」という、無力感や諦めといった内向的な感情も生じることが予想されるため、当事者は苦悩を体験している可能性があると言えそうです。

恨みの特徴と問題

恨みの感情が長期間こころにあると精神的に健康とは言えませんよね。恨みが蓄積された結果どうなるのか・・・。予想しやすいのが犯罪かもしれません?Googleで「恨み」「犯罪」というキーワードで検索すると300万件以上ヒットします。ここでは、恨みの感情と攻撃性について、研究結果をもとに見てみましょう。

研究① 恨みは第何位?殺人動機の実態

法務省が公開している研究報告からご紹介します。この研究では、殺人を犯した52名(51名男性:1名女性)の犯行動機の内訳を表しています。

殺人理由に関する法務省の統計

この研究報告では、犯行動機の第2位に「他者に対する恨みや怒りを晴らす」とあります。第1位の「自分の現状に対する不満」に関しても、社会や周囲に分かって欲しいという気持ちが、恨みの感情につながるとも読み取ることもできるかもしれません。

研究② 恨みは人を攻撃的にする

澤田(2013)は、小中学生のいじめがなぜ起こるのか、助長されるのかという研究をしています。小中学生1,707人を対象に質問紙調査を行いました。この研究では、友達からいじめに誘われた際、いじめに関わる子供は「いじめ傍観者」「いじめ支援者」「いじめ強化者」の3タイプに分けられるとしています。

以下は、恨みの強い子どものいじめ参加役割についてまとめています。( )内の数値が他群と比較した相対的な結果です。恨み感情が強い子どもは、いじめに参加する「いじめ支援者」と、いじめに積極的に加わる「いじめ強化者」に多いことが分かりました。

恨みが強い子のいじめの特徴この結果は、恨みが強い人が、いじめの支援者やいじめの強化者に回ることが多く、積極的にいじめを助長する立場に回る可能性を示しました。

以上の研究から、同じネガティブ感情を持っていても恨み感情の方がいじめに直接的に参加するなど攻撃性が強いことがわかりました。

研究③ 敵意が強いほど生活の質が低下?!

研究②では、強い恨み感情は攻撃性を上げるという結果でした。恨みとは相手への感情なので敵意とも解釈できます。

敵意とは、他者に対する否定的な信念、態度、猜疑心、不信感、恨み(佐々木・山崎,2002)であるといわれています。ここでは、敵意≒恨み感情として生活の質(Quality of life; QOL)との関連をみていきます。

橋本・織田(2008)は、286名の大学生を対象に質問紙による調査を行いました。質問紙では、敵意とQOLを測定するものが用いられています。QOLは以下の項目で構成されています。

身体的:睡眠、食事、身体の痛みなど
心理的:生活の中での楽しみなど
社会的:対人関係など
環境的:安全感など

調査の結果、敵意がすべてのQOLの項目と、中程度から強い負の関係にあることが分かりました。

敵意とQOLとの相関係数

つまり、敵意≒恨みにより生活の質全般が下がる可能性が高いということです。また特に、心理的QOLが下がっていることから、敵意≒恨みが強くなってくると抑うつを強める恐れもあります。

反すうは注意!抑うつを強める

澤田・中野(2015)では、恨みとは、侵入思考や反芻(はんすう)により、持続する怒りのことと説明されています。

・侵入思考
勝手に頭の中に浮かんでくる思考のこと
・反芻
思考を頭の中でぐるぐる繰り返すこと

恨みとは、冒頭でご説明した不快な思いを辛抱し続けた結果でてくる感情でしたね。つまり自分の中にため込んでぐるぐると反芻させている状態であると言えます。この自分の中でぐるぐると巡らせる反芻思考は精神的健康によくないことが多くの研究からわかっています。

まずは、以下の図をご覧ください。神谷・幸田(2016)のネガティブ反すう思考が及ぼす影響についての結果です。

ネガティブ反芻思考の影響

結果から、
・ネガティブ思考が、
将来否定や抑うつ気分に影響を与える
・自己否定や過去現在の否定が
ネガティブ思考の反芻に影響を与える
ことが分かりました。

つまり「~すればよかった」「~しなければよかった(過去現在否定)」「自分なんてだめだ(自己否定)」などのネガティブ思考の反芻を行っていると、将来に希望が持てず、抑うつ気分も高まるということです。相手への恨みを反芻させること自体が、抑うつを高めてしまうのです。

恨み感情の反芻が抑うつに影響澤田・中野(2015)らは、
恨みは相手を何とかしたいと思ったときに相手基準で動いてしまう感情であり、それではいつまでたっても相手に振り回されて本質的な解決には至らない

と述べています。恨みの感情を受け入れ、自分なりの発散方法を探すことが恨みを晴らす良い方法になるのかもしれません。

恨みを前向きに活かす方法

恨みの心理はネガティブな印象がありますが、昇華することで行動エネルギーに変えることができます。

昇華とは?

昇華は、自分の中で受け入れがたい欲求があった時に、社会的に望ましい方向に変化させ発散させていく心の働きのことです。たとえば、いじめにあった経験があったとします。

恨み⇒マイナスに使う人
いじめの経験に恨みをもち、暴言などを吐くなど攻撃的になります。恨みの結果的に自分もマイナスの状況になってしまいます。

恨み⇒昇華できる人
いじめの経験から、いじめのない社会をつくるための勉強を始めたとしたら、社会貢献のための活動の原動力できます。

このようにマイナスの心理をプラスの行動に役立てることを昇華と言います。恨みの感情を抱いた時は、ポジティブな出来事へ変えるチャンスでもあるのです。

*例を示しながら動画解説もしています。

恨みを表現して発散しよう

「恨み」コラムでは、恨みとは何か?国内で分かっている恨みについての研究結果を解説してきました。コラムを読み終えて“恨みとは何か?”を理解し、「明日から何かやってみよう」と思って頂けると嬉しいです。そこで、あなたが悩んでいた問題が少しずつ解消されることを実感して頂けたら幸いです。

最後に、これまで「恨み」コラムにお付き合いして頂き、ありがとうございました。新しいことを生活に取り入れ、これまでの習慣を変えるのはなかなか大変なことです。焦らず、できそうなことから根気強く取り組んでみて下さい。

心理の専門家の講義を受けてみたい!という方は良かったら私たち臨床心理士・精神保健福祉士が開催している、コミュニケーション講座への参加をおススメしています。コラムだけでは伝えきれない知識や実践的なワークを進めています。みなさんのコミュニケーション能力が向上するよう、講師も一緒に頑張ります!よかったらいらっしゃってくださいね(^^)

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・引用文献
・土井建郎(2007)「甘え」の構造, 弘文堂 
・神谷慶, & 幸田るみ子. (2016). 大学生の抑うつにおける自動思考とネガティブな反すうの関連. ストレス科学研究, 2016005.
・澤田匡人・中野信子(2015)正しい恨みの晴らし方,ポプラ社.
・澤田匡人. (2013, July). PD-012 いじめ被害者に対する妬みと恨みが参加役割に及ぼす影響: いじめ被勧誘者の態度に基づく類型化を通じて (人格, ポスター発表). In 日本教育心理学会総会発表論文集 第 55 回総会発表論文集 (p. 275). 一般社団法人 日本教育心理学会.
・鈴木拓朗. (2018). 「恨み」 とは何であるのか?. 感情心理学研究26(Supplement), ps34-ps34.
・橋本空, & 織田正美. (2008). 大学生における攻撃性と Quality of Life の関連性. 健康心理学研究21(2), 49-56.
・山野保(1987)「恨み」の心理―その洞察と解消のために,創元社