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ラポールの形成について解説

ラポール形成の方法とは?心理学の専門家が解説

みなさんこんにちは、はじめまして臨床心理士の加賀です。私は、これまで臨床心理士として精神科・心療内科クリニックでカウンセリングを行ってきました。その経験や心理学の知識の中から皆さまのお役に立てられるような情報をお伝えしていきたいと思います。

本コラムでは「ラポール」について詳しく解説をしていきます。目次は以下の通りです。

  • ラポールとは?
  • 形成には3つの要素が必要
  • 会話に与える効果
  • 2つの手順であいづちを上達!
  • 効果的なミラーリング方法
  • ラポール形成で築ける日常

しっかりとその問題や対策についてお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。是非お付き合いください。

ラポールとは?

みなさんは、ラポールという言葉はご存じでしょうか?

ラポール(rapport)は、
「個人間で相互に理解や受容し、共感的に両立し合う温かくて、リラックスした関係。心理療法で、クライエントとラポールを形成することは、しばしば治療者が治療的体験を促進し深め、クライエントの最適な進歩や改善を促進するための重要な媒介目標となる。」(ファンデンボス,G.R.,2013,p905)と定義されています。

語源としてはフランス語から来ていて、架け橋という意味があります。

 

ラポールとは信頼関係のことカウンセリングでは、カウンセリングを受ける患者さんやクライエントさんの気持ちや考えをカウンセラーがお聞きし、一緒に問題解決をしていきます。

その際、まず重要なのがラポールの形成といわれています。信頼関係なくして大事な作業はできませんよね?このラポールはカウンセリングなどの場面だけでなく、プライベートやビジネスなどさまざまな場面で重要になります。

そのため、これまでラポールについてはたくさん研究されてきました。まずは、理論的背景についてご説明します。理論を知ってより深くラポールについて知っていきましょう!

ラポール形成の基本と効果

Tickle-Degnen et al., (1990)は、ラポールの形成には3つの要素があると説明しています。

1:肯定的な感情
「うなずき」や「笑顔」などです。ポジティブな行動は対話の相手との親密度を深め、相互に注意を向ける行動は相手との繋がっている感覚を感じることができる。

2:相手への配慮
「お互いの視線を合わすこと」などを示します。会話の始まりと終わりなどでの、短い相互作用を通じて心理的な距離を縮めていく効果があります。

3:動きの同調
「姿勢の模倣」や「身振りの一致」などです。同調的な行動はお互いの一体感を引き出す。一般的にラポールが構築されていくにしたがって、同調性は増加する傾向があります。

つまり、相手にポジティブな注意を向け、アイコンタクトや相手と同じような動きをするとラポール(信頼関係)は深まりやすいという事です。

ラポールに必要な要素と効果このようにラポールの形成には、表情や視線、身振りなど言葉以外のやり取り非言語コミュニケーションが深くかかわっています。

・ラポール形成は非言語にあり!

ラポール形成について、具体的な言葉にすると少し難しく感じられるのは、ラポール形成に深く関係するのが非言語コミュニケーションだからです。

コミュニケーションには、「言葉でのやりとり」と「言葉以外のやりとり」の2つがあります。非言語コミュニケーションは、言葉以外での相手とのやりとりを指します。

私たちがコミュニケーションをする時には、言葉の他に表情や声のトーン、話す速度、ジェスチャー、視線などの非言語コミュニケーションを使って意思伝達をします。

たとえば
友人との待ち合せに遅刻してしまい、焦って集合場所に向かっているとします。心の中で悪いことをしたなぁと感じながら、友人と会った時にはどのような非言語コミュニケーションをするか想像してみましょう。

目線:視線が合いづらい
声:うわずる
姿勢:背中を丸める・緊張
表情:硬い表情・うしろめたいような

などが挙げられるでしょうか。

非言語コミュニケーションの例「ごめんね」と一言謝るだけの場面でも、私たちは言葉以外の表現をたくさんしています。このようなさまざまな非言語コミュニケーションがあって、友人に「悪いと思っているんだ」「焦って来てくれたんだなぁ」という気持ちが伝わるのです。

