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挫折経験から立ち直る,乗り越える方法

挫折経験から立ち直る,乗り越える方法

皆さんこんにちは。
公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。私は現在こちらの心理学講座の講師をしています。

今回の相談は
「強い挫折経験で立ち直れない」
です。

挫折経験,立ち直れない

相談者
25歳 男性

お悩みの内容
私は弁護士を目指して4年になります。当初は使命感に燃えて勉強を続けていたのですが、3年目あたりから心が折れてしまい、4年目をもってあきらめることにしました。

20代の前半の大事な時期をすべて勉強に費やしてきたので強い挫折感があります。立ち直る方法、乗り越える方法を知りたいです。

まずはじめに4年間の勉強おつかれさまでしたと言いたいです。勉強を、はじめ、やめるまで、様々な葛藤があったと思います。ここまで頑張ってチャレンジされたことをまずは労いたいと感じました。

一方で夢をあきらめた時、私たちは心理的に不安定になります。特に結果が出なかったときは、慎重になるべき時期です。当コラムで挫折から立ち直るまでのプロセスを提案させて頂きます。

参考にしてみてください。

挫折経験のプラスの側面

・頑張っていた資格試験に落ちた
・第1志望に合格できなかった
・ケガをして引退せざるを得ない

心と大きな穴が開いてしまったような感覚、誰しも経験したことがあると思います。私も人生で散々挫折してきました。人生にとって挫折にはどのような意味があるのでしょうか?

まずはプラスの側面か見ていきましょう。

①成長につながる

心理学の世界では、PTG=外傷後成長と言う用語があります。PTGとは、Post-traumatic grouse の頭文字を取った用語です。

米国の心理学者Tedeschi博士(2004)はPTGを以下のように解説されています。

危機的な出来事や困難な経験との精神的な葛藤や闘いの結果に生じるポジティブな心理的変化の体験のこと

私たちの心は、挫折や困難の際に、一時的に傷つくこともあるのですが、大概の場合はそれを乗り越えて、むしろ成長していくとされています。

挫折をした時期は辛いものですが、人生をトータルで見ると成長に欠かせない出来事と言えます。

②人生の目的を深く考える

挫折はアイデンティティの確立に繋がります。アイデンティティとは難しい用語ですが
「人生の目的を明確にする」
「どう生きるべきかを考える」
こんな意味があります。

アイデンティティの確立のためには「試練」が必要であると言われています。歴史上の偉人ほど実は大きな挫折をしていることがよくあります。

例えば、25兆円企業のアリババ創設者であるジャックマーは、大学入試に3回落ちて、就職活動では30社落ちたようです。起業も2度ほど失敗します。

映画監督のスピルバーグは、学習障害で、いじめを受けています。大学入試でも2回失敗し、さらには中途退学しています。

試練がなく、なんとなく進路を決めてしまうことをまうことを、心理学的に早期完了といます。早期完了してしまったひとは、目標が不安定で、充実感が不足すると言われています。

その意味で挫折は、人生の意味を深く考える格好の時期だと言えるのです。

③他者への共感の土台

私たちは、挫折して傷つくことで、人の気持ちが理解できるようになっていきます。他者の「挫折感」にも共感できるようになり、その人の力になりたい、助けてあげたいという気もちが生まれるのです。

挫折は辛いですが、挫折するからこそ私たちは人の痛みが分かるようになるのです。

挫折経験のマイナスの側面

挫折はプラスの意味がある一方で、取り扱いを間違えるとマイナスの影響も大きくなります。

①人と会いたくなくなる

心理学者の谷(1997)はアイデンティティ危機について研究をしています。

アイデンティティ危機とは
「目的を失った状態」
「心理的に揺らいでいる状態」
を意味します。

谷の研究では、アイデンティティ危機は対人恐怖症を高めることがわかりました。

挫折に対処しよう

挫折を味わったばかりの時期は、自分とは何かがわからなくなり、暗い気持ちになりがちです。相手に気を使わせるのも、気落ちした自分をさらけ出すのも嫌なものです。

その結果、人と接することを避けたい気持ちが出てきます。短期的には仕方のない面もありますが、長期化すると社交性を失っていくことがあるので注意が必要です。

②無力感が強くなる

人生に挫折はつきものですが、やはり成功も必要です。挫折がいくら学びになるからと言って、挫折が何度も続いている状態は自信がなくなってきます。

挫折が続き、もうどうしようもない…という感覚になることを学習性無力感と言います。学習性無力感が強くなると、チャレンジする気力や、行動する気力が減退していきます。時に投げやりになってしまうこともあります。