このように非言語コミュニケーションは、たくさんの情報を相手に与えています。そのため、ラポールを形成するときにも、相手の非言語コミュニケーションに合わせることが非常に重要になります。

・役立つ非言語!3つのポイント

ラポール形成に役立つ非言語コミュニケーションは、以下の3つです。

① うなずき
首を振ってあいづちをうつこと。
② あいづち
積極的に話し手の発話に関わること。
③ ミラーリング
「鏡映」と訳され、言葉通りに鏡に映っているようにしぐさをまねること。

これらを会話に組み込むことで、相手は

・自分の話をきちんときいてくれている
・受け入れられている
・やりとりがスムーズにできている

と感じ親密感や満足度が増し、ラポールが形成されていくといわれています(内田ら,2018)。

ラポール形成に役立つ3つの非言語と効果また、ラポールでは、ラポールマネジメントという言葉も存在します。Spencer-Oatey(2000)は、ラポールを人間関係の協調や円滑さ、そして、ラポールマネジメントは、人間関係の管理を表すと定義しました。

つまりラポールマネジメントを行うことで、相手との信頼関係を長く保つことができるというわけです。

・あいづちの効果とは?

ここでは、ラポール形成に役立つ3つのポイントの効果を見ていきましょう。

まずは「あいづち」です。あいづちは、大きく分けて以下の2つに分けられます。

・非言語的あいづち
言葉を発することなく、うなずきなどで表現すること。
・言語的あいづち
相手の会話と会話の間などに「うん、うん」など言葉で表現すること。

あいづちを会話に取り入れる事で「あなたの話をきちんと聞いているよ」というメッセージを送ることができます。また、あいづちには話し手の会話を広げ、相手のペースに合わせていくという効果もあります。

相手の話に適度にあいづちを入れることで話し手・聞き手の相互に会話のリズムが生まれ、話がはずむようになります。ここで、非言語的あいづち、言語的あいづちなどあいづちを中心に会話の分析をした研究をご紹介します。

大塚(2011)の研究では、初対面の男子大学院生3名1組のグループを3組作り、約30分間共通のテーマについて会話します。その後、グループでの会話について

・うまくできたか
・会話は楽しかったか
・相手に好感が持てたか

の3点についてアンケート調査を行いました。「会話終了後に会話参加者が用いたあいづちの種類と使用数」の結果はこちらです。

会話参加者の用いたあいづちの種類と使用数

結果から、
グループ1
・非言語的あいづちが多かった
・3人のうち1人が聞き役になっている
・最終的にラポールの形成ができた

グループ2について
・非言語的が少なかった
・言語的あいづちが少なかった
・聞き手がいなかった
・自身の経験や感想を述べる事が多かった
ラポールの形成がみられなかった

としています。また最終的なアンケートでは、グループ1はラポールが形成できた。グループ2の方はラポールが形成できなかったという結果が報告されています。

つまりグループ1の会話で、参加者の1人が聞き手になり、頻繁にあいづちをうったことが、ラポールを形成する大きな要素になったといえます。

あいづちがラポール形成に効果あり

・ミラーリングの効果とは?

日常生活におけるミラーリングの例としては、

・カフェでの会話中に、相手と同じタイミングで飲み物を飲むこと

・会話中の相手の癖(前髪を触るなど)をまねてみること

などがあげられます。ミラーリングは、意図的に相手と動作を合わせることで、あなたと似た存在であることを無意識のうちに相手にアピールします。人は、自分と違う人と感じるよりも相手は自分と同じであるということに安心感を抱きます。安心感のある人間関係≒ラポールの形成です。効果的なミラーリングは、ラポール形成に役立てます。

ここで、ミラーリングが会話や対人魅力に与える影響に関する研究を見ていきましょう。

内田ら(2018)は、54名( 平均年齢20.5歳)の大学生を対象に、実験者とは初対面の実験参加者をミラーリングあり群とミラーリングなし群を設定しました。

【研究方法】
研究では、実験者と実験参加者が2回対面をします。
<1回目の対面>
初対面の実験者と実験参加者が実験前に対面をし、簡単な挨拶、自己紹介を行います。この挨拶をしている間に、実験参加者のしぐさを観察します。たとえば、以下のような行動がどのくらい行うかを観察します。

ミラーリングの研究

<2回目の対面>
5分間の会話を行います。実験者は1回目の対面で実験参加者が頻繁に行ったしぐさを練習し、5分間でしぐさを5回真似します。その後、実験者にはアンケート調査を行い分析しました。

研究の結果について、2つの視点から解説します。

効果1:対人的魅力・成熟的魅力がUP
統計学的に有意な結果には至っていませんが、「会話の楽しさ」「会話相手の理解度」「会話相手からの好意」の項目で平均値が上がっていることが分かりました。

ミラーリングに関する調査

5分程度の短い会話においても、ミラーリングしない時よりミラーリングすることで会話に良い結果を出すことが分かっています。

効果2:対人魅力がUP
対人魅力とは、周りの人から受ける肯定的(好意や尊敬など)な態度の大きさのことです。内田ら(2018)の実験では、「社交的魅力(好感が持てる、熱意ある、協調的であることなど)」や「成熟的魅力(頭の良さ、親切である、理解力のあることなど)」に対する影響を調べています。その結果、ミラーリングを行うことで、実験前後で対人魅力がUPしていることが分かりました。

ミラーリングとラポールに関する研究

研究では、ミラーリングが
・会話の質を高め
・相手への魅力を向上させる
効果があるとしています。つまりミラーリングは、信頼関係を築く時に欠かせない「好感を持つ(≒相手に魅力を感じる)」ことからラポール形成につながります。

また、内田ら(2018)は、ミラーリングは、他のコミュニケーション技法を組み合わせることでより効果をUPさせることが考えられるともしています。

ラポール形成に関する研究ご紹介した2つの研究から、ラポール形成では

①非言語コミュニケーションが重要な役割を果たす

②うなづきやミラーリングが会話の質を高めることに効果的である

いうことが言えます。ラポールが形成できれば、人間関係が円満になり仕事やプライベートが充実しそうですね。

ラポール形成①効果的なあいづち

では、具体的にはどのようにラポールを形成していけばよいのでしょうか?まずは、ラポール形成に有効な方法として「非言語的あいづち」「言語的あいづち」を解説します。

・「非言語的あいづち」上達のポイント

非言語的あいづちでは、うん、うん、と首を振り相手の話を聴いていることを行動で示しましょう。この時、きちんと相手の目を見て少しオーバーに首を振ってみるのも効果的です。「うんうん」適当に首をふっているのではないということが相手に伝わります。

この非言語的あいづちを上達させるには?

① 鏡を見ながら練習する
② 聞き上手と感じる人の非言語的あいづちを「どんな表情?」「どんなときにうなづいている?」など観察する

マネできるポイントがあると思います。

非言語的あいづちの方法

・「言語的あいづち」の使い方・練習

言語的あいづちでは、さまざまな返し方があります。レベル別に練習してみましょう。

【レベル1】
は行を基本にしたあいづちを使う
まずは、「は行」を基本にしてみましょう。

は行のあいづちの例

このように、「は行」を基本に使っていくとうまくいくでしょう。会話の中で使ってみるとこんな感じです。

話し手
「昨日、オープンした○○モールに行ってきたんだ」
聴き手
へぇ~そうなんだ。どうだった?」
話し手
「とても楽しかった。この辺では見かけないお店がいっぱいあったよ」
聴き手
ふんふん、結構前から話題だったよね。」
話し手
「うん。だからすごく人が多かったんだよ」

短い会話の中でも「は行」のあいづちがあるだけで会話のテンポがあがります。

【レベル2】
あいづちのレパートリ―を増やす

あいづちのレパートリ―を増やすことで会話がより豊かになります。あなたは、いくつぐらい挙げることができるでしょうか?

<ワーク>
あいづちのレパートリ―を挙げてみよう!

あなたの回答


 

解答例
なるほど、なるほどですね/びっくりだね/わたしもそう思うよ/わかります/マジで?/大変だったね、うれしかったんだねぇ、きつかったねぇ、疲れたんじゃない?(相手の感情や状況を推測したもの)/確かにね!/わかるわかる!/そんな~/そうそう/ありえないね/すごい!/ええ~!/それでそれで?/ など

あなたは、いくつぐらい挙げることができたでしょうか?あいづちは簡単そうで奥が深い技法です。これまで意識したことがなかった人は、普段の会話の中で意識的に相手の会話にあいづちを打ってみましょう!