③精神疾患のリスク

挫折はある程度の時間で自然と回復するものですが、稀に重篤な状態になることがあります。ひどく落ち込んでしまい、何もやる気が出ないような状態は適応障害という診断を受けることがあります。

*適応障害はこちらの動画で解説しています。落ち込みが大きい方は念のためご確認ください。

診断とチェック

当コラムをご覧いただいている方の中には緊急性が高い方がいる可能性があります。下記の簡易診断でチェックしてみてください。

挫折経験を乗り越える5段階

ここからは挫折経験を乗り越えるプロセスを解説していきます。心理学の世界では、危機理論という分野があります。

危機理論とは人生における様々な心理的危機において、人間はどのように乗り越えていくのかを考えていく分野です。

様々な理論があるのですが、今回はフィンクの理論を参考に私なりに少々アレンジを加えて解説させて頂きます。

①挫折経験初期

強い挫折、失恋、死別、天災など心に大きなダメージを負った時、苦しい感情はさまざまな現れ方をします。
・涙が止まらない
・強く落ち込む
・食欲がない、身体が重いなど
・人と会いたくない
などマイナス感情が強くとても辛い時期です。

挫折経験初期

②葛藤期

現実が受け入れられず、あれやこれやと葛藤する時期です。別の道を目指した方がよかったのかも…あの時こうすれば良かった…ああでもない、こうでもないと悩みます。挫折初期とはまた違った心理的な負担があります。

挫折が辛い

③挫折の受容期

自分の心と向き合い、徐々に現実を受け入れられるようになっていきます。失敗から学ぶこと、自分の能力、運命に折り合いをつけられるようになっていきます。

④活動再開時期

挫折経験に意味を見出し、興味関心が元通りになります。場合によっては、挫折をする前よりも、よりエネルギッシュに動き出す方もいます。

⑤振り返り期

挫折経験から数年たった後に、改めて挫折経験を振り返り、あの時の体験は重要な意味があったと振り替える時期です。人生トータルで見ると、挫折には深い意味があったと気が付きます。

 

講師の視点

このように挫折経験は最初はすぐに受け入れることは難しいですが徐々に人生において重要な意味付けがされていくのです。以下、特に重要な、挫折初期,葛藤期,承認期の3つの時期について解説していきます。

①挫折経験初期のすごし方

挫折初期は休息が必要

挫折初期は休息が基本になると思います。特に不眠や頭痛などの症状が体に表れている方は要注意です。今まで散々頑張ってきた自分を労わり、休息をとりながら、心を休めましょう。

自分なりに休憩しながら、心をじっくり整理していけば、いずれは解決できると大局的に考えていきましょう。

信頼できる人に甘える

挫折したばかりの時は、人に会いたくないのが普通です。しかし、完全に苦しい気持ちを一人で抱え込んでしまうことも危険です。特にあなたの状況を理解している人は1人もいないのは問題です。

私たちは助け合うことができる生き物です。辛い時はお互い様です。本当に辛い時は遠慮なく周りに助けを求めましょう。

一人で悩みを抱えている…という方は以下のコラムを参考にしてみてください。

ソーシャルサポートのある生活を大事に

 

②葛藤期のすごし方

休息をとり、余裕が出てきたら、あれやこれやと心を整理する必要があります。もちろん心を整理するのは容易ではありません。挫折初期とはとはまた違った大変さがある時期です。

認知の歪みがないか?