あいづちのレパートリー

ラポール形成②効果的なミラーリング

ミラーリングの注意点は、あくまでも自然に用いることが重要です。過剰に相手の真似をしていると感じさせると不信感を抱かせることになるので注意してください。例題を使いながらミラーリングを自然に使う方法を見ていきましょう。

<例題>
会社員Aさんは、新人のBさんの教育係です。Aさんは、Bさんと意見が合わずラポールがうまく築けません。教育係であるAさんはBさんをうまく指導できず困っています…。そこで、AさんはBさんと会話するときにミラーリングを意識的に使うことにしました。

STEP1:相手をじっくり観察
Aさんは、Bさんをよく見てひとつの癖を見つけました。Bさんは、話している最中によく右手で左肩を触ります。

STEP2:会話中にミラーリング
Aさんは、Bさんとの会話中にさりげなく右手で左肩を触るようなしぐさをやってみました。10分間に3回くらい自然に真似てみます。このとき、ミラーリングで動作だけを意識するのではなく、Bさんの話をよく聞き、しっかり理解するよう努めました。

2つのステップでミラーリングを試した結果、AさんはBさんと意見が同調して、「Bさんは指示をスムーズに聞いてくれるようになった」「Aさんは教育係としても教える自信がついた」などの良い影響がありました。AさんとBさんの間にはラポールが形成され、仕事もうまくいきそうです。

みなさんがラポールを形成したいと思っている相手はどんな動作をしているでしょうか?その動作をさりげなく会話の中で織り込んでみましょう。

ラポール形成の方法ラポール形成をする2つの方法をご紹介しました。いかがでしたか。大切なことは相手のことを知りたい、相手の話を聴きたい、仲良くなりたいという姿勢でいることです。その姿勢を大切にしてぜひご紹介した方法を実践で使ってみてください。

ラポールを形成して日常を充実

この「ラポール」コラムでは、ラポールとは何か?効果やラポールを形成する方法を心理学の研究を交えながら解説してきました。

ラポールに目を向けて人間関係を振り返ってみることであらたな気づきがあるかもしれません。コラムを読み終えて「明日から何かひとつやってみよう」と思って頂けると嬉しいです。

また、ご紹介した解決方法を実践する中で、あなたが悩んでいた問題にラポール形成の苦手さが関わっていたんだ!という発見や人間関係の問題が少しずつ解消されることを実感して頂けたら幸いです。

・専門家の講義を受けたい方へ

最後に、これまで「ラポール」コラムにお付き合いして頂き、ありがとうございました。新しいことを生活に取り入れ、これまでの習慣を変えるのはなかなか大変なことです。焦らず、できそうなことから根気強く取り組んでみて下さい。

まずは、ご紹介したワークを使って実践してみてください。そして、もう少し深く学びたい!という方は、弊社のコミュニケーション講座への参加してみませんか。弊社では年間500人が参加されるコミュニケーション講座を開催しています。気軽な気持ちで足を運んでみてくださいね、お待ちしております。

人間関係講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・引用文献
・ファンデンボス,G.R.(2013)APA 心理学大辞典 p905
・磯友輝子, 木村昌紀, 桜木亜季子, & 大坊郁夫. (2003). 発話中のうなずきが印象形成に及ぼす影響: 3 者間会話場面における非言語行動の果たす役割. 電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎, 103(410), 31-36.
・大塚容子. (2011). 初対面の 3 人会話におけるあいづち-ラポール構築の観点から. 岐阜聖徳学園大学紀要. 外国語学部編, 50, 85-95.
・Spencer-Oatey, H. (2000). Rapport management: A framework for analysis. Culturally speaking: Managing rapport through talk across cultures, 1146.
・Tickle-Degnen, L., & Rosenthal, R. (1990). The nature of rapport and its nonverbal correlates. Psychological inquiry, 1(4), 285-293.