葛藤期は、認知の歪みを発見することをオススメします。挫折したばかりの頃は何かと悲観的になりがちで、ありもしない絶望的な未来を考えがちです。

・もう人生真っ暗だ
・絶対に取り返せない
・まともに生きていけない

このような思考は「過度の悲観」と呼ばれる認知の歪みです。特に挫折経験が大きいほど、これらの思考が頭をぐるぐる回りやすくなります。

思い当たる方は以下のコラムを参照ください。

認知の歪みを見つけよう

現実的に考える

認知の歪みを見つけたら、現実的に考える練習が必要になってきます。挫折をすると、最悪の未来をイメージしがちですが、冷静に考えれば、そこまでマイナスのシナリオを描かなくてもいいことに気が付くはずです。

以下のコラムを参考に現実的に考えるようにしましょう。

現実検討力をつける

③挫折の受容期

挫折の受容期になってくると、過去の出来事に前向きな意味付けをする時期になってきます。ただし、当コラムに来られた方は、前向きに考える余裕がない方も多いと思います。

少し余裕があるときに効果を発揮するやり方なので、時期がきたら以下を参考にしてみてください。

リフレーミング

挫折受容期はリフレーミングがおススメです。リフレーミングは1つの出来事に様々な意味付けをしていく手法を意味します。挫折を前向きに考えると言われてもうまく発想できない方は以下のコラムを参考にしてみてください。

前向きな解釈に変えるリフレーミング

アイデンティティの確立につなげる

私たちは、挫折を味わった時こそ、人生と本気で向き合い、自分とは何か?を発見していくものです。

例えば私は、対人恐怖症になったことがあるのですが、その時期ががあったからこそ、心理学をしっかり学び、世の中に貢献したいと考えることができました。

アイデンティティの確立は挫折を乗り越える上で、強いよりどころになります。人生の目的を再設定したいと感じる時期に以下のコラムを参照ください。

アイデンティティの確立へ

苦しい時期,乗り越える

まとめとお知らせ

まとめ

当コラムにたどり着いた方のほとんどは今とても辛く余裕がない時期だと思います。最後は私なりの考えなのですが、人生は挫折があるからこそ面白いと考えるようにしています。

例えば、映画を見てみましょう。主人公のほとんどは挫折や苦しい出来事があり、それを乗り越えていくことが分かります。

もちろん挫折はいやなものです。でもどうせ挫折をしてしまったのなら…あなただけの厚みのある物語の1ページにしてほしいと切に願っています。

お知らせ

私たち公認心理師・精神保健福祉士は、メンタルヘルスの向上について心理学講座を開催しています。心理学を体系的に勉強されたい方のご参加をぜひお待ちしています。

執筆者も講師をしています(^^)
 ・心理療法の基礎
 ・リフレーミング練習
 ・思考の歪みを改善する
 ・アイデンティティ確立ワーク

この機会に心理学をしっかり学んでみたい!という方におすすめです。詳しくは下記の看板からお待ちしています。

助け合い掲示板

1件のコメント

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    • なりた
    • 2019年5月14日 11:57 PM

    そう言うことだったのか…って素直にに納得。
    挫折への対処法をもっと早く知りたかったです。
    私は視野は狭いし、甘え下手なので苦労しました。
    リフレーミングは万能ですね。

    返信する

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・傷ついたあなたへ-わたしがわたしを大切にするということ DVトラウマからの回復ワークブック レジリエンス 2005 . 梨の木社.

*出典・引用文献
・幼児期における感情表出についての認識の発達;5歳から6歳への変化久保ゆかり 2007 . 東洋大学社会学部紀要, 44(2), 89-105.
・Sidney, Z. et al 2009 Grief and bereavement: what psychiatrists need to know. World Psychiatry, 8, 67-74
・谷冬彦(1997) 青年期における自我同一性と対人恐怖性心性 教育心理学研究 45号3巻 254-262
・岡本祐子(1994)成人期における自我同一性の発達過程とその要因に関する研究 風間書房
・Tedeschi, R. G., & Calhoun, L. G. (2004a). A clinical approach to posttraumatic growth. Positive psychology in practice, 405.
・Tedeschi, R. G., & Calhoun, L. (2004b). Posttraumatic growth: A new perspective on psychotraumatology. Psychiatric Times, 21(4), 58-60